第28話【騎士道精神それすなわち逆襲】

Last-modified: 2009-08-17 (月) 14:32:00

スカリエッティアジトにて、フェイトはトーレ、セッテ、千歳、スカリエッティを拘束し、今はアジトの自爆を阻止するために奮闘していた。
素早く空間パネルを走る指。

まだここには生きている人達がいるんだ。
それを見殺しには出来ない!

自爆解除に必死なフェイトは、天井に入った亀裂に気付いていなかった。

「フェイト執務官を助けに行かないと!」
アジトを中心として発生する地震。シャッハはセインを応援に駆け付けた局員に引き渡すと再びアジト内部に戻ろうとする。
「駄目だ、シャッハ。その傷では…僕が行く。」
「ですが…。」
そこへ飛んで来たのはメイだった。着地して、シャッハとアコース二人に詰め寄ると、
「フェイトは!フェイトはどこにいるの?」
ただならぬ様子で、息を乱しながら二人に聞いてくる。
戸惑う二人。
「早く!!」
メイの剣幕に気押され、アコースはデータを送った。駆け出し、再び飛行するメイは、カートリッジを数発消費してスピードをあげる。

「これで…。」
最後に一つ、キーを叩くと、地震が治まって行く。
「良かった。」
安堵したその瞬間、天井が砕け、緩んだ地盤のせいか土砂が降ってくる。
フェイトは目でそれを捉えるので精一杯で、動く事も出来ず、飲み込まれるのを待つだけだった。
衝撃に見舞われる体。しかし、どうやら土砂に飲み込まれたわけではないらしい。
ふわりと浮く体。
そして浮遊感は終りを告げ、苦しそうな呼吸音だけがフェイトの耳に飛込んでくる。
「ぜぇ…はぁ…ま、間に合った…。」
瞼を開くと、そこには桃色の髪、桃色の目のメイの姿。
「…メイ?」
フェイトはお姫様だっこされているのに気付き、恥ずかしくなって頬を染めた。

土砂で埋まった通路。
「…っなんでッ!こんなときに!!!」
何を急いでいるのかは分からないがとにかく。
「あの…メイ、降ろして…」
「………ごめん…。」
フェイトを降ろすと、メイはGNスナイパーライフルⅡを構えて、ドラグーン8機展開させて、カートリッジを消費。
『バーストシュート』

土砂を9の緋色の閃光が吹き飛ばす。
「フェイト…はぁ…はぁ…先に地上本部へ!…なのはたちが…はぁ…早く!!」
「そんなに急いで…一体何が?」
そこへ、シャーリーからの通信が入る。
『フェイト隊長!急いで!事情は私から説明します!メイさんはどう?すぐに行ける?』
「ちょっと休んだらすぐに行けるよ。」
呼吸を乱しながら天井を仰ぐメイ。ここまでの道中、飛翔魔法にカートリッジ上乗せでハイスピードで飛んできた。
『わかった。でも、なるべく早くね?カートリッジはこちらから転送します。
さぁ、フェイト隊長、早く。』
フェイトはアジト出口へ向かって駆け出した。
途中、シャッハとアコースにドクターとナンバーズをお願いし、力強く地を蹴り、飛翔した。

獣の咆哮が空高く轟くとフリードが失速。地上へと倒れた。
「フリード!!…」
歯を悔い縛り、目の前のレプリカヤマトを睨みつけるエリオ。
『ルフトメッサー』
ストラーダから放たれるかまいたち。レプリカヤマトがいる場所、蒼い光がまるでモニターを切ったかのように光が消え失せる。
『ソニック・ムーブ』
金色の光がある場所へと向かうと、レプリカヤマトの姿が現れた。ストラーダとレプリカファーウェルのサーベル二本がぶつかり合う。

同時、レプリカヤマトの背後に出来る魔力の道。
「うぁぁぁあああ!!!」
ケリュケイオンから供給されるエネルギーでレプリカヤマトを強引に弾き飛ばしたエリオ。
体が大きくのけぞったレプリカヤマトは、エリオの追撃を身をよじってかわす。
『ライフル&サーベルモード』
エリオに斬撃を見舞い、スバルの足元、マッハキャリバーに二発GNアームズにより強化された通常射撃を放つ。
スバルが回避の為バランスを崩した。
「スバルさん!!!」
気をとられたエリオ。刹那、両方ともレプリカファーウェルをサーベルに変える。
エリオの視界に写ったのは4つの蒼き閃光。
ストラーダは4つに砕け散った。

「まずは一人…。二人目!!」
消える蒼い光。空気が破裂したかのような甲高い破裂音。
突如、スバルの目の前に現れるレプリカヤマト。
「うぃッ!?」
一瞬驚くスバルだが、すぐにリボルバーナックルで応戦。
『GNシールド』
レプリカヤマトの腕から発生する波状障壁。その障壁内部に指を食い込ませるスバル。
「ッ!?」
「ディバイン…バスター!!!」
『ヴェスバー』
至近距離での魔力の爆発。
衝撃に吹き飛ばされてしまったスバルはウィングロードから落ちてしまう。
そして、レプリカヤマトはそれを見逃さない。
無防備になったスバルを確認するとマッハキャリバーを斬撃で切り裂いた。
レプリカヤマトの視界の端に見えるのヤマトのファーウェル・・ネオメガランチャーの銃口。
読んでいたかのごとく、レプリカヤマトは避けるとザフィーラの腹部におもいっきり蹴りを入れるが避けられる。
「そんな攻撃、読めている!!!」
空いている方の手でパンチを繰り出してくるヤマト。レプリカヤマトは後退してかわし直ぐ様レプリカファーウェルを前後で連結させる。

『GNダガーブーメラン』
「バカな半蔵君か!!」
バリアジャケットをパージさせたにも関わらず、向かってくる半蔵。
「だけじゃないよ!」
「こりゃ、オリジナルに劣るわ」
『『アクセルシューター』』
ブーメランをかわした直後、桜色と青色の魔力弾に囲まれてしまうレプリカヤマト。
だが、ヴォワチュールリュミエールによって加速したレプリカヤマトはそれを難無くかわす。
再び向かってくるザフィーラを連結砲撃で吹き飛ばすと、今度はなのはとヤマトに狙いを定めるレプリカヤマト。
その前に立ちはだかるのはシグナム。
「飛竜一閃!!」
放たれる刃の竜。ギリギリで避けたレプリカヤマトは一気に加速。放たれた刃を這うように飛翔し、斬撃。
だが、シグナムの張った障壁が攻撃を阻む。
『シュベルトゲーベル』
片方のレプリカファーウェルの刃が異様な輝きを放つ。
そして、その刃で突きを放つと、障壁を貫通して砕け散る。
とっさに鞘を生成し、鞘で攻撃を防いだが、
「残念だけど、俺は二刀流なんだ…クスッ。」
アギトがとっさに炎を形成、放とうとするも
「遅いよ!」
魔力刃をシグナムに叩き込み、落下するシグナムに向け、
『ヴェスバー』
魔力弾を放った。

「シグナム!!!」
はやてが叫ぶ。
「後四人だね…。」
「いいえ、あと六人だわ。」
声が響く。
シャマルとティアナだった。
「なのは隊長!」
シャマルがなのはを呼んだ。ティアナはキャロとともにボルテールの手の上に乗る。
「クロスファイヤーシュート!!」
『Boost Up Brret Power』
数多の魔力弾がレプリカヤマトを捕えようと襲うが当たらない。
避けられた。
『シールドスティンガー』
回避行動で硬直したレプリカヤマトをバインドが拘束し、半蔵が背後から羽交い締めにする。
「前にもあったな、こんなこと…」
『Exprosion, Count down start 10…9…』
「皆!距離をとれ!俺に近付くな!!!」
力の限り叫ぶ半蔵。周囲に聞こえたかは分からない。
「半蔵、まさか!?やめろ!」
これを使えば、確実にレプリカヤマトを魔力ダメージでノックダウン出来る。
「半蔵…。」
苦しそうなレプリカヤマトの顔。
「この手の動揺を誘う作戦は俺には通じん!」
半蔵の顔は無表情しかし、ここで失敗するわけには行かない。
「な゛~…て……ね…。」
バイドが砕け、レプリカヤマトの後頭部が半蔵の顔面に直撃。
「後部頭突きか」

ほどける腕、笑うレプリカヤマト。
不味い、半蔵を信じて皆が距離をとっている。
『ヴェスバー』
放たれる魔力弾。半蔵は発動予定の魔法の解除に追われ障壁を展開出来ないでいる。
『GNフィールド+』
半蔵を筒みこむ緑色の障壁。
漆黒のバリアジャケットに身を包み、長い金髪を揺らす少女は二刀の剣を構え、切っ先をレプリカヤマトへと向けた。

スカリエッティアジト。
「ちーちゃん…。」
目を開け、放心する千歳に話しかけるメイ。
自分のやって来た事を理解しているようで、顔に片手をやって、うなだれている。
「…メイ…なのか?これは…夢ではないんだな…。」
千歳は言う。
ただ、生命操作、自分を苦しめたはずの、誰よりも被害者の気持を知っているはずの自分が協力していたことが許せなかった。

「一緒に行こう、ちーちゃん!」
『GNブレイド』
発光を増すの長剣の魔力刃。千歳にかけられたバインドを破壊する。
「協力すれば、きっと罪だって軽くなるよ!」
「相手は…誰だ?」
「レプリカヤマトって人…ヤマトの偽物。スカリエッティがヤマトのデータで作られたヤマトと同じ人物」
頷く千歳。
「レプリカ?」
メイは立ち上がり、千歳に腕を差し出しながら言った。
「世界最高のコーディネイターだって利用されるときはされるし、負けるときは負けるし、失敗するときはする。
死ぬときは死ぬ。」
千歳はメイの手を取り立ち上がる。
「人の夢、人の未来、素晴らしい結果でも所詮は人はそう。ちーちゃんも私たちと見た目は変わらない。
まぁ、半蔵とちーちゃんの場合は妖怪だけど人化の術を使えば人間と同じ暮らしをしていける。それに半蔵とヤマトとちーちゃんは長年の付き合いだよ。」
(やっぱり、この世界に残る。ヤマトとなのはが約束してるんだから)
メイは決心した。ヤマトとなのはの約束の第一目撃者はメイであった。
「フッ、ありがとうメイ。メイの言葉のおかげで元気が出てきた」
「ちーちゃん…」
メイは少し涙目になった。
「大袈裟な…場所はどこだ?私もできる限りのことはやってみせる」
「そうこなくちゃ」
メイは笑みを浮かべると、局員達と入れ違いにアジトの外へでて、千歳とともに廃棄都市街へと向かった。

切断されたストラーダを握り締め、修復をかけるエリオ。
幸い、本体部分は損傷していなかった。
フリードの元へ向かうと、フリードが鳴いて羽をばたつかせる。どうやら乗れと言っているようだ。
エリオはフリードに跨ると飛翔させ、ボルテールの横へつける。

エリオもキャロも、今のレプリカのヤマトを見て悲しくなった。
機動六課で初出動したとき、ヤマトが言っていた言葉を思い出す。
『何かを守る為には、想いだけでも…力だけでも駄目なんだ。』
エリオはその言葉を胸に刻みつけた。守りたい、その想いだけがあっても空回りしてしまうだけ…。
だから守りたいものに見合うだけの力をつけようとおもった。
キャロはその言葉を胸に刻みつけた。自分が初めてフリードを制御したとき、力を制御出来たとき、
強大な力だけがあっても、その力が空回りして誰かを傷付けてしまうだけ…。
だから守るために見合う力をつけようと思った。
だから力に見合う守りたいものを見つけようと思った。
なのに、今目の前のレプリカヤマトは力を誇示しているだけだ。
だから悲しい、だから止めたい、止めてあげたい。エリオとキャロが今まさにフェイトへ攻撃を仕掛けようとしているレプリカヤマトに向け叫んだ。
「僕達に!」
「私達に!」
「「想いだけでも、力だけでもって教えてくれたのは本物のヤマトさんです!!!!」」

ヤマトはその言葉に希望が見えてきた。
そう、自分がエリオとキャロに言った言葉だ。
『GNハイパーソード』
ファーウェルを支えにして立ち上がるヤマト。
「みんなが…がんばってるのに…諦めちゃ…駄目なんだよな…なぁ相棒…。」
『Yes』

二刀流対二刀流、金と蒼の魔力光が飛び交う中、魔力を回復してもらったなのはとヤマトも戦線復帰。
フェイトを中心にレプリカヤマトを追い詰めようとするが、届かない。
「あと一歩なのに…。」
魔力的ではなく、体力、集中力的に限界が近付いている。
とにかく、動きが早すぎて、動きを止めるにはレプリカヤマトが攻撃を仕掛けてきた瞬間に鍔競り合いに持ち込むしかないのだが、フェイトではパワー不足。
半蔵ではスピード不足だ。エリオでは実力的に差が有りすぎる。
一方、なのはとはやてとヤマトが放つ牽制の射撃なんかも、弾速、誘導補正が足りない。
足りないものはスピードと連射、誘導に優れ、弾速の早い魔法だった。

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