第22話【恐れる瞳】

Last-modified: 2009-04-05 (日) 11:37:05

別ルート

ヤマトはなのはと合流すべく玉座の間に向かっている途中。何者かに擦れ違った。
「やぁ、もう一人の俺」
「お前は!?」
ヤマトは驚愕に目を見開く。目の前にいる人物は、一条寺ヤマト、自分だった。ただ、唯一ちがうのは目。
彼は目の光を失っていた。
「そんなに驚くことはないんじゃないかな?俺はいつも君と一緒にいた。心の中で
これでもいつも一緒にいて戦い、笑い、喜び、悲しんだんだよ?」
「じゃあ、お前は…スカリエッティが俺のDNAなどで作られたレプリカか?それに相棒も」
「そう、俺は君、君は俺。これで納得した?」
ふと、真っ白な空間に映像が浮かんだ。
目の前にはヴィータの後ろ姿。ファーウェルがソード形態へと変化する。ヤマトの怒りが露にする。
「貴様か!?ヴィータをやったのは!?絶対に許さん、万死に値する!」
もう一人のヤマトが戦闘態勢に入ると彼が何もせずに倒れた。
「そ…んな…俺と同じ存在に…」と息絶える。
本物のヤマトは残像を発生させると同時に相手を油断して、目に見えぬ速さでもう一人の自分を斬り裂いた。
「負の感情がパワーの源だったらしいな。俺の心の闇は豆粒一つでしかない」
もう一人の自分をそのままにしてなのはのところ―向かうのだった。
「スカリエッティ、絶対に許さない」

ゆりかご、玉座の間。
そこにいるのはナンバーズ10、4のディエチとクアットロ。
そして、玉座に座り、繋がれるヴィヴィオ。
ディエチはキーパネルを操作する手を止めないまま口を開いた。
「ねぇ…クアットロ、正直な感想を言っていい?」
「ご自由にぃ~♪」
同様にクアットロ。
「この作戦…あまり気がすすまない…。」
「あらぁ?どうしてぇん?♪」
ディエチは手を止め、懸命に痛みに耐えるヴィヴィオに視線を移した。
「こんな小さな子供を使って、こんな大きな船を動かして…、そこまでしないと行けないことなのかな?
技術者の復讐とか…そんなのって…。」
「あぁ~、あれ!あんなのドクターの口先三寸、ただのでたらめよ?」
クアットロが言った。
「そうなの?」
顔をしかめるディエチ。そんなディエチとは違い、淡々と鍵盤状のキーパネルを叩きながら言う。
「ドクターの目標は初めっから一つだけ…、生命操作技術の完成…、そしてそれが出来る空間づくり…。
このゆりかごはその為の船であり、実現の為の力…。
まっ、今回の件で軽く何千人か死ぬでしょうけど、百年経たづに帳尻があうでしょう♪
ドクターの研究わぁん♪人々を救える力だもの♪」
陽気なクアットロとは違い、どこか思いつめた表情のディエチ。
「どうしたの?ディエチちゃん?お姉さまやドクターの言うこと、信じられなくなっちゃったぁ?」
「そうじゃないよ…。そうじゃないけど…、ただ、こんなに弱くてちっちゃい命がそれでも生きて動いてるのを見ちゃうと…、この子たちは別に関係ないんじゃないかって。」

「全てをみる前なら平然とトリガーを引けたのに…ねぇ?」
クアットロは呆れたように溜め息混じりにそう言った。
「ごめん、気の迷いだ…。忘れて。」
ディエチは空間モニターを閉じると、ヘビーバレンを背負う。
「命令された任務はちゃんとやる。」
黙って機嫌よく頷くクアットロ。
「そうしないと、地上にいるお姉たちも面倒なことになるしね。」
ディエチはクアットロの横を通りすぎて、命令された配置につきに行く。
(お馬鹿なディエチちゃん、あなたもセインやチンクみたいなつまんない子なのね。)
空間モニターを次々開くと、そこには各場所の戦闘状況が写っている、
(んふふふふ…。何にも出来ない無力な命なんてその編の蟲と同じじゃない。
いくら殺しても勝手に産まれてくる…それをもてあそんだり、じゅうりんしたり…。
籠に閉じ込めてもがいたりしているのを眺めるのってこぉ~んなに楽しいのにねぇ…。)
クアットロの高笑いが玉座に響いた。

「何の為に戦ってるのか、それだけでも教えて!」
「出ないと…僕たちは君達を本当に…。」
激化する戦闘。キャロとエリオ、二人の思いをのせた言の葉をルーテシアは受け取ろうとはしなかった。
「ドクターのお願いごとだから…。」
周囲のインゼクトが輝きを帯、放たれる。
キャロも反撃防御。二人の攻撃が交錯し、フリード、ガジェットからキャロとルーテシアはとある建造物の屋上へと降り立つ。
「ドクターは私の探し物…レリックの11番を探す手伝いをしてくれる…。
だからドクターのお願いを聞いてあげる…。」
「そんな、そんなことの為に…。」
ルーテシアの戦う理由を聞き、キャロ。
失言だった。
「そんなこと…」
再び輝きを増すインゼクトたち、キャロは障壁を展開して放たれる光弾を防ごうとするが、叶わず、障壁が砕け、爆煙がキャロをつつむ。
「あなたにとってはそんなことでも、私にとっては大事なこと…。」
「違う違う…、探し物のことじゃなくて…。」
「ゼストももうすぐいなくなっちゃう…。アギトもきっとどこかへ行っちゃう。」
キャロの言葉を無視してルーテシアは続ける。
「でもこのお祭りが終われば、ドクターやウーノたちとみんなでレリックの十一番を探してくれる…。
そしたら母さんが帰ってくる。そしたら私は不幸じゃなくなるかもしれない。」
ルーテシアは悲しげにそう呟いた。

スカリエッティ、アジト
入り乱れる金、紫のニ色の光。
「はぁぁあぁ!!」
フェイトが気合いとともにトーレに一閃を見舞うも、かわされてしまう。
ちなみに、千歳は下から二人が戦う様子を眺めている。
戦闘に参加しない理由はトーレとセッテに必要ないと言われたからである。
二人が戦うというのだから、千歳はわざわざ我をはってでも戦おうとしなかった。
そしてその結果、セッテはプラズマランサーとの連携により敢えなく撃墜。
バインドで縛り上げられている。
そして、フェイトの設置したバインドにかかったトーレに放たれるトライデントスマッシャーが、トーレの意識を刈り取った。
千歳は溜め息を吐き、肩で息をするフェイトへと一歩近付く。
フェイトは自分の周囲にプラズマランサーを待機させ、片膝ついたままラ千歳を警戒。
(AMFが重い…二人は倒した。でも…あと一人いる。
早く先に進まなきゃ行けないのに…。だけど…ソニックもライオットもまだ使えない。
あれを使ったら…もうあとがなくなる。スカリエッティまでたどり着けなくなったら最悪だし…。
逮捕できても…他の皆の援護や救援に行けなくなる…。)
不意に、空間モニターが開いた。
『やぁ、ご機嫌よ、フェイト・テスタロッサ執務官。』
「スカリエッティ…。」
『我々の楽しい祭の序章は今やクライマックスだ。』

「何が…何が楽しい祭だ!今も地上を混乱させている重犯罪者が!」
歯を悔い縛り、喉の奥底から絞り出すように荒い声をあげるフェイト。
『重犯罪?人造魔導士や戦闘機人計画のことかい?
それとも私がその根幹を設計し、君の母君、プレシア・テスタロッサが完成させたプロジェクトFのことかい?』
「全部だ…。」
『いつの世でも革新的な人間は虐げられるものでね…』
怒りを露にするフェイトと、相変わらずフェイトをおちょくるようなスカリエッティ。
「そんな傲慢で…人の命や運命をもてあそんで…」
バルディッシュを握る手に力が込められる。
『貴重な材料を破壊したり、必要ないのに殺したりはしてないさ…。尊い実験材料に変えあげたのさ、価値のない無駄な命をね。』
そのスカリエッティのセリフが引き金となり、フェイトの怒りと呼応して魔力が増大する。
大剣を振り上げた。
『ふむ、トーレ、セッテはやられてしまったか。ラウ、頼んだよ?』
「了解、レジェンド!」
フェイトを取り囲む灰色に輝く発射体つきの魔力弾から一斉に奔流が放たれた。

オットーを魔力ダメージでノックダウンさせ、バインドで縛りあげるメイ。
「結界は?」
ティアナが閉じ込められた緑色の結界が砕け散る。
「ライトニング5、一条寺メイ、ナンバーズ二名を確保。」
ロングアーチスタッフ、シャーリーに告げるメイ。
『丁度よかった、メイさん。今から援護に向かって欲しいの。』
「でも、ティアナが…。」
モニターが開かれる。
写っているのはシグナム、ゼスト、半蔵。
ニ対一だ。
『最初は、他に数名航空魔導士がいたんだけど、半蔵を押さえきれず撃墜されてしまって…。
今はリイン曹長とユニゾンしたシグナム副隊長が一人で二人を相手に頑張ってるけど。』
「(ティア!)」
メイは直ぐ様ティアナに念話を繋いだ。

ウェンディが連射するエリアルキャノンをティアナは避けては撃ち返しを繰り返す。
「(何よ?こんなときに…。)」
ウェンディの攻撃が止んだ。突如、ティアナを覆う影。

瞬時にバックステップし、魔法陣を展開。
「クロスファイアシュート!!」
空間に無数の魔力弾が生成され、着地したノーヴェ向かって一斉に放たれる。
だが、間に割って入ったウェンディに楯で防御されてしまう。
「(悪い、ティアナ、あなたの援護に行けそうにない。シグナム副隊長が…)」
メイからの念話。
「(まぁ、こっちは逃げ回りながら戦うわ。)」
柱の影に隠れ、呼吸を整える。
「あの野郎、ちょこまかと…。」
「(私は自分で何とかするから…、今日証明してやるわ、ランスターの弾丸は何だって貫けることを…。)」
「(悪いわ!)」
メイからの念話が切れると同時、ティアナはカートリッジを交換。
思考を巡らせる。
(スバルっぽい方が攻撃した際にできる隙をカバーしてるのがあの楯を持った方。
楯を持った方は中距離、遠距離の攻撃で私の足を止めに来てるから…厄介なのは楯を持った方ね。)
ティアナは幻術を使い、もう一人の自分を作り出す。
「さぁ、やるわよ。」
ティアナ自ら柱の影から飛び出した。
狙い撃つウェンディ、
(ここ!)
僅かばかり半身を捻ってエリアルキャノンを避け、着弾した瞬間にあたかも衝撃により幻術が破壊されたように、オプティックハイドで姿を消し、移動する。
同時、自分の幻術を操作、柱の陰から陰へと移動させた。

「「炎熱加速!火竜一閃!」」
「「炎熱消火!衝撃加速!」」
火竜一閃は相殺され、ゼスト&アギトから放たれた攻撃と同じくして動き出していた半蔵がシグナムに向け斬撃を繰り出そうとした刹那、

『シャイニングエッジ』
緋色の刃が半蔵を襲う。
ダブルオーで弾き飛ばし、ついでビームソードによる縦一閃をサーベルで防いだ。
「半蔵!!!」
鍔競り合いに押され半蔵が後退、二人して近くのビルへと突っ込んで行った。
「一条寺メイか、正直…助かった。」
額から頬を伝う血を拭うシグナム。
「はいです。」
リインも同様に返事をした。
「(旦那ぁ…。)」
「(心配するなアギト…まだ一対一ならば何とかなる。)」
幾度となく刃で打ち合い、火花を散らした。

ゆりかご内、玉座の間へ向かうなのは。途中に現れるガジェットの大群の攻撃を蹴散らして行く。
「あと少しで合流できる!」
同じく玉座の間へ向かうヤマト。途中にガジェットの大群を節約攻撃で蹴散らして向かう

玉座の間
『駄目だクアットロ、手がつけられない…。』
クアットロがキーパネルを操作していると、ディエチからの通信が入った。
「まっ、予想の範疇よ。あの人の終幕はここ…玉座の間だから…どこも思ったよりは持っているけど…、まっ時間の問題ね。
私たちはゆっくり…見ていればいいわ…。」
クアットロは醜悪に顔を歪めた。

「いきなりで驚いたよ…、だけど…、ヴィータ副隊長…死んじゃったね。」
2人だけのフィールド、ヤマトはもう一人の自分を押し倒したまま放心していた。
「そろそろ退いてもらおうか…。」
ドッ
「俺の攻撃で死んだはずだが」
ヤマトが見たのはまたもう一人の自分。
音と共に体に走る衝撃。
「さて、次はなのはさんだね…。でも、彼女は凄いね。俺は勝てるかな?」
もう一人のヤマトが口を歪にゆがめ、醜悪な笑みを浮かべる。
「黙れ!。なのはを侮辱するな!」
「いや、俺は勝てると思うね…、今までは君が俺を支配していたけど…。
今はドクターのおかげでもう一人の君を生みだしてくれたんだ。せっかく世界最高のコーディネイターにしてもらったんだ。
力は使わなきゃ損だろ?」
(フェイトのことを思い出す。プロジェクトFの遺産か!?)
ヤマトは首を振る。だが、もう一人のヤマトはさらに首を振る。
「力だけが全てじゃない、違うね…。力があれば何だってできる。
それは君が身を持って俺に証明してくれたじゃな…い…くわぁぁ」
「これ以上言ったらタダじゃおかない。てか死者に行っても意味ないか?」
ヤマトは相手が高笑いしている隙にもう一人の自分をソードで刺した。

うつ伏せに倒れているヴィータはその体勢のままグラーフアイゼンに修復をかけ、それを支えにしてゆっくりと起き上がった。
「…っつ。あの馬鹿……。駆動炉が終わったら…ぜってぇぶっ叩く…。
はぁっ…はぁっ…ッつぅ…。」
ヴィータはグラーフアイゼンを引きずりながら駆動炉へと向かい始めた。

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