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Last-modified: 2017-10-05 (木) 22:36:24

どエロ黒アイクなんて需要ありますかね?
なんて聞かずに投下しちゃう
KINSHIN色々注意

 

ミカヤは感情豊かだ。
「こらリーフ!またあんたは勉強さぼって!」
ミカヤは表情豊かだ。
「あはははは!このイラナイツのコントってホント面白いわ〜」
「ミカヤ姉さんってお笑い好きだよね」
家族の前では、殊更目まぐるしく変化する。
「そしてアイク兄さんは笑わないわねぇ」
アイクは不愛想だ。
「そういうつもりはないんだがな」
家族の前でも、変わらず泰然としている。
けれども、見えているものがすべてではない。
「ミカヤ…」
耳元で囁けばミカヤの肩が微かに震えたことを、アイクは確かめた。
「…姉さん、洗濯物を干すんじゃなかったか?」
「え!?そ、そうね、そうだったわね。」
「俺も手伝うぞ…?」
「い、いいわよ。せっかくの休日なんだから、アイクはゆっくりしてなさいって」
悟らせないように震えを隠して、ミカヤは去っていく。
「最近アイクちゃん、お姉様を見つめてることが多いですわね」
「ホントホント。今もテレビ見ないでミカヤ姉さんの方ばっかじーっと見てたし。」
「なるほど、アイク兄さんもようやくミカヤ姉さんの美しさに気付いたか」
「なにっ!?KINSHINは許さ__」
「ミカヤ姉さんは危なっかしいからな。心配なだけだ」
アイクは微かに笑い、淡々と告げる。
「そーよそーよ、純粋に家族思いなだけじゃない。やーねシグルド兄さんったら」
「そーだそーだ」
「ぐぬぬぬぬ……」
だが、その笑みに隠された暗さは、誰も気づかない____

 

「はぁ……焦った」
洗濯物を干し終えると、ミカヤは疲れ切ったように壁に寄り掛かる。
「アイクってば段々場所を選ばなくなってきてるわね……」
視線とともに向けられた、燃えるような熱情を思い出し、
熱を鎮めるかのようにミカヤは己の躰を抱きしめる。
「流石にみんなの前であれは困るわ……」
「そうか、それは悪かった」
背後から突然投げかけられた言葉に、今度こそミカヤははっきりと肩を震わせた。
「ア、アイク……!」
緊張を隠せずに、ミカヤは背後のアイクに振り向く。
「ミカヤ姉さんが気付かないなんて珍しいな」
ミカヤの背後から腰に手を回し、アイクは囁く。
「それとも、聞こえないように閉ざしていたのか」
「だ、だめよ……!みんなが……!」
アイクは暗い笑みを浮かべ、告げる。
「皆出かけて行った。家には俺と『ミカヤ』だけだ」
「そ、そう……じゃあアイク、貴方も待っている人がいるんだから出かけ____」
「待っているのはミカヤじゃないのか?」
「え……」
腰を抱く腕が、滑るように上へと登っていく。
「だ、だめ!私は貴方の姉なのよ……もうこんなことは」
「別に抵抗しても構わないんだが?」
「な……!」
確かにアイクが己を抱く力は強くない。
しかし、ミカヤはその腕を振りほどけないでいた。
(ユンヌ……!)
それはいつものこと。
己の躰を女神に貸し出す。
己を誤魔化すための手段。
しかし________
「どうして……ユンヌが応えて、くれない……」
いつもならば喜んで飛んでくるその女神が、今日は姿すら見せない。
「ユンヌは今日はいない」
暗い瞳で、アイクはミカヤに告げる。
「どうする?『姉さん』」
「あ……あ……」
困ったような、怯えるような、恥じらうような。
しかしどこか期待しているような。
普段のミカヤなら見せない、そんな艶めいた表情でアイクを見つめる。
(そうだ、この顔だ)
アイクは己の昂りを抑えきれず、ミカヤを組み敷いた。

 

ミカヤは表情豊かだ。
だが、誰にも見せない顔がある。
「ア…アイク…!」
隠された「女」としての顔を知っているのは自分だけ________
(いや、違う。この顔を暴いていいのは俺だけだ…)
ミカヤが秘めれば秘めるほど、それを暴けば暴くほど
アイクは己の更なる昂りを自覚し、暗い悦びが胸を満していく。
そして、さらに激しく容赦なく貪る。
「……!……!」

 

ミカヤはまるで汚れを知らぬ鷺の民のように清らかで儚い。
こうして腕の中で微睡んでいる時も
笑っている時も、怒っている時も、泣いている時も
「女」として、組み敷かれている時も。
変わらず甘美な正の気で満たされている。
そして、それにに気づく度、アイクは己を熱を孕んだ負の気が満たしていくことを知る。
思えば正反対の姉と弟である。
儚さと逞しさ
魔法と力
清らかさと泥臭さ
正と負
女と男。

 

アイクは単純な男だ。
不愛想だがドライなだけで、己を隠すことはできない。
蒼い炎は冷たく見えるが、何よりも熱く激しく燃え盛る。
ミカヤは表情豊かで、愛情深い。
しかし、それ故に己を包み隠す術を知る。
夜明けが来れば誰しもがその眩しい光に目を向けるだろう。
だが、夜明けは昼ではない。
その陰で、冷たい闇の帳に隠されているものが確かに在る。
その闇を、暗い蒼い炎だけが、誰にも気づかれず暴くことができる。
「どうやら俺たちは、あまり似ていないようだ」
だからこそ、光に隠された闇を見つけ、その腕に抱くことができる。
「残念だな、『姉さん』」

 

アイクは単純な男だ。
己を隠す術を知らない。
故に、己の炎の底にある、暗い淵に気づけない。
本当はその夜明けの光で、己だけを照らして欲しいという望みを。
________未だ、気づけずにいる。