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Last-modified: 2017-04-25 (火) 20:17:46

クレアは悶々していた。生まれ故郷のバレンシアじゃ彼女は地主様の娘として、
そして田舎の数少ない女子、それも美少女さんとして周りの大人や男の子たちがちやほやしてくれた。
生まれた時からそんな調子なもんでそれが当たり前だった。

 

…が、田舎暮らしに飽きて都会に繰り出してみたら何の因果かAKJ。
周りはみーんな女ばっか。当然誰もちやほやなんてしてくれん。
ぶっちゃけクレア的には周りに男子がいない事はけっこう耐え難かった。
というか数日おきにグレイたちと…時にはさんぴーなどもいたしてればいろいろ持て余した。
それでなくてもプライドの高い彼女。いつまでも下級職でいられませんわという意地もある。
自分より上に女王リリーナとか女帝カムイとか君臨してたら上を目指したくなるは必定。
クレア「そうですわ!ボーイハントに参りましょう!」
グレイもロビンも何もしなくても向こうから寄ってきた。考えてみれば自分から声かけるのって初めてだ。ちょっとドキドキする。

 

…と、いうわけでこっそりAKJの寮抜け出すと街角で好みの地味男をチェーック。
なぜ地味男、影薄男がいいのかって?原作を見るがいい。アルムグレイロビン、地味の三乗である…もとい。
クレア的には自分という美しい華を彩る添え物はあまり自己主張が強くなく、それでいておさおさ自分と並んであまり悲惨な容貌でない…くらいが好ましかった。
まあ基本自己中なのでいまだ女公止まり、ミラ様の昇進お許し出ないのだが…クレアがそれに気づいたふしはない。
グレイたち?貴族的傲慢だろうと二股されようと美少女でスタイルよくてそして悪気ないのでついつい許容してしまうのだ。そんなもんだ。
まあそれはともかく…
見るからにモブ臭い男子が歩いているの発見。
とりたてて美男でもないが醜くもなく個性もさして感じない。
群衆シーンにいたら埋没しそうな奴だ。タイプだ。よし声をかけよう。
…初めてのボーイハント。きっとたぶんリリーナもカムイも潜り抜けた道。
……まあわたくしの美貌なら失敗なんてありえませんけど。

 

クレア「そこのあなた。よろしくって?」
ディムナ「え、僕?何?」
クレア「喜びなさい。わたくしの彼氏にして差し上げてもよろしくってよ」
ディムナ「……は?」

 

バレンシアは田舎…人は少ない。いる人は大体生まれたころから顔見知り…
彼女は赤の他人に声かけるなんて経験自体ろくになかった…にしてもいきなりこれは……

 

ディムナ「え…えーっと…その…これ…え?ま、まさか!?まさか!?
     ぼ、僕が…女の子から逆ナンされる…そんな事があるなんて!?」
まあ普通なら引きそうな誘い方だがぶっちゃけ美少女なので舞い上がっちまった。美少女は得だ。
葉っぱも美形だったら少しはナンパの成功率上がったかも知れぬのに…
クレア「ふふん、嬉しいでしょうそうでしょう。さあわたくしをエスコートなさいな。まだこの街に慣れてないのです。案内なさい」
ついふらふらと手を取りそうになる。なるが…そこで理性の急停止。
ディムナ「あ…でもごめん。僕、カレンって恋人がいて…今日これからデートだから」
クレア「…よく聞こえませんでしたわ…もう一度おっしゃってくださる?」
ディムナ「僕彼女いるから」

 

生まれてからこっち。ずーっとご近所の男子たちのお姫様扱いだったクレア的に袖にされるなどありえることではなかった。
クレア「ちちち、ちょっとまちなさいな!?わたくしのどこがその方に劣ると!?」
ディムナ「いやーぶっちゃけ君の方が美形だし、胸甲の形からして胸もおっきいし、僕の彼女はどこにでもいるモブで10人が10人とも君を選ぶと思うけど…
     そういうことじゃないんだよね。じゃ、急ぐから…」
衝撃で崩れ落ちるクレアを置いてディムナは去る。
…正直…正直…死ぬほど惜しい、お付き合いしたかったと思うのは男の本音ではあったが…

 

後日…この道の先輩方に会ったのだが…
クレア「か、か、か…完璧で美しいわたくしがフラれるだなんて…」
リリーナ「口から魂が抜けてる…」
カムイ「うんうん、わからないとはいわないよ。アタシもさ。お誘いした相手の何人かには断られちゃったもの。
    でもねぇ。自分の事じゃないんだよ。相手の事が愛しいの。まだわかんないかな」
彼女がもっと深い愛を知った時、女王、そして女帝への道は開けるかもしれない。