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Last-modified: 2017-11-06 (月) 23:16:36

リン「エリン姉さん、おはよう!」
エリンシア「リンちゃん、おはようございます。」
リン「エリンシア姉さん、お弁当ちゃんとラスの分も作ってくれた?」
エリンシア「勿論ですわ。リンちゃんのと同じメニューにしておきましたからね。」
リン「ありがとう!よーし!今日は頑張らなきゃ!」
ミカヤ「ふあ〜、エリンシア……朝ごはんって…あら?リン。大会は剣術の部は午後からじゃなかった?」
リン「ラスの応援に行くのよ。それに、高校上がったら弓の方もやりたいから参考に見ておきたいの。」
ミカヤ「勉強熱心ねえ。」
リン「エレブ高の特技推薦これで決めちゃうつもりだから、狙うは優勝ね!」
エリンシア「でもあまり張り切りすぎて、怪我などしないように気をつけるんですよ?リンちゃんも女の子なんですから。」
リン「ふふん、そこんじょらの男どもなんて、私にかかれば千切りよ!」
ミカヤ「あー、そういや男女混合の部もあったんだっけ……どうして自分で難易度上げちゃうかねー。」
リン「いいじゃん!その方が闘志が上がるっていうか……」
リーフ「流石戦闘民族サカ。」
マルス「これはメスゴリラの称号待ったなしですわ。」
リン「軟弱スターロードと葉っぱは黙ってらっしゃい!!」(ギリギリ)\スクリュードライバー/
マルス・リーフ\ヒトデナシー/

 

紋章町・闘技場

 

リン「あーもう!馬鹿二人を〆てたら遅れちゃったじゃない!まだ弓の部終わってないわよね!?」(ドタドタ)

 

アナウンス「これより紋章町武芸大会・弓の部、学生組の決勝リーグを行いまーす。選手の方は弓道場にお集まりくださーい。」

 

ディムナ「な、なんか最後の方まできちゃったなー。」(アハハ)
カレン「ここまで来るのって初めてじゃない?頑張ってねディムナ!」
レスター「くそっ!予選勝落ちとかまたエーディン・ブリギッド姉さんやアンドレイ兄さんにぶっ殺される……」(ガクブル)
スコピオ「同じく(ry」(死んだ目)
ウォルト「……やっぱり遊牧民には勝てないのか……?」(ウッ)
ロイ「ウォルト!明日からやっぱり特訓しよう!頑張れ頑張れ!やればできる!熱くなろう!」つ筋肉トレーニング本byバアトル
ウォルト「」
ウィル「いやー、残っちゃったなー。大丈夫かな、俺みたいな村人その3みたいなヤツが場違い感あるっていうか〜。」(タハハー)
レベッカ「ちょっとウィル!せっかくここまでいったんだからもっと緊張感持ってよ!!」
ウィル「ええー、でも俺が気張っても失敗するだけだし。気楽に肩の力抜いてた方が上手くいくって。」
レベッカ「それはそうかもしれないけど……」
ラス「……」(チラ)
シン「……」(ジッ)
ラス(……弓で他人に負けるわけにはいかないが……ここまで残るとは、昔は俺のを後をついて歩いていたシンも腕を上げたな。)
シン(……ラス様は弓の名手だが、俺とてサカの男……サカの弓使いとして、この人に勝ちたい……)
スー(二人とも最後まで残るのはわかっていたけど……果たしてこの勝負はどちらが勝つか……)
ダヤン(ラスもだが、シンも最近めきめきと実力を上げておる。力量は互角といったところであろうな。)

 

リン(やった!間に合った!)「ラスー!」(ブンブン)
ラス(リンが応援に来てくれている……弟分とはいえ優勝を渡すわけにはいかん!)\キリッ/
シン「……」
ダヤン「二人共に、迷いのない弓を。」
スー「……頑張って……」

 

弓の競技には、多数の種類があり、採点や勝敗が異なる。今この場で行われているものは的中制といい、4本矢(予選では2本)を撃ち、的を外したものから退場する方式である。
いわゆる集中力とその持続を求められる型であり、弓を扱う者の技術を純粋に引き出すやり方ともいえる。

 

モンケ「では、順に前へ。」

 

くじ引きで一番手はディムナ。初めて最後の四人に残ったということもあり、やはり緊張している。弓を番える手は震えてはいるが、それでも狙いを定めて一撃を放つ。
\タンッ!/
ディムナ(当たったッ!)
手ごたえを感じ、ディムナは同じ調子で矢を番え、放った。
\タンッ!/
二本目も命中し、そのままのペースを維持しながらディムナは3撃目を放とうとする。しかし……

 

クレア<●><●>「フフフ……ディムナ……私というものがありながら、黙って彼女を引き連れて出場なんて生意気ですわ!……でも応援はして差し上げてもよろしくってよ?」
デューテ「ねねえ、ボクのワープ役に立った?」
クレア「上出来ですわよデューテ!いい子いい子〜♪」(ナデナデ)
デューテ「わあ〜い////」

 

ディムナには見えてしまった……遠方より双眼鏡を覗き込みながらストーカーをするクレアの姿が……
ディムナ「ひっ!?」
一瞬のその迷いが、ディムナの構えを逸らしてしまった。三本目の矢は、的ではなく会場を隔てて行われている"社会人の組"の方角へと飛んでいってしまった……

 

アンドレイ\サクッ/「ぐふっ!」(ぱたり)
イグレーヌ「アンドレイさん!大丈夫ですか!?」
ヴィオール「だれかー!杖使いの人をお呼びして!貴族的に迅速に!」
シノン「これからとんぼ取りするはずが、逆とんぼ取りされたな……」
クレイン「そんなこと言ってる場合ですか!?」

 

ディムナ「は、ははは……こんなことで外すなんて、僕もまだまだ未熟者だな……」(フラフラ)
カレン「どうしたのディムナ?顔が真っ青よ?」
ディムナ「な、なんでもないんだ……」

 

ウィル「あちゃー、惜しかったなー。いい線いってたのに。」
モンケ「次の方、早くお願いします。」
ウィル「おっと、いけないいけない。」つ弓
ラス(相変わらず緊張感のないやつだな……)
ウィル「あっ、ラスさん!お互い頑張りましょうね!」(ヘヘッ)
ラス(まあそういうところは嫌いではないが……)(フッ)
リン(あ、ウィルも出てたんだ。久しぶりねー。レベッカもいるし、後でみんなで食事しよって誘ってみようかな。)

 

ウィル「えーっと、距離はこれぐらいだし、こんなもんかなー?」(チョイチョイ)
全ての武術やスポーツにいえることだが、勝負というものには精神力がものをいう。肩に力が入ると、余計な力を込めて本来の力を発揮できない。
緊張せず、常にリラックスした状態で試合に臨むということは勝負事においては最大の強みである。
ウィルが番えて放った矢は、緩やかな動きではあれど、しっかりと的を捉えていた。続けて放たれた2本目も、ゆるりと的を捉えていく。
ウィル(よしよし、調子いいかも。次もこの調子で!)
\ダンッ!/
ウィル(よおし!もしかして、パーフェクトいっちゃうのかな俺?)
ウィルは確かに調子のよさを乗せ、次の矢を放った。だが、ウィルは気づいていなかった。3本目の矢が刺さった時の"音"の違い……弓の弦の部分が少し緩んでいたことに……ウィルのおおらかな性格がここで災いしたのだ。
\キンッ!/
ウィル「あっちゃあ〜、やっちまった!」
ウィルの放った4本目の矢は、的を掠りはしたが刺さらず地に落ちてしまった。もし、ウィルが弓を引く力をもう少し強めに変えることが出来ていれば……ウィルの矢は4本とも的に刺さっていただろう。
ラス(……惜しい……)
レベッカ「もう!なにやってんのよウィル!だから弦を新しくしなさいって言ったのに!」
ウィル「ん〜、いけると思ってたんだよなー。張り替えるとまたコツ掴むのに時間かかるしさ〜、今月ちょっとサイフが……なっ?」
レベッカ「それはあんたが無駄づかいするからでしょ〜が〜?」(ゴゴゴゴゴ)
ウィル「いてて!ちょっ!グリグリ攻撃はすんなって!!」
ラス(……やつらしい敗因だ……さて……)

 

自分の番になり、ラスは呼吸を整える。ウィルは3本。つまり、自分は3本は刺されば決勝に持ち込める。だが、4本全てを当てなければラスのプライドが許さない。
リン「ラス!頑張りなさいよ!」
シン「……」
それは恋人が応援してくれているというものもあるが……勿論、弟のような少年が同じ場にいるということがラスのプライドを一層煽り立てていた。
ラスは指を立てて風をよみ、どの角度で、どの速度で、どの瞬間で射ればよいのかを感覚で感じ取った。そうして、風が静まったのを見計らうと、ラスは一斉に連続で矢を撃ちこんだ。

 

\トトトンッ!!/

 

モンケ「おおっ!」
軽やかな音と共に、無駄のない軌道の矢が的に全て命中する。それは完璧で非の打ちようもない、美しい弓の扱い。この瞬間、ラスが前の二者を下したということが決定付けられた。
リン「すっごい!パーフェクト!」
ダナン(こやつまた一つ、腕を上げおった……)
スー(やはり、ラス兄様の弓はいつ見ても綺麗……)
シン「……」

 

モンケ「それでは、次の方。」
ラスの完璧な発射を前に、シンは少しであはあるものの動揺していた。しかし、そこは彼もサカの弓を扱う男。呼吸を整え、精神を目の前の的のみに集中する。
衣服や髪を撫でる風から、ラスと同じように風をよみ、呼吸を合わせる。己の体が自然と一体となった時、シンは弓を引き、矢を放った。

 

\タン!タン!タンッ!/

 

ラスとは違い、3撃。そして、再び風の流れを読み、最後の一撃を放つ。

 

\タン!!/

 

ラス「!!」
ダナン「ほう。」
リン「ええっ!?」

 

シンは、ラスと同じく4本を全てを的に命中させた。それはシンがラスのプレッシャーに打ち勝ったという証であった。そのことに、シンは固く結んでいた口を少しだけ緩めた。彼はラスに追いついたのだ。
的が下げられ、新たな的が起こされる。もし、4本全てが射られた場合、試合は次はどちらかが外すまで続けられる。
それはすなわち、ラスとシンが極限の緊張状態での戦いをこれからお互いしなければならぬということであった。先に、1本外してしまった方が負けとなる。
しかしお互いの腕を見ていた審査員達は何を思いついたのか、ルールの変更を申し出た。

 

クドカ「双方、かなりの実力者とお見受けする。」
カブル「このまま射続けようと、長期戦となり長く時間を取った者の方が不利となる。」
モンケ「そこで、こちらの的の中心を先に射抜いたものを、優勝とするのはいかがが。」

 

用意されたのは、試合用よりも一回り小さい的である。材質も違う。つまりは一矢にかける一発勝負である。
ラス「俺は構わん。シン、お前は?」
シン「……私も、構いません。」

 

二人の意見は一致した。ラスは矢を番える時、一度シンの顔を見た。誇らしそうな顔だった。ならば、その期待に応えてやるのみ。
ラスは、新たな的を観察する。先ほどよりも、少し固めに作られているようだ。だが弓を引き絞りすぎると、軌道がずれてしまう。ラスは慎重に、力の加減を調節する。
しばらく集中し、矢とその行く先が読めたとき、ラスは矢を弓より放った。

 

\バシン!/

 

レスター「すっげえ!」
リン「さすがラス!」
放たれた矢は、的の真ん中を正確に射抜いていた。真ん中を射抜くということは、簡単に見えて意外と難しい。それも、新しく用意された全く異なる的をどう射抜けばいいのか、彼は一発で見抜いたのだ。
シンはただただ、感嘆していた。追い続けていたラスという存在がいかに大きいものであったのかを知ったのだ。

 

モンケ「ではシン殿、矢を番えられよ。」

 

矢を番える時。シンは不安と同時に、喜びを感じていた。憧れ追っていた背が今、同じ位置にあるのだと。震える手を押さえながら、シンは先ほど見ていたラスの動きを真似しようと試みた。
だが、途中でその行為の愚かさに気づき、構えを直した。追いつくということは、同じ事をすることではない……
シンは、ラスよりも少し低く構えると、風の動きを読んだ。この風は、変わる。ラスの命中させた真ん中に、自分も命中させるとなると、その矢を裂くほどの力がいる。
弓を引き絞ると、シンは風に身を任せた。風の赴くまま、心の赴くままに。心が自然と一体となったとき、シンは矢を放った。
スー「……あっ!」

 

その矢は、放たれた瞬間こそ見れば外れるかのように見えた。しかし、風の動きを得てシンの矢は軌道を変え、しなやかな動きで的の方へ吸い寄せられる。

 

\バン!!/

 

放たれた矢は、先ほど刺さったラスの矢を裂いて真ん中を射抜いた。会場中から感嘆の声が湧き上がる。ラスを応援していたはずのリンもまた、その腕にただただ唸った。

 

クドカ「二方とも、お見事。」
カブル「判定はいかがいたしますかモンケ殿。」
モンケ「……甲乙はつけられますまい。若い二人の技術を称え双方優勝、ということで。」

 

シン「……」(フウーッ)つ弓
ラス「……」(スタスタ)
シン「……?」
ラス「腕を上げたな、シン。」つ(ポンッ)
シン「……!……ありがたき、お言葉……」

 

リン「ラス!優勝おめでとう!……あと、シンさんも!」
ラス「うむ。紹介する。リンは初めて会うと思うが、シンだ。スーの幼馴染で、俺の弟のようなものだ。」
シン「……はじめまして……」
リン「よろしくね!」(ん〜、ラスと同じでちょっと無愛想だな〜。まあサカの男の人ってだいたいそうだけど……)
スー「ラス兄様、シン、二人ともおめでとう。」
ダヤン「午後からは二人とも剣の部に出るのであろう?剣の部でも活躍、期待しておるぞ。」
シン「……」(ペコリ)

 

リン「ふふん、二人とも剣の部じゃ、優勝は渡さないわよ?そうそう、お昼食べない?エリンシア姉さんにお弁弁当作ってもらったんだ。」
ラス「それは、ありがたく頂こう。」(フフフ)
シン(クルッ)\スタスタ/
リン「あれ?シンさん一緒に食べないの?」
ラス「おそらくだが、俺達に気を遣っているのだと思う。」
リン「そ、そう?ならいいけど……」
ウィル「おーい!リンディス様ー!ラスさーん!お久しぶりですー!!」(ブンブン)
レベッカ「ちょっとウィル!邪魔しちゃ悪いってば!」
リン「いいじゃないレベッカ。久しぶりなんだし、みんなで一緒にお昼食べましょうよ!」
ラス「そうだ、賑やかな方がいい。」
レベッカ「ならいいですけれど……」(もうウィルったら……ちょっとは察して欲しいわ!)

 

ウィル「んー!うまい!ここの弁当すぐ売り切れるんだよな〜。こんな機会でありつけるなんて、ラッキーですよ!」
レベッカ「ウィル?あんまり食べると失礼よ?でも、流石お弁当屋さんのはおいしいですね!」
リン「エリンシア姉さんのお弁当は栄養も考えてあるしね〜。でも、レベッカのもすごく美味しいわよ!」
レベッカ「今朝、野うさぎをしとめて作ったんです!」
ウィル「あっ、スンマセン。ちょっと引きますよね〜?狩猟系女子とか。」
ラス「いや、普通だが?」
リン「野うさぎって普通よね?あと鹿とか猪も買うより狩るわよね?」
ウィル「こ、こいつはグレートですよ……」

 

フィル「剣の部の優勝はいただくでござる!」(キリッ)
カアラ「ふう、久しぶりに道場の外で剣を振ることができるな。腕が鳴る。」
カレル「二人とも、試合は勝敗だけではなく相手から勉強するためにあるのだよ?」
キャス「うーん、みんな応援しなくちゃいけないから忙しいわー。」
バアトル「応援は任せよ!」

 

シャナン「今大会の目標は……打倒・カレル師匠!」
アイラ「すっかり浄化されて剣に励むようになってくれたな。これで心置きなく試合に集中できる。」
ラクチェ「母さん頑張ってね!」
シャナン「私は!?」
スカハサ「ホラ、まあ……応援しなくても頑張るかなみたいな。」
シャナン「ちょっと私頑張って更正したのに冷たくないですかね?」

 

マリータ「よっしゃ!優勝賞金はいただきやで!」
エーヴェル「マリータ、あなたは学生の組でいいんじゃないの?」
タニア「そーそ、無理すんなって。」
マリータ「何言うてんねん!賞金で義母さんに温泉旅行プレゼントしたんねん!」
エーヴェル「この子ったら……」

 

リン「続々と集まってきてるわね〜。よーし!頑張るぞー!」

 

サカの二人の剣術の腕前やいかに?そして、リンは果たして優勝できるのでしょうか?
<剣の部>に続く