第05話【進展】

Last-modified: 2009-08-17 (月) 14:24:46

小鳥のさえずりなどが聞こえる時間帯。
ヤマトが目を覚ましながら起き上り、ワンテンポ遅れてメイが起きる。
「…朝か。メイ大丈夫か?前の初任務でのダメージが大きかったからね」
「ありがとう…でも私は大丈夫。言ったでしょ?頑丈だけが取り柄だって」
「はは、そうだったな」
メイと共に洗面所へ向かった。

「じゃあ、今日から個別のスキルの訓練に入るからね。
え~と、私がティアとメイ、それからヤマトがシグナム副隊長でスバルはヴィータ副隊長。
エリオとキャロはフェイト隊長。」
はいっと覇気の篭った返事を返す一同。
「それじゃあ、みんな、各自別れてね」

「一条寺ヤマト、残念ながら私は古い人間だ」
長剣型のハイパーメガサーベルを構えるヤマト。シグナムはレヴァンティンを構えている。
「作戦…などと言われても私には『届く距離まで近付いていって斬れ』としか言えん」
シグナムの腰が沈む。
「だが、お前に経験を積ますことならできる。手加減はするな、全力で来い!」
来る!
ヤマトがそう思ったときには間合いは一瞬にしてつめられ、縦一閃が繰り出される寸前だった。
「早い!疾風のようだ!」
バシッ!
足が地にめり込みそうな感覚に襲われた。
「どうした?そんなものか?なら…おおぉぉぉぉ!!!」
ハイパーメガサーベルをハイパーメガランチャーに変形させてシグナムの姿勢を崩す。
「変形とはやるな…射撃は好まないな」
射撃戦を頑なに拒むシグナムに対してヤマトはいう
「こういう使い方もあるんですよ!シグナムさん!」
見せびらかす様にハイパーメガランチャーの銃口から魔力刃を発生させる。
(守ったら、負ける…攻めるんだ!)
ヤマト自身からシグナムへ攻撃をしかける。それを紙一重にかわすシグナム。それを続けるヤマトとシグナム。
「紫電一閃!!!」
刀身を中心に渦を巻く炎。文字通り、紫電をともなった一撃が、ヤマトに直撃させる。
「やったか!?」
「効きましたよ。あなたの得意技。ハァハァ、この形態じゃ使いづらいな」
「直撃なのに!?」
『ライフルソード』
長い銃から二つの長剣になり、ヤマトは二刀流構えをする。
「どうした?得意な射撃魔法を使ってもいいのだぞ」
「これはれっきとした格闘戦。格闘戦訓練なので射撃は一切使いません!」
「いいことを言ったな」
(鍔迫り合いに持ち込めば…)
ヤマトは一瞬加速で二頭の剣を構えながらシグナムへ吶喊する。
それをレヴァンティン一つだけで一刀のライフルソードを止める
(よし、作戦通りだ)
「脇が甘い!」
シグナムが横一閃でヤマトを斬りつける。
スバッ!シュッ…
「残像か!?」
斬りつけたのはヤマトの残像であった。ヤマトは鍔迫り合い中にインスペッサミラージュを発動していた。
「ハァハァ、疲労中だから持続時間は長くは持たないか…一気に決める!」
残像に翻弄されるシグナム。
「隙あり!」
ヤマトは二本の剣を使ってシグナムのレヴァンティンを弾く
「しまった!」
レヴァンティンは地に着く。
「ハァハァ、俺の勝ちですね…」
「そうだねお前の勝ちだ」
ヤマトは廃ビルの陰にぐたっと座り、皆の訓練を見ることにした。

「じゃあ、ティアはそこに立ったまま休憩。休憩の間に反省点の改善、考えててね。休憩出来るかはメイ次第だけど…。さぁ次はメイの番」
「はい」
なのはとメイは飛翔を開始する。
「メイの役割は全体のサポート。
広い視野で場を見渡し、フロントアタッカーのスバル、ヤマトとの双子サポートはもちろん、キャロやエリオのサポートもこなさなきゃいけない大変なポジション。さぁ、訓練行くよ?
ティアに一発でも当たったら…ティアからのお仕置きが待ってるからね?」
ニコっと笑うなのは。
「このニコニコは小悪魔の笑い方だね…なのは」
メイは少し苦笑いをした
ティアナはなんのことやらさっぱりな様子で、水分をとりながらたったまま休んでいた。
訓練の内容はこうだ。
なのはがメイとティアナにアクセルシューターを放つ。
自分を狙うアクセルシューターを破壊、またはかわしつつ、ティアをも狙うアクセルシューターを撃ち落とすと言うものである。
「それじゃあ…、行くよ!スタート!!」
無数の桜色の光弾が滑らかに不規則な軌道を描き、メイを、ティアナを狙う。
ここから先はメイの判断と射撃の精度がティアナの休憩時間を左右する。メイの射撃精度はヤマトと引けをとらなくて、格闘戦も同じだ。
ティアナは立ったまま呆然としていた。何が始まったの?といった感じだ。
アクセルシューターを避けるメイ、顔に焦りの色はみられない。
ティアナに近付くアクセルシューター四発を正確に撃ち落とす。
うまく飛翔魔法の加、減速、上昇降下を駆使してかわしていき、アクセルシューターがティアナの半径十メートルほどにはいるとドラグーンと通常射撃の一斉射撃で破壊する。
「うん、いいよメイ、その調子」
側宙しながらの射撃で自分を狙うなのはのアクセルシューターを一つ破壊。
振り向き様に、背後のアクセルシューターを破壊する。
そして、左右のファフニールのビームライフルトリガーを引き、腕をクロスさせてもう一度引く。みるみる減っていくアクセルシューターの数。
「メイやるな…昔…3年前と違うな」
「数を増やすよ!」
最初の二倍の数。
ティアナを八つのアクセルシューターが囲む。
「ぐっ!!」
消費される左右のファフニールの一発ずつのカートリッジ。
『ドラグーン&ドラグーンバリア』
グリフォンから射出される翼型の小型ユニット。全基のうち、4基はティアナの周囲に展開し、ダイア型の障壁を展開し、残りの8基の全ては不規則の軌道を描いて八つのアクセルシューターを撃破した。
「メイも射撃精度がすごい…」
ティアナはそれしか言えなかった。
目の前を閃いた明るい緑色の閃光がアクセルシューターを撃ち落としたのだ。
「ターゲット、マルチロックオン」
『All Light』
ティアナの周囲に纏っていたドラグーンがメイの元に戻り、束の間チャージをする。
メイを囲む14のアクセルシューター。
『ドラグーンサークルバーストグリフォンプラス』
全方位に放たれる一四の粒子状の魔力弾。
「おお~すごいね~」
なのはとメイの訓練を見るヤマトはびっくりする。
目前にまで迫ったアクセルシューターに目を閉じるティアナ。
「数が…ぜぇっ!…多すぎる」
『フルバーストドラグーンプラス』
ほとばしる十四の奔流がティアナを囲む十六発のアクセルシューターのうち十四発を撃ち落とす。だが、十四では足りない。
なので両手にある魔力ライフルのピンク色の魔力弾で残りの二つを撃ち落とす。
ホッとするティアナ。
左右から挟むようにメイを狙い来る桜色の光弾。
紙一重で後退。
直後背中を走る衝撃。
「きゃっ」
その衝撃で前に突き飛ばされるメイ。
「まぁ、ここら辺が限界かな…。」
全包囲からメイを狙い撃つアクセルシューター。
爆煙に包まれ、メイは意識を失った。

「は~い、午前の訓練終了。皆、集合!」
なのはの指示で全員集合した。
「はい、お疲れ。
個別スキルに入るとちょっときついでしょう?」
なのはの言葉に、
「ちょっと…はぁっ…というか…はぁっ…」
「かなり…ぜぇっ…ぜぇっ…」
ティアナとエリオが答える。
「フェイト隊長は忙しいから滅多に顔だせねぇけど…、私は当分、お前らにつきあってやっからな」
とグラーフアイゼンを構えながらヴィータ。
「私も、いい訓練相手が出来た…。当分はつきあってもらうぞ、一条寺ヤマト」
「ハードですけど、俺でよければ」
スバルの顔が青ざめた。

とりあえずは解散。皆で局へと戻る途中。
玄関口前で、はやて、シャーリー、リィンフォースと会った。
「おぉ、皆、頑張っとるようやな。」
汚れまみれになった訓練服と、顔を見たはやてが笑いながら言った。
「あっ、そうそう、スバルは何か伝えて欲しいこととかある?」
聞けばスバルはこれからナカジマ三佐と会うらしい。
ちなみに、ナカジマ三佐、とはスバルの父親のことである。
「いぇ、大丈夫です…。」
スバルは遠慮した。
それに、そうかと頷き、はやては車に乗ってエンジンをかける。
それからなのは、フェイト、ヴィータ、シグナムとフォワードメンバーに見送られはやては出発した。

食堂。
「なるほど…、スバルさんのお姉さんとお父さんは陸士部隊の方なんですね…。」
フォークを器用に使いパスタをくるくると巻いて口へ運ぶキャロ。
「うん、八神隊長も…むぐ…いひひぎ父はんの部隊では研修してたんだって…んぐ…。」
個皿に盛った大盛りのパスタを平らげていく。
黙々とパスタを口に運ぶエリオ
「スバルのお母さんも昔、ここにいたんだよな」っと大盛りパスタを丁寧ながら早々と平らげるヤマト。
その隣でパスタを半分残すメイ。
「しかし、うちの部隊って関係者繋がり多いですよねぇ…。
隊長たちも幼馴染み同士なんですっけ?」
とティアナ、向かい合って座ってパンを食べているシャーリーに聞いてみた。
「そうだよ。なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身。で、フェイトさんも子どもの頃はその世界で暮らしていたとか…。」
「え~と、たひか、管理外世界の97番ですよねぇ?」
と会話が進むなか念話を使って話をするヤマトとメイ。普段は会話を交さないが、周囲の状況に取り残されると、そこはやはり同じ世界の人間で息が合っているのかこうやって会話をしたりする。
(話分かる?)
(明確な事以外は大抵わかるけどね)
(なんでパスタを残す?)
(もう限界…量が多いの)
(確かに…午後の訓練、無理はするなよ。珍しいな。弱音を吐くなんて。この世界に来てからも毎日牛乳を飲んでいるだろ?)
(そうだけど…なんか様子、おかしくない?)
何だか場の雰囲気が暗い。「そ、そういえばメイとヤマトは私と同じ精密射撃型だけど戦い方随分違うわよね?」
唐突に話題を振られるメイとヤマト。
「あぁ、それ、私も思った。ティアとも違うけど、なのはさんとも違うよね?」
「そう…かな?あんまり深く意識したことはないんだけど…。」
「それに、今日のメイの訓練みてて思ったけど…。よくあれだけの弾数を正確にコントロール出来るわよね?」
この話題にシャーリー、エリオ、キャロも加わり、ヤマトとめメイはコーディネイターについて説明しなければならず、昼休みはそれに費やされた。

時空管理局、首都中央地上本部

暗い暗い暗室。
その一角にともるモニターの光。
「レリック事態のデータは以上です。」
「封印はちゃんとしてあるんだよね?」
響くのは二人の声。
一人はシャーリーで椅子に座ってモニターを操作しており、もう一人はフェイトだ。
「はい、それはもう厳重に…。
それにしても…、よく分からないんですよね…レリックの存在意義って…。」
赤い宝石の様な結晶。
「エネルギー結晶体にしてはよく分からない機構があるし…。
動力機関としても何だか変だし…。」
「まぁ、直ぐに使い方が分かるようなものならロストロギア指定はされないもの。」
シャーリーの疑問にフェイトは答えた。そんな時にもかわりつづける画面の映像。
「あ、こっちはガジェットの残骸データ?」
「はいっ、こっちはヴィータさんやシグナムさんが捕獲してくれたものと変わらないですね…。
新型は内部機構自体は大差ないし…。」
とキーを操作し、次々と画面を入れ換えていくシャーリー。
「あっ、ちょっと戻してくれる?さっきの三型の残骸写真。」
シャーリーはフェイトの注文通りに画面を戻していく。
「たぶん、内燃機関の分解図…。」
付け加えるフェイト。
「というと…この辺りとか?」
「それ!」
ある一枚の画像がフェイトの目に止まる。
中心に青い宝石の様なものが付属していた。
「これ…宝石?エネルギー結晶か何かですかね?」
画像を拡大していくシャーリー。
「ジュエルシード…。
随分昔に、私となのはが探し集めてて…、今は局の保管庫で管理されてるはずのロストロギア…。」
「あぁ、なるほど…って、何でそんなものが?」
「シャーリー、ここ、この部分を拡大して!」
シャーリーの疑問をそっちのけで指示するフェイト。赤い盤面上に無数に走る白いラインと文字。そして中心にはジュエルシード。
その直ぐ横に黄色いプレートの様なものが張り付いており、何かが書いてあった。
シャーリーは指示通りに拡大して行く。
「これ…名前ですか?ジェイ…。」
「ジェイル・スカリエッティ…。ロストロギア関連をはじめとする様々な事件に数えきれないくらいに関与していて…、超広域にわたって指名手配されている一級指名手配犯…。
ちょっとしたわけがあってね、この男のことは前から追ってるんだ…。
たぶん、この事件に私となのはが関わっているのをしっているんだ…。」

フェイトは一旦言葉をきり、再び口を開く。
「これが本当にスカリエッティだとしたら、ロストロギア技術を使ってガジェットを製作できるのも納得できるし…。
レリックを集めている理由も想像がつく…。
シャーリー、このデータをまとめて、急いで隊舎に戻ろう。
隊長たちを集めて緊急会議をしたいんだ。」
「はい、今直ぐに…。」
シャーリーはデータのまとめを開始した。

隊舎に戻る帰路。
「ドクタースカリエッティでしたっけ?
あの広域指名手配犯…。」シャーリーは気になっていたことをフェイトに聞いた。
「その人がレリックを集めてる理由って…例えばどんな?」
フェイトは車を運転しながら、その表情を険しくさせる。
「あの男は、ドクターの通り名どおり生命操作とか生体改造に関して異常な情熱と技術を持ってる…。
そんな男がガジェットみたいな道具を大量に作り出してまで探し求めるからには…。」
フェイトは言葉を切った。シャーリーも大方想像はついたのだろうか、それ以上質問はしなかった。

とある研究所。
通路を歩く白衣を身に纏った男がいた。紫色の髪に、鋭い目付き、黄色の瞳。
男は無言のうち、不適な笑みを浮かべながら歩き続ける。
通路に響く足音。
そして、照らし出すぼんやりとした光が周囲の環境を露にする。
何十というかずのナンバーをふられたカプセル。
内容液とともに閉じ込められている裸の少女。
男はそんな異常とも呼べる周囲の状況をさして気にとめることもなく、一つの部屋と呼べる空間で足をとめた。
すると、タイミングを見計らったかのようにうつるモニター。
映っているのは女性だ。
『ゼストとルーテシア、活動を開始しました。』
「ふん…、クライアントからの指示は?」
女の言葉を聞き、鼻で笑う男。
『彼らに無断での支援や協力はなるべく控えるように…二人も特別に同行させることを許可しているのだから…とメッセージが届いてます。』
「自律行動を開始させたガジェットドローンは私の完全制御下というわけじゃないんだ。
勝手にレリックの元に集まってしまうのは多目にみてほしいね…。」
『お伝えしておきます。』
「彼らが動くというのならゆっくり観察させてもらうよ。彼らもまた、貴重で大切なレリックウェポンの実験体なのだからね。
まぁ、あまり出すぎた真似をするなと半蔵には伝えておくよ。」
男はそういうと通信をきり、別の通信回線を開いた。