40-202

Last-modified: 2014-02-04 (火) 11:20:50

セリカ「……もう10時過ぎてるじゃない。もうちょっと早く起きるつもりだったのに」
私は目覚まし時計を睨み付けると、ベッドから出て部屋に設置してある祭壇に向かって跪き、ミラ神に祈りを捧げた。
セリカ(お祈りの時間が遅くなって申し訳ありません……昨夜は所用があって眠りに就いたのが遅かったのです)
昨夜、アルムの部屋に忍び込もうとするジャンヌの気配を感じた私は、彼女を一晩中追いかけ回し、何とか撃退した。
そして、ベッドに入ったのは夜明け近く。正直寝足りないけど起きなきゃね。
これでも規則正しい生活を心掛けてるのに……あのアマ……ッ!
いまいちスッキリしない頭を怒りで覚ましながら、私は着替えて居間へ向かった。

今日は日曜日。常日頃あれだけ騒がしい我が家は、信じられないくらい静まり返っている。
みんな出掛けたのかしら?
私はコーヒー(砂糖、ミルク多め)を淹れると居間のホワイトボードを見た。
エリンシア姉さんがしっかりとした休日を送るために設けられた伝言板には、びっしりと兄弟たちの予定が書き込まれていた。

?月×日(日)
AM5:45 アルム  :みんなおはよう。チャップさんの畑仕事手伝ってきます。
AM6:00 ミカヤ  :アルム早っ! オルティナさんとミサハさんの所に行ってきまーす! きゃっほーいミ☆
AM6:50 シグルド :姉上も充分早いですよ。レプトール専務たちの接待ゴルフに付き合うことになった。
          接待ゴルフだが、アルヴィスには負けん!
AM7:20 アイク  :急に仕事が入った。流星軒の改装工事に行ってくる。エリンシア、しっかり休めよ?
AM8:40 エリンシア:あらあら、ありがとう。それではお言葉に甘えて、ルキノと映画館に行ってきます。

アルムの予定は昨日聞いてた通り。
ミカヤ姉さんの人脈はよくわからない……そんなに朝早くて大丈夫なの?
シグルド兄さん、接待ゴルフって負けなきゃいけないんじゃないの? 詳しくは知らないけど。
アイク兄さんって、たまにさりげなく優しいのよね。こういう所がもてる理由なんだと思う。
エリンシア姉さん、目一杯楽しんできてね。いつも頑張ってるんだから。

AM8:45 エリウッド:紋章町図書館で調べものしてくるね。昼前には帰ってくる予定。
AM8:50 エイリーク:ラーチェルとターナと一緒に舞台を見に行ってきます。帰宅は18時頃になると思います。
うわぁ、二人とも相変わらず字が凄くきれい。字からもオーラが出てるっていうか、気品の良さが伝わってくる。

AM9:00 リンディス:フロリーナと遊びに行ってくるわ。天馬に乗せてくれるって言ってたから、すごく楽しみ!
AM9:05 マルス  :シーダの買い物に付き合ってきます。
          リン姉さんを乗せるとは、天馬も気の毒に。どうせ重くて飛べないだろうから、馬でいいんじゃ
AM9:06 リンディス:それじゃ行ってきます。

マルス兄さんの伝言は途中で切れていて、ホワイトボードには血痕を拭った跡があった。
マルス兄さんはもっと真っ直ぐ好意を示せばいいのに。私とアルムみたいに。
構ってもらいたい気持ちはわかるからさ。
リン姉さんはリン姉さんで、男の人と出掛けてるの見たことないわ。

AM9:15 エフラム :あまり気が進まんが、リオンの所へ行ってくる。勉強会でなければ喜んで行くのだが……ハァ……。
AM9:25 ヘクトル :面倒くせぇが、キアラン男子校の連中シメてくらぁ。俺の舎弟に手ぇ出しやがって。あー面倒くせぇ。
AM9:30 セリス  :↑ケンカはよくないけど、ちょっとかっこいいと思っちゃった。怪我しないように気を付けて。
          リーフと一緒に竜王家にお邪魔してきます。
AM9:31 リーフ  :セリス兄さんと一緒に竜王家へ。イドゥンさんに堂々と会える! イヤッホー!
AM9:40 ロイ   :えーと、ウォルトの家に遊びに行ってきます。夕方には帰ってきます。

エフラム兄さんが溜め息なんて珍しいわね。でも、そろそろ成績上げないと。姉さんたちも心配してたし。
ヘクトル兄さん、オスティア学園に転校してからもっと男臭くなったわね。
面倒でも弟分のために行くのがヘクトル兄さんらしいわ。セリスじゃないけど、ちょっとかっこいいかも。
んで、セリスはヘクトル兄さんに憧れてると。……ガチムチのセリス……ちょっと想像出来ない、というかしたくない。
セリスには悪いけど、線の細いままでいてほしい。
リーフ、そういうこと言ってると……。
ロイはもうちょっと外で遊んだ方がいいんじゃないかしら? なんてお姉さんらしいこと思ってみたり。

さて、私以外の兄弟はみんな出掛けたみたいね。
『最後まで残った人が留守番』というルールに従って、今日は私が留守番。
学校の宿題は昨日の夜片付けちゃったし……何しようかな?
アルム、早く帰って来ないかなぁー……今だったらいちゃいちゃし放題……えへへ。
………………。
…………。
……。
無視しようと思ったんだけどね。
何でみんな出掛けた後なのに伝言が続いてるのよっ!?

AM9:45      :ど、どうしましょう……図書館の前でエリウッド様をはね飛ばしてしまいました……。
          とりあえず竜王家で手当てさせてもらいます。
AM9:48      :↑訂正。私が天馬でユングヴィ病院にお連れしますのでご心配なく。
AM9:51      :兄様、勉強なんてつまらないから私と遊びましょう? 私の部屋なんてどうかしら?
AM9:52      :↑訂正です。お兄ちゃんは今から竜王家に向かいます。
AM9:53      :師匠に稽古をつけてもらおうと思ったんですが……留守のようなので帰ります。う~ん、残念。
AM9:54      :エフラムさん、おらんのけぇ。アメリア、私らだけで稽古しちょうよ。
AM9:56      :リーフ! たまには私の家に来たっていいのよ! ぐ、偶然クッキーが美味しく焼けただけなんだから!
          他意はないわよ!
AM9:57      :↑修正します。リーフ様はフリージ家に来ていただきます。原稿手伝ってもらいますね。
AM9:58      :↑訂正します。リーフ様はノディオン家にお招きします。ほら、ミランダとティニーも一緒に行きましょう?
AM9:59      :いやだっ! イドゥンさんに会いに……アッー! この人でなしーっ!
AM10:05      :アイクは今日休みだと聞いておったんじゃが……留守なら仕方ないのじゃ。帰るのじゃ。
AM10:08      :今日こそはと思って勇気を振り絞って来たのに……。次こそは……デ、デ……け、稽古をつけてもらうからな!
AM10:10      :あら、私の勇者様はお留守? ざ~んね~ん。
AM10:14      :面倒なら凄腕の私を雇えばいいじゃない! 特別に格安料金+ランチ+ディナーで手を打つわ!
AM10:20      :ロイ君には特別授業が必要ですので、エレブ学園中等部の社会科資料室にお連れします。
AM10:22      :↑訂正。ロイに必要なのは保健の授業よ。というわけで保健室に連れていきます。
          新米教師がしゃしゃり出ないでくださる?
AM10:23      :↑訂正! ロイ君は私の天馬で一緒にイリアに行くの!
AM10:24      :↑訂正! だめ! ロイ君は紋章町公園で私の手作り弁当食べるんだから! こら、オージェ!
          私のお弁当勝手に食べるな!
AM10:25      :↑訂正。ロイ君は私と草原に行く。だから、そこをどいて、ウェンディ。友を傷付けたくない。
AM10:26      :……くぉ……? ロイ君はナバタの里にご招待します。

……とりあえず伝言はここまで。ていうか、勝手に人の家に上がって何やってんのよ……っ! この人たちは……っ!
何気なく居間の時計を見ると、時刻はAM10:30。その時だった。

ちゅどおおおおおーーーーーんっ!
どぐぁあああああーーーーーんっ!

かなり近くで、爆発音がした。
??? 「こんにちはー。誰か居ませんかー?」
庭先から聞き覚えのある声がしたので、私は居間の窓を開けて彼女を迎え入れた。
セリカ 「えーと、リリーナちゃん、だっけ? 何度か遊びに来たことあるわよね?」
リリーナ「お久しぶりです、セリカ義姉さま。私のことはリリーナと呼んでください。えっと、伝言板は……」
セリカ 「あー、書かなくてオーケー。私が聞くから」
もう書く必要も無いし、書けるスペースも無い。
リリーナ「それでは、ロイはオスティア家にお招きします」
セリカ 「……一つだけいいかしら?」
リリーナ「はい、何なりと」
セリカ 「ロイはヘクトル兄さんたちと比べてあんまり頑丈じゃないから、お手柔らかに」
リリーナ「はい、任せてください。私、杖も使えますから。それでは、お邪魔しました」
リリーナは満面の笑みを浮かべると去っていった。その背中は小さいけれど、どこか満足げだった。

この後、ミラ神にみんなの無事を祈ってたら(特にエリウッド兄さん)、ひょっこりジャンヌが現れて、
叩き出してやろうかと思ったけど、お互い寝不足で休戦。
みんなが帰って来るまでお喋りしたり、ゲームやったり。もちろん、お茶とお菓子も出したわ。
エリンシア姉さんが引き止めて晩御飯も食べていった。
……アルムさえ絡まなければいい子なのよねー……アルムは 絶 対 に 渡 さ な い け ど 。
それよりも。
そ・れ・よ・り・もっ! シグルド兄さんの締まりのない笑顔といったら……っ!
今までで一番イラッ☆ときたわ……っ!

終わり