-序章-

Last-modified: 2014-12-11 (木) 00:46:09
 
 

新光暦238年。ヒューマン・ニューマン・キャスト・デューマン[注 3]の4種族により構成された惑星間旅行船団『オラクル』の活動範囲は数多くの銀河に渡っていた。
新たに発見された惑星には調査隊として編成された『アークス』が降下し、そこで調査と交流を行いそして次の惑星に渡り、調査と交流を繰り返す。
アークスはやがて、個人ではなく団体で行動するようになっていった。
彼らは通称"チーム"を組んで、調査を続行。 この物語はそのチームのなかの一つ、"EQUES"の軌跡を辿る。
彼らは一体何と出会い、何と戦い、そして何を知るのか。
今、大きな物語が幕を開けた。

 
 
 
 
 
-第1話-

<アークスシップ"フェオ"内、"EQUES"チームルーム>
「EQUESのみんなーっ! 集まれーっ! 」
通信端末をチーム全員に繋げた状態で、紫のポニーテールを揺らす女性は受話器に大声を発する。 彼女の名はブルーベリー。 アークスチーム"EQUES"のリーダーを務めている女性だ。
『ちょっと! いきなり大きな声出さないでよ! びっくりするじゃん! 』
「あはは、ごめんごめんルーフェ。まあ集まってよ、あたしも暇なんだー」
『アンタのそういうとこにはほんと苦労させられるわ。少し待って』
「あいよー」
"ルーフェ"、と呼ばれた女性は渋々チームルームにやって来る。 翡翠色のロングヘアーを携え、ブルーベリーとの距離を詰めた。
「感謝しなさいよ、全く。それで、どうしたの? 」
「いやぁ、あたしも暇だったしさー。みんなを集めて任務をこなそうかと思ったちゃけ」
「はぁ、そんな事だろうと思った。他のみんなはどこ? 」
「葵とセリーネとユーリィは任務中。グラハムは軍の方に呼び出されてて、あとリンシャンが来るよ。返信が来たのはこの子たちくらいかなぁ」
「ん、了解。それまでルームでお茶してましょ」
「元々それが目的なのだー」
ため息を吐きつつ、二人はチームルームに備え付けてあるドリンクバーで紅茶とジュースをコップに注ぐ。
『おう、今終わったぜ』
「お疲れ様、葵。チームルームで待ってるよー」
『我の分も残しているのだろうな? 』
「うんうん、分かってるって。早くしないとなくなっちゃうずら~」
『まあ、残しておかなかったらどうなるか分かってると思うけどね? うふふ』
「大丈夫よ、私がそうはさせないわ」
『ひっ! セリーネが怖い……』
通信端末には葵とユーリィとセリーネの三人の顔が映し出された。 元気そうな三人の様子を見て彼女は自然と笑顔になる。
「呑気なもんねぇ、任務に行ってたっていうのに」
「まあまあ、みんな無事なのが一番さ」
「それに越したことはないけど……」
「-待たせたの、お主たち-」
続いてやってきたのは全身を青い巫女服で身を包み、ロッドを背負った猫耳の少女だった。
「お、リンシャンちゃん! やっと来たね~! 」
「うふふ、こんにちは 」
「えへへ、抱き心地最高~」
「もう、わたしはぬいぐるみではありませんよ? 」
必死の抵抗も虚しく、リンシャンはブルーベリーを引きずりながらソファへと座る。 二人の様子を見てルーフェは肩を竦めながら笑った。 その瞬間。

 

『アークス各員へ連絡。現在新人アークスの訓練場所、惑星ナベリウスにダーカーが襲来。手の空いている者は至急現場に急行せよ。繰り返す、新人アークス訓練場所にダーカーが襲来』

 

「おおっと!? 」
「緊急連絡のようね。3人とも、聞いた? 」
『あぁ、今俺達のところにも連絡が来た。先に行ってるぜ』
「お願い。私たちも行くわよ」
「死にたいダーカーはどこかしら~ 」
「いざ、いかざ! 」
三人は各々の武器を装備し、転送装置へ向かう。 間もなく彼女らは、惑星ナベリウスへと降り立った。

 
 
 
 
 

<惑星ナベリウス・森林エリア>
「はぁ……はぁ……! 死んじまった……! 仲間だったのに……! 」
「アフィン! あの人は助けられなかった! 今は逃げることを考えよう! 」
「で、でもよぉ……! 」
「そんな事言ってたら俺達まで死んじまうぞ! 」
同刻、開けた道を全速力で走り抜ける男性アークスが二人。 彼らは新人で訓練の為にここへ来ていたのだが、ダーカーが襲来した為に仲間が死んでしまった光景を目の当たりにしたのだった。
「くそっ! まだ追ってきやがる! アフィン! お前だけでも逃げろ! 」
「何言ってんだカイト! お前まで見殺しにするつもりはねえ! 」
いよいよ追い詰められ、二人は自棄気味にソードとライフルを取り出す。
「俺達だってアークスなんだ! やってやるぞ! このクソッタレ! 」
「-よく言った、それでこそアークスだよ! -」
ふとカイトは上空を見上げた。 刀を構えた女性がダーカー目掛けて剣撃を飛ばす光景が見えたかと思うと、既にダーカーは真っ二つになっている。 周囲にいたダーカー"ダガン"はその様子に慄いたのか、少しだけ動きを止めた。
「どこ見てんのよ、阿呆」
「貫いて、グランツ」
ルーフェの精密射撃によりダガンの四肢は撃ち抜かれ、リンシャンのテクニックにより四散する。 華麗にナベリウスへと降り立った三人は、背後にいるカイトとアフィンへと視線を向けた。
「すっ……すっげぇ……」
「これが……ベテランか……」
「あ、ちょっと君たち」
「は、はい! 」
「この辺でまだ生き残ってる子はいる? 救難信号を受けて来たんだけど」
「今、座標を送信しました。俺達が見えた範囲ではここら辺だと思います」
「了解。テレパイブを出したから先に報告を済ませておきなさい。私たちに後は任せて」
「あ、ありがとうございます! 」
そう言うとアフィンは転送装置の中へ駆け込んで行く。 しかし、カイトはその場で立ち尽くしたままであった。
「……俺も行かせてください、お願いします。足手まといにはなりません」
「な、何言ってんだよカイト! せっかく転送装置を置いてくれたのに……! 」
「どう思う? リンシャン」
「そうですね~、わたしは別にいいですよぉ」
「よし、君! 名前は? 」
「カイトです」
ブルーベリーは彼に歩み寄り、肩を掴む。
「カイト君、今から私たちは要救助者の救護へ向かうの。君には該当した人物の保護をお願いするよ」
「えぇい! こうなったらヤケだ! 俺はアフィンです! なんでもやります、一緒に連れて行ってください! 」
「よしきた! 君は保護するカイト君の援護をお願い。ルーフェ、文句なしよ? 」
「分かってるわ。アンタの無茶には散々付き合わされてるしね」
「うふふ、おふたりとも仲が良くて憧れちゃいます~」
ルーフェはタブレットに地図を表示させ、カイトの送った座標を元に目印を付けた。 次に彼女はその地図をある人物に贈る。
「グラハム、今どこにいる? 」
『現在惑星ナベリウスの森林エリアの上空だ。戦闘機に搭乗している』
「上出来ね。アンタに要救助者の座標を送ったわ。あたし達は北の方角に進むから、グラハムは反対の方向に向かって。いいわね? 」
『私とて人の子だ。最優先すべきものぐらい分かるさ』
「はいはい。じゃあ、また後で」
『敢えて言おう、死ぬなよ』
"EQUES"のメンバーであり、戦闘機のパイロットでもあるグラハムとの通信を切った。 あの戦闘機には他のメンバーも乗っていることだろう。
「さて、行くわよ。アンタたち、せいぜい死なないようにね」
「今のはルーフェ語で"死なないで"って意味だから、あんまり気にしない方がいいよ」
「うっさい! 早くしないと置いてくわよ! 」
「ご、ごめんってルーフェ」 アフィン、カイトを含めた5人は、早速作業に取り掛かる事にした。

 
 
 
 
 

<惑星ナベリウス・森林エリア2>
 グラハムを乗せた戦闘機は、ルーフェの言われた通りに南の方向へ進んでいる。 彼の他にシキジという銀髪の男性とノエリィという黒いポニーテールにティアラを携えた美しい女性、それに青い肌が特徴的なキャストの女性アダムスが乗っていた。
「グラハム、本当にこっちであってるのか? あたし心配になってきたよ」
「ルーフェの座標を元に着陸した。問題ない」
「まあ、もし間違ってたらお姉さんが許さないけど~♪ 」
「ふっ、怖い顔だ」
戦闘機のハッチを開け、彼らは地面に降り立つ。
「……早速お出迎えのようだな」
「そのようだ。私とシキジで前線をカバーする。二人は……そういえば前線職だったな」
「あたしにも戦わせてよ? ダカンなんて可愛くてしょうがないんだから」
「アダムスちゃん怖~い。私間違えてテクニック撃っちゃいそう」
各々の武器を展開し、4人はダーカーと対峙した。 小型の敵から大型まで揃い踏みである。
「先行する、遅れるな! 」
シキジの一声で彼らは走り出し、ダーカーの群れへと飛び込む。
「せいッ!! 」
気合いの声と共にディカーダの腹部を殴り、よろめいた拍子に足を掴んで地面に叩きつける。 その後足で身体を固定しつつ、ダーカーコア目掛けてナックルを振り降ろした。
「シキジぃっ! 背後に気をつけなぁっ! 」
「むうっ」
シキジの背後に接近していたクラ―ダをワイヤードランスで縛り上げると、そのまま自分の方へ引き寄せるアダムス。 彼女はそれを引き寄せた反動で横に回転し、周囲のダーカーを巻き込む。
「あーらよっ、とぉっ! 」
最後に縛っていたワイヤーの力を強め、クラ―ダはバラバラになった。
「今だノエリィ! やっちまえ! 」
「言われなくても、ね」
怯んだダーカーの群れにノエリィが笑みを崩さず炎のテクニックを撃ち込む。爆発に耐え切れる者もいれば、そのまま焼失する者もいた。 だが、その残ったダーカーを易々と生きて帰す彼女ではない。
「よく生き残りました。だけど……」
手にしたウォンドが霞む勢いでダカンの頭部に叩き込んだ。 あっさりと頭部は砕け散り、彼女はため息を吐く。
「なぁんだ。つまらないわね」
その一方でグラハムが大型のダーカーであるエル・アーダと空中戦を繰り広げていた。迫り来る爪を手にしたツインダガーで凌ぐと、彼は反撃に蹴りをお見舞いする。
「身持ちが固いな! ダーカー! 」
蹴りも爪で防がれると、グラハムはニヤリと笑った。 防がれた拍子に空中で一回転すると、彼は両手に力を込める。
「人呼んで、グラハムスペシャルッ!! 」
重なった剣撃を連続で放つと、エル・アーダは瞬く間に崩れ落ち、身体を痙攣させながら絶命していった。
「おいおい、まだいるのかい? あたしは構わないんだけどねぇ」
「殺し甲斐のある連中だこと。消し炭にする? 氷漬け? 感電死? どれがいいかしら」
「全く、恐ろしい女性陣だ。ひとたまりもないな」
「同感だ。だが、これほど心強い味方はいない」
依然としてダーカーの数は減らない。 不敵な笑みを崩さずに彼らは戦い続けるが、戦闘に熱中していたグラハムの背後にフレディカーダの鎌が襲いかかる。
「グラハムッ! 後ろだ! 」
「なんとっ!? 」
「……ちぃっ! 」
彼は目を閉じる。 しかし痛みは襲わず、グラハムはおそるおそる目を開けた。
「我が来たからには、安心するといい。……ふっ、決まった」
「よう、待たせちまったな」
「ごめんなさいね、けどもう大丈夫」
ユーリィの刀がフレディカーダのコアを貫いており、一刀の元斬り捨てる。 それに乗じたように葵が他のダーカーをソードで叩き斬った後、セリーネが闇のテクニックで追撃を加えた。
「待ちかねたぞ、ユーリィ! 」
「その言葉を待っていた。私に掛かれば彼奴らなど灰塵に帰す」
「サンキュー、助かったぜ葵。お前に助けられちまうとはな」
「へへっ、姐さんも無事で良かったっすよ」
「ありがとうね、セリーネ。おかげで助かったわ」
「気にしないで。シキジも無事で良かった」
「うむ。今頃助けが来なければやられていたかもしれん」
葵達を含めた7人は、まだ残っていたダーカーに視線を向けた。 その場にいた全員が不敵に笑い、武器を構える。
「じゃあ……行くとすっかぁッ!! 」葵を筆頭に、ダーカーの群れへと全員が突き進んでいった。