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Last-modified: 2017-07-10 (月) 23:04:16

バレンシア地区 ソフィアとリゲルの境

 

オグマ「すまない、ユミナ、貴女もお忙しいだろうにここまでつれて来て」
ユミナ「構わないわ、今は予定が空いていたから。
    それにしても珍しいのね、あなたの友人があなただけでなく私まで呼ぶなんて」
オグマ「そうだな、あいつめ、何を考えているのか……」
ユミナ「それにしてもデューテから聞いてたけどバレンシア地区ってのどかなのね。
    あの子は都会に憧れてたけど、私は好きだわ、こんな景色」
オグマ「そうだな、俺も、嫌いじゃない」
ユミナ「……あ、トンボ……大きい」
オグマ「オニヤンマだな、都市部じゃあまり見かけんが、この辺りでは普通に飛んでるか」

 
 

ユミナ「ここがお友だちの家?」
オグマ「ああ、来たぞ、誰かいるか?」
ティータ「はい」ガチャ
ユミナ「え……彼女が……オグマのお友だち? ………綺麗な人ね」
オグマ「いや……彼女は……だな」
ユミナ「シーダがもう絶望的になったから、あなたは彼女と?」
オグマ「おい、一体何を言っている?」
ティータ「ああ、ジークのお友だちね、すぐ呼ぶわ、ジーク!お友だちの方が来たわよ!」
ジーク「ああ、ありがとう、ティータ、オグマ、ユミナ様、よく来てくれたな」
オグマ「ああ、お誘い感謝する……と言うところか?」
ユミナ「え、彼が……って、カミュ?」
ジーク「お嬢様、私はジークと申します、カミュと言う名ではございません」
ユミナ「あ、そ、そうなの、ごめんなさい、昔の知りあいと、間違えたわ」
ジーク「いえいえ、お構い無く」
オグマ(こいつめ……)
ティータ「さぁ、2人ともあがって、お茶をいれるわ」

 

それから時間が過ぎ夜

 

ジーク「いかがだったかな、ティータの料理の味は」
オグマ「とても美味かった、そんな彼女を嫁にできたお前が羨ましいよ」
ジーク「それならお前も早く嫁を貰えば良いだろうに」
オグマ「だが相手がな……」
ジーク「まだシーダ様を引き摺っているのか?」
オグマ「………そうじゃない、確かにあの頃の想いはあった。
    だが今や星君主の第1妻として、マルス様を愛しつつ他の嫁を纏めてる姿を見ればもう諦めもつくさ、だがそうすると、他の相手がな」
ジーク「本当に気付いていないのか?それとも……その想いを避けてるのか?」
オグマ「…………ユミナ様の思いは気付いているさ、あんなに強がっているが、想いを向けてくれているからな。
    だがそれでも………彼女はまだ子供だ………」
ジーク「何故だ?覇王を始めとした者達のお陰で、町ではロリコン忌避の雰囲気がかなり払拭されただろう。
    真剣な想いを受けるなら、問題はないはずだ」
オグマ「俺は一介の傭兵だ、対して彼女はグルニア家の令嬢であり、その才覚と教育であの歳で医師としても活躍する才媛。
    全く釣り合いがとれんだろう、しばらく待てば、もっと良い男が現れる………」
ジーク「………1つ聞かせて欲しい、お前は彼女を、どう思っている?」
オグマ「……………」
ジーク「……………」
オグマ「………大切な人だと、思っている」
ジーク「そうか」
オグマ「だが……俺は」
ジーク「オグマ、忠告はしておくぞ、愛する者との時間と言うものは、とても貴重だ。
    突然、奪われる事も有り得る、その時に、後悔することになるなよ」
オグマ「ああ……」

 

ティータ「ユミナちゃん、どうかな、これ?」
ユミナ「とっても美味しいわ、このはちみつパン、はちみつがほどよい甘みで、とても美味しい」
ティータ「喜んで貰えて良かった、フェルナンさんにお礼言って置くね」
ユミナ「ええ……あの、ティータさん?」
ティータ「ん?なぁに?」
ユミナ「ティータさんは、あの人……ジークさんとはいつから?」
ティータ「んーとねー、3年位前かな?、近くの海岸で、怪我して流されてきてたの、そんな彼を助けてね」
ユミナ(3年前……あの人が行方不明になったのも、同じ位………)
ティータ「始めは記憶も失ってたけど、ここで一緒に暮らしてる内に……
     元々格好良くて素敵な人だなと思ってたけど、優しくて、紳士的で、気付いたらとても好きになってたの」
ユミナ「それで、告白を?」
ティータ「1年位してかな?思いきって私からしたの」
ユミナ「え、そうなの?」
ティータ「意外と長いって思った?
     うん、私もね、彼が記憶喪失だったから、例え早くに告白しても記憶が戻ったら元の生活に戻っちゃう、大切な人がいたらそこに行っちゃうって思ったの」
ユミナ「……………」
ティータ「だけど、体の方は元気になって、ルドルフ様の元で働く様になってから、彼の回りに人が集まり始めたの。
     さっきも言ったけど、格好良くて素敵だから、女の人も多くいたわ。
     だから、思いきって告白したの、貴方の記憶に大切な人がいるかもしれない、でも好きですって」
ユミナ「それで、どうなったの?」
ティータ「彼も、私が好きって言ってくれたの。
     本当はもっと前に記憶が戻っていたけど、私の事を思ってない振りをしてくれてたんだって
     却って不安にさせたって、謝られちゃった」
ユミナ「その……ジークさんの大切な人って……」
ティータ「……いたって、正直に言ってくれたわ。
     けど、ここで過ごす間に私が好きになったって言ってくれた。
     その間に相手が結婚した事もあったみたいだけどね」
ユミナ(そういえば、ニーナ様、それから半年で結婚したのよね。
    ボア司祭がやたら強引にしたせいであそこは今も大変らしいけど……)
ティータ「ユミナちゃんはどうなの?あのオグマさんと」
ユミナ「うぇ!?か、彼は私の護衛で、私は……その……///」
ティータ「ああ、成程ね、そういうタイプか」
ユミナ「そういうタイプって!?」
ティータ「大丈夫だよ」ギュ
ユミナ「ふぇ!」
ティータ「大丈夫だよ、あの人もユミナちゃんを想ってくれてる、端から見ると、よくわかるよ?」
ユミナ「そ……そう、なの?」
ティータ「だから、ユミナちゃんも一歩踏み出して見れば、上手くいくと思うよ?」
ユミナ「そう……かな?」
ティータ「うん、お姉さんが保証してあげる。だから、頑張って」
ユミナ「ありがとう、ティータさん……」

 

 それぞれの想いを胸に夜は更けていった。

 

翌日 ソフィア アルム村付近

 

オグマ「……昨夜は、よく眠れたか?」
ユミナ「……ええ、ぐっすりと」
オグマ(き、気不味い……)
ユミナ(うぅ……より意識しちゃって、何を言えば言いかわからないよぉ……)

 

??「おい」
オグマ「何だ?」
盗賊「命が惜しければその女をよこせ」
ユミナ「な、何!?」
オグマ「盗賊か、ユミナ、さがっていろ」つ 鋼の剣
盗賊「馬鹿な野郎だ、お前ら、やっちまえ!」

 

 男の一喝で、周囲から何人もの男が現れる。

 

オグマ「くっ!」
   (こいつら、かなりの統制がとれている……ただの盗賊じゃない!?)
傭兵「おらぁ!」
オグマ「甘い!」

 

 傭兵の突撃を回避するとそのまま斬り倒し、傍にいたソルジャーも倒す。だが……

 

盗賊「ちっ、お前ら、こいつはこっちで押さえる、女を拐え!!」
オグマ「しまった!ユミナ!逃げ………」
魔戦士「隙ありだ……」
オグマ「しまっ……」

 

 ユミナに意識を向けた途端背後から迫った魔戦士に斬られる。
 深く斬られたらしく体が動かなくなり意識が朦朧とし始める

 

オグマ「ユ……ミ……ナ」

 

 薄れ行く意識のなか見えたのは抵抗しながらつれていかれるユミナと、指揮官と思われる男の装備に縫い付けられた、鏃を思わせる鋭角的な十字の紋章だった。

 

続く