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Last-modified: 2017-10-04 (水) 23:37:51

 我々はロプト教団から、サラ様の命によりここ覇王家へ派遣されたメイドだ。
 表向きの職務は、温泉の維持管理、となっている。
 主様であるエフラム様たちが御利用される前後に清掃し、修繕が必要な箇所を探し処置するだけなので、こちらはすぐに終わる。
 では、真の職務は何なのか。それを語る前に、我々の保有スキルについて話そう。
 白暗夜地区に連行され、「兄様曰く、意志と努力で壁は超えられるそうよ?」と思い出すだけで寒気がする訓練を課された我々は、全員が、以下のスキルを持つ。
 深窓の令嬢、ご奉仕の喜び、魔殺し。ここまでは良いだろう。現在の兵種はメイドなのだから。
 しかし、これに加えて、四牙、負の連鎖。
 どうやってこんなスキルを獲得したか? 私が聞きたい。訓練中は死に物狂いだった。白夜伝統の忍育成法は頭がおかしい。死の吐息、力封じ、守備封じ、偶像の幻、奇襲の牙等を覚えた者も居る。
 メイドになれるなら、忍にもなれる。忍になれば、白夜軍の上忍が持っているスキルも会得できる。
 いやその理屈はおかしい。色々とおかしい。だが誰も止めない。サラ様に抗う術など、我々には無い。
 そう、我々はメイドになる前に、上忍として徹底的に鍛えられた。蛇毒、滅殺、暗器の達人といった兵種スキルも持っている。
 しかも、その後に、メイドとしての訓練が待っていた。そしてこっちも地獄だった。レベル表記がバグり、何人かは、無限の杖を習得した。

 

 つまりは、我々の役割は、メイドとして以上に、教団情報部実働隊としてのものだ。
 覇王家の方々を影から護衛し、或いは各地で諜報。今のところ無いが、場合によっては暗殺も。
 加えて言えば、他家から派遣された者らの監視も兼ねる。主様の衣類を嗅ぐ程度は見逃す。実害は無い。
 敷地内の至る所に潜み、情報を収集し、要すれば武力を行使する。それが、我々ロプト教団派遣メイドだ。メイドとは何だったのかは、もう考えないことにした。

 

 ちなみに、葉っぱ対策のクリスナイフは、我々も装備している。もしも奴が覇王家のメイドに襲いかかったなら、即座に撃墜する。彼女らが自衛できる範囲なら任せるが、それを超えれば、慈悲は無い。
 隠密中の我々を発見し寄って来た場合、その嗅覚と執念には敬意を表するが、任務妨害と見なす。

 
 

そろそろ、「無限の杖持ちたちがフリーズ、ウィークネス、禍事罪穢を使った後、手が空いている人員で一斉にクリスナイフ」みたいな、葉っぱ対策マニュアル作られてる気がする

 

ミルラ「またずいぶん無茶な育成をしてますね…」
サラ「あら、兄様やアイク義兄様の訓練メニューの方が過酷じゃない?」
ミルラ「比較対象が間違ってる気もします、別次元です」
サラ「じゃあ十二魔将級育成コースよりましって言えばいいかしら」
ミルラ「よくわからないのです…」
サラ「カゲロウ義姉様に相談してもっと効果的な育成を考えるのもいいわね…」

 

マンフロイ「あれでもサラはかなり丸くなったのじゃぞ」
ベルド「確かに…我々に無茶振りもせずエフラム殿の画像や動画を編集しているのを見たときは安堵のあまり涙が出ましたぞ」
マンフロイ「うむ…そのためならメイドなどいくらでも派遣してやるわ」

 

メイドX「確かに訓練は辛かったけど……役得も無いわけではないし」
メイドY「……確かに」
メイドZ「あたしはこの前エフラム様がキヌ様とベロア様の三人で山に遊びに行ったとき隠れて護衛してたんだけど……
     キヌ様とベロア様のスイッチが入っちゃったのか……始めちゃって」
メイドX「まあ……そういうケースは割とある」
メイドZ「いやー……凄いもの見た。あんなに激しいなんて……ちょっと任務忘れかけた」
メイドY「私も……エフラム様とセツナ様が学校から戻られるのが遅いので様子を見に行ったとき……
     人目につかないところで愛し合ってました」
メイドX「……それも週2〜3くらいである」
メイドY「制服姿のセツナ様が壁に手をついて後ろからエフラム様の逞しい槍で激しく……」
メイドZ「それも凄いねぇ……」
メイドX「……私もエフラム様とチキ様と大人のチキ様が衣装の話で盛り上がっているときに、その場の流れなのだろうけど
     色々な衣装を用意されて始められて……」
メイドY「……おぉ」
メイドX「衣装には詳しくないからよく分からないけど、お二人の息の合った奉仕は正直目が離せなかった。
     ……その後お二人を行動不能にするエフラム様はもっと凄かった」
メイドZ「こういうときばかりは自分の隠密スキルの高さに感謝だよね」
メイドY「……というか、護衛というより皆様のらぶらぶたいむに邪魔が入らないようにするのがメインな気がする。
     そもそもエフラム様の方が私たちよりはるかに強いんだし……仕事的にはその方が楽だけど」
メイドX「まあ、確かに……」
メイドZ「役得っていえばさ……サラ様の『兄様から夜伽を命令されたら私の許可を待たなくていい』っての……どう思う?」
メイドX「サラ様の言葉に嘘はないだろうけど……エフラム様はそんな命令絶対出さないから」
メイドZ「だよねえ……はぁ」
メイドY「せっかくご奉仕の喜びを習得したんだから……ご奉仕だけならこっちから申し出てみるとか……」
メイドX「いいのそれ……」
メイドZ「あ、あたしこの前エフラム様が飲みかけで放置してたスポーツドリンクもらっちゃった」
メイドY「私も……エフラム様が夜の後始末に使ったタオルをちょっと」
メイドX「……まあ、そのくらいならいいでしょ」

 

メイドα「白暗夜家派遣のメイドは、少々私欲にとらわれすぎる者が多いかと」
メイドβ「ロプト教団の方は、顔を合わせる機会がなくて分からないわね」
メイドγ「常にエフラム様たちを護衛しているそうだから、近くには居るのでしょうね」
メイドα「飲みかけのお飲み物や夜伽の後に使用なさったタオルが紛失しているそうです。
     侵入者でなければ、彼女たちが持っていったのでしょう」
メイドγ「若いわー」
メイドβ「私もあと五百年若ければ……」
メイドγ「大人の方々も奥様として愛されているから、行こうと思えば今でも?」
メイドβ「兄のアイク様くらい守備範囲が広ければ、余裕かしら?」
メイドα「あなたたちまで、いったい何を言っているのです!
     私たちは、永らく竜王家に仕えて、御信任いただき覇王家に派遣された、名誉と自覚をもってーー」
メイドβ(メイド長の演説が始まったわね)
メイドγ(悪い人ではないんだけどねー)
メイドβ(真面目で、すごくプライド高いのよね)
メイドγ(生涯をかけてメイドを極める、って、私らの生涯、何千年だと)
メイドβ(とことん真面目なのよ)
メイドγ(そして、結婚はできそうに……)
メイドβ(言わないであげて。意外と傷付きやすいから)
メイドγ(ところで、さっきの「あと五百年若ければ」って本気で?)
メイドβ(そっちこそ、御寵愛を受けたいの?)
メイドγ(どうかしらね。少なくとも、短命な『人』を愛する覚悟はないわ)
メイドβ(……それもそうね。
     御嬢様たち……いえ、奥様方は、御理解なさってのことと、三巨頭様たちには宣言なさっていたけど)
メイドγ(まだ小さな御嬢様たちや、おっとりしたイドゥン様が、あんなに堂々と……あ、思い出したら泣きそう)
メイドβ(今泣いたら、メイド長の演説に感涙したと思われるわよ?)
メイドγ(涙引っ込んだわ)
メイドα「あなたたち! 分かりましたか!?」
メイドβ「はい」
メイドγ「もちろんです」