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Last-modified: 2017-09-26 (火) 23:10:42

「……くぉ……」
 朝。起床とともに第一声。夜戦で乱れた上に寝乱れた長い長い髪が絡まないよう、慎重に起き上がる、紫の毛玉もといソファーヤ。
 立ち上がって手櫛で整えると、癖のない髪はすぐさま真っ直ぐに地面へ流れる。いつもズルズルと引きずっているのに、枝毛も傷みもない。
 覇王家の姉妹からも羨ましがられる髪質。特に、毎朝寝癖に悩まされているらしいアクアから。
 そのアクアだが、既に寝室には居ない。
 エフラムたち訓練組よりも早い彼女のこと。とっくに、人目に触れないよう寝癖を直し、完全防音仕様の自室で歌唱トレーニングだろう。
 他に、エフラム、ネフェニー、アメリア、カザハナ、ンン、ミルラといった訓練組も、ランニングを終え庭で稽古する音が、かすかに聞こえてくる。
 そして、エリーゼ、サクラ、イドゥン、セツナの家事組は、朝食の支度をしているのだろう。1階から味噌汁の香りがする。今朝は白夜風のようだ。
 残っているのは、ノノ、チキ、大人チキ、ファ、ミタマ、キヌ、ベロア、そして先日加わったヴェロニカ。
 ノノチキチキファの朝に弱い組は、学校等に遅れない程度の時間に起きる。
 ミタマは常に寝ているが、朝食の席には出てくるので問題なし。
 キヌとベロアはその時々だが、今朝は互いの尻尾を抱き枕に、気持ち良さそうに眠っている。そっとしておこう。
 もぞもぞと尻尾を撫で合い甘噛みし合い、くぐもった声が漏れている気がするけれど、そっとしておくと決めたので聞こえない。
 ヴェロニカは、サラ曰く夜行性というものらしいので、昼頃まで確実に起きない。
 夜に無理やり寝かされるせいで日中に目が覚める、と愚痴を言っていたが、以前はどんな生活だったのか、ソファーヤには想像もつかない。
 既に起きてここに居ない最後の1人、サラは、日によりけり。
 エフラムたちの稽古を眺めていることもあれば、居間で朝食を待っていることも。稀に、朝食作りに参加していることもある。
 家の中に居ない場合は、ロプト教団に行っているらしい。何をしているのかは分からない。

 そうこう考えている間に、寝室の隅に並ぶ服の中から、自分の物を探し出す。
 昨夜は始める前に脱いで畳んでおいたから良いが、着たままいたしてしまった日などは、適当なタオルだけ巻いて自室に服を取りに行かないといけない。
 各自の自室及び寝室がある覇王家の2階以上は、部外者立ち入り禁止だ。たまに、服を着るのを面倒臭がる人も居るから。ノノキヌベロアのことだが。ヴェロニカもかも知れない。
 ともかく、朝の身仕度は完了。洗面所で、21本の歯ブラシから自分のを選び、歯磨きも万全。

 

「…………おはよう、ございます……」
「おはよーソファーヤ! 今朝はサクラ特製白夜風だよー!」
「エリーゼさん……! わたしだけじゃなくて、4人で作ったんですから……!
 あ、ソファーヤさん、お早うございます」
「おはよう、ソファーヤ……」
「……おはよー……」
「ソファーヤ姉様、お早う」
 朝食を作ってくれた4人と、テーブルに着いてスマートフォンを操作していたサラに、朝の挨拶。
 しばらくしたら訓練組が戻ってきて、ヴェロニカ以外の寝坊組が起き出して、アクアが自室から下りてきて。

 

 そして今日も、1日が始まる。