第08話【休暇】

Last-modified: 2009-03-16 (月) 12:15:42

AM11:07、機動六課隊舎。
「ヤマト!、いつまで寝てるつもり?いい加減、起きてよ!」
「ん~…あと五分だけ…!!」
「オフシフトからと言ってもうお昼だよ!!」
なのはが笑顔で今にも砲撃しそうな感じのレイジングハートがヤマトの顔面に突きだしていた。。

「隊長同士の模擬戦あるって言っていたんじゃなかったけ?」
なのはが自分と並んで廊下を歩くヤマトを見上げて言う。
「…昨日のことでいっばいだったから疲れたんだよ…。身体的にも精神的にも」
レイジングハートで突つかれた顔を掻くヤマト。
「そう言えばフォワードメンバーは?
昨日は明日が休暇だからと言って張り切っていたけれど…。」
「四人でミッドの市街地に出かけたよ~」
「マイトとマリアは大変そうだなぁ~あの2人に苦悩されているから」
「食堂にいこ。フェイトちゃんやメイたちが待っているよ」
「わかった。なんで俺を呼んだんだ?」
「食堂で話そうと思っているからなの」
今日はヤマトやなのは達の隊長陣は目立った任務はないらしい。資料を片付けたりする以外は、待機だと言う。

「フェイトちゃん、連れてきたよ。」
食堂でははやてだけでなく、メイやはやて、シグナム、シャマル、ザフィーラ、シャーリーなどの面々が食事をしながら会話していた。
「ヤマトくん今まで寝とったんかぁ?」
「そうかも。」
笑いながら言うはやてに曖昧な返事を返すヤマト。
そんなヤマトやなのはを手招きし、ヤマトは中央の席に座った。右にはフェイト、左にはなのはだ。
「怠惰な生活は身を滅ぼすぞ。」
シグナムが厳しいことを言う。
「まぁそう言わんと、そう言えば、ヤマト君昨日、一昨日とシャーリーのところに入り浸ってたみたいやけど…ま・さ・か…。」
「ち、違う!やましいことは…何も…。
ちょっとデバイスのメンテを一緒にやらせてもらっていたんだ。」
顔を赤くするシャーリーとは別に、必死で否定するヤマト。なのはは少し顔を顰めた。
「なのはも本気にするんじゃないよ!」
「冗談やって…。
へぇ~、ヤマト君、わかるんか?そういうの」
「ああ。
ファーウェルに新装備を施したんだよ。」

「あ、でもヤマトさん…。メンテしたあと色々いじってましたけど…。あれから実際に起動してから慣らしましたか?」
パンを千切り、口へ運びながらシャーリーが言う。
「いえ、まだなんだ。昼食食べてからテストをやろうかと思って…。」
そしゃくしていたものを飲み込んでからヤマト。
「リング・ベルの隊長陣同士の模擬戦だもんね」
水の入ったグラスを手に取りながらフェイトが言う。「新装備のテストを兼ねた模擬戦をしたい」
「うん、いいよ。私だけではなく、なのはもメイもやる気満々だから」
微笑むフェイト。すると水の入ったグラスを空にしたシグナムが
「なら、私も付き合おう。」と言う。
「えっ、いや、いいですよ。フェイト隊長が付き合ってくれるって言ってますから…。」
「お前はフリーダムの副隊長で私はガーディアン副隊長だ。ガーディアンはリング・ベルより格が一つ上だぞ。上官の命令は聞くものだぞ?
それとも、私では不服か?」
「え…いや、不服とかそういうんじゃなくて…。ガーディアンにはヴィータ、ザフィーラ、半蔵と千歳がいますし」
何だか理不尽だが…。
「(ヤマト、諦めろ。
もう知っているが、シグナムは模擬戦が大好きなんだ…。あぁなったら、止まらねぇーよ)」
ヴィータがこそっと念話で教えてくれる。
ヤマトは笑いながら、溜め息を着いた。

場所は変わって、空間シュミュレーター。
「場所は、障害物の多い街中でいいでしょうか?」
シャーリーが空間モニターを操作しながら言う。
『はい、それでいい。』
ヤマト、なのは、フェイト、メイの四名が写るモニター。
「じゃあ、それで行こう。シャーリーは?準備できた?」
「ヤマトさんの新装備測定、デバイスコンディションの計測準備できました。」
はやて、ヴィータ、シグナム、半蔵と千歳もモニターとして参加。ちなみにシャマルは万が一のための治療班だ。

「それじゃあ、まずは私だから…、準備はいいかな?」

バルディッシュを構えるフェイト。
「いつでもどうぞ!」
『ソードモード』
「それじゃあ、なのは…。合図をお願い。」
既にバリアジャケットを装備しているなのはが合図をする。
「始め!!」

「アレが使う時が来た。ファーウェル!」
『Yes!チョバムアーマーモード、Setup』
ファーウェルがそれを発するとヤマトの両手と頭部以外にバリアジャケットごと包まれる灰色の装甲。
「これがヤマトの言っていた新装備?」
チョバムアーマーモード…闇の書事件で使われたフルアーマーシステムを改修したモード。装甲強度はフルアーマーより上で耐久力も底上げされている。AMFの技術を使い、通称「アンチマギリングコーティング(AMC)」が施されており、物理面や魔法面での防御力増加のために作られた。開発・設計はヤマト。
試作段階であり、魔力効果で軽量化はしたものの、あくまで試作。機動力の低下は免れない。目標は魔力効果で重量ゼロを目指す。
距離をとり、砲撃、射撃戦に持ち込もうとするヤマトと、距離をつめ、接近戦に持ち込もうとするフェイト。
『プラズマランサー』
「はっ!!」
接近しながらの射撃。
計八発の金色のランサーがヤマトに吸い寄せられるように誘導され向かっていく。
「こい!」
ヤマトはその場からそのまま動かずにいた。。
プラズマランサーはヤマトの近くまで来ていた。
『来ます』
ファーウェルの警告だが、ヤマトは動こうもしない、武器を構えない。
プラズマランサーがヤマトに直撃。
全弾とも直撃。フェイトはヤマトの様子を窺うが爆煙で見えない。
「ヤマトは?」
モニター側はヤマトの生存を心配する。爆煙が晴れてヤマトがその姿を見せる。
「ヤマト!?」
全弾直撃なのにほぼ無傷のヤマトを見てフェイトは驚いた。
『ダメージ軽微。残り95%にも行っていません』
自慢の防御力とAMCでプラズマランサーの魔力を減少させて、受けるダメージを少なくした。
バルディッシュの右袈裟一閃をトンファーを握るような形でヤマトに接近戦に挑もうとするフェイト。
「はぁぁ!」
向かってくるフェイトの攻撃を右腕で受けるヤマト。もちろん障壁は張っていない。
『ジャマーフィールド確認』
バルディッシュは感じた。
「まさか、AMF?」
「少し違う。FではなくC、コーティングだ。チョバムアーマーの力だ。」
「プラズマ…スマッシャー!」
零距離の金色の大砲撃。受ければチョバムと言えども大ダメージは受ける
『ヴェスバー』
青色の大砲撃がぶつかり、すさまじい衝撃波と光となり、散った。

同刻、ミドチルダ市街。
「着いたぁ~、ランド、ゲームセンター行こう!ゲームセンター。」
はしゃぎ回りながら先に行ってしまうクリス。
「ゲームセンターなんて久しぶりだな、ちょ、クリス!待てよ!!」
急いでバイクを駐輪場に停め、クリスを追うランド。

とあるゲームセンター。
「当たれよ、この!!」
パンッパンッと響く銃声。ランドは一旦、画面外にガンコンを向け、トリガー引く。
すると、画面のリロードという文字が消え、画面内に銃を構えて再びトリガーを引く。
襲い来るゾンビをやっつけるゲーム。
そしてレーシングゲーム。

プリクラマシンの付近にいる2人。
「撮った写真はシールになってて、それを専用の手帳に貼ったりできるわけ…よしっと…。」
2人で割り勘し、小銭を出しあい。クリスが音声案内に従って操作していく。
「三種類ぐらいとるわよ?準備はいい?」
「おう!!
恋人同士と思われて仕方がないランド。クリスにはそんな事を感じてはいない。
カメラの前にランドとクリスが経つ
音声がカウントを開始した。
『3、2、1』
で笑顔を作るクリスは顔をよせて、ランドも笑顔で写った。
画面に撮れた写真が確認のために出てくる。
「あれ、ランド、顔寄せなきゃ切れちゃうよ?現に少し切れちゃってるし…。」
クリスがとり直しのボタンを押した。
「ほら、顔よせて!」
中々顔を寄せて来ないランドにシビレを切らし、クリスがランドの肩に手を回して引き寄せた。
頬が触れるか触れないかの距離。髪から香るシャンプーの匂い。
「とるよ…!ランド笑って!!」
パシャッ
機械がシャッターを切った。

確認画面を見たクリスが吹き出した。
「へ…変な顔~…。」
飛びっ切りの笑顔で写るクリス、その横で引きつった笑みを浮かべるランドが写っていた。
「次も取るよ」
クリスの匂いにクラクラし始めるランド。顔を動かせば触れてしまいそうなそんな距離だった。
そんなドキドキ緊張からようやくランドは解放。
その後、二人は近くのファーストフード店でホットドッグを買って食べ、デザートにアイスを食べながら、マイトとマリアに通信回線を繋いだ。
モニター越しに相変わらずのやんわりした雰囲気をかもしだすマリアとマイトの二人。
「あっ、マイト、マリア、これ見てみ。」
「く、クリス!やめろ!!」
笑顔の横にいるガッチガチの引きつった笑顔のランド。
笑顔の横にいる口は笑っているが目が笑ってないランド。
笑顔に負けて顔を真っ赤にしてうつ向いているランド。
それら三種の写真をマイトとマリアに見せるクリス。
マイトもマリアも笑っていた。それから一通り話したあと通信を終える。

「にゃはは、ごめーんヤマト。ちょっとやり過ぎたかな?」
ビルの瓦礫に向けなのはが声をかけると、瓦礫をかきわけてヤマトがのっそり立ち上がった。
「にゃははは」、じゃないよ!全力全開でやることじゃないじゃないか。死ぬかと思った…チョバムがなかったら非殺傷でも死んでいたのかもしれなかった…」

数分前…
チョバムのテストは良好で最後になのはの砲撃を耐えれるかどうか検証してみるヤマト。
チョバムの耐久力は100%。至って良好であった。障壁なしでエクセリオンバスターを耐えれたらチョバムは成功で次の研究段階に入れると思ったヤマト。

なのは対ヤマトのチョバムアーマーテストを兼ねた対決。
なのはは特別として限定解除をさせてもらい、エクシードモードになる。
なのはの放つアクセルシューターは機動力が下がっても難なく避けれるヤマトはドラグーンを展開させて、全10機のうち、六機をなのはをホーミングするように命令した。
なのはは次々と放たれる奔流を避けるが、ヤマトの命令は的確で予測射撃をしてくる。それをラウンドシールドで凌ぐなのは。
『ヤマトも遠隔操作上手いね。見習いたいな』
『おしゃべりはここまでとして、エクセリオンを撃ってくれ!』
ヤマトは早くエクセリオンを撃ってくれと言わんばかりになのはに命令した。
「行くよ、レイジングハート!』
《Allright》
『手加減なしの全力全開!』
『ちょっ、ちょ待てよ!全力全開って!』
慌てるヤマトの言葉に無視をするなのははエクセリオンの発射態勢に入っていた。
『エクセリオンバスターぁぁぁッ!』
放たれるディバインバスターより射程は短いものの、高威力の桜色の砲撃がヤマトを包み込む。
『これぐらい!』
ヤマトは受け止めるように腕をクロスする。だが、足が引きずられて後ろに下がり、そして限界には腕をクロスしたまま吹き飛ばされる。
『うぉぉぉぉっ!?』
ビルに激突するヤマト。幸い、けがなどはないようだ。
今の結果となり、ファーウェルが警告。
『チョバムアーマー、耐久力許容範囲外を越しました。強制パージします』
ヤマトの外部から外れる灰色の追加装甲。
『ヤマトさん、十分なデータとれましたんで、上がっていいですよ?』
「あ、はい。取り合えず、課題は防御力・耐久力増加と軽量化だな。」
「いや、こっちこそ。まぁ、打撲はシャマルさんがなんとかしてくれますんで…。」
ファーウェルを待機形態に戻し、一同は訓練場から出ていった。

技術室。
「取り合えず、チョバムアーマーの装備時間とかかる重量、防御力と、装備時の機動力の負担を考えた方が良さそうですね…。」
シャーリーはそう言ってキーを叩く。
「…そうだな、特に重量を…さっきのは軽く150キロはオーバーしていたからな。念には念をってとこかな?目標は重量ゼロだ」
ヤマトの体重は約60キロ。テスト時のチョバムの重量は約100キロあっても考えてもいい。魔力効果で本人は重く感じない。なのはのバリアジャケットと同じ仕組みだ。
「うん、そんなところですね。なのはさんのエクシードの調整と一緒にやっちゃいますんで、ヤマトさんはシャワーでも浴びてきたらどうですか?」
ヤマトはしばらく考えるようにしてから
「わかった。後をお願いするよ。ついでにシャマルさんのところにも寄って行くんで。」
と言った。

「何か、ホントにゆっくりって感じだな…。」
橋の手摺に背中を預け、ランドは空を仰ぎながら言った。
「そうねぇ、訓練づけの毎日だったしね…。」
とクリス。
「何か事件とか起きてないといいよね…。このままゆっくりしてたいっ…と言うか。」
クリスがそんなことを言った最中に、緊急通信が入った。マトからだ。
何でも、とあるケースを持ったボロボロの少年を発見したらしい。
「合流しないと…。」
ランドは駆け出し、その後をクリスが追った。

聖王教会。
カリムとクロノは治安維持局の今後の任務について話しあっていた。
シグナムも聞いておいてくれとの事で、いざ、話そうと口を開こうとしたとき、はやてからカリムへ直接通信が入った。

薄暗く、細い路地。
マイトは膝に少年の頭を寝かせ、マリアはそれを眺めている。
二人とも浮かない表情で、沈黙が続いていた。
「マイト!!マリア!!」
そこへ、ランドとクリスがやって来る。
「クリス、ランド。」
マイトとマリアがかけつけてくれた2人へと向き直る。
「この人か、随分ぼろぼろだけど、何かあったのか?」
ランドがマイトとマリアに聞く。
「地下水路を通って、かなり長い距離、歩いてきたんだと思う。」
マリアは少年の様子をうかがうように視線を落とす。
「ケースの封印処理は?」
ランドがマイトの方を向く。
「マリアがしてくれた。ガジェットが見付ける心配はないと思うだけど。
それから、これ…」
マイトは手に持っている鎖に繋がったケースをクリスに見せた。
「ケースがもう一個?」
「はい、今、ガーディアンに調べてもいるんだ。」
疑問に思うクリス。それに答えるマイト。
「隊長たちとシャマル先生、それにリィン曹長がこっちに向かってきてくれてるみたいだし…。
取り合えず、現状を確保しつつ、周辺警戒ね。」
マリアの指示に皆が返事をした。

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