34-528

Last-modified: 2014-01-24 (金) 20:56:38

あなたが僕で私があなたで エレブ動乱?

 

昨日は何事もなかったはずだ。
学校へ赴き、授業を受けて、帰ったら家族とひとときを過ごし、
日常となった騒動を仲裁しつつ体を痛める。そういつも通りの一日だ。
決して変な薬を飲んだり、どこかの女神に玩ばれてもいない。
現実逃避しようとする思考をいつもの胃痛が現実へと引き戻す。

「あぁ…体が変わっても胃痛って続くんだな……」

―4月某日 兄弟家 リンディスの部屋―

とりあえず、状況を確認しておこう。僕の名前はエリウッド、エレブ校に通っている。
得意な教科は理系全般、苦手な教科は体育系。
剣技は苦手ではないのだがあまり体格がよいほうではないので子供のころは女の子みたいとからかわれたこともあった。
だが、僕は男だ。しかし今僕の体は―――
「緑色の髪、僕の体よりも細い腕そして……」
自身の胸元にゆっくりと目を向ける。華奢な体に不相応なもの。男には無く女にはあるもの。
「どうみてもリンディスだよな…やっぱり。」
とりあえず、僕の部屋へ行ってみよう。恐らく「僕ではない僕」が居るはずだ。

 

あなたが僕で私があなたで アイク「ん?ここどこだ?」

 

―エリウッドの部屋―
リンの部屋と比べて殺風景な自室に入る。こうして見るとまるで病室だな…、今度観葉植物でも置いてみようか…。
窓辺の一角に僕が居た。いや、僕の体をした誰かが居た。
「え?嘘!?私…!?」
「私って……リンディスかい?」
どうやら僕の体はリンと入れ替わっているらしい。まぁ相互関係的に当然か。
「どうなってるの?」
「僕にもわからない…朝起きたらこうだったし……。」
突如乱暴にドアが開けられる。早朝から見るには珍しいヘクトルが切迫した形相で入ってくる。
「丁度いい、ヘクトル、実は……」
「兄さん、姉さん……」
「にぃ……?」
「混乱するかもしれないけど…僕はマルスです。」
どうやら面倒なことになりそうだ。そんな思考と同時に本日二回目の胃痛が襲ってきた。

―リビング―

「じゃあ状況を確認しよう。」
マルス、リンディス、そして案の定マルスの体をしたヘクトルをリビングに集め現状を確認することにした。
「僕がリンに、ヘクトルがマルスにそれぞれ入れ替わっている…間違いないね?」
「あぁ、間違いないな」
珍しく眉間に皺を寄せたマルス…もといヘクトルが言う。
「だがこんなわかりやすい異変なら、戻す方法もわかりやすいですよ。」
「そうね…家でこんなピンポイントに異変を起こせるのは…」
「ユンヌ…だね?」
どう考えてもそれしかありえない。とりあえずミカヤ姉さんのところへ行こう。
あとは怒りとヘクトルの体のせいで一層血管が浮いているマルスと、本人ではとてもできないほど指を鳴らしているヘクトルがなんとかしてくれるだろう。
そう息巻いているところにアイク兄さんが降りてきた、ユンヌさんを引きずり出すには都合がいい。
「あ、丁度いいやアイク兄さんこれからミカヤ姉さんのところについて来て貰いたいんだけど…」
「………―――。」
「え?アイク兄さん?今なんて…?」
まさか…、いや、でもこの喋り方は…!?
「マーク(かい)(か)(なの)!?」

 

あなたが僕で私があなたで アイク「確か家で寝てたはずだが?」

 

―庭―

「居た、姉さーん!」
「あら、みんな?朝には珍しい組み合わせね?」
「げっ、もう来た。」
「今…『げっ』って言ったな?言ったよなマルス?」ニカッ
「えぇ言いましたとも兄さん…どうしてくれよう?」ニコッ
さっきの鬼のような形相とは打って変わって爽やかな笑顔を浮かべる二人。
とりあえず何かが壊れて胃痛が発生する前に穏便に済まそう。
「君がやったんだよね、これ?」
「さぁ~…ユンヌちゃんなんのことかわかんないなぁ~?」
「とぼけてないで早く元に戻しなさい!」
「? 話が見えないんだけど?」
「あとで説明します姉さん。それより早く戻してくれないか?でないと…」
「でないと?」
「ヘクトルとマルスが暴れて僕がリンディスの体で血を吐く。」
「ちょっと!体は私なんだからやめてよ!」
「あー…確かにそれは見たくないわねぇ…でももとに戻るには時間がかかるっていうかー…」
「どういうことだい?」
「あー…実は…」

 

あなたが僕で私があなたで アイク「調子が変だな?肉食えば戻るな」

 

ユンヌが言ったことはこうだ
心と体が元に戻るのは丁度一週間後。
烈火の剣に関わりのある家族が入れ替わり。入れ替わりは、
エリウッド⇔リン
ヘクトル⇔マルス
アイク⇔マーク
入れ替わりに気づかれると期間は延長。

「なんてことしてくれたんだ…」
「ちょっと待った!僕とアイク兄さんは何の関係も無いじゃないか!?」
「あらリンと某地区対抗格闘技大会経由で―」
「ちくしょぉおぁあ!あの大会僕にメリット何一つないじゃないかぁぁあ!!」
「まぁうまくいけば一週間で直るんだし?ユンヌちゃんの茶目っ気に免じて許してね♪」
「許しておけるかぁぁぁああ!!」
「――――。―!」
「しかもミカヤ姉さんにもうバレちゃったじゃないか!?これで期間延長確定!?」
「いや、さすがにそれはノーカウント、でも他の家族とかにバレたらアウト♪」
「――!」
「あぁ、そうだなマーク。俺は神をも叩き伏せてみせる!」
「あら、ヘクトル、気が合うじゃない…協力するわ!」
「及ばずながら助力しますよ兄さん姉さん!」
あぁ解決策を提示しても結局吐血確定か…。すまないリンディスもう…限界かも――

 

あなたが僕で私があなたで アイク「とりあえず村とかを目指そう」

 

「ん、なんだお前ら早いな?」
「あらシグルド、早いのね?」
シグルド兄さん!?まずい!今は…!?
「ん、何だマルス、斧なんか持って?ヘクトルも突剣なんか持って…取り替えっこか?」
「「「!」」」
「あぁ、そう…、も、もぅマルス!悪ふざけはやめなさいぃ?」
「悪いなリン……ねぇさん、もうやめるぜ…よ。」
「――。――!」
「アイク兄さんは黙っててください。」
「……。」
「あ、あはははーはー、さて朝ごはんにしようみんなー…」
「? なんだ、まぁ早く家へ入りなさい、早いけど朝食にしよう。」

―リビング―

「しかし、まだ6時だぞ?みんな何をしていたんだ?」
「あー…えーと…」
「ラジオ体操?」
「そうラジオ体操!最近ハマっちゃって!」
「そうか、しかしもう終わったんだろう、いつまでも寝巻きのままじゃはしたないから着替えてきなさい。」
着替え…!?いや…しかし今はリンディスの体なわけだし…!いいのか!?
「いいわけないでしょ!このエロウッド!!」
「いや、エリウッドはお前だろ?」
男同士ならともかく…どうする?着替えを渋ればいずれボロが出るだろうし初っ端から難題か…。
「リン?久しぶりに髪結ってあげるから来なさい?」
「あ!はい姉さん!」

 

あなたが僕で私があなたで アイク「村に着いたらすごく歓迎された」

 

―リンディスの部屋―

「しかし面倒なことになったわね~」スルスル
「全くです姉さん。」ヌギヌギ
「他の人にも、もちろん家族にもばれちゃいけないなんて…それも一週間も」パチッ
「えぇ本当に…ところで姉さん、」
「ん?何?」ファサ
「意図的に音を発たせて脱がせるのやめてください!青少年にはキツイんです!」
「あら以外!エリウッドはこれくらいじゃ動じないと思ってたわ!」
「僕だって男です!」
「目隠ししてるのに…案外ムッツリねエロウッド?」
「エリウッドです!!」
「はい、終わったわよ」
「ありがとうございます…髪結ってくれなかったんですね?」
「下手に結ってエリウッドが戻せなくなったら困るでしょ?しばらくそのままで居なさい。」
「わかりました…しかし、学校か…。」
「マルスは最悪休むって言ってたわね、体がヘクトルだしなんとかなるって。でもあなたたちはどうする?」
「休むのもリンディスに悪いですし僕は行きますよ、ヘクトルも行かせます、マルスに悪いし…。リンディスは―」
「リンも行くと思うわよ?引き篭もるなんてのはあの子はしないだろうし?」
「ですよねー…まぁこの一週間、試験とかは無いはずだし、僕も中学程度の勉強なら問題ないよ。」

 

あなたが僕で私があなたでアイク「また行き倒れたかって?何の事だ?」

 

―玄関―
「お、やっと来たか。」
「髪、結わなかったのね。なんだか自分なのに違和感ね。」
「まぁ自分じゃもしものとき結えないからね、それより人にばれない様気をつけること。」
「――。」
「大丈夫だよマーク、アイク兄さんなんて掛け声だけ出してればなんとかなるから。」
「ヘクトル兄さん、ボロでないようにしてくださいよ?」
「心配すんなって、あと俺の体で敬語とかつかうな気持ち悪ぇ。」
「あともうちょっとで他のみんな起きてきちゃうから早く行きなさい、慣れないうちはなるべく人に関わらない様にね?」
「――。」
「そうね、騒ぎとかも避けるようにね。」

こうして、様々な違和感を抱えつつ不安な一週間が始まる。
期限は4月25日まで、それまで僕らにどんなことが待ち受けているのか?

                                  つづく