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Last-modified: 2017-05-30 (火) 21:21:08

カダイン魔導学院。
竜王家のガトーが学長を務める紋章町の最高学府であり、魔法の発祥の地である。
大変権威のある学者を大勢排出しており、魔法界じゃあここを卒業したってだけで箔が付く。
その壁の周りをうろうろしてる男がいた。彼の名はリュート。
リュート「はぁ……」
彼はため息をついた。つい半年前、彼はここの入学試験に落ちていた。
いや、もともと超高い学費を納めるあても無かった。ここは両家の子女が多い。
だが奨学金枠でなんとか入学できそう…で、できなかった。
とある男と数少ない枠を争って試験で敗れたのだ。
以来、家の畑を耕して日銭を稼ぎながらこつこつ独学で魔法を勉強している。
…魔導士になるには学校で学ぶか、あるいは立派な魔導士の弟子になって修行を積むかだが。
学校は落ちた。大魔導士へのツテは無いときた。せつねぇ。
…アトスという人物なら割と誰でも弟子にしてくれるらしいがその代わりカップル襲撃の片棒担がされるらしい。
んなことしたくない。
ここをうろうろしてるのはつい未練で脚が向いちまうのだ。
まるでかすりもしなかったならすっぱりあきらめもつくのだが。
際どいとこまでいっただけに未練が残る。女々しいとは思うのだが。
これが妹だったらすっぱりあっさり受かるのだろう。自分から見ても才能が段違いだ。
…まあ勉強とか大嫌いな子だし研究とか興味ない子だが。
自分が喉から手が出るほどほしいもの持っていながらんなもん大して大事にせず毎日遊んでるの見ると複雑な気持ちになる。
ああまたため息が出た…

 

金髪ワカメなヘアスタイルの男はカダインの校門に向かいながら歯ぎしりをした。
エルレーン「ぐぬぬ……」
この男、裕福なもんの多いこの学校では珍しい庶民の出である。
数少ない奨学金枠を友達いなさそうな男を争って奴を蹴落とし入学を果たした。
この俺なら首席の魔導士になれるだろう。的な自信をみなぎらせていたが…
地元の学校じゃ一番の秀才でも、あちこちの一番が集まるここでは凡人に過ぎなかった。
マリクという野郎に一番取られた上にウェンデル教授はエクスカリバーをマリクにくれた。
悔しい。ちくしょう。あんにゃろう。
悔しいので奴を超えようと修行に励んでもなかなか奴に勝てぬ。
そしてたら奴には美人の彼女が出来た。ますます悔しい。
さらには奴にきょぬーの優等生が思いを寄せた。なんなんだクソが。
…まあそいつはフラレたが。そして他所の学校の奴の彼氏になるとかわけのわからない事を言い出したが。
そいつはワープ使ってアリティアで男子、こっちで女子と二足の草鞋を履いている。俺には女は何考えてるかわからん。
悔しいのはそいつも俺より優秀な事だ。さらに親父からオーラの魔法を授かってる。
親の七光りなら悔しくもないがきっちりしっかり実力あるのが悔しい。
負けてられるかクソが。彼は学校帰りに書店にでもいこうと校門をくぐった。
…塀のそばうろついてた男と目があった。
リュート「……あ」
エルレーン「……?」
どっかであったか?
彼は試験の時に争った男を思い出せなかった。
まあいいとばかりに金髪ワカメは歩み去る。
魔法オタクは唇噛むと畑を耕しに帰っていった。

 

おわり