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Last-modified: 2017-04-30 (日) 09:09:09

 彼は、人間としては長生きした方だっただろう。
 最期の日、ベッドから起き上がることもできない体で、それでも、看取る者1人1人の頭を撫でてくれた。
 痩せ細って力を失った掌だったけれど、あの頃と変わらず、暖かかった。
 最後まで、私達に温もりをくれた。
 そうして彼を見送り、姉妹達は、思い出の灯を胸に、日々を過ごしている。
 何年も、何十年も、何百年も。
 私だけが、進めていない。
 理由は分かっている。
 もう1人の、未来から来た私。『もう1度彼に会える』可能性だ。

 何百年も前の、未来の私が、何歳だったのかは分からない。本人も大まかにしか覚えていなかった。
 私自身が過去に行けるのかは分からない。
 ノノの娘、この世界で生まれた『ンン』は、10歳の時、『何かに引っ張られていく』感覚があったらしい。
 だけど、彼女自身はそのまま、この時代を生き続けている。
 私も、『私の一部が過去に引っ張られていく』だけで、私自身はこの世界に留まるかもしれない。

 それでも、もう1度、彼に、会えるかもしれない。
 サラ、アメリア、エリーゼ、サクラ、セツナ、ベロア、ミタマ、アクア、カザハナ、ヴェロニカ。
 先に逝った皆とも、また会えるかもしれない。

 

 今日だろうか。
 明日だろうか。
 来週だろうか来月だろうか半年後だろうか来年だろうか何年後だろうか。
 それとも、数時間後だろうか数分後だろうか数秒後だろうか。
 一瞬一瞬が、狂おしい。
 会いたい。
 会えないのではなく、『いつか会えるかもしれない』からこそ、焦がれるほどに会いたい。
 もうすぐ会えるからこそ、待ち焦がれている。
 何年も、そろそろだと思ってからずっと、待って、待って、待って待って待って。

 
 

 その瞬間の、突然現れた私を見る彼の驚いた表情を、胸を焼く懐かしさと愛しさを、私は、何千年経っても、忘れない。
 ずっと抱き締めてきた思い出達と同じく、絶対に、手放さない。

 

大人チキ 「…………」
サラ   「とまあ、大体そんな感じだったんじゃないかしら?」
チキ   「うう……ぐすん……」
ミルラ  「…………がんばったんですね……」
ファ   「……ひっく……ひっく……」
ソフィーヤ「ファ……泣かないで……」
イドゥン 「いい子いい子……」
サラ   「ちなみに、当人からの採点は?」
大人チキ 「……ほぼ満点よ……あなた、全く変わっていなくて安心したわ……!」
サラ   「涙目で睨むくらい感動してくれて嬉しいわ」
アメリア 「間違いなく全部理解した上で、しれっと……」
ンン   「そこまで心が読めるなら、もう少し気遣うです」
ノノ   「うーん……そこまで待ってたなら、しかたないよね!」
サクラ  「今夜は、大人の方のチキさんからですね」
ベロア  「……そうですね……1番手は譲ります」
大人チキ 「うっ……で、でも私……エフラムからしたら、会ったばかりみたいなものだし……」
キヌ   「さっきエフラムは、チキはチキだ、って言ってたよ?」
セツナ  「大丈夫……」
大人チキ 「だ、だけど……」
ミタマ  「なんですの? したくないんですの?」
大人チキ 「…………したい、です……////」
アクア  「あら、真っ赤」
エリーゼ 「何百年かぶりなんでしょ? がんばってね!」
カザハナ (誰が1番手か、ってやりとりに、慣れてきちゃったな……)