第29話(最終回)【最後の勝利者】

Last-modified: 2009-03-20 (金) 10:50:07

『DRAGOON GN Arms Shift』
レプリカヤマトの周囲に形成される十のドラグーンから連続して放たれる奔流がフェイトと半蔵を翻弄する。
フェイトはソニックフォーム、一発でも当たるわけにはいかない。
その為、どうしても慎重になってしまう。そしてそれは、バリアジャケットをパージされてしまった半蔵も同様だった。
焦りと苛立ちが二人の顔に出る。
そして遠方に向け放たれるGNミサイルがなのはととヤマトとはやてを苦しめていた。
直径四十メートルにわたる空間爆撃。
迎撃で必死である。
そんな中、レプリカヤマトが動き出した。狙いは消耗している半蔵とフェイトだ。
再び蒼い光が消えたような錯覚を起こす。
振り上げられた魔力刃が回避に専念していたフェイトを襲う。
そんなフェイトをバインドで引っ張り回避させる半蔵。
レプリカヤマトがサーベルでの攻撃を空振り、硬直した刹那
『ハイパービームソード』
飛んできたのは超大型の魔力刃。レプリカヤマトはとっさに判断し、障壁を展開。
だが大きくバランスを崩す結果になってしまう。
『リプレクタービット&パーティクルキャノン Full Burst』
「ッ!?」
レプリカヤマトを九十の奔流が一斉に襲いかかる。障壁で防ぐも、途中で障壁が砕け、空中でバランスを崩し、廃ビルの中に突っ込み、再び、その姿を消した。
「「メイ!?千歳!?」」
半蔵とフェイトが名を呼ぶ。
するとはやてが半蔵、千歳を含む六課メンバー全員に念話で告げた。
「(皆、これだけの大人数やと戦闘しづらいから、私、はやてが指揮をとります!
まず協力してくれる半蔵さん、千歳さんありがとな。
じゃあ、時間もないし、作戦を説明するで?
一回しか説明する時間はないからな、よー聴いてや!
さぁ、これで終りにしよ!)」
はやての作戦説明が始まった。

「(レプリカヤマトはヤマト君と同じくスピード、パワー、連射連撃、何でもござれのオールラウンダーや。
そして特に、今現在手に終えんのはスピードや。
魔力ダメージのノックダウンを狙うから、このスピードを封じるのが一番の優先事項。
ええか、まず皆を攻撃班と防御班、牽制班、拘束班に分ける。
中には2班に配属される人もおるからな。
まずは拘束班、私となのは隊長とヤマト指揮官、キャロ。
次に牽制班、私となのは隊長とヤマト指揮官、千歳さん。
防御班は攻撃班のサポート、シャマルとザフィーラ、キャロとティアナで!
攻撃班、フェイト隊長、シグナム副隊長、半蔵さん、エリオ、そしてメイ…メイがおらんとこの作戦は成立せぇへん。)」

レプリカヤマトが姿を現し、再び空に上がったときには、3つのグループが出来ていた。
メイを先頭にフェイト、シグナム、半蔵、スバル、エリオ&フリード。
その後方にはティアナ、ボルテール&キャロ、シャマル、ザフィーラがいる。
更に後方には、なのは、はやて、ヤマト、千歳の姿。
レプリカヤマトはその陣形を見て笑った。
そう、フルバーストの射線軸に皆集まっているからだ。
レプリカヤマトの両肩、周辺、腹部、銃口、腰部砲口の前に展開される15の魔法陣。
一斉に放たれ、空間を蒼天に染めあげる閃光。
シャマルが声を張り上げ、クラールヴィントをレプリカヤマトに向けかざす。
同時、キャロのケリュケイオンからクラールヴィントに供給される魔力。
15の障壁がフルバーストを防ぐ。目を見開くレプリカヤマト。
ファフニールから弾けとぶ六発の薬莢。展開され、翼の間から漏れ出す淡い、紫色の鮮やかな光が蒼天を染めあげる。

弾ける空気、レプリカヤマトはフルバーストを中断。
メイを迎え撃つため、同様に空気を弾いた。

あらん限りに声を張り上げ、メイはハイパービームソードを振るう。
幾度か刃を交えては交差を繰り返し、遂にレプリカヤマトを捕まえ、鍔競り合いにもちこんだ。
メイが声を張り上げ、それを合図にフェイトが動き出す。
レプリカヤマトはまずいと判断し、メイに力負けすることで自ら鍔競り合いをやめ、距離をとろうと移動を始めようとする。
しかし、発射体付きの紫色の魔力弾と、桜色の魔力弾と青色の魔力弾がレプリカヤマトの逃走を妨害。
リフレクタービットの奔流とアクセルシューターとドラグーンに驚き、一瞬動きを止めたレプリカヤマトに突き刺さるはやてのブラッディダガー。
シールドで防いだ。
爆発。
レプリカヤマトは直ぐ様別のルートを探す。しかし、気合いの篭ったフェイトの連結ライオットザンバー一閃が余裕を与えない。
ならばと上昇を選ぶレプリカヤマト。
だが、太陽を背に巨大化する影が放つ一閃を受ける事になる。
シグナムだ。
右手のレプリカファーウェルに力を込め弾き飛ばし、左のライフルで奔流を放とうと狙いをつけるが、スバルがそれをさせなかった。
マッハキャリバーと両手のリボルバーナックルでクロスレンジを挑んでくる。
レプリカヤマトの表情に焦りの色が見え始める。
スバルの追撃から逃れるようにわざと失速したレプリカヤマトはフルバーストを撃とうと左右のレプリカファーウェルを構えた。
同じ人物が何人もいる異様な光景。構わずレプリカヤマトは撃った。
シグナムに当たりそうになったのをザフィーラが防ぎ、撃墜。
半蔵は盾で弾いた。二人は本物、他は?
背後に気配。
メイがビームソードを振り被っている。レプリカヤマトは上体を反らしてそれをかわすと今度は横からソードブーメランが飛んでくる。

半蔵のダブルオーライザーを使ったタックルを受けバランスを崩したところへ、エリオがストラーダを投げた。
左のレプリカファーウェルに命中。
破壊はできないが、それでも、レプリカヤマトが取り落としそうになり、隙が出来た。
「チッ!?」
半蔵を蹴り飛ばし、ついで攻撃してきたシグナムをヴェスバーで撃墜。
メイのハイメガキャノンを受けたところで異変が起こった。

キャロがケリュケイオンを掲げている。
両手、両足に巻き付くアルケミックチェーン。
ついでなのはがブラスタービットを飛ばし、バインドをかける。
レプリカヤマトが笑った。
出現するのは十のドラグーン。
バインドを砕かれるのはまずい。メイとフェイトが同時に名前を叫んだ。
レプリカヤマトのドラグーンを千歳のリフレクタービットが追い回す。
千歳の額に汗が浮かぶ。コントロールを失敗するわけにはいかない。
なのはのバインドが解けた。
アルケミックチェーンが一本撃ち砕かれた瞬間、なのはとヤマトの新たなバインドがかけられる。
レストリクトロック。
レプリカヤマトの足元から展開された桜色と青色の魔法陣がヤマトを絡めとり、その場に固定。
それを見たはやてが同時にフリーレンフェッセルンでレプリカヤマトを氷づけにした。
レプリカヤマトは完全にその動きを止めた。
「これで動けない筈だ…」

なのは、フェイト、はやてが魔法陣を展開する。
なのははブラスターシステム、ヤマトはトランザムシステムのファイナルリミットを解除する。
4つのブラスタービットと4つの大型ドラグーンがなのはとヤマトの周囲に停滞。巨大な桜色と青色の魔力の塊が五つ発生する。
一際大きいのはなのはとヤマト本人から直接放たれるものだ。
はやてはベルカ式の魔法陣を展開。魔法陣を三角にかたどる3つの円に純白の魔力の塊が集まる。
そしてフェイトは連結ライオットザンバーを天に掲げ、雷から力をもらうと構えた。
フリーレンフェッセルンが砕け、レストリクトロックを引き千切ったヤマトが魔法陣を展開する。
『GNアームズバスターシフトセットアップ、All Systems Green』
「スターライト――」
「ライオットザンバー――」
「ラグナロク――」
「セレニティー―――」
「「「ブレイカァァァ!!」」」
一斉に放たれる4色の全力全開の砲撃。
『HighMAT Full Burst All GN Arms Shift』
「負けてたまるかぁぁあ!!」
レプリカヤマトの咆哮とともに放たれる全力全開の攻撃。
激突し、廃棄都市街にそびえる高層ビルの上部を破壊して行く。

なのはとヤマトから放たれる計10本の奔流を両レプリカファーウェル、ヴェスバー、GNランチャーが受け、フェイト、はやてから放たれる奔流を残りの武装全てを受けるレプリカヤマト。
建造物を砕き、地を揺るがす衝撃。
「(こ、こんな…!?)」
「(武装で受け止めただと!?)」
4人相手にもち応えるレプリカヤマトを目の前に、なのはが焦る。
だが、レプリカヤマトも限界の筈なのだ。その証拠にレプリカファーウェルが悲鳴をあげている。
だが…、
「(押されてる…)」
「(こんな酷使をするからだ)」
フェイトとヤマトが言った。場に緊張が走る。これで討てなければ次はない。左のレプリカファーウェルが煙をあげ始めた。
右のレプリカファーウェルが爆発をおこし、はやてのラグナロクブレイカーが直撃。
レプリカヤマトから放たれる奔流が途絶えたと同時、全ての奔流がレプリカヤマトを直撃した。
轟音と共に爆発をおこし、盛大な爆煙が空に立ち上る。そして煙の中から自身の偽物の死体。
苦しい戦い、壮絶な戦いだったにも関わらず誰も歓声をあげなかった。
「レプリカでも正しくすればいい人間になれたのに…」
辛そうな表情のはやてを気遣い、なのはとフェイトが声をかけると、袖で目元を拭い、はやてが言った。
「機動六課任務終了や。半蔵くん、千歳さんは一時的に逮捕されるけど、勘弁な…。必ずはよう出してあげるからな。」
シャーリーが要請してくれたのだろう。ヘリが一機到着し、半蔵と千歳はヘリに乗って一足先に現場を後にした。
「主?」
「…はやてちゃん…?」
シグナムとシャマルがやって来る。
「なんや、みんな、そんな暗い顔せんと喜ばんと…任務は…」
ポロポロと溢れる涙。
「成功…はれ?何でやろ…涙が…とまらへん…。」
明るく振る舞うはやてだが、正直、シグナムもシャマルもなのはもフェイトもヤマトもメイもザフィーラも、はやての涙の理由は理解できる。
だから理由を聞くようなことはしない。ティアナたちも、そんな空気を読み取ったのか、何も言わず、アルトが迎えにきたヘリに乗り込んだ。
「はやて、帰ろうぜ?腹減ったよ。」
包帯だらけのヴィータが言った。
「うん、…そうやな。皆、ご苦労さま。」
その言葉をかわきりに、皆隊舎へと戻っていった。

ジェイル・スカリエッティ事件、通称JS事件は幕を閉じた。

逮捕されたスカリエッティと事件操作に協力の意思を見せなかった戦闘機人たちは、それぞれ別世界の機動拘置所。
罪を認め、操作に協力的な意思をみせた子たちはミッド海上の隔離施設へ。
事件当時、逃走したナンバーズ4のクアットロは破壊されて発見され、ナンバーズの回収は全機完了。
ライトニング隊とメイが保護した四人、ルーテシア、アギト、半蔵、千歳も自分達で決めてそこにいる。
この四人は、精神、記憶操作を受け身心喪失常態だったそうで、すぐに出られるそうだ。
ミッド地上は平穏を取り戻し、機動六課のオフィスも修理完了。

ヴィヴィオも一時検査と保護から帰ってきてママとハパと一緒に平和な暮らしだ。
なのはとヤマトは大変な後遺症を持つようになったが本人たちは平気だ。
ところで、機動六課の試験運用期間は一年間。春が来たら私達は卒業になります。

0076年 4月28日
機動六課隊舎。
「長いようで短かった一年間…、本日をもって機動六課は任務を終えて解散となります。
皆と一緒に働けて、戦えて、心強く嬉しかったです。次の部隊でも、どうか皆、元気に…がんばって。」
はやては挨拶を終え、拍手を浴びて台から降りた。
ざわめきたつ廊下をメイ、ティアナ、スバル、エリオは進路の話をしながら歩く。
「何か、わりとあっさり終わったわね…。」
ティアナが言った。頷く一同。スバルを除いた四人は二次会の話なんかで盛り上がっているのだが、スバルだけはなんだか神妙な顔で考え事をしていた。
元気もない。
元気がないのは恐らくはなのはと離れ、更にはティアナとも離れてしまうからである。
「あ、皆、ちょっと!」
聞きなれた声が五人を呼び止めた。
振り向くと、そこにはなのはとギンガがが立っていた。
なのはに呼び出され、案内された場所につくと、フェイト、はやて、、ヤマト、ヴィータ、シグナム、ヴィヴィオもいる。
辺り一面桜が咲き乱れ、風で花びらが舞う中を、なのはについて歩く五人。
「桜だ…。」
メイが呟くと
「そう、なのはやはやての世界、ヤマトやメイたちの元の世界ではお別れと始まりの時につきものの花なんだ。」
フェイトがにっこり笑って言った。

「おし、フォワード一同、整列!!」
ヴィータの指示に従い、五人は整列した。

「さて、まずは、五人とも、訓練も任務もお疲れ様でした。」
なのはが五人を労い
「この一年間、私はあんまり誉めたことなかったが…お前ら…まぁ随分強くなった。」
ヴィータはよく成長したと誉める。
「つらい訓練、きつい状況、困難な任務…だけど、一生懸命がんばって、負けずに全部クリアしてくれた。
皆、ホントに強くなった…。五人とも、もう立派なストライカーだよ。」
泣き出すスバル、ティアナ、キャロ、エリオ。メイは泣くというよりは気が楽になったようで笑顔を浮かばせている。
「あぁ、もう、泣くな馬鹿たれどもが…。」
ヴィータが目に涙を浮かべて言う。
「さぁ、折角の卒業、せっかくの桜吹雪、湿っぽいのはなしにしよう!」
なのはは目元の涙を拭う。
「悔いのない思い出を作ろうじゃないか!!」
とヤマトが言う
すると、シグナムが一歩前に出た。
「あぁ!!」
と、何だか凄いはりきりよう。フェイトの頭に?が浮かぶ。
「自分の相棒、連れてきてるだろうな?」
ヴィータはグラーフアイゼンを取りだした。
呆気にとられた表情の五人と、置いてけぼりのフェイトはオロオロと説明を求めている。
「丁度いいじゃないですか?ヤマト、私と戦う?」
メイはインフィニティモードの騎士甲冑を装着し、やる気満々でヤマトに切っ先を向けた。
「メイの指名は俺かよ!?MS戦で決着できなかった分、ここで決着をつける!」
「お前は聞いてなかったのか?」
シグナムが状況の飲み込めないフェイトに言った。
「えっ?」
「全力全快、手加減なし!機動六課で最後の模擬戦!」
スバルたちも、記念にとばかりに準備を開始する。
「ぜ、全力全開って聞いてませんよ?」
「やらせてやれ、これも思い出だ。」
フェイトに笑いながらシグナムが言う。
「あ~、もう、ヴィータ、なのは!」
食い下がるフェイト…しかし、固いこと言うな、や、心配ないない、皆強いんだから!
なんて言葉で流され、渋々、参加するフェイトだった。
「メイ!死ぬ覚悟で行くぞ」
「ええぇぇ!!」
ヤマトが冗談ながら言った。

はやてとギンガによって戦いの火蓋が切って落とされた。
桜吹雪が何処までも続く蒼天へと流れ、渦を巻き、散ってゆく。
終わりと始まり、両方を祝福するように、澄んだ青空が広がっていた。
そして戦闘者全員のバリアジャケットと騎士甲冑がボロボロになるまで続け、最後には笑い合ってボロボロ状態での集合記念写真。
「きっとみんなと会えるだろう。なのは」
「きっとみんなと会えるよ。ヤマト」

(完)

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