原理の考察

Last-modified: 2013-01-24 (木) 20:08:00

まず風車の特性を理解しましょう

風車の理論性能図

三菱重工のサイトから引用


静圧
一般的にいう圧力のこと。
速度圧
気流の(単位体積当たり)運動エネルギーで、動圧ともいう。
全圧
静圧と速度圧の和。気流の(単位体積当たり)総エネルギーになる。

上図からわかるように、風車は流入した気流からエネルギーを奪い、その結果エネルギーの低下した気流が流出するわけです。

つまり

「風車で発電すれば、その分の負荷は必ず上流の送風元にかかる」という類の説を唱える人は、風車の特性を誤解しています。
恐らく、シリンダー内の気体をピストンで押して力を伝達するようなイメージで捉えているために、そう誤解してしまうのでしょう。

冒頭で説明した通り、風の吹いている場所に風車を置けば、風車のない場合と比べ下流側で風が弱まります。
このように、風車が気流のエネルギーを奪った影響は下流側に現れるわけです。

一方、上流側に与える影響については、風車近傍では静圧が上昇します。
そのため、排気口と風車が密着ないし接近している場合は、その静圧上昇によって排気の排出が阻害されてしまいます。

しかし、風車から離れるに従い静圧は大気圧に収束していくので、排気口と風車を離せば排気の排出はほぼ阻害されなくなります。

なお、風車の下流側では風速が低下しますが、その分気流の断面積が広がり風量は保たれるため、排気の拡散が阻害されることもありません。

「風車回せるぐらいならファンの出力落とせ」は本末転倒

表題の「」内のような意見も少なくありませんでした。
しかし、換気のために必要な風量があるわけですから、それを無視して「出力落とせ」というのは本末転倒です。

換気のために一定風量の気流は必要ですが、排気口から出た後も外で勢いよく吹いたままではエネルギーをムダに垂れ流しているわけで、そこでエネルギーを回収するのは合理的と言えます。

もっとも

実用的な側面から考えれば、気流の風速が風車のカットイン風速以上でなければ発電できませんし、またカットイン風速をぎりぎり上回る程度でも微々たる発電量しか得られません。

つまり、一般家庭などの換気扇程度ではほとんどエネルギー回収は期待できず、強い排気が発生する工場や大きな施設などに向いていると言えます。