第11話【謎の少年とメイ】

Last-modified: 2009-03-29 (日) 11:22:45

ミッドチルダの地下道と市街地上空を巻き込んだレリックを巡る戦いは治安維持局の勝利に終わった。
犯罪関係者は逃走。捕獲はできなかったものの、幸い、レリックが無事だったので結果オーライとしよう。

発見された少年は保護されて聖王教会の医療施設に移送。レリックは厳重保管された。
フォワードメンバーは先の戦いをレポートとして隊長達とガーディアンに提出するためデスクワークをしていた。
「なぁ、なんで俺達がこんな事をしなくちゃならないんだ?」
「そうよ、隊長やガーディアンがすればいいのに」
悪態をつくランドとクリスに対するマイトとマリアは否応ながら答える。
「ヤマトさん達も先のことで会議をしてて、調査しているんだよ」
「ナンバーズは隊長達も戦ったわ。だから私たちは隊長やガーディアンのサポートをするくらいだけよ」
聞いたランドとクリスは黙ってキーボードの打ち続けを再開した。
「今まで戦った奴と違って手強かったような気がする…」
マイトが地下道で戦った相手のことを考えていた。モビルガジェットやモビルガジェットと違って強さが段違いだった。特殊能力もあってあの副隊長のメイまでをも苦戦した相手。
「僕たちで行けるのかな…」
不安がるマイトにマリアとランドが彼の背中をバンバン叩く。
「なに、弱音を吐いてるんだよ!」
「私達やなのはさん達がいる。シャキとしなさいよ!」
マイトは少し涙を流しながら礼を言う。
「そっか、そうだよな、僕以外に皆がいる。自分が弱音を吐いちゃ負けてしまう」

治安維持局・リング・ベル部隊長室
中にはなのはとヤマトとフェイトがいた。
「ふぅ…」
「はい、ヤマト。お茶だよ」
フェイトがため息をするヤマトに茶飲みを渡すとヤマトは事件のことを話した。
「前の事件ってなんかJS事件事件の一部と同じだった様な気がするんだ」
「私もそう思うの。何かに似ているかなと」
なのはも同じだった。
保護された少年、レリックケースと繋がれた鎖、最初にいたところにガジェットドローンとモビルガジェットの残骸があった。
ヴィヴィオの時と類似点が多い。
「陸士第108部隊も捜査に協力してくれているから結果を待とう」
「何もしないよりかはマシだね」
「フェイトちゃんもヤマトも私も忙しいからね~」
3人は重要な役割についている。執務官、教導官、部隊長、隊長、副隊長と地位の高いランクなので忙しい。
「ナンバーズ、刺客、バーンハルト…スカリエッティとの共通点も多いなぁ」
ヤマト達がバーンハルトのことについて話す。
「彼がスカリエッティの志を引き継いでいるとしか思えないの。ガジェットにナンバーズ…」
「ヤマトの世界にあるモビルスーツに似たガジェットドローン、通称・モビルガジェットの開発」
謎が謎を深まるばかり。今わかっているのは次元犯罪で指名手配されていることだけだ。

3人が同時にお茶を啜り、最初に喋ったのはフェイトであった。
「そう言えば、メイは?さっきからいないけど」
「あいつか?それなら聖王教会の医療施設に行くって言って、行ったんだ。恐らくは保護した男の子のお見舞いだそうだ」
「私たちも行こうよ、ね?」
なのははヤマトやフェイトに向かって行こうよというウインクをして、ヤマトもフェイトも少し戸惑っていたが、OKした。
「ああ、わかった。少年の様子も見たいしね。」

2人はフェイトを残してレポートをマイト達に任せて聖王教会へ行く準備をした。

聖王教会 医療施設
治安維持局の制服を纏ったメイが中庭に足を運ぶと事件が起こっていた。
病院を訪れたなのはとヤマトにシスターシャッハが駆けつけてきた。
「どうしたのですか?シスターシャッハ」
「すみません、こちらの不手際であの子がいなくなりました。」
「例の子の状況はどうなんですか?」
シャッハに状況を聞いたのはヤマトだった。
「はい、特別病棟と、その周辺の封鎖と避難は済んでいます。
今のところ、飛行や転移、侵入者の反応は見付かっていません。」

「外には出られないはずですよね?」
なのはがシャッハに確認をとる。
「では、手分けして探しましょう。」
なのはとヤマトのペアとシャッハで二手に別れ、『あの子』、つまりガルマを探し始めた。

第二の人造生命体。
ガルマはそう呼ばれる存在だった。最初の人造生命体だったヴィヴィオより越える存在の生命体。
検査上、危険は無いとのことだが、並の子よりも遥かに高い魔力を持っている。
そして、人造生命体であるが故に、ガルマにはどんな潜在的危険が眠っているか知れなかったため、注意が必要だった。

なのはとヤマトが中庭を探していると、見慣れた姿が歩いているのを見つけた。
「あれ?メイじゃないか?」
「こんなとこで何をしてるの?」
「…あ、ヤマトになのは?」
ゆっくり、振り向くメイ。駆け寄ってくるなのはとヤマト。

「この子と遊んでいたの。病室に行ったらいなくなって、探したら見つけてからこれなの」
なのはとヤマトを見たガルマは警戒するようにメイの背中に隠れる。
「ママ、この人達だれ?」
「「ママ!?」」
それを聞いてびっくりするなのはとヤマト。無論自分たちもママやパパと呼ばれてびっくりした時もあったが、しかも今回は目の前だ。

「この人達はねママの仲間なの。ガルマの伯父さんと友達なの」
「伯父さん!?」
淡々と話すメイの発言に心の中にグサリと胸を刺さるヤマト。
「ちょっとこい、メイ。話たいことがある。」
ヤマトはなのはとガルマを残して彼女の耳に聞こえないところまで移動する。
「伯父さんっていくらなんでも失礼でしょ。俺達はまだ21だぜ。そういうメイも叔母さんだ。俺となのははヴィヴィオという子を持っているからな」
「叔母さんってヒドイ!」
ヤマトは立場上、伯父と叔母も変わらないと言う。
「待て、後で何がおごるから」

話は終わり、2人は元の場所へ戻った。
なのはが念話で
(ヤマトの気持ち、痛いほどわかるよ)
(ほっといてくれ…さっきの言葉でショックを受けた)
動揺を隠しきれなかったヤマト。
ヤマトはガルマの手に持っているものを見た。
「なぁ、メイ。ガルマの手に持っているものはなんだ?」
「1/60スケール 組み立て済みフリーダムガンダムだよ」
それを聞いたヤマトは自分がかつて乗った愛機を思い出す。
なのははヤマトのMS戦の観戦のことを思い出す。
これは病院の売店のおもちゃ売り場に売っていたらしく、ガルマが大変気に入ったらしい。
稼働場所、ハイマットフルバーストモード、ウイングが再現して、オリジナルと同じ動きができる。
「これって、結構大きいし重くない?」
なのはがメイに向かって苦笑して言うと
「そんなこともないよ、ガルマも気に入ったから。私もなのは見たいにママって呼ばれて良かった…」
想いに耽るメイ。
結婚していて、子を持つ高町夫妻には今は関係ないことだが、温かい目で見守ることにした。
(少しはサポートしてやろうじゃないの)
(にゃははは、だね~)
2人はお互いの顔を見合って苦笑いをし出した。

ヤマト車内
「この子、どうするんだ?隊舎で預けるのか?」
「メイと話してみたんだけど、その方がいいって。ヴィヴィオにも会わせたいしね~」
なのはとヤマトはガルマの住むところを検討した結果、隊舎の隊長陣ルームで預けることにした。
「ヴィヴィオも喜ぶだろうな。」
「多忙なヤマトとなのはと私に代わって、その間は愛菜さんが面倒みることになっているから」
「さて、明日から忙しくなるぞ」
ヤマト達は意気揚揚で治安維持局へ帰った。

治安維持局・ガーディアン部隊長室
「査察?でも、何でまた急に?」
フェイトは顔をしかめた。
はやては頷き、テーブルの上の紅茶を手に取る。
「うん、何か、近いうちに査察があるみたいなんよ…。
ただでさえうちらは突っ込みどころ満載の部隊やからな…。」
「それは……。そうだね…、今、人事移動なんかされたら致命的だよ?」
そうなんよ、とティーカップを置くはやて。
「ところで、これは査察対策とも関係があるんだけど…、そろそろ教えてくれないかな?治安維持部隊設立の…本当の理由…。」
今度はフェイトがカップを手に取る。
「そうやね…、ここらがえぇタイミングかなぁ?
それやったら、今日、聖王教会でカリムとクロノくんと会う予定やから、リング・ベルの関係者にも話そうか…。
治安維持部隊設立の本当の理由を…ヤマト君は知っているけど、敢えて話さない方がええと私が言うたんや、なのはちゃんとフェイトちゃん、メイちゃんは行った方がええな。」
はやての表情が真剣なものになる。
「うん、わかった。そろそろ、なのは達も戻ってる頃だよね?」
いそいそと空間モニターを展開し、なのはへと連絡を取るために回線を繋ぐ。
『いっちゃやぁだぁぁああ!!!ふぇぇぇぇぇぇ…!!』聞こえてきたのは、けたたましい泣き声と叫び声だった。

目が点になるはやてとフェイト。
モニターの向こうではメイの足にまとわりつき、泣き叫ぶガルマの姿と、そんな状況におろおろしているフォワードメンバーとなのはの姿があった。

「ガルマ~…落ち着け~…なっ?」
ランドが笑いかけながら手を伸ばすが、メイにしがみついたまま離れない。
「やだぁ~…行っちゃやだ~ぁ…、うわぁ~~ん…。」
泣き止まないガルマ。
妹を持っていたランド的には子供の扱いに自信があったのだが、まぁ面倒を見たのは彼の妹だけだ。
いろんなタイプの子供がいる。
だから仕方ないのは分かっているが、少しショック受け、ランドが沈んでいると、ヤマトが入ってきた。
「どうかしたのか?」
騒ぞうしい泣き声の中、表情ひとつ替えずヤマトはなのは達の元へやって来ると、途中に落ちているロボットを拾う。
「これから、フォワードメンバーを鍛えるために訓練の準備をしていたんだが」
すみません…と沈んだ表情で隅の方で小さくなっているマイト、マリア、ラント、クリス。
下を見ると、ガルマと目が合い、が微笑むと、ヤマトのズボンの裾を掴むガルマ。
「はい、。
これは、ガルマの落としたフリーダムだよな?おじさんが拾って治しておいたよ。」
両頬に涙の筋を残したままその人形を受けとるガルマ。
メイはポケットからハンカチを出すとガルマの目元を拭ってやる。
「ママ達は、これから大事な用事があるんだって…わかるよね?」
「…ぅん……」
「寂しいかもしれないけど…アイナさんやヴィヴィオと一緒にお留守番しようか?
ママ達が帰ってきて、ガルマがいい子にお留守番できたら、ママ達、きっと嬉しいと思うんだ。
ママ達が笑ってくれたら、ガルマも嬉しいでしょ?だから…ね?」
メイのスカートの裾から手を離すガルマ。
「うん…、いい子だ。」
「お前、いつの間にお話が上手くなったんだ」
メイはガルマをだっこする。
「それじゃあ、ママ達行ってくるから、アイナさん達の言うことを聞くのよ」
そんなメイを不思議そうに見つめるなのはとヤマト。
(メイ、変わったね)
(いつものメイじゃないな。一人前になってきている証拠なんだよ)
「俺は本当の理由を知っているけど、口に出さない。はやて達から聞いた方が早い。気を付けて」
「…行ってらっしゃい。」
メイに促され、メイと離れるのを惜しみながらもガルマは手を振りながら言った。

「ヤマトさん…年、いくつでしたっけ?」
マリアがガルマをあやすヤマトに聞く。
「年のこと?21だけど…?」
何やら隅の方に集まり、4人でひそひそ会話するフォワードメンバー。
「ヤマトさんて…子持ちですか?」
マリアがマイトに聞く。
「知るか!でも、可能性がないとは言い切れないけど…。」
「でも、何だか手慣れた感じなんですよね。」
クリスの言葉に、頷くランド。フォワードメンバーがヤマトの新たな一面を知った瞬間だった。

「正直に言おう。子持ちだ。でも養子の親だけどね。ヴィヴィオ、入っていいぞー」
『はーい、パパ』
部屋に入って来たのは高町夫妻の養子である高町ヴィヴィオ・8歳
「この子がなのはさんとヤマトさんの子ですか?」
マリアがヴィヴィオを見てヤマトに聞いた。
「だから聞いたろ?」
「こんにちは」
ヤマトは半分呆れ顔をして、ヴィヴィオはフォワードメンバーに挨拶をした。
「こんにちは…」
マイトは半分便乗であいさつに乗った。
「さあて、訓練の時間、20分前だ。各自、デバイスを持って訓練シミュレーション場に集合だ。4VS2の模擬戦だ」
「「「「ええ~」」」」
フォワードメンバーは嫌な顔をしてぶーぶー行った。
「え~は無しだ!なのは隊長から言われてな、君たちを強化するためだ。アイナさん、ヴィヴィオとガルマをお願いします」
「ええ、頑張ってらっしゃい」
「頑張ってね~パパ~」
手を振るアイナ、それをまねするガルマ、父を応援するヴィヴィオを見てヤマトは部屋を出て行った。

「ここがたった真相をね…直に彼女らにも解ってくるだろう。表の顔は遺失物捜索と犯罪取締りだが裏の顔は再び、時空管理局に迫る魔の手から守るために結成された部隊。まぁ、表も裏もやっているけどね」
ヤマトは1人、真相を言いながらシミュレーション場へ向かった。
今日の訓練はガーディアンのシグナムとヴィータも一緒だ。

ヘリ

これから、聖王教会へ向かう途中のなのは、フェイト、はやて、メイの四人。
「ごめんね、お騒がせして…。」
ばつの悪そうな顔のメイが、なのはとフェイトとはやてに言う。
「いえいえ、いいもん見せてもらいました。
…にしても、あの子はどうしよか?」
はやては少し考えるように腕を組む。
「なんなら教会で保護でもいいけど…。」
しかし、メイは首を振る。
「ううん…大丈夫…。帰ったら私がもう少し話してみて、何とかするよ。」
一旦言葉を切るメイ。
「今は…頼れる人がいなくて不安なだけだと思うから…。」
ヘリはプロペラの音を起て、聖王教会へと向かった。

シミュレーション場
「一同せいれーつ!」
ヤマトが号令を発するとフォワードメンバーは返事をしながら横一列に並ぶ。
そして敬礼もする。
「今日は模擬戦だ。ガーディアンからシグナム副隊長とヴィータが来ている。フォワードメンバー対ベルカの騎士でやらせていただきます。」
「模擬戦とはいえ、全力でやらせて頂く」
「おめーらの活躍を見せるためだ。ありがたく思え」
「はい!」
シグナムとヴィータはそれぞれ騎士甲冑を装着して、シグナムはレヴァンティン、ヴィータはグラーフアイゼンを構える。そしてフォワードメンバーは元気よく挨拶をする。

ヤマトは本局制服で戦闘データを採集する役だ。彼も後からフォワードメンバーとの模擬戦に1人で挑む。
治療役としてシャマルもいる。
「準備はよろしいか?怪我してもシャマル先生がいるので」
「気軽に言ってね」
シャマルは笑顔でいう。
ヤマトはフィールド設定で戦況を臨機応変にするために岩場フィールドに設定した。
岩場フィールド
地面がごつごつしていて、所々に岩や崖がある。陸戦型では少し苦戦する時もあり、空戦型は地形に影響しないで戦える。
岩柱に隠れて、敵を潜めたり、敵の攻撃を盾の代わりとして凌いだりできる。
「始め!」
戦いの笛が鳴り、戦いが始まった。

聖王教会
カリムの部屋をノックする音が響き、その部屋の主であるカリムは
「どうぞ」
と入ってくるように促した。
ドアが開かれ、入って来たのはカリムがよく知るはやてと、カリムにとって何回か対面しているなのはとフェイトとメイだ。ヤマトとはやてはしょっちゅう会っている
二人は部屋の中に入り、敬礼。
「高町なのは、三等空佐であります。」
「一条寺メイ二等空尉であります」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官であります。」
カリムは二人に挨拶する。
「ご無沙汰しています
こちらへどうぞ」
座るよう促された場所にはすでにクロノがいた。
顔見せ、そして挨拶もそこそこに本題へと入る、はやて、カリム、クロノ、なのは、フェイト、メイ。
今回この6人が、ここに集まったのは、ナンバーズたちとの遭遇、そして、治安維持部隊設立についての裏表、今後について話すためだ。

シミュレーション場にはフォワードメンバーが全員倒れていた。丁度模擬戦が終わっていた。
倒れているフォワードメンバーを見るヤマト、シグナム、ヴィータは落胆してしまった。
「すまない、ヤマト。やり過ぎた…」
「私もだ…」
「いいんですよ。あの子たちにも厳しい戦い方を教えた方が身のためですし」
ヤマトは戦闘データの収集を終了し、フィールドをゼロの設定に戻した。
グロッキーそして汚れがひどいフォワードメンバーを見たヤマトは溜め息を吐いた。
「なのはも結構、ハードな事するよな…俺は健康のことを考えて考慮しているのに…」
とりあえず、訓練を終わりにしてフォワードメンバーを帰した。
「何しようかな…なのは達は真相を聞くために聖王教会にいるし、モビルガジェットについて調べるとするか」
ヤマトはリング・ベル部隊長室へ向かった。

治安維持の表向きの設立はロストロギアの対策と犯罪撲滅、独立性の高い少数部隊の実験例とするためである。
尚、六課の後見人はカリム、クロノ、そしてフェイトとクロノの母親であるリンディの三人。
さらに、後ろ立てとして、彼の有名な三提督も治安に非公式ではあるが協力する約束をしているとのことで、新設部隊と言えど、これほどにバックアップされている部隊はそうそう存在しないだろう。
そしてここまでに後ろ立てがしっかりしているのにはカリムの能力と関係があった。

プロフェーティン・シュリフティ。
最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書き出した予言書の作成を可能とするカリムの魔法だ。
無論、レアスキルである。
ちなみに、年に一度しか予言書の作成はできない。
また、的中率はさほど高くもなければ低くもないもので、信憑性の度合いはわりとよく当たる占い程度、という。
信用するかは別とし、聖王教会はもちろん次元航行部隊のトップは情報の一つとして、この予言に目を通すらしい。
しかし、地上部隊は別だとか、なんでも、トップに位を構えるお方が、レアスキルなどが大嫌いだという。
そのお方、ミカエル・シュナイダー中将その人である。
しかし、なぜ、その予言書が治安維持部隊立に関係してくるのか、と言えば疑問だが、数年前から、ある事件についての予言が少しずつ書き出されているとのことだ。
『古い結晶と無限の欲望が集い、交わる地。
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る。
死者たちが踊り、中都大地の砲の塔はむなしく焼け落ち、それを先駆けに数多の海を守る法の船も焼け落ちる。』

つまりは、ロストロギアをきっかけに始まる管理局、地上本部の壊滅。
管理局システムの崩壊といったとこだろう。
設立の裏の理由はこの予言を懸念したためだった。
ヤマトは地上本部の壊滅の再発を予兆していた。彼のJS事件と同じ様に…

「…おじさん…ママ…帰ってこないの?」
不安気な面持ちで聞いてくるガルマにそんなことはないと首を振って答えるヤマト。
「きっともうすぐ帰ってくる。今日一日、ガルマ、いい子だったから…。そんなに心配しなくても大丈夫だ。ヴィヴィオも喜んでいたしな」
ヤマトはガルマを膝の上に乗せ、絵本を読んでやる。
ヴィヴィオに絵本を読み始めてから十分程たった頃だろうか。
ドアが開き、なのはとフェイトとメイが帰ってきた。
3人の帰宅の声に素早く反応したガルマはヤマトの膝を飛び下り、一目散にメイへと駆けていく。
メイに抱き抱えられ、目に涙をためたまま、力一杯メイにしがみつくガルマ。
フェイトはそんなガルマの頭を優しく撫でてヤマトに向き直り言った。
「ありがとう、ヤマト。ヴィヴィオは?」
「寝てるよ。その深刻そうな顔は騎士カリムから聞いたんだね。治安維持部隊の表裏と予言を。地上本部がまた壊滅に晒されると言われる予言を。」
「うん。皆、結構必死で聞いていた」
なのはが言うとフェイトも
「バーンハルトの地上本部襲撃になるかもしれないね」
「ガルマは私が守る」
メイはガルマを抱えながら自分の手でガルマを守りたいと誓う。ヤマトの顔も真剣だった。
ガルマはヴィヴィオの遺伝子で生まれてきた人造生命体。またヴィヴィオみたいに扱われるのでは?と思う四人。
「これが課題なんだよな。治安維持局も攻撃される可能性も高い。海上施設や聖王教会のナンバーズも守備隊として雇うけど」
ヤマトは頭を抱え込む難題を考えている。ナンバーズとは聖王教会や海上施設からもしもの時に許可を取っている。

「考えても何も始まらないよ?とりあえず寝よう」
なのはの提案で策はとりあえず明日に回して、一同は寝ることにした。

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