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Last-modified: 2017-10-25 (水) 23:14:02

ライナス「畜生……シャナンの野郎……」
ロイド「そうだな……まさかあいつが、少女に対しそんな目を向けてたなんてな……」

 

 昼下がりの街中を2人の男が歩いて行く、街行く人々は2人の顔を見るなり、或いは2人の放つ雰囲気に押され道を開けて行く。
 2人はロイドとライナス、ベルン地区を縄張りとする組織「黒い牙」の頭の息子達だ。
 そして顔を知らない者達ですら道を開けるほど2人が苛立っている理由、それは2人が所属する『幼女守護同盟』の同志シャナンがベルン署に逮捕された事による。
 始めは未だ自分達の活動意義に理解を示さない石頭共の行動かと思った。だが、そうではなかった。
 彼は幼女、少女達を守護対象、或いは愛するものとして見るのではなく、己の性癖と欲望の対象として彼女達を見ていた……彼らにとっては最も唾棄すべき存在、真性のロリコンだったのだ。
 彼らが怒って居るのは勿論シャナンに対してもある、彼の欲望がか弱い少女達に、彼らの守るべき少女である妹のニノに向けられたらと思うと怒りがこみ上げる。
 それだけでなく、長年共に活動しながらそれに一切気付かなかった自分達も怒りの対象だ。
 そんな思いを抱きながら歩く2人、特に血の気の多い弟ライナスは苛立ちから視野が狭くなっていた。そして……

 

ドンッ!

 

??「キャ!」
ライナス「っ! 気を付けろ!」
??「何ですって!?」
ロイド「おい!ライナス、苛立ってるのは解るが堅気に八つ当りするな!!
    すまない、少し気が立っていてな、大丈夫か?」
??「え、ええ、私は平気だけど……って、あなた達」
ライナス「お、お前は……」
ロイド「確かエフラムやヘクトルの妹の、リンだったか?」
リン「え、ええ……そう言うあなた達は黒い牙の、よね?
   あんなに苛立って、どうしたの?」
ライナス「べ、別に何でも……」
リン「何てね、シャナンさんの件でしょ? エフラム兄さんがかなり落ち込んでたもの
   『俺は同志で、大切な仲間の事、何も解ってなかった』って」
ロイド「そうなのか……そうだな、あいつは誰よりも同志と仲間を信じていた、そして幼女達を守ると強く意気込んでいたもんな」
ライナス「だというのにあいつは……」
ロイド「それよりお前は何をしてたんだ?」
リン「特に……というかちょっとした気分転換よ」
ロイド「そうか……」
リン「………ねぇ、2人共、せっかくだからちょっと遊びにでも行かない?」
ライナス「はぁ?」
ロイド「おいおい、女の方から誘うのか?」
リン「正直今のあんた達の雰囲気見てられないもの、知らない仲じゃ無いしね。
   それに私だって逆ナンしたことあるのよ?……成功率0だけど(小声)」
ライナス「むぅ………」
ロイド「……そうだな、その提案受けるか」
ライナス「おい、兄貴!」
ロイド「正直このまま闇雲に歩いていても気分は晴れん、これで何らかの気晴らしになれば御の字だ」
ライナス「はぁ……解ったよ」
リン「決まりね、それなら早速行くわよ」

 

ゲームセンター

 

ライナス「オラァ!!」ドゴッ!
パンチングマシン「400Kg」
リン「うわぁ……すごいじゃない、こんな数字普通出ないわよ」
ライナス「へっ、これくらいなきゃ、あの曲者揃いの牙を纏められるかよ」
ロイド「よっ、ふっ!」
ダンスゲーム「Perfect」
リン「すっごい!難しい曲なのにこんな上手く行くなんて」
ロイド「これでもソドマスだしな、反射神経には自信があるからな、これくらい軽い」

 

サカ草原

 

リン「どう? この草原の広大な景色、何処までも広がる青空、そして抜けていく風」
ライナス「すげぇな……空って、こんな広かったんだな……」
ロイド「ベルンの裏路地からみる狭い空とは、比べ物にならんな……
    なあリン、何故、お前は俺達を誘ったんだ?」
リン「さっき言ったでしょ? 知らない相手じゃ無いし、あそこまで苛立ってるのが見てられなかったって」
ライナス「それを差し引いてもだ、俺達は男2人、お前は女1人だ、危機感とか無いのかよ?」
ロイド「それとも、俺達の事を男として見ていないのか?」
リン「そうじゃないわ、私は貴方達を男として見てるわよ……それもイケメンのね(小声)
   でも、あんまり危険とは思ってないわ、あなた達、エフラム兄さんの同志なんでしょ、それなら私なんて、範囲外じゃない?」
ライナス「あー」
ロイド「成程……言っておくがお前は勘違いしてるぞ」
リン「勘違い?」
ロイド「確かに俺達はあいつと同志だし、幼女は守るべき存在だと思っている。
    だが俺達にとって最優先で守るべき存在はニノだけだ、幼女を無闇矢鱈に目を向けている訳じゃない」
ライナス「ついでにいえばニノはソーニャの奴が親父と数年前に再婚してからできた妹だからな」
リン「えーと……それって」
ロイド「それまでは普通に女との付き合いはしているということさ」
ライナス「結構モテてたんだぜ、俺達」
ロイド「だから普通の女相手でも問題はないんだ、だからな
    お前は俺達にとって、充分守備範囲内なんだぜ?」
リン「……………」
ライナス「どうする? 逃げるなら今の内だぜ?
     さもなくば、白狼と狂犬が牙を剥くからな」
リン「……逃げないわ、それでも、あんた達を信用できる要素はある。
   それに万が一本当に来るなら、私だって狼を関してるんだから、簡単にはやられないわ」
ライナス「……………」
ロイド「……………」
リン「………………」
ライナス「……全く、察しの良い女は嫌になるぜ」
ロイド「確かに、堅気の女に狼藉を働くのは主義に反するしな」
ライナス「それに、妹にそんなことをしたんがばれたら、エフラムの奴に殺されるぜ」
リン「そうね……でも……あんた達なら、悪くないと思ったわよ(小声)」
ライナス「なにか言ったか?」
リン「何でもないわ、気は晴れたかしら?」
ロイド「まぁな、あいつと今後どう接するかはこれから考えるとして、取り敢えず俺達は俺達で大事なニノを守る、それで良いと思ったさ」
リン「そう、なら良かったわ」
ライナス「まぁ今回の事、礼は言っておくぜ、ありがとうよ」
リン「どう致しまして」
ロイド「………これは、俺からの礼だ」チュ
リン「む!?」
ライナス「なら俺からも」チュ
リン「!!?……ちょ、なにするのよ!///」
ロイド「さっき言ったが礼もあるが、今後はこんな無茶するなよ、お前が俺達にとって魅力的な女なのは事実だからな」
リン「わ……わかったわ……ありがとう……」
ライナス「じゃあ俺達は帰るよ、またな」
リン「ええ」

 

ライナス「あいつの妹だけあるよな、優しい奴だぜ」
ロイド「まぁな、それに度量も大きい、流石は『狼女公』といったところか」
ライナス「そうだな、良い女だ……」
ロイド「ライナス?」
ライナス「あー、あのな、最近ニノはジャファルの嫁になってあいつはしっかり守ってくれてるよな」
ロイド「そうだな……そういう事か……確かに、そろそろ俺達も、考えてもいいか……」
ライナス「ニノは落ち着いたから他の少女……って気は無いし、あいつのお陰であんまり大人の女は好みじゃ無いしな」
ロイド「活発で優しく、洞察力は高いが物怖じをしない、成程、お前の好みだな」
ライナス「兄貴もだろ?」
ロイド「そうだな……今度は、こちらから会いに行くか」
ライナス「おう」

 

リン「……う〜、煽った私も悪いけど、不意打ちはズルいわよ///」
ラス「リン、どうした?」
リン「な、何でもないわ!」
レオン「どうせリョウマ兄さんとか、他のイケメン見たのを思い出してるんだろ」
リン「な、何よ!!」
ケント「まぁリン様は愛が広い方だとは重々承知しておりますが」
シャンブレー「だからって、嫉妬がないわけじゃないんだぜ?」
リュシオン「今宵は、私達の愛をしっかり身に刻むとするか」
リン「わ、解ったわよ……みんなの想い、受け止めるから」

 

終わり