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Last-modified: 2014-02-02 (日) 19:51:20

―ベグニオン・社長宅―
ミサハ  「サナキ、朝よ。起きなさい」
サナキ  「……うにゅ、あと五分……」
ミサハ  「だーめ。迎えに来てくれるシグルーンたちを待たせてしまうでしょ?」
サナキ  「……うみゅ。おはようございます、ミサハ母上」
ミサハ  「おはよう、サナキ。ほら、着替えて顔を洗って」
サナキ  「……うむ。ふあぁぁ」

オルティナ「おはよ、サナキ」
サナキ  「おはようございます、オルティナお祖母様」
オルティナ「んー? 今なんつったー? お祖母様、じゃなくて、あ・ね・う・え、でしょー?」
サナキ  「あいたっ!? いたたたたっ!? お祖母様、拳でこめかみをグリグリしないでほしいのじゃっ!」
オルティナ「まだ言うか。……えっと、ラグネルとエタルドどこ置いたっけ?」
サナキ  「も、申し訳ございませぬ、オルティナ姉上っ! 朝で頭が回っておりませんでしたゆえっ!」
ミサハ  「オルティナ姉上。ラグネルとエタルドなら、アイクとゼルギウスにお貸ししてますでしょう?」
オルティナ「……あー、そうだったっけ? 最近物忘れがひどいわぁ」
ミサハ  「ふふふ、三日前にも同じことをおっしゃっていましたわ」
オルティナ「ははは、ごめんごめん」
サナキ  「……た、助かったのじゃ……」

ミサハ  「いつもご苦労様、シグルーン。それでは気を付けていってらしゃい」
シグルーン「勿体ないお言葉、ありがとうございます、先代社長。親衛隊兼秘書として、今日も一日しっかりと
      務めさせていただきます」
オルティナ「あんまり甘やかし過ぎないようにね。この子のためにならないから」
タニス  「はっ、お任せください」
サナキ  「……オルティナ姉上は私に厳しいのじゃ……(ボソ)」
オルティナ「んー? 言いたいことはハッキリ言わないと伝わらないわよー?」
サナキ  「いふぇふぇふぇ!? ほっふぇふぁをひっふぁりゃにゃいれほひいのひゃっ!」
オルティナ「あはは、サナキおもしろーい。それじゃ三人とも、気を付けてね」

―ベグニオン社・社長室―
サナキ  「……ふぅ、これ以上働きたくないのー……」
タニス  「はっ、それでしたらオルティナ様に御連絡を取り次ぎ、迎えに来ていただくよう手配致しますが」
サナキ  「嘘じゃ。冗談じゃ。それにしても、なかなか片付かんものよ」
シグルーン「サナキ様。本日は聖天馬騎士団の宿舎の改修工事に、グレイル工務店の皆様が見えておりますわ」
サナキ  「まことか!? よし、さっさと終わらせて労いにゆくのじゃ!」
タニス  「……さすがです、隊長……(ヒソヒソ)」
シグルーン「……ふふ、厳しいだけでは逆効果よ……(ヒソヒソ)」
タニス  「……しかし、私はサナキ様のちょっと困ってる顔が見たい、と言うか……(ヒソヒソ)」
シグルーン「……気持ちはわかるけど、サナキ様はやっぱり笑顔が最高よ。異論は認めないわ……(ヒソヒソ)」
タニス  「……お言葉ですが、サナキ様は半泣き顔こそが至高です。正直たまりません……(ハァハァ)」
シグルーン「……レアリティだけは認めるけど、あまり泣いてほしくはないわ。笑顔が一番よ……(ハァハァ)」
サナキ  「むぅ。二人して何をコソコソしておる? 早く仕事を片付けるのじゃ!」
シグルーン「はいっ、申し訳ございませんでした!(……あぁ、ちょっと怒った顔も……ハァハァ)」
タニス  「はっ、申し訳ございません!(……たまりませんな……ハァハァ)」

―ベグニオン社・聖天馬騎士団宿舎―
ワユ   「イレース、ちょっとそれ取って」
イレース 「……はい」
ガトリー 「へへ、聖天馬騎士団は美人が多いんだよなぁ」
シノン  「オラ、ぼーっとしてねえで手ぇ動かせ」
ヨファ  「キルロイさん、体の調子はどう? 大丈夫?」
キルロイ 「僕なら大丈夫。ありがとう、ヨファ」
オスカー 「アイク、ボーレ、この木材と配管を切っておいてくれないかな?」
アイク  「あぁ、わかった」
ボーレ  「おっしゃ、任せとけ」
グレイル 「このペースなら、予定より早く終わりそうだな」
ティアマト「そうね、夕方までには工務店に帰れそうね」
セネリオ 「……このまま順調に進めばいいですけど……」
ミスト  「あっ、サナキ様」
サナキ  「うむ。久しぶりじゃな、ミスト。……と、ところで、後でアイクを貸してくれぬか?」
ミスト  「え? いいですけど……? まさか!?」
サナキ  「そ、そのまさかじゃ。ひとつ、お願い事をしてみようかと///」
ミスト  「それで、なんで私に?」
サナキ  「抜け駆けはせん約束じゃからな///」
ミスト  「サナキ様……っ! こんなこと言うのもおかしいかもしれませんけど、頑張ってくださいっ!
      (タニスさん、なんで写真撮ってるんだろ?)」
タニス  「……お照れになられて赤面のサナキ様……」パシャ! パシャ!
シグルーン「……タニス、いつもごめんなさいね。私、家電が苦手で」
タニス  「隊長、どうか気になさらずに。私に任せてください」

サナキ  「アイク、ご苦労じゃな。ここらで少し休憩にせぬか?」
アイク  「ん? ああ、社長か。俺もそろそろ休憩にしようと思っていたところだ」
サナキ  「そういえば……そなたはまだ私を社長と呼んでおるな。それはもうやめるのじゃ」
アイク  「じゃあ、なんて呼べばいい? サナキ様か?」
サナキ  「無礼者め。そなたごときが軽々しく私の名を口にするでない、と言いたいところじゃが……。
      わ、私のことはサナキと呼ぶがよいぞ///」
アイク  「しかし、呼び捨ては周りに示しがつかないんじゃないか?」
サナキ  「むっ、社長の私がいいと言っておるからいいのじゃ。これは私のお願い事じゃ。聞き入れてくれるな?///」
アイク  「わかったよ、サナキ」
サナキ  「……っ! も、もう一回、呼んでみてくれぬか?///」
アイク  「? サナキ」
サナキ  「……もう一回っ!」
アイク  「サナキ」
サナキ  「ブバアアアアアッ!」
アイク  「おい、大丈夫か」
サナキ  「く、苦しうないぞ。楽にせよ///」
アイク  「どう見たってあんたの方が苦しそうだ。……なんであんたたちまで鼻血垂れてるんだ?」
シグルーン「……いえ、気になさらないでください///」
タニス  「……名前をお呼びになられただけで身悶えされるサナキ様……///」パシャ!パシャ!
ミスト  「まさか、お願い事って……」
ワユ   「名前呼ばれただけですごい嬉しそう」
イレース 「……随分かわいいお願い事ですね?」
サナキ  「今までは強引にいき過ぎてダメじゃったからの。これで少しはおぬしたちに追いついたわけじゃ」
ミスト  「でも、ここからが大変ですよ?」
サナキ  「よく存じておる。今日はこれ以上、求めはせん。せっかく名前を呼んでもらえたのに、忘れ去られる
      ような真似は出来ぬ」
ワユ   「あ、なるほど。参考になりました」
サナキ  「今夜はミサハ母上に赤飯でも炊いてもらって、お祝いじゃな」
イレース 「……食べに行ってもいいですか?」
ミサハ  「呼んだかしら? 今夜はお赤飯でいいのね?」
セフェラン「お久しぶりです、サナキ様」
サナキ  「母上、それにセフェランも! ん? ということは……」
オルティナ「ちょっとー、私のだぁりん(はぁと)にくっつき過ぎよー?」
サナキ  「あひゃ!? あひゃひゃひゃひゃ!? あ、姉上、脇腹をくすぐらないでほしいのじゃ!」
漆黒の騎士「オルティナ様、お戯れは程々になされた方が……もしや、本日の目的をお忘れに?」オルティナ「おっと、そうだった。サナキ見てると、ついいじりたくなるのよね」
サナキ  「はぁ、はぁ……あ、姉上たちは、なにゆえこのような場所に?」
オルティナ「サナキの惚れ込んだ男を見に、ね。サナキに相応しいかどうか、しっかり見極めたいのよ。この男でしょ?」
サナキ  「なんで姉上がアイクの顔を知っておられるのじゃ? とうに面識があったと申されるか?」
オルティナ「んーん。サナキの机の引き出し、見ちゃった。彼の写真と、年頃の乙女の妄想日記(はぁと)。『……アイクの
      ≪アロンダイト≫が硬さを増すと、私の≪シムベリン≫に≪ラグネル≫した。私は生まれて初めて≪天↑空↓≫を
      味わうと、私の小さな≪ルドルの宝珠≫は……』……サナキのえっち(ニヤニヤ))」
サナキ  「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁーーーーーっ!/////」バタン!
漆黒の騎士「サナキ様っ!?」
シグルーン「サナキ様の……っ!? ブバアアアアアッ!」
タニス  「妄想日記……っ!? ブバアアアアアッ!」
セフェラン「二人とも、大丈夫ですか?」
オルティナ「あなたがアイクね? へぇ、男前じゃない」
アイク  「あんたは誰だ? そっちは俺のことを知ってるようだが」
漆黒の騎士「アイク殿! 身の程をわきまえよ! この御方は、」
オルティナ「構わないわ、ゼ……ゲフンゲフン。私はオルティナ、サナキの祖母よ」
ティアマト「ええっ!? 後でお話しさせてもらえないかしら……?」
ボーレ  「へへっ、ティアマトさん必死すぎでs」グシャッ!
オスカー 「……久々の出番だったのに……」
ヨファ  「……ボーレ、バカなやつ……」
オルティナ「ゼル……漆黒の騎士、エタルド貸して。ついでに勝負に立ち会いなさい」
アイク  「!」
漆黒の騎士「はっ、仰せのままに」
オルティナ「うん、いつ持ってもしっくり来るわ。ちょいと素振り」ヒュン! ヒュン!
シノン  「うげぇぇぇぇぇっ!?」スガァッ!
ガトリー 「おわぁぁぁぁぁっ!?」ドゴォッ!
キルロイ 「ああ、シノンとガトリーが衝撃波に……!」
オルティナ「あ。ごめん、衝撃波出るの忘れてた。というわけで、あなたの剣技、見せてもらうわ」
アイク  「……俺は、相手が女だろうが容赦はせん」
オルティナ「いい気迫だわ。いくわよ、ラグネルの後継者」
漆黒の騎士「それでは、僭越ながら……始めっ!」
アイク  「ぬぅんっ!」ドガガガガガガガガガガッ!
オルティナ「でぇいっ!」ズガガガガガガガガガガッ!
アイク  「くっ……! 天↑空↓っ!」ドゴオオオオオオオオオオンッ!
オルティナ「ぐっ……! 天↑空↓っ!」ズゴオオオオオオオオオオンッ!
アイク  「……っ!! かなり、やる!」
オルティナ「あなたもねっ!」
漆黒の騎士「それは私のセリフだ、アイク殿」
ミスト  「……聖天馬騎士団の宿舎が」
ティアマト「あっという間に崩壊したわね」
キルロイ 「……シノンとガトリーが瓦礫の下敷きに……女神よ……」
シグルーン「タニス、今夜はテントを張って野営の訓練をするわ」
タニス  「それでしたら、私が食事当番を引き受けましょう」
オスカー 「料理は出来るようになったのかい?」
タニス  「とりあえず、5個に1個ぐらいは卵を割れるようになったぞ」
イレース 「……食べに行ってもいいですか?」
サナキ  「改修工事、と言うよりかは建て直しじゃな。引き続き、おぬしたちで工事を続けてもらえるかの?」
セネリオ 「それですと、こちらの料金になります。今日の改修工事の費用とは、別に頂くことになりますが?」
サナキ  「無論じゃ。オルティナ姉上が絡まなければ、こうはならんかったじゃろ」
ワユ   「それにしても、あのオルティナって人、すごいよ。大将が押されてる……っ!」
グレイル 「世の中、上には上がいるということだ」
セフェラン「私の妻が申し訳ございません。少々やんちゃな所がありまして……。初めまして、グレイル店長。
      私はベグニオン社・副社長のセフェランと申します」つ【名刺】
グレイル 「おぉ、これはかたじけない。貴社にはいつも世話になっている」つ【名刺】
ヨファ  「あの、これどうぞ。砂煙がひどいから……」つ【お茶】
ミサハ  「あら、ありがとう(サナキと同い年くらいかしら?)。サナキと仲良くしてあげてね」
アイク  「ぬうぅぅぅぅぅんっ!」ガガガガガガガガガガッ!
オルティナ「でえぇぇぇぇぇいっ!」ガガガガガガガガガガッ!
漆黒の騎士「両者、そこまで! この勝負、引き分けと、」
アイク  「いや……俺の負けだ、ゼルギ……漆黒の騎士」
オルティナ「……内容はほとんど互角だったわ」
アイク  「あんたは俺に三回ほど致命傷を与える機会があったはずだ。それに対し、俺は一回のみ……俺もまだまだだな」
オルティナ「潔いのね。ラグネルはいい主に恵まれたわ。サナキをよろしく頼むわね(婿的な意味で)」
アイク  「ああ、社長にはいつも世話になってるからな。俺の方こそ、頼む(仕事的な意味で)」
サナキ  「ア、アア、アイク! さ、流石にそれは早いというか……っ! じゃ、じゃが私は嬉しいのじゃ! ふぎゃ!/////」
シグルーン「……マントの裾を踏んで転ぶなんて……(ハァハァ)」
タニス  「……社長に就任した時以来ですな……(ハァハァ)」パシャ! パシャ!
サナキ  「今日は良き日じゃ! セフェラン、ゼルギウス、おぬしたちも一緒にお祝いするのじゃ!」
しっこく 「い、いやあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?
      正体バラしちゃらめえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」
セフェラン「あぁん、もうっ! ゼーたんったら、どこ行くのっ!?」
ミスト  「…………えっと、物凄い食い違いがあったんだけど……言う前に行っちゃったね」
ワユ   「何気に呼び方が元に戻ってたような……?」
イレース 「……はしゃぎすぎて、気付いてないようですよ?」
ミサハ  「騒がしい身内でごめんなさいね。あんな娘ですけど、これからもよろしくお願いします。
      さあ、帰りましょう、……母上」
オルティナ「うん、帰ろう。……私の一人娘、ミサハ」
―後日・サナキの日記―
○月△日 晴れ時々曇り
 すっかり舞い上がっていた私は、翌日アイクに社長呼ばわりされて愕然となった。
 オルティナ姉上との手合わせで、すっかり忘れてしまったようだ。
 色恋沙汰の話(今思えば違和感しかない)はともかく、こればかりはオルティナ姉上のせいと言わざるを得ない。
 姉上、ではない。お祖母さま、でもない。ババアじゃ。クソババアなのじゃ。絶対に許せんのじゃ。
 それと、甘美な想像を文章に起こすのは危険と判断。
 少なくとも日記に綴るのは金輪際二度としてはならぬと、心に誓う。
 まさか皆がいる場で音読されるとは思わなかったのじゃ。やっぱりクソババアなのじゃ。
 あと、ミサハ母上の炊いた赤飯はとても美味しかった。

オルティナ「サァァァァァナァァァァァキィィィィィーーーーーッ!
      だぁれがクソババアかあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!」
サナキ  「ま、また私の日記を勝手に見られたのじゃな!? そんなことをするのはクソババアの証なのじゃっ!」
オルティナ「ウガアアアアアァァァァァーーーーー!」つ【エタルド】【スキル・天空】
サナキ  「早くエタルドをゼルギウスに返すのじゃっ! またど忘れしておるな!」つ【シムベリン】【スキル・陽光】
ミサハ  「あら、サナキも強くなったわね。これならベグニオン社も安泰ね」

終わり