キヌの誕生日なので……グレーです、ゆるして。自重はリワープでどっかに行きました
思えば、最初からキヌの様子はおかしかった。ノノやベロアのように誕生日の日付になってからすぐ突撃してくるものかと思っていたが。
「エフラム……一緒に寝よ?」
と、文字通りの意味で一緒に寝ることを提案された。いつもは別の意味も含まれることが多いが。
夜はそのままキヌと抱き合ってベッドに入った。寝間着越しに擦り付けられる肌と、しっかり乾かしつつも残る湯上りの気配。
何度かキスをせがまれたがそれ以上のことはなく、そのまま寝た。
「ちゅーしてくれなきゃ起きないー」
「……それなら、こうだ」
朝にそういってごねるので、不意打ちで少し深めにキスをしてやった。
「っ……えへへ」
刺激してしまったか、と思ったが、キヌは幸せそうに笑うだけで特に何も要求してこなかった。
笑顔が可愛らしかったのでそのまま抱き寄せて愛でていたら朝食の時間に遅れてしまった。
朝食を食べた後、二人で遊びに行きたいと言うので外出することにした。
予定や目的地は特に決めていない。キヌも予定は決めておらず二人で遊べればそれでいいと言うので、歩きながら考えることにした。
二人で目的もなく公園を歩いたり、目についた店のウィンドウを見るだけのことも、片腕にかかるキヌの重さと感触があるだけで代え難いものに感じるのは気のせいではないだろう。
「んー……いいなあ……これ……」
「……ん? どうした?」
立ち寄った白夜の小物を扱っている店で、キヌが神妙な顔をして何やら唸っている。
何かと思って見てみると、狐をモチーフに可愛らしくデザインされた根付を熱心に見つめていた。
店員に聞いてみると、素材からこだわって作られた中々にいい品のようだった。
財布が少し……いや、かなり軽くなるが、キヌに買ってやることにした。
値段を聞いてからキヌは難色を示したが、誕生日なのだからこれくらいは当然と言い、包んでもらった。
「ありがとね……アタシも別のときに恩返ししちゃうから!」
物理的には大して軽くはなっていないが、感覚的にはかなり軽くなった財布をしまいつつも、この笑顔のためなら安いものだと改めて思った。
「ふー、あの店結構おいしかったね。……ん……次どこ行こっか?」
昼食を済ませ、再びキヌを腕を組んで歩く。時刻は昼過ぎ、午前と変わらず、予定などは組んでいない。たまには今日のような無計画なデートもいいかと思う。
「そうだな……どこか体を動かせるところにでも行くか?」
「……うん……そう……だね……」
「……どうした?」
キヌの様子がおかしい。足を止めて強く俺の腕にしがみついている。息も荒く、何やら辛そうにしている。
「あのさ……最近……二人で出かけてなかったよね……それで……アタシ……今日は何でもいいから普通のデートがしたくて」
キヌが呼吸を整えながら話す。さらに強く俺にしがみつき、瞳は潤んでいる。
「でも……二人きりで……始まっちゃうと絶対抑えられないし……でも……もうだめ……身体すりすりしたいよぅ……」
話を聞いて俺は全てを理解した。キヌは己の衝動を忘れたわけでも我慢していたわけでもない、溜め込んでいたのだ。
「ひゃっ!? エフラム!?」
俺はキヌを横抱きにして家まで全速で駆けた。人目などは気にしないしする余裕もない。
家に到着すると乱暴に靴を脱ぎ棄て、そのまま自室にまた全速で向かう。
「わ!? ……ん!? む!? んんぅ……ふぅ!」
キヌをベッドに放るとそのままキヌに覆いかぶさり、唇を奪う。着物の隙間からキヌの胸元に手を入れ、俺の手に収まりながらもはっきりと自己主張をするそれを掴む。
「ちゅ……ぅ……はぁ……はぁ……」
「……我慢していたんだな。でも、それは俺も同じなんだ」
キヌが自分を抑えていたのはよく分かった。だが俺も限界だった。夜から今に至るまでキヌの感触、熱、香り、愛らしさに散々曝される中で踏み込んだことはしなかった。
今日はキヌのための日なので、キヌから何か言い出すまでは俺から積極的に迫るのはやめようと思っていた。
しかし、それももう無理だ。今の俺はこの可愛すぎる生き物を自分の好きにしたいという思いに支配されていた。
「もう抑える自信が無い、……いいか?」
「うん……いいよ……来て……」
「えへへ……」
腕の中のキヌが昼間買ってやった根付を眺めながら幸せそうな表情をしている。布団の中で振れる尻尾が素肌に当たって少しくすぐったい。
「そんなに気に入ったか、それ」
「うん! すっごく可愛いし、エフラムが買ってくれたものだからね。大事にするね!」
「俺も、お前を大事にするからな……」
キヌを抱き寄せ、頭を撫でる。その名の通りに絹のような触り心地の髪と、触るたびに軽く跳ねる狐耳の感触が心地良い。
「あ……エフラムに撫でられると、いつもと違う気持ちになるの……」
そのまま背に手を回して抱きしめる。首筋にかかるキヌの吐息が暖かい。
「胸の奥がじんじんする……それから、とってもあったかい……」
キヌの体温を感じながら愛らしさを人の形にするとこうなるのかというようなことを漠然と考えていた。
先ほどまでの姿とはとても違うなとも思った。先ほどまでは────
「ふぅ……ちゅ……はぁ……ん……っ!」
「……っあ! もう……子供できてもエフラムが全部飲んだらダメだよ……?」
「ベロアみたいにおっきくないけど……できるくらいはあるんだからね……ん……っ……」
「……されてばかりだと悪いからな、俺からも……」
「あ……ダメ……そんなにしたら……っ!」
「っくぅ! ……これ……体が……かっ……て……に!」
「ん……っ……む……ん……んんっ!? ……はぁ……ふぅ」
「あ……このかっこ……すき」
「……これもだろ?」
「あ! ダメ! 尻尾と同時……は!」
「……やりすぎたか?」
「……はぁ……はぁ……ダメ……やめない……で……やめちゃいや……」
「……っ! ……エフラムぅ!」
「…………ぁ…………あつ……い……」
「……あ、もう元気になってる」
「……悪い」
先ほどまでのキヌの艶姿を思い出すと、あれだけ連戦したにも関わらずに気力が滾ってきてしまった。
「いいよ……こういうときは断らないから。アタシ、いい奥さんでしょ?」
「ああ……愛してるぞ……キヌ」
「大好きだよ、アタシの旦那様……」
仰向けに身体を投げ出しながら腕を広げるキヌを見て、俺は理性を再び頭の片隅に追い払った。