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Last-modified: 2017-09-23 (土) 23:07:12

エイリーク「はぁ!!」
エフラム「………」スッ
リン「せぇい!!」
エフラム「フッ!」キィン!

 

 エイリークの突きを紙一重で回避し続くリンの斬撃を槍で往なす。
 こうなっているのは彼が2人に何をしたとかではなく2人が彼に訓練を申し込んだのである。
 彼も2人の実力は認めていたが武器の相性もあり2対1で訓練をしたのである。

 

エフラム(2人の速さ、技術は十分、連携もしっかり取れている……しかし……)
エフラム「はぁ!!」
リン「キャ!」
エイリーク「………!」

 

 一度区切りを着けるため一気に終わらせることにした。
 リンが斬りかかってきたタイミングを図りカウンターをぶつけ、柄で彼女の剣を弾き飛ばし、そのままの鋭い突きでエイリークの喉元に穂先を突きつけた。

 

エイリーク「……負けてしまいましたか」
リン「やっぱり、兄さん強すぎよ」
エフラム「いや、2人も十分強かった、剣も速く、鋭く、その技も高い、そして何より2人の連携が抜群だった……2人が万全だったら、危うくなってたかもしれん」
2人『……………』
エフラム「……何を迷っている?」

 

リン「そっか……そこまで、解っちゃうのね」
エフラム「2人の剣に迷いがあったのは明らか、それ故にその力を鈍らせていた」
エイリーク「兄上……その、聞いて頂けますか?」
エフラム「ああ、俺で良ければな」

 

 それからエイリークに語られた事、今の恋人達の生活を喜ばしく感じながらも更に愛を求めてしまう自分。
 彼らを大切にしたいと思いながらこのままでは彼らへの負担を大きくしてしまう不安、そして新たな相手の存在。
 実はリンの悩みもほぼ同じであった。
 彼は悩む、大切な妹達のこの様な話はやはり寂しく感じる。だが答えなくてはならない。
 何故なら、そこはかつて自身も通った道なのだから。

 

エフラム「エイリーク、リン」
エイリーク「はい」
リン「何かしら?」
エフラム「お前達の恋人は、新たな相手の存在を受け入れられないと思っているか?」
エイリーク「いいえ、もしそのような思いがあったら、現状の様にはなっていません」
リン「みんなと共有でも、私を愛したいし愛して欲しい、そう言ってくれたわ」
エフラム「そうか、エイリーク、新たに想う相手がいると言ってたな、その相手はお前をどう思っていると感じてる?」
エイリーク「前にお話した際は、少なくとも嫌われてはいないと思いました。
      そして、出来るなら、私も彼女と愛し合いたいと思っています」
エフラム「そうか……最後に聞く、エイリーク、お前は彼女の全てを背負う覚悟があるか?」
エイリーク「……………」
エフラム「……………」
エイリーク「はい、あります、私の全てを持ってしても、彼女と、そしてみんなと共に生きていきます」
エフラム「そうか、リン、お前はどうだ?」
リン「私は、みんなが告白してくれたあの日から、覚悟が出来たわ、そして、兄さん達が背負ってた思い、少し解ったわ」
エフラム「そうか……なら、これは伝えて置く……誠実さを、忘れるな」
2人『………………』
エフラム「今いる相手にも、新たに迎える相手にも、決して、その想いを踏み捻らず、しっかり向き合うんだ」
エイリーク「兄上……ありがとうございます」
リン「ありがとう、兄さん、兄さんの想い、伝わったわ、それで、どうしてそれだけモテるのかも、少し解った」
エフラム「そうか?」
エイリーク「ええ、ありがとうございます、兄上、これから、リオン達と話をしてきます。
      兄上に相談して良かったです」
エフラム「俺も、お前達の助けになれたなら良かった。また相談があったなら来ると良い、いつでも話を聞こう」
リン「ありがとう、兄さん」
エイリーク「ありがとうございます、兄上、私、頑張ります」

 

 それから数日後、クロルフ夫妻に1つの葉書が届いた、そこにはエイリーク達優女王家に混じり、幸せそうに微笑むティアモの写った写真があった。