注意!
ミネルヴァちゃん視点なので、苦手な方、「ミネルヴァちゃんはそんなこと言わない」な方はスループリーズ
「ミネルヴァ。やはり私は、未熟だ……」
1日の終わり。大空を飛び回った翼と、潮風を浴びた鱗の手入れをしてくれた主の呟きを、竜は静かに聞いていた。
「大切な者を守れるよう、強くなりたい。
仲間を、友人を、家族を……誰より強い父さんや母さんだって守れるくらいに、強くなりたい」
知っている。竜は主のことを、生まれた時から知っている。
受け継いだ才能に驕らず、ずっと努力してきたことを、知っている。
「まだ私は、その域に達していない。
だというのに、『特に大切な人』を作るなど……」
何か悪いのだろうか、というようなことを、竜は思考した。
番(ツガイ)を望むのは生物の本能だ。主の母、前の主も、主の父と番になり主を産んだ。
「しかも、3人も……」
強い雄が、複数の雌と番になる。普通だ。少なくとも竜にとっては。
残念なことに、竜の番に相応しい雄とは出会えなかったため、竜に伴侶も子も居ないが。
主の父も、妻を複数持つ、強い雄だった。
彼が人間であったのは、竜にとって惜しいことだが、おかげで前の主が幸せそうなので良しとしよう。
「私は、もっと強くならねばならない。
ノワールも、シンシアも、デジェルも守れると、確信できるくらいに。
…………父さんくらい、強くならなければ……」
じいっ、と主を見つめる。
目元の覆いで遮られているが、目と目を合わせ、覗き込む。
不思議だ。
誰かを確実に守るなどということは、不可能だ。
何が起こるかは誰にも分からない。万全の備えなど存在しない。
主の父とて、限界はある。
それを、妻を持つ条件にするとは、主は番をなす気がないのだろうか。
「……こうして瞳を見ても、まだ私には、お前が何を考えているのか分からないな……。
やはり私は、未熟だ……」
竜にも、主が何を考えているのか、理解はできない。
それでも良い。
それで良い。
竜はただ、主を乗せ、主と共に戦い、主が守ると決めた者を守る。
主が番をなし、子をなせば、それらも己の『家族』として守る。
それだけで、竜は良い。