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Last-modified: 2017-04-04 (火) 21:24:24

とある泉

 

エフラム「……情けないな、まだ俺はエイリークに未練があるのか。
     啖呵を切っておきながら情けないな、このままじゃサラ達にも示しがつかない」
エフラム「……ん? あれは」
アクア「〜♪ ……――――誰?」
エフラム「邪魔してすまない。俺だ、エフラムだ」
アクア「どうしたのエフラム? こんな所まで来て」
エフラム「気分転換に散歩していたら、ここまで来てしまってな」
アクア「……そう」
エフラム「しかし、相変わらずいい歌声だ。チキが元気を与える歌なら、アクアは癒しの歌だな」
アクア「褒め言葉として受け取っておくわ。そういえば、貴方の妹さんとは親しくさせてもらっているわね」
エフラム「……ああ、アイツはよくできた妹だからな」
アクア「歯切れが悪いわね。何かあったの?」
エフラム「……いや、前よりもアクアの雰囲気が柔らかくなったと思ってな」
アクア「もしかしたら、エイリークのお蔭かもしれないわね。彼女と会った後から、話しかけられることが多くなったわ。
    恋とか友情なんて、歌と比べれば二の次だったのに、考え方を改めたもの」
エフラム「そうか。……やはり俺は、エイリークの兄であることを誇りに思う」
アクア「エイリークが真っ直ぐに育ったのは、貴方の影響もあるのかもしれないわね。
    ……お礼と言っては何だけど、私の歌を聞いてくれる?」
エフラム「ああ、あの歌姫からのお願いだ。断る理由はないさ」

 

アクア「〜♪ ……どうだった?」
エフラム「…………すまない。咄嗟に言葉が浮かばないが、いい歌だった」
アクア「そう……ふふっ」
エフラム「――――っ!?」
アクア「そんな顔してどうしたの?」
エフラム「いや、アクアの笑った顔を、俺は初めて見たから……つい。……そうだな、エイリークは俺の妹だ。
     それはいつまでも、変わらないじゃないか。最近色々あって、心に余裕がなかったのかもしれんな」
アクア「よくわからないけど、役に立てたならよかったわ」
エフラム「……アクア、こっちに来てもらえるか?」
アクア「……? ……ええ」
エフラム「――――ありがとう」
アクア「あ、頭を撫でられるなんて、いつ以来かしら。…………あっ」
エフラム「では、俺はこれで失礼する。重ね重ねありがとう、アクアの活躍を陰ながら応援している」
アクア「……本当に、人の心を揺さぶる兄妹ね」

 

白暗夜家

 

アクア「ただいま、帰ったわ」
シェンメイ「あら、アクア。おかえりなさ……い?」
アクア「どうしたの?」
シェンメイ「(何か覇王の気配がしたんだけど、気のせいかしら)……いいえ、何でもないわ」
アクア「……分かったわ。それじゃあ、私は部屋に戻るわね」

 

アクア「ふふっ……頭を撫でられるのも、悪くはないわ」

 
 

おわり

 

ガロン「……! 新たなる孫の気配……!」
ミコト「あら。あらあらまあまあフフフフフ」