第10話【機動六課の休日・後編】

Last-modified: 2009-08-17 (月) 14:25:57

聖王教会。
カリムとクロノは機動六課の今後の任務について話しあっていた。
シグナムも聞いておいてくれとの事で、いざ、話そうと口を開こうとしたとき、はやてからカリムへ直接通信が入った。

ヤマト達はエリオとキャロを少し通り越して、車を停止した。

薄暗く、細い路地。
キャロは膝に少女の頭を寝かせ、エリオはそれを眺めている。
二人とも浮かない表情で、沈黙が続いていた。
「エリオ!!キャロ!!」
スバルを引き連れたティアナがやって来る。
「スバルさん、ティアさん。」
そしてヤマトとメイもやってくる
エリオとキャロがかけつけてくれた三人へと向き直る。
「この子か、随分ぼろぼろだけど、何かあったのか?」
ヤマトがキャロとエリオに聞く。
「地下水路を通って、かなり長い距離、歩いてきたんだと思います。」
キャロは少女の様子をうかがうように視線を落とす。
ヤマトの手に力が入った。
「まだ、こんな幼いのに……何で…。」
「ケースの封印処理は?」
ティアナがエリオの方を向く。
「キャロがしてくれました。ガジェットが見付ける心配はないと思います。
それから、これ…」
エリオは手に持っている鎖に繋がったケースをティアナに見せた。
「ケースがもう一個?」
「はい、今、ロングアーチに調べてもらってます。」
疑問に思うティアナ。それに答えるエリオ。
「隊長たちとシャマル先生、それにリィン曹長がこっちに向かってきてくれてるみたいだし…。
取り合えず、現状を確保しつつ、周辺警戒ね。」
ティアナの指示に皆が返事をした。

管理局機動六課管制、ロングアーチ。
『そう…レリックが…。』
神妙な面持ちで、はやての話を聞くカリム。
「それを、小さな女の子が持ってたぁ言うんも気になってな…。
ガジェットや召喚士たちが出てきたら市街地付近での戦闘になる。なるべく迅速に確実に片付けなあかん。」
『近隣の舞台には…もう?』
クロノがはやてに聞く。
「うん、市街地と海岸線の部隊には連絡したよ。
奥の手ぇもださなあかんかもしれん…。」
覚悟をきめるようにはやては言った。
『そうならないことを祈るがな…。』
クロノの言葉を聞いたカリムはシグナムを機動六課へと戻るように指示をだした。

地下道では

ヤマトのポケットから振動が伝える。それは携帯端末のバイブでポケットから取り出した。
「携帯かな?こちら、一条寺ヤマト空曹ですが」
『ヤマト君だけ、今すぐに管理局だけ戻ってくれる?飛行許可は出す』
はやてからの通信だ。ヤマトは同意をし、バリアジャケット状態になった。
「救援要請だ。俺は管理局に戻ってはやてさん達のサポートをしなければならない」
「わかったわ。気を付けてね」
ヤマトは飛翔し、全力で管理局に戻るのだった。
「スターズ5、一条寺ヤマト、行くぞ!」
鮮やかな粒子を空一面に散らす。

路地。
「うん、バイタルは安定してるわね。危険な反応もないし…。心配ないわ。」
シャマルの言葉に安堵するキャロ、エリオ、ティアナ、スバル、メイ。
「ごめんね、みんな、お休みの最中だったのに…。」
フェイトは新人たちに申し訳なさそうに言う。
しかし新人たちとメイは、口々に平気だといった。
「ケースと女の子は、このままヘリで搬送するから…、みんなはこっちで現場調査ね。」
なのはの指示に従い、早速、新人たちは現場調査を開始した。

ロングアーチ。
一方、管制は次々と現れるガジェットに対応をおわれていた。
新人たちの現場へガジェット1型が二十機、海上方面から12機構成の隊が5グループ。
「多いなぁ…。」
はやての表情が険しくなる。そこへ、ヴィータからの通信が入る。
『スターズ2からロングアーチへ。
こちらスターズ2、海上で演習中だったんだけど、ナカジマ三佐が許可をくれた。
今、現場に向かってる。
それから、もう一人』
『108部隊、ギンガ・ナカジマです。別件操作の途中だったんですが、そちらの事例とも関係がありそうなんです。
参加してもよろしいでしょうか?』
ギンガ・ナカジマはスバルの姉である。
「うん、ほんならお願いや。」

ストームレイダー。
『ヴィータはリィンと合流。協力して海岸の南西方向を鎮圧』
「南西方向了解です!」
フェイトの肩にのっているリィンが返事をする。
『なのは隊長とフェイト隊長は北西部から』
「「了解!」」

市街地。
『ギンガは現場のフォワードたちと合流。
みちみち、別件のことも聞かせてな?』
「了解!!」
ギンガは長いスバルと同系色の髪を翻し、駆け出した。

高い塔に佇む紫色の髪の少女。黒でまとめた服装が、彼女の肌の白さを際立てていた。
少女の名はルーテシア。
『ヘリに回収されたマテリアルは、妹たちが回収します。お嬢様は地下に…。』
「うん…。」
女からの通信にルーテシアは頷く。
『騎士ゼストと、アギトさまは?』
「…別行動。」
『お一人ですか?』
「一人じゃない…。」
ルーテシアが手の甲をかざすと、黒い楕円の固まりが姿を現す。
「私にはガリュウがいる…。」
黒い何かに頬擦りするルーテシア。
『失礼しました。協力が必要でしたら、お申し付け下さい。最優先で実行します。』
通信が切られ、一人、ルーテシアは黒い何かに向かって呟く。
「行こうか…ガリュウ…。探し物を見つけるために…。」
漆黒の魔法陣を展開し、ルーテシアは姿を消した。

地下水路。
鼻を突く様な臭いがするなかをかけるバリアジャケットを装備した五人とはばたくちび竜。
「ギンガさん、お久しぶりです!」
『うん、久しぶり、ティアナ。現場リーダーはあなたでしょう?指示をくれるかな?』
「はい。」
簡潔に合流地点を伝えるティアナ。ギンガは了解し、合流地点を目指す。
「ギンガさんって、スバルさんのお姉さんですよね?」
「私のシューティングアーツの先生で、年も階級も二つ上!」
皆が関心するなか、ティアナがギンガに次の指示をだした。

一方空。
プラズマランサー、アクセルシューターによりガジェットを破壊するフェイトとなのは。

ロングアーチ
「スターズ1、ライトニング1、エンゲージ。」
管制局員からはいる現状報告。そして、ギンガから別件をはやては聞いていた。

『私が呼ばれた事故現場にあったのは、ガジェットの残骸と、壊れた生体ポッドなんです。
ちょうど、5~6歳の子どもが入るぐらいの…。
近くに何か重いものを引きずったような後があったのでそれを辿って行こうとした最中、連絡を受けた次第です。
それから、この生体ポッド…。前の事件で良く似たものを見た記憶があるんです。
人造魔導士計画の…素体培養機…。』
「うん、私も…あるよ。確かそうやったはずや。」
ギンガの話を頷いて聞くはやて。
『これはあくまで推測ですが…。あの子は人造魔導士の素材として造られた子どもなのではないかと…。』

地下水路。
走り続けるフォワードたち。
「人造魔導士って?」
キャロが聞くとスバルが言った。
「優秀な遺伝子を使って、人工的に作り出した子供に、投薬とか機械部品の埋め込みで後天的に強力な能力や魔力を持たせる。
それが人造魔導士。」
メイは走りながらそれを聞いていて、コーディネイターとエクステンデットを合わせたものに似ているなと思った。はたまた、強化人間のデータで作られたクローンなのか。
「倫理的な問題はもちろん、現在の技術じゃどうしたっていろいろな部分で無理が生じる…。
コストも合わない。だから、よっぽどどうかしてる連中でない限り、手を出したりしない技術のはずなんだけど…。」
ティアナの後ろで苦笑するメイ。
「あっ!」
その時、キャロのデバイス、ケリュケイオンが反応した。
「来ます!小型ガジェット、六機!!」
足を止める五人。

南西方向海上。
あらかたのガジェットを片付けたヴィータとリィンは他のフォローに回ろうとしていた。
しかし、水平線にかなりのガジェットを肉眼で確認できる。
「増援…?」
それは北西方向を担当しているなのはとフェイトも同様だった。
背中合わせになり、周囲を見回すフェイト、なのは。

その遥か遠方上空に魔法陣を展開している人の陰。
「ふふふ…、クアットロの、固有スキル、シルバーカーテン。
嘘と幻のイリュージョンで…まわってもらいましょ?」
眼鏡をかけた女は面白おかしそうに、笑ってそう言った。

ロングアーチ。
モニターに増え続けるガジェットの機影。
「航空反応増大!これ…嘘でしょ?」
思わず目をつぶりたくなってしまうような敵の数に、スタッフたちが声を失った。

波形をチェックしても、全ての敵影は実機と判断される。
実際、なのはたちにも目視で確認できるとのこと。
ついに、機動六課を統べる八神はやてが重たい腰をあげた。

北西海上上空。
懸命に敵機の撃墜に励むも、実機と幻影が混じっているのでなんとも戦いづらい状況だ。
フェイトの顔に焦りの色が浮かぶ。
「防衛ラインを割られない自信はあるけど…。ちょっときりがないね…。」
なのはがフェイトに言う。
「ここまで派手なひきつけをするってことは…。」
考えられることは二つ。
「地下か、ヘリの方に主力が向かってる。」
フェイトの考えていることを察したなのはが続けた。
「なのは、私が残ってここを押さえるから…ヴィータと一緒に…。
コンビでも普通に戦ってたんじゃ時間がかかりすぎる。
限定解除すれば広域殲滅でまとめて落とせる。」
「それは…そうだけど…。」
と渋るなのは。
「何だか嫌な予感がするんだ。」
『割り込み失礼。後もうちょっとしたら、ヤマト君が来るんでそれまでの辛抱や』
フェイトとなのはの会話に割ってはいったのは、はやての通信だった。

ヤマトはロングアーチと現在ことが起きている現場を中程まで言ったところで、不穏な何かを感じた。
頭の中で警告される。
引き返せ、引き返せと。
しかし、引き返していいものか迷い。結局、ヤマトは命令を無視。
「今更、引き返せと言われても後には引かないぞ」

はやては、なのはとフェイトにヘリの護衛を指示。
ヴィータとリィンフォースには地下のフォワードのサポートを指示した。
自分はロングアーチ上空からの超長距離空間攻撃によりガジェットを実機、幻影を問わずまとめて破壊する策に出た。
そのために、クロノから限定解除の許可をもらっている。
現状、クロノとカリムからの一度ずつしか解除は許可してもらえない。
しかも、今回の解除はスリーランク解除まで、よってはやてのランクはシングルSと言うことになる。
限定解除使用許諾取り直しも難しいとのことだ。
しかし、はやては言った。
「使える能力を出し惜しみして、後で後悔するのは嫌や」
好き好んで使いたいわけじゃない。だが、使えるなら使う。
「久しぶりの遠距離広域魔法、行ってみようか!!」
はやてはシュベルトクロイツを構え、夜天の書を開いた。

『ロングアーチ1、シャリオから、ロングアーチ0八神部隊長へ』
「はいな!」
シャーリーからの通信にシャキっと返事をするはやて。
『シューティングサポートシステム準備完了です。
シュベルトクロイツとのシンクロ誤差、調整終了です。』
「うん、了解。ごめんな、精密コントロールとかは、リィンと一緒やないとどうも苦手でな…。」
『その辺はこっちにお任せください。準備完了です。』
「おおきにな…。」
通信を終え、シュベルトクロイツを天に掲げ、夜天の書を開く。
「来よ、白銀の風、天より注ぐ矢羽となれ!!」
はやての正面に環状魔法陣が発生。
さらに、その魔法陣を四角く囲むように4つの環状魔法陣が発生する。
『スターズ1、ライトニング1、安全域に待避…えっ!?ライトニング5ロングアーチに向かって戻ってきます!!
ロングアーチ0に接近する魔力反応あり、これは…!』
「何やて!?」
耳を疑うはやて。
『GNマイクロミサイル』
『リフレクタービット』
発射体勢に入っているはやてに向かう小型で緑色の鮮やかな粒子を噴出しているミサイル。
不規則な直線的な動きをする常に障壁状態の紫色の発射体が次々と奔流を放つ。
はやては発射を解除。直ぐに回避行動に移るが、背後にビットが待ち構えていた。
「しまっ…。」
はやての目先三寸を閃く緑の閃光が障壁を張っているのも関わらずビットを次々と撃ち落としていく。

「これ以上はやらせない!」

「一条寺ヤマト!!?」
半蔵が口を開く。
半蔵ははやてに斬りかかろうとしていたが、ハイパーメガランチャーの5WAYショットで牽制。
視線をヤマトへと移す。
はやての前に舞い降りるヤマト。
「半蔵!千歳さん!どうして君達がここに…、何でこんなことを…。」
「お前と言う存在は知らない!」
「同じく、私もだ」

ヤマトは悲しそうな顔をして
「そうか…俺たちのこと、忘れたんだな…」
「こんな動揺を誘う作戦には乗らない」

『Type Power SEED Burst』
「ッ!?(何だ……一体どういう…ことなんだ…。)」
ソードによる斬撃を後退してかわす。

その様子に見とれているはやてにヤマトは指示をだす。「ここは俺が引き受ける!はやてさんはガジェットの撃墜を!!」
『サーベルモード』
激突する蒼と朱の魔力が紫電を這わす。しかし、五秒と持たず、弾き飛ばされるヤマト。
『リフレクタービット』
そこへ幾つもの発射体より、降り注ぐ九十の奔流。
両腕から波状のシールドを展開。回避しながら攻撃範囲から離脱する。
背後に迫る千歳のロングレンジサーベルによる一閃。
「ヤマト…お前を許さない!」
「ファーウェル!」
『Alright High MAT mode plus』

弾け飛ぶ薬筒。
背中の翼が十枚となる。スピードがあがり、高速戦での体の安定性が格段に上がった。
「あかん、もしここで撃てばヤマト君を発射に巻き込んでまう。
何とか、場所を…移せんか?ヤマト君!」
半蔵と千歳、それから十のビットがヤマトを追い詰める。
『GNドラグーン』
そのヤマトから放たれる十の翼が半蔵を牽制するが、避けながら
『GNレーザーキャノン』
二つの奔流が放たれる。
二対一、空中で何度も、何発も交差する三色の閃光。
ディバインによるビットの対象集中砲火を上昇後退しながらかわす。
反転するヤマトの視界。
落下に合わせ、フルバーストで自分を狙うビットに向け放つ。
三つを破壊した。しかし、千歳は動じない。新たにビットを生成、飛ばす。
半蔵からは距離をとりつつ、ヤマトは決して自ら接近戦を挑まないように戦っていた。
「何とか撃てないのか!?
こっちは…。
くそっ!!半蔵ッ!!」
『オーライザー・GNシールド&GNマイクロミサイル』
「ヤマト!!!!」
飛ばされる盾と放たれる多数のミサイル。
盾を撃ち落とし、ミサイルを全て落とす。
『ドラグーンフルバースト』

「くっ!!」
『シールド』
腕を交差させ、自分をすっぽり覆うほどの波状シールドを展開。
十の太い奔流が張られたシールドに突き刺さる。
「うっ…ぐ…。」
何とか防いだものの吹き飛ばされ、バランスを崩し、失速する。
「今だ!半蔵。」
「分かってる!!」
『ライフルモード・バースト』
「くっそぉぉおお!!!」
はやてがヤマトを助けに入ろうとするが、ビットで牽制される。
これでは、詠唱に時間がかかる広域魔法は撃てない。
放たれるライフルの光線をシールドで受け、半蔵と千歳へと通常射撃を連射する。
このままでは、駄目だ。
ヤマトは焦る。現場の幻影と実機の混じったガジェットの件は知っている。
無数に放たれる奔流を間を縫って避ける。
少しでもずれれば当たってしまうようなそんな隙間をだ。
誰かがやらなければ、現場も、ロングアーチも危ない。
ヤマトは覚悟を決め、通信回線を開いた。
「スターズ5より、ロングアーチへ!
シューティングサポートを要請する!!ファーウェルとのシンクロを…。」
全包囲360度の砲撃を避け、はやてに向かう半蔵を牽制しながらヤマトは管制へ通信する。
『でも、一体何を?』
シャーリーからの通信。
「俺がガジェットを殲滅する。」

ヤマトが超遠距離砲撃をやると言うのだ。ロングアーチスタッフが沢つく。
「これじゃあ、はやてさんは広域魔法を撃てない!
くっ!!」
いきおいよく後退し、直後の半蔵の斬撃を宙返りしてかわす。

そこへすかさず降り注ぐ青色の奔流の雨がシールドごとヤマトを吹き飛ばす。
「しまった!」
「ヤマト君!!」
ビットを防ぐのに必死なはやて。
「ヤマト!!」
『ネットガン』
放たれる蜘蛛の巣の塊が目標の近くに来ると展開する。
『シュランゲフォルム』
展開する蜘蛛の巣型のネットがバサッと斬られる。
「すまない、遅れた。」
声と共に現れたのは、騎士甲冑を纏った剣の騎士、シグナムだった。
「ボサッとしてる暇はない。やるならやれ、主をお守りするのは私の仕事だ。」
シグナムの言葉に頷くヤマト。
「シャーリーさん!!」
『了解、これよりスターズ5、デバイスファーウェルとのシンクロ、及びシューティングサポートに移ります。』
シグナムはア半蔵を押さえている間にファーウェルのカートリッジをリロードする。
はやては千歳だ。
しかし、はやての放つ魔力弾はことごとくビットに撃ち落とされていく。
驚異的なスピードで動き回る発射体と短い間隔で連射されるため、かわすのも、撃ち落とすのも難しい魔法。

「前回はいいようにやられたが、今回はそうは行かんぞ?」
「俺はヤマトに用があるんだ…。お前が邪魔をすると言うのなら、討つ!」
『GNソード・ダブルモード』
二つのソードが連結する。
「討てるものならな…。」
ジャキッと音を立てシグナムはレヴァンティンを構えた。

「銀月の槍となりて…」
『リフレクタービット・ランサー』
紫色の鋭いランサーがはやてへと向かう。
「(あかん…かぁ。)」
はやてはシュベルトクロイツでランサーを弾く。
千歳から四方八方に飛び散る紫の発射体つきの閃光。
「…くっ…。」
はやての頬を汗が伝う。すると、ヤマトがビットとはやての間に割って入り、ビットを迎撃しながら二人でかわす。
ビットによる砲火を止めないまま、千歳は次の魔法を繰り出した。

『チャイルドビット』

30ある小型兵器がヤマトを狙う

『ロングアーチ1からライトニング5へ!
ファーウェルとのシンクロ誤差修正、シューティングサポートシステム準備完了しました。』
「助かります!」

直線で不規則な動きをするビット。

『Type Rush SEED Burst』
向けられるファフニール・バスターライフルの銃口とGNランチャーの砲口。失われる目の光、急上昇する魔力、鋭くなる目付き。
『フルバースト』

二本の巨大な奔流が全てのビットを飲み込み砕く。
「行くぞ、ファーウェル…。俺は怒っている…」
『Yes, Cartridge Full Load』
ツインバスターライフル、ツインGNランチャーから弾き飛ばされていく薬筒。

「はやてさんはできるだけ離れてて!あとは俺が…やってみる。」
その数、50発。
ツインバスターライフル、ツインGNランチャーから発生するエネルギーが音をたて、ヤマトの体を駆け抜ける。
『Cartridge Full Load Complete.』
「さ、50発って!?ちょっ、ヤマト君、あかんよ!」
「GNアームズ・タイプI起動!!トランザム!」
『Yes, GN.Arms type,I Set up.トランザム起動
マルチロックウィンドウを展開します。』

ヤマトとファーウェルの全身が怪しく光る。
千歳の攻撃を避けながら準備を進めていく行くヤマト。
目の前に展開される空間モニターに点で表される無数のガジェットを電子音をたて囲んでいく赤い枠。
ツインバスターライフル、ツインGNランチャーの砲口の前に展開される環状魔法陣。
モニターでは90機のガジェットがロックオンされた。
『GNマイクロミサイル・コンテナ』
巨大な発射体リングと環状魔法陣。ビットによって放たれる奔流避けながら
『発射』
発射音とともに放たれる90発の大型魔力弾が目標へと天を駆けていった。

『第一波、目標到達まであと三、二、一…。着弾、敵影反応、92機消滅。』

中威力空間攻撃魔法GNマイクロミサイル・コンテナ。
目標到達地点オーバー及び目標に着弾することにより、半径25メートルで中規模空間爆破を行う対大多数戦において威力を発揮するヤマトがもつ、唯一の空間攻撃魔法である。
数多の奔流が降り注ぐ中をくぐりぬけ、千歳、それから半蔵からも距離をとり、大きく旋回。
向かってくる千歳、半蔵を視野に入れつつ、再び展開されるマルチロックウィンドウ。
電子音を立て、赤い枠に囲まれていくモニターに映る敵影。その数101機。
今度は千歳も半蔵も含まれている。
『High MAT Full Burst Meteor Shift Rush』
ヤマトの使用できる全ての射撃、砲撃魔法が一斉に起動する。
そして、起動した魔法全てがアームズモードにより射程延長、トランザムにより威力強化され…
「当たれぇぇええ!!」
『Fire!』
不快なまでの鮮やかな緑の発光。空間一帯を振動させる程の轟音が響き、放たれる奔流は目標に向かって、幾重にも分かれ蒼天を駆けていった。

「もう一発!!」
赤い枠に囲まれていく敵シルエット。

『Fire!』
次々と放たれる奔流、魔力弾のラッシュ。一度の一斉射撃で遥か遠方の百を越えるターゲットをを撃ち落として行く。
放つ光が空を駆ける。

一方、半蔵に大苦戦を強いられているシグナム。
『シュランゲフォルム』
鋼の蛇がうねりを上げ、半蔵にその牙を剥く。しかし、ダブルオーで弾き、間合いを詰めセイバー形態のソードによる、逆右袈裟一閃。
『シュベートフォルム』
間合いに入られるまえに、レヴァンティンを剣形態に戻し、斬撃を受ける。
「ぬぅっ!!」
「邪魔をするな!!!」
『GNソード・ビームモード』
セイバー形態のGNソードから魔力刃発生し、それをそのままシグナムに向け、縦一閃。
迷わず、シグナムはその斬撃を鞘でうけた。
「ぐっ!」
尋常じゃない負荷が両腕にかかる。最初に出会ったときとは雰囲気も、パワーも違っていた。
『GNダガー』
隠し腕が出るみたいに魔法陣から出てくる短剣。
シグナムは何とか押し合いを回避するため、自ら力を抜き、弾き飛ばされる格好となった。
あのままの状況では前回の二の舞になりかねない。そう判断しての行動だったが、しかし、
『ネットガン・スタン』
シグナムの上半身を蜘蛛に糸を吐かれたみたいに絡まる。
「バインドか?」
驚きはしたが、相手が向かってくる前にバインドを解除し、回避行動をとればいいとシグナムは思っていた。
が、グンッと引っ張られる体。離れていた間合いが一瞬にしてゼロになり、半蔵による斬撃がシグナムを海に叩き落とした。

「シグナムッ!!」
飛び出そうとするはやてを全方位360度で囲む発射体つきリフレクタービット。
「終りだ!」
「させるかぁっ!!」
千歳の指示で一斉に放たれようとしたビットへと向かう数多の魔力弾。
何とか、奔流が放たれる前七つの閃光が七つの発射体を撃墜する。
「半蔵!!!」

『サーベルモード・GNアームスシフト』
「何故、お前たちがこんなことを!!メイを悲しませたいのか!?」
超大型の魔力刃による牽制の一閃。
「お前は俺の敵…俺はお前の敵…そして、お前の仲間である管理局は、俺の敵…っだ!!」
大振りの一閃を容易にかわす半蔵。
『Warning!』
背後に迫りくる五の奔流。飛翔魔法を進行方向とは逆にフル稼働、後退しかわした。

地下水路

六機のガジェットを殲滅したスバル、ティアナ、エリオ、キャロ&フリード、メイの五人と一匹。
ズドォンッ!!
と言う破壊音とともに、近くの壁が崩れた。
「敵!?」
粉塵が舞い上がり、フォワードメンバーを緊張させる。
GNラケルタハルバード形態で構えるメイと同様に、他四名も警戒体勢にはいる。
徐々に浮かんでくるシルエットは人型。長い髪が揺れ、モーター音が木霊している。
粉塵が晴れると真っ先にスバルとティアナが声をあげた。
「ギン姉!!」
「ギンガさん!」
再会を喜ぶスバルとティアナ。
「一緒にケースを探しましょう。ここまでのガジェットは叩いてきたと思うから…。」
ギンガの登場にあっけにとられているのはメイ、エリオ、キャロの三人だ。
そんな三人に気付いたギンガが微笑みかけると敬礼で返すエリオとキャロ。
その様子を見て、メイも二人に習った。
ギンガを加え、再び走り出すフォワードメンバー。
キャロによるとケースがある場所までもう少しらしい。
途中に現れるガジェットを蹴散らし、ひた走る。
途中の大型ガジェットはナカジマ姉妹のコンビネーションで撃破。
さらに奥へと進むと、下水によってゆっくりと流れていくケースをキャロが見つけた。
「ありましたぁ!」
と報告するキャロに、探していた皆が喜ぶ。
ザッザッザッ…
最中になる奇怪な音。
「何この音?」
ティアナが不思議そうな顔で言う。
「敵だよ!!キャロちゃんッ!!」
逃げろ!!まで言い切れず、メイは羽を展開。加速して音源を追う。
漆黒の魔力弾四発がキャロを襲った。直撃はしなかったが衝撃で吹き飛ばされるキャロ。
近くにいたエリオが応戦するも、避けられ、逆に鋭い何かが肩をかすめた。
わずかながら飛ぶ鮮血。
駆け寄ろうとするキャロを蒲うようにたつエリオ。
そして、メイ追っていた音源がようやく姿を露にした。
なんとも形容しがたい不気味ないでたち。
その姿に見とれていると、先の爆風により吹き飛ばされた際に取り落としたケースを六人が見知らぬ少女が手にしていた。
紫の髪、額の紋様、全体的に黒でまとめた服装。
ルーテシアだ。
「あっ!?それは…。」
キャロがレリックのケースを取り返そうと駆け寄るが…。
「…邪魔…。」
抑揚の無い声、かざされる手。溢れ出す淡い紫の光。キャロはプロテクションを使うが、プロテクションは砕け散り、閃光に飲み込まれた。

吹き飛ばされるキャロ。エリオを巻き添えにして地を支える支柱にめり込んだ。
そんな二人にルーテシアは目もくれず、歩き出そうとする。
「あっ!待ってっ!!」
スバルが追おうとするが、ガリュウが行く手を阻む。スバルは拳を繰り出すが。かわされる
ガードするガリュウ。
しかし、ガードの上からでもギンガの一撃はガリュウを後退させた。
その間にルーテシアは歩いて離れていってしまうが、そんな彼女の首につきつけられるオレンジ色の魔力刃。
姿を現すティアナ。
クロスミラージュの第二形態、ダガーモード。
「手荒な真似してごめんね…。だけどそれ、ホントに危ないものなの。
渡してくれる?」
微動だにしないルーテシア。しかし、動きをとめ、何事かに頷き、目を閉じる。
「スターレンゲホイル!!」
声。
刹那、爆光にも似た凄まじい音と閃光。目を閉じ、耳を塞ぐフォワードメンバーたち。
音と光が去ったとき、ティアナの目の前に現れるガリュウ。
腕に付属している鋭い刃がティアナを狙う。
見開かれるティアナの目。割り込む鮮やかな光。
弾け飛ぶ薬筒。
飛び散る鮮血。
『ヒートロッド・サウザンド』
熱を纏うワイヤーが鞭を撓う様に振って、ガリュウを後退させる。

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