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Last-modified: 2017-11-01 (水) 21:48:58

シャナンが頑張ったのでこいつらも頑張らせて見ました。

 

閉店後の流星軒、今ここは異様な雰囲気に包まれていた。
いつもならば談笑しながら後片付けや明日の仕込みを行っているアイラとシャナン、スカサハ・ラクチェ兄妹は困惑した面持ちで席につき、その横ではドズルのバカ兄弟ことヨハン・ヨハルヴァが珍しく神妙な顔立ちで佇んでいる。
6人の視線の先、流星軒一家のかけているテーブルの上には………炒飯と餃子が並んでいた。

 

ラクチェ「一体どうしたの?いきなりオカモチ持ってやって来たと思ったら…」
ヨハルヴァ「ああ、突然押し掛けたのは謝る」
ヨハン「だが、とにかくまずそれを食べてみてほしいのだ」

 

いつもの二人からは想像も出来ない程の真剣なオーラに気圧され、4人はひとまずその料理たちに手を付けてみる。
そのお味は………?

 

ラクチェ「……う!?」
流星一家「「「「美味い…!!?」」」」
ヨハヨハ「「いよっしゃああああ!!!」」

 

シャナン「この餃子、餡の肉と野菜の塩梅が絶妙だ!味付けも主張しすぎず、野菜と肉の本来の味を引き立てている…」
スカサハ「餡もそうですけど、皮もモチモチで美味しいですよ!これ、手作り…?」
アイラ「炒飯は米がパラパラで炒め具合は完璧だぞ!」
ラクチェ「味付けも申し分ないし…コレ、二人が作ったの?」
ヨハルヴァ「おうよ!食材選びから盛り付けまで全部100%俺たちの手作りだぜ!」
ヨハン「ああ、これで今までの修行も報われるのだな…(感涙)」
アイラ「修行って、料理のか?何故お前たちが?」
ヨハヨハ「「それは勿論この店の跡を継ぐラクチェをサポートするため(さ/だよ)!」」
ラクチェ「知ってた」
スカサハ「というか前から気になってたんですけど、アンタら家業はいいんですか?」
ヨハン「そちらは順当にブリアン兄上が継ぐであろうから心配はない」
ヨハルヴァ「むしろ…まあ有り得無えだろうが俺たちがいるせいで跡目争いになったりとかは嫌だからな」
スカサハ「い、意外と家の事も考えてたんですね…」
ヨハルヴァ「ちなみに今調理師の勉強もしてるんだぜ」
ヨハン「ある程度基礎知識が身に付いたら、養成所に通うことも視野に入れている」
シャナン「成る程、今回はガチというわけか…」
ヨハン「いやこちらとしては今までもガチのつもりだったのだが…」
ヨハルヴァ「まあそれで埒が開かなかったから、今回はその想いを行動で示してみたわけだ」
アイラ(最初からそうしていれば良かったんじゃないか?)
ヨハルヴァ「とまあそう言うわけでラクチェ!改めて言うぜ!」
ヨハン「私達は君の事を愛している!」

 

ヨハヨハ「「どうか(私/俺)と付き合って下さい!!」」

 

頭を下げると共に差し出された二人の手を前に、ラクチェは激しく動揺していた。
いつもならば一発くらわせて叩き出している所だが、自分の為に重ねた努力をこうも判りやすく示されてしまっては話は別である。
料理初心者のヨハヨハがここまでの腕前になるまでどれだけ研鑽を重ねたか、同じく母の元で厳しい修行を積むラクチェには言われずとも察せてしまうのだ。差し出された二人の手が生々しい切り傷跡だらけなのも、その予想を裏付けている。
今までこの二人と付き合うなんて考えてもみなかったが、二人の想いが嬉しく無いという訳でもない。普段の気丈さが嘘のように、ラクチェは困惑してしまうのであった。

 

…二人が手を差し出して一分、二分と経ち、またいつものパターンかと諦めかけた頃、ふと二人の掌が柔らかな感触に包まれる。驚いて顔を上げた二人の目に映ったのは、何故かラクチェを押し退けてそこに立ち二人の手を握る、にこやかな笑みを浮かべたアイラであった。

 

《翌日》
スカサハ「ヨハルヴァさん、天津飯大盛二人前です!」
ヨハルヴァ「了解!」
シャナン「ヨハン、麻婆茄子一人前頼む!」
ヨハン「OK我が命に代えても!」
アイラ「そのふざけた返事次使ったら殺す」
ヨハン「ハイごめんなさい!」

 

ラクチェ「…で、母さんが『少し料理が出来るようになったからって今までの狼藉を精算出来ると思うな。本当に本気かどうか、うちで働いて誠意を示せ』って」
ラドネイ「なるほど、そんで今日からこき使われてるわけだ。…で、アンタ的にはどうなのよ、更正したヨハヨハ」
ラクチェ「う〜ん、ぶっちゃけあの二人と恋人に…なんて考えた事もなかったけど」
ラドネイ「けど?」
ラクチェ「ただの性犯罪者だったシャナン様があんなに立派になられたんだから、あいつらにもちょっとは期待してやってもいいかな…って」
ラドネイ「ふーん、いいんじゃないそういうの。似たような経験した私は今凄く幸せだし」
ラクチェ「…おのろけご馳走さま」

 

こうして少しはラクチェと距離の縮まったヨハヨハであった。
頑張れヨハヨハ!負けるなヨハヨハ!
とりあえず次の注文は唐揚げ定食2人前に炒飯3人前、餃子3人前に春巻きと麻婆豆腐がそれぞれ1人前だ!
ヨハルヴァ「死ぬわぁぁぁあああ!!!」
ヨハン「これが昼時の中華料理屋の恐ろしさだとでも言うのか…!」

 

ラクチェ「そういえばどうしていきなり料理やろうなんて思ったの?」
ヨハヨハ「「そ、それは…」」
ヨハン(更正したシャナン殿に君が向ける視線がとても輝いていて)
ヨハルヴァ(死ぬ程焦って死ぬ程考えた結果……なんて、みっともなくていえねえよ)
ラクチェ「?」