65-295

Last-modified: 2017-10-15 (日) 22:01:42

『転』や『結』と言うには弱いですが、この2人はまだまだこれから、ってことで

 

誰かがトリセリグレーゾーンネタ書いてくれたら全力で便乗しますけどね! 我慢できなかったら自分で書きます
いくぞセリカ独身派ーーーーネタの貯蔵は十分か

 
 

「今日は楽しかったわ」
「それは何よりだ」
 夕日に照らされる帰り道。
 自然と車道側を歩くトリスタンに、家まで送られるセリカ。車道と言っても、町の中を走るのは主に馬だが。時々馬車、希に獅子舞。
「カムイ姉さんのところ、あんなに沢山お店があったのね……丸1日かけても回りきれないなんて」
「……良ければ、また行ってみるか? 今日行った店も、次に行けば新しい物があるかも知れん」
「そうね……その時は、またエスコートしてくれる?」
「もちろん」
 1歩1歩前へ。家路を歩く。
 緩やかな時間は、いつの間にか過ぎ去り、目の前には兄弟家。
 母屋より大きな離れ3つに囲まれた、セリカが生まれ育った家。
「……改めて……今日はありがとう。楽しかったわ」
「ああ。俺も楽しかった」
 夕焼けを背に振り向いたセリカの髪が、赤く赤く輝く。
 そして、その顔も、逆光でありながら明らかなくらいに、赤く染まっている。
「……だから……これは、あくまでも……ただのお礼だから……」
 頬に触れる一瞬の柔らかさ。
 離れていく、俯いたセリカの顔。
 目に染みるほど、夕日が赤い。
「〜〜……ま、またね!」
 トリスタンの反応も返事も待たず、セリカは玄関へ駆けていった。
「……ああ……また、な……」
 一人、ポツリと呟く彼の顔も、夕焼けに照らされて真っ赤だった。

 
 

「…………敷地周辺の警戒監視をしていたら……」
「青春……」
「甘酸っぱいわー……」
「少女漫画ね」
「マウストゥマウスで行けば良いのに」
「ああいう奥ゆかしさも、また乙なもの」
「この件は、サラ様に報告?」
「あの2名は調査対象のリストになかったけれど、目撃した以上はね」
「情報の取捨選択は任務に無い。得た情報を報告するだけ」
「それが必要なものか否かは、サラ様が判断なさること」
「サラ様があの2人の後押しを決められれば、その時は我々の役目」
「若いって良いわね……」
「我々もまだ若いはず」
「そう。主様が求めて下されば、いつでも応じられる」
「しかし、ご主人様はメイドにそういうことを命じない、と」
「……言うな」
「はー、青春したい」
「マッサージだけが救い……」
「あれはスゴすぎ……中毒になる……なった……」
「はいはい。その特別報酬をいただくためにも、仕事しましょ、仕事」

 

 黄昏時の誰そ彼に、物陰に潜む影が十数。
 警戒任務は、異状が無いと暇である。
 休憩中の者のみならず、付近に居た者まで覗きに集合するくらい暇である。働け。

 

結と言うかオマケ

 
 

セリカ 「………………よし、顔が赤いのは戻ったわね……。ただいま」
シグルド「お帰り。少し遅かったが、どこかに出掛けていたのかい?」
セリカ 「そう言う兄さんは随分と早いわね」
シグルド「最近、残業が少なくなってね。今日なんて、定時前に仕事が済んでしまったよ」
セリカ 「その調子なら、前よりは家族サービスできそうね。ラケシス義姉さん、言葉にはしないけど、寂しそうだったわよ?」
シグルド「そうだな。これからは、もっと一緒の時間を作れるよう頑張るよ」
セリカ 「私も、もっとミラ様の教えを広めるためにも、布教を頑張らないと……」
シグルド「熱心なのは良いが、無理はしないように。今日はまた白夜地区かい?」
セリカ 「? ああ、今日は布教じゃないわ。……ちょっと、デートにね」
シグルド「なにぃっ!?!? い、いやしかし、KINSHINセンサーに反応は……!?」
セリカ 「アルムは奥さんたちと過ごしていると思うわよ」
シグルド「な、なら! いったい誰と!?」
セリカ 「んーぅ…………秘密。と言うか兄さん、KINSHINでさえなければ何でもいいんでしょ?」
シグルド「しかし……だが……セリカはまだそういうことは早いんじゃないかとか……」
セリカ 「私より年下の義姉義兄が大勢いる我が家で、それを言うの?」
シグルド「ぬぐぅ……!」
セリカ 「それじゃ、夕飯まで部屋にいるから」
シグルド「ぬぐぐぐぐぐ……!」

 

ラケシス「シグルド様、まるで娘に彼氏ができた父親みたいですね」
ミカヤ 「長兄と末妹っていうのと、KINSHIN関連で口うるさくしていたのがあって、シグルドとセリカは父娘みたいなものだからねー」
ラケシス「妹に彼氏ができたかも、で、あの調子では、本当に娘が嫁ぐ時はどうなることか……」
ミカヤ 「あはは……よろしくお願いするわね、ラケシスちゃん」
ラケシス「はい、ミカヤ義姉様」
ミカヤ 「とりあえず、シグルドが心配する対象になる『娘』が早く見たいなー、なんて」
ラケシス「そ、それについては継続して努力していく方向で!」
ミカヤ 「まーまー。焦んなくてもいーわよー。きっとあと数年以内だろーし、あっという間よ」

 
 

「……そう……セリカとトリスタンが、ね……」
「動かれますか?」
「あの2人は、ゆっくり進んでいる間は急かさないつもりだったけど……そうね、情報を集めなさい。
 まずは現状の掌握よ。ベルクローゼンの動員を許可するわ。徹底的に秘密裏に調べ上げて」
「御意」
「それから……アルム村とノーヴァ修道院に、噂を流してみようかしら。そっちがどう動くかも調査対象よ」
「全てはサラ様の御心のままに」
「ふふ……これからどうなるのか……楽しみね」

 

 クスクス、クスクス、クスクスと、楽しげに愉しげに、幼女は笑う。

 

「誰もが幸福なんて夢物語だとしても、幸せになれる人を幸せにするくらい、許されるでしょう?」

 

 ずっとずっと、独りで寒くて寂しくて、やっと幸せになれたから、もっともっと幸せが見たくなる、欲しくなる。