「ふーんふんふんふーんふーん♪」
畳にうつ伏せで寝そべって、手強いシミュレーションな鼻歌に合わせ、足をパタパタと交互に振る姉、ミカヤの姿を、アイクは呆っと眺める。
ふと、「触れたい」と思った。
小さな身体に相応の、小さな頭。
そこから流れる、銀の髪。
髪の間から覗くうなじ。
華奢な肩、腕、腰、脚、その全てに。
何故なのか、分からない。だが、「触れたい」と、思った。
「姉さん、少し良いか?」
「んー、いいわよー、なにー?」
彼女の頭の横に腰を下ろして、手のひらをそれに乗せてみる。
「?? どうしたの?」
想像よりも、眺めていた時に感じた以上に、小さかった。
その身体が小さいことは知っていた。
その背中が小さいことは知っていた。
その手のひらが小さいことは、知っていた。
そして同時に、幼い自分を守ってくれた、それらが大きいことも、知っていた。
「…………分からん」
「いや、わたしも分かんないから……っととと」
無遠慮にその両脇に手を差し入れ、持ち上げた彼女を、膝に乗せる。
本当に、軽くて、小さかった。
「……………………分からん」
頭の中は、「触れたい」と「足りない」ばかり。
空腹にも似ているが、どうすれば癒えるのか、この感覚が何なのかすら、分からない。
ただ、自分を守ってくれた、自分が守りたいと誓った、守るために強くなった、この女(ヒト)に、触れたい。
「ほんとにどうしたの? あ、お姉ちゃんに甘えたくなっちゃった?
もー、いくつになってもしょうがないんだからー」
自分の腕の中で、姉として朗らかに笑う女(ヒト)に、弟扱いされることに、心臓が強く鼓動する。
この女(ヒト)は姉で、自分は弟だ。
それが事実だ。
当たり前だ。
ならば、この感情は……苛立ちは、何だ。
今まさに触れているのに満たされない、この飢えは、何だ。
「……分からんが、姉さんが言うなら、そうなのか」
だから、壊さないよう細心の注意を払って、抱き締める。
それしかできない、はずだから。
一方その頃の長兄
シグルド「KINSHINはここかぁーっ!!」
アルム 「兄さんストップ! 畑を荒らさないで!」
シグルド「うおっ! すまん!
……あれ? セリカはどこだ?」
アルム 「セリカなら、ノーマ様に用事があるって出かけたよ?」
シグルド「そうだったか……すまない……。
しかし、それなら、この不確かかつ強烈なKINSHINの気配はどこから……?」
アルム 「またAKJ絡み?」
シグルド「いや、彼女たちのような邪気は感じない……近いのは……。
そうか! エフラムとエイリークか! うおー! KINSHINは許さんぞー!」
カウントダウンは、水面下。