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Last-modified: 2017-07-25 (火) 22:52:38

そして10年の歳月が流れました。
こんにちはみなさん。私です。今年、12歳になりました。
え、誰だって? だから私ですってば…
って、言ってもわかりませんよね。ええ、ゼロット父上とユーノ母上の娘です。
名前はありません。お好きな名前を想像してください。

 

ゼロット「よ、よしなさい。もう、娘もいるんだし!」
ユーノ「あら、今は二人っきりよ♪あの娘はまだ学校だから」

 

……とっくに下校してるんですけどね……ええもう慣れました。
私は槍を肩に担ぎ、片手にカバン持って抜き足差し足で部屋に向かいます。
両親がイチャつく邪魔にならないよう配慮するのも娘の嗜みでしょう。
あ、今日はセーラー服なんですね母上。もう40も過ぎたのになかなかチャレンジャーです。
そのまま頑張って私の弟か妹の顔を見せてください。
というかむしろ私が一人っ子な事がびっくりですよ。こんなのしょっちゅうなのに。
…致し終わるまでリビングには近づかないようにしよっと。

 

シャニー「やっほーお帰りー」
私「ただいまー…来てたんですか。シャニーおば…姉さん」
シャニー「ん?今なんて言ったかな?あたしの幻聴かな?」
私「い、いふぁいいふぁい!?ほっぺひっぱらないで!?」

 

私の部屋で漫画読みながら勝手にお菓子食べてたのはシャニーおばさんです。
心の中じゃ遠慮するもんか。もう。
二十歳半ばのくせしてやることなすこと子供っぽいんだから。

 

私「昼間っから母上たちが居心地悪くしてすみませんね」
シャニー「ん、だからこの部屋に避難中だよ。いーっていーって」

 

まあもともと私の部屋ってシャニーおばさんの部屋でしたし。
私が大きくなって個室欲しくなったからもらいました。
おばさんは何年か前に結婚して今は旦那さんと共働きです。
…ヒマなはずはないのですが結構ちょくちょく帰ってくる気がします。
私「ディークおじさんは?」
シャニー「外で筋トレしてるよ。窓から見えるけど。見る?」
私「いえ…いいです。どこかの兄妹家のKINNIKU大好きおば…お姉さんみたいな趣味は無いです」

 

…私の部屋に奥さんと居座るのを遠慮したんでしょう。ディークおじさんは大人です。しっかりした人です。
でもシャニーおばさんには甘い気がしますが。けっこう歳離れてますし、接し方がちょっと子供に接するみたいな感じなとこあります。

 

シャニー「やっほー〜〜っだーりーん♪」
ディーク「おおー……恥ずいからせめてディークって呼べよな…」
窓開けて手、振りはじめましたよ。雪入ってくるからあんまり開けないでほしいなあ。
それにしてもディークおじさん、いつも上半身あんなに曝け出して寒くないんでしょうか。
ここイリアなのに。一年のほとんどは雪降ってるのに。
新婚…ってほどでもないです。シャニーおばさん中学の頃から付き合ってたらしいですし、学校出て早々に結婚しましたんで。
もっとも中学、あるいは小学生でも在学中に結婚する人もそこそこいるんですけどね。それはともかくこの二人結構長いです。
でもノリは新婚です。すぐに二人の世界に入りそうです。なんで私、自分の部屋で居場所無くなるんですか。
……他所行こう。邪魔しちゃ悪いし。はぁ……

 

槍の稽古しようと思って中庭に出てみたら巻き藁がぼろぼろになってました。
鬼のような顔して槍ブン回してるのはティトおばさんです。そろそろ30です。
彼氏いないのでイリアでは私の居心地悪くしない貴重な人材です。
いえ、昔はいたらしいんですが。
ティト「今、何か失礼な事考えなかった?」
私「いえ、気のせいですよ」
…なんでおばさんってこう鋭いんですかね…
なんでもこの人、昔、どこかの貴族さんと付き合う寸前だったらしいですがAKJに邪魔されて愛想が付き別れ、
今は喪をなさりながら仕事一本のキャリアウーマンルートに入りつつあります。
なんかもう彼氏とかいいやって感じみたいで仕事が楽しくなったようです。
それも幸せの形なのかな。
ティト「言っておくけど、私、彼氏いるから。やっと…やっと…やっとできたんだから!」
私「え、嘘っ!?」
やばっ!?つい嘘っとか言っちゃった!
ティト「これ!撮った写真!合成とかしてないんだから!」
あ、スマホで撮ったんですね。赤い髪の騎士さんです。結構精悍な人と並んで映ってます。
アレンさんって言うらしいですね。ともあれあなたも私の居心地悪くする側に回るのかなー
彼氏トーク始まりそうだったので私はさっさと逃げました。人の惚気なんか聞きたくないやい。
逃げて私は会社の事務所に行きました。ここは父上がやってる人材派遣の会社です。
自宅のすぐ裏に立ってます。もう家にいても人のイチャイチャから逃げられそうもないんだもん。
私「ノアさんは…よかった。いない…」
あの人彼女さん持ちだから…ふう。
トレック「んあー…ノアがどーしたって?」
私「どうもしません。名前呼ばないで。なんか来る気がしますから?」
トレック「ん、そーお?」
この人は社員のトレックさん。
いつ会っても寝てばかりしていつ仕事してるのかよくわからない人です。
もう40近いのにすっかり窓際社員なんじゃないかな。
私「ちょっとお邪魔してっていいですか?家はみんなイチャイチャラブラブチュッチュで…ふう」
トレック「そりゃ居心地悪かったね。いーよ、ヒマだし」
…やっぱりヒマなんだ。大丈夫なのかなこの会社。
私はトレックさんの膝に腰を下ろすとひたすらひたすら愚痴愚痴愚痴。
まったくもう、みんな遠慮なくハートマーク飛ばしまくって。困ったものですよ。
こうして聞いてくれるのはトレックさんくらいですよ。ぷん。
私「それでそれで…トレックさん?」
相槌が無くなりました。あ、そろそろかなって思ってたんですけど。
トレック「Zzzzzz」
寝てるし。もう。
人の話の途中で寝るなんて何事ですか。
罰として私の寝台になるように。社長令嬢に逆らうなんてありえないですからね。
私はトレックさんに背中預けて寝ました。あったかくておっきいなあ。もう。

 

Zzzzzzzz

 

終わり。