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Last-modified: 2017-10-07 (土) 22:16:54

「あら。ここって、カムイ姉さんの……」
「来たことがないと思ったが、違ったか?」
「……言われてみると、ここで買い物したことないわね……」
 毎度お馴染み、カムイのデパート。買い物ネタと言えばここである。商店街は、きっとネタにならないところで食品や日用品を売り生き延びている、と信じる。
「せっかく丸1日休みなら、普段は来ないところの方が良いだろう」
「そうね。こんな機会でもないと、確かに来そうにないわ。店内で布教したら追い出されるでしょうし」
「当たり前だ。……まあ、今日くらい、布教のことは忘れて楽しもう」
 無意識にミラ教関係へ話が行きそうになったセリカを、軌道修正するトリスタン。
 彼女のこれは、職業病のようなものだ。彼の対応も手慣れている。
「……とは言っても、私アクセサリーとか服とか、よく分からないんだけど」
「それも含めて経験じゃないか? 俺も良く分からんから、店員に聞いてみよう」
 言うや否や、近くに居た店員に声をかけるトリスタン。コミュ力高ぇ。
「すまない。彼女に似合うアクセサリーを探しているんだが……」
「まぁ! 彼女の〜! かしこまりました〜! 少々お待ちください〜!」
「……なんか今、『彼女』の意味がすれ違わなかったかしら?」
「俺もそんな気がする」
 ガールフレンドとかスイートハートとか、そんな意味合いだろう。
 勘違いに気付いたものの、嬉しそうに案内する店員の様子に、2人揃って「まあ良いか」と頷き合う。気分良く仕事をしてもらって、悪いことも無い。
「そうですね〜、お客さまの鮮やかな赤い髪と瞳に合う物ですと〜……あっ、普段はどの様なお召し物を好まれますか〜?」
「ミラ教の修道服ね」
「セリカ、それは普段着ではなく仕事着だ」
「う〜んと〜……今のお召し物に合わせますと〜……わわわっ!?」
「きゃっ! だ、大丈夫!?」
「す、すいません〜……う〜……お客さまに助けていただくなんて〜……」
「……何に躓いたんだ、いったい……」
 ボケた会話や店員のドジを挟みながら、3人でアクセサリーを選ぶ。
 ミラ教徒としてではない、ただの少女としての、初めての経験を、セリカは楽しんだ。

 

「……あの店員さん、どこかで見たことがあると思ったら、カムイ姉さんのお嫁さんだわ」
「女帝の妻なら、セリカにとっては義姉に当たるか。明るくて良い人だな」
「…………ああいうタイプが好みなの?」
「人を、1つの側面からで評価すべきじゃないだろう。様々な美点や欠点が合わさってこその『人』だ。」
「……正論ね」
「セリカの、自分の信じるものを他者に伝えようとする姿勢も、強引な部分が目立ちがちだが、その懸命さは好ましいと、俺は思う」
「………………家族以外から、そんな風に言われたのは、初めてだわ」
 昼食時のレストランの順番待ちにて、2人の会話に周囲は砂を吐いた。ギップリャ。

 
 

 ちなみに食事は、カムイから直々に頼まれ、やる気に満ち溢れたジョーカーが魂を込めた、素晴らしく美味なものだった。

 
 

「セリカがデートかー。いいもの見ちゃったなー♪」
 女帝陛下は、今日も御機嫌麗しい。

 

カムイ「アパレル関連とかアクセサリーはウチの自慢だからみんなも来てね」
エフラム「お前のところはたまに変な仮面とか売ってるんだがあんなの誰が買うんだ…?」