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Last-modified: 2018-02-04 (日) 22:43:33

・作中現実のものと違うところがありますがフィクションとして見てください
・キャラの口調と性格が異なる(改変もしくは崩壊)してるところも
・オリキャラが登場しますが注意をお願いします
・一部物理無視の描写が有るため此方も注意を
・作中の時期は夏です(重要?)
以上の内容が苦手の方はスルーをお願いします

 

土曜日の夜
午前のフリー走行と午後の250クラスの決勝が終わったその日
明日の1000・600クラスの決勝の内容のブリーフィング、再度確認し、250クラス決勝の点を踏まえて話し合いが行った
ピットでのミス、コース攻略のライン取りなど個人からメンバーにかかわる内容を網羅させていた
その話し合いが終わり、チーム全員はそれぞれ休みを取り始めた

 

そんな中ロイは明日に向けての午前に行われた、フリー走行の自分の走りを確認していた
(シケイン過ぎた後のスプーンのラインがまだ甘い
 アウトインアウトではなくインベタで攻略すればいいが、他のライダーがいれば
 アウトミドルアウトで行って次のコーナーを・・・)
そう考えているとドアから響く鋼の音が2回、ロイの耳にツンと来た
(ん?誰だろう)
ビデオを停めて、ドアアイから外を覗くと、ロイのパートナーがドアの前で立っていた
(デニムさんだ)
「どうしましたデニムさん、こんな夜遅くに?」
「いやな、ちょっとお前に用があってだな・・・。
 ちょっと外へ行こうか?」

 

夏の夜中は熱気が続き、いまだに覚めやらぬ宴の声
明日は任天都8耐の大舞台もあってステージから聞こえる、イベントの熱気が任天都を熱くさせていく
しかし二人がいるのはホテルの近くの川のほとり、薄暗さと程よい涼しさが当てられる熱気を冷まさせていく
ロイはデニムが話があると言いついていった、ロイはデニムに話題を聞き出していく
「それで僕に用というのは何でしょうか?」
そう聞き出すとデニムから意外な言葉が返って来た
「ロイ、合宿のときに俺に話したよな。あいつとの関係を」
「ええ、それそのときはまだ話す決心がついてないから話すことは出来ないって」
「あぁ・・・それでな、もう決心したんだ。お前に俺のことを話すのを」
「・・・!」
ロイはデニムが自分自身のことを話す決意を決めるのを言うと思わず身が固まっていく
そして彼の口から己のすべてを知ることを聞きうけるを構えていく
デニムは呼吸一つ、自分の言葉から一つ語っていく

 

「もうわかってると思うのだけど・・・実はな、俺レーシングスクール出身だったんだ」
デニムは自分の学校の出自を打ち明けていく、そこでロイはオズとの関係がようやくわかっていった
「そうでしたか・・・なんとなくレースに関して合宿でもいろいろと
 自分のわからないことを教えてくれましたからね。ということはおそらくオズも」
「あぁ、あいつもあいつの取り巻きも同じ学校の出身さ」
デニムは自分や周りのことを話しオズとの因縁を一通り話していく、ロイは話を聞いて奥歯をかみ締めていた
ロイにとっては許しがたいものだった、人が一所懸命に戦っているのに水を差していたのを
自分の進みたい夢に、悪質なやり方でふさいだ事に
ロイはオズに更なる義憤を覚えるものの、表に出さずデニムの話に耳を傾けていく
「あいつは俺が、おれ自身の手でケリをつけたいと思う
 レーシングスクールから生まれた因縁に終止符を打つ。そう決めたんだ」
「でしたら僕も」
「悪いなこれは誰にも譲れないものだ。
 お前の手助けでもいるかもしれないが、これは俺とアイツの問題だ」
「・・・」
ロイは無言でデニムをみた、その眼に宿す決意の炎を。そして理解した、その心に宿す譲れぬ意思を
今の彼を止めるすべをロイは持ち合わせておらず、彼の意を尊重することしか出来なかった
(今のデニムさんを止めるのは無粋かもしれない
 でも同じチームの一員であり一緒に走るパートナーである以上、デニムさんを放っておけない!
 どんなことがあろうとも僕はデニムさんを・・・)
そう思いながらもロイは己なにデニムを決勝で全力でサポートしようと考えた

 

「それからもう一つなんだけど・・・
 ロイ、俺はな・・・俺は、お前に嫉妬しているんだ」
デニムは話を続け自分のロイに対する思いを告げる
その言葉はロイにとって意外な答え、思わず瞬きを数回繰り出していく

 

「僕に嫉妬?それって一体」
「俺はな・・・お前にはじめてあったときは本当に強いやつかと、イーライが変なやつ連れてきたという印象しかなかった
 だけど、予選大会のお前の走りを見て、お前の才能に羨んだんだ
 類稀無いその技術とセンス、少ない経験でプロ相手に戦えるお前の姿にな
 それから予選大会のあのときの怒りを、おぼえているか?」
「今でもあの敗北と、あなたの涙と怒りはは鮮明に覚えていますよ。
 ・・・たしか僕に怒りをぶつけ、『才能に恵まれてるお前に』って叫んでましたね」
「ハハッ、そう言ってたな。今となってはホントすまなかった
 俺はオズへの怒りをお前へぶつけ、お前を殴った。」
二人は予選大会のことを思い出していく、あのときの出来事は悪い印象であった
いまのデニムはそのことを反省しており、苦い思い出に変わり、苦笑をこぼしていく
「そして今、決勝でのノックアウトのお前の走りをみて俺は今でもお前を頼りにしてると同時に、お前に対する嫉妬心でいっぱいさ
 正直・・・お前のそのまっすぐな姿勢が今でも・・・な
 なぁ、どうしてお前はそんなに天才的な力を持っているんだ
 どうしてお前はそんなに強いんだ。俺はお前がうらやましいて・・・」
デニムの秘めるロイに対する思いが多く告げてゆく、
ロイは思った、僕のモータースポーツに対する行動がデニムの心を焦がしていることに
ロイはその言葉を聴き己が答えを返答していく

 

「デニムさん、それは違いますよ」
「?どういうことだロイ」
デニムはロイの答えに一瞬目が点となった、思わぬ答えに今一度聞き返していく
「僕は、デニムさんが思っているほど出来てる人間じゃないんですよ
 僕はただ物事に対して真髄に取り組まないといけないと思ってるのです
 僕がバイクレースを始めたとき、その楽しさに惹かれたのですよ」
ロイはさらに語る、その世界での人々の真剣さに、人々の姿勢に心を打たれていった
そしてロイはその人たちに負けないように学んでいこうとした
予選大会の敗北もそのきっかけであり、さらに強くなろうと負けない技を磨こうというのを語った
「・・・繰り返しですが僕がここに居るのは、モータスポーツで闘う人たちに追い抜こうと
 ただそれに取り組もうとしているだけなのですよ
 まだその世界に闘ってる人たちの足元にも及ばないのですが、それでもやろうという思いが僕の思いです」
デニムはロイの応えに理解を深めていくと同時に、彼が彼なりに努力していたことも思い出した
なぜあいつはビデオを持って走りを見直しているのか、あいつが走りのパターンを予選で作り上げていくのかが
(そっか、ロイお前も昔の俺と同じくらい・・・)
思わずデニムは過去を振り返った。
自分もスクール時代にプロの世界に入りたいと思い、ロイと同じくらい真剣に取り組んでいたのをリフレインしていく
あの時は情熱があったが今は昔、デニムはただリベンジをしたいだけだということでいっぱいだった
ロイの言葉を聴いてデニムは言葉をかみ締めていく

 

「なぁロイ、俺・・・」
「・・・!」
デニムはロイに再び語りかけようとしたときに、ロイは突然顔をこわばらせた
表情が見えどうしたのかとたずねるが、指先を口に当てて静かにと合図を立てる
「4・・・5・・・、いや7かな」
「いやどうしたんだロイ?いきなり数字を言ってどうしたんだよ・・・」
数刻瞳を閉じながら小さい声で数字を挙げていくロイに、再度疑問を投げるデニム
デニムはここで気づいた、自分達の周りに態と聞かせていく足音がこちらに近づいてきた
辺りを見ると右手側が柵、前後ろそして左側の階段のほうから黒いローブに深くフードをかぶった人がロイ達に集まった
さらに彼らの手には黒く鈍い光が照らされている長い棒状のものを持っていた

 

「!?ロイ、こいつらは!?」
「・・・おそらくですが、僕たちを潰そうとしてる人たちですね。僕たちが気に食わないという人たちが自分の手でね」
「おいそりゃどういう・・・?!」
推測を立てたロイがデニムに告げていく、デニムはそれに疑問を投げつけるが、回りは棒を構え始めていく
「まずいぞロイ、こいつらホントにやる気なのか!?
 どうする警察呼んだほうがいいか?」
「いや、警察を呼ばれる前におそらく自分達をつぶし、使った道具などの証拠を隠滅するでしょう。ここは逃げたほうがいいですよ」
「だが逃げるといったって何処へ・・・!?」
その言葉をさえぎるかのように階段のほうへロイは踏み込んでいく、その速さに思わずデニムは目を開いた
ロイに目を追うと、目の先には黒い棒を大きく空へ上げ叩き潰すかの如く、デニムめがけて空気を切る音を上げ振り下ろす姿が一人
だがそれをロイは右の掌で、棒を握る手にめがけて当て、一人を阻止した
強い音をあげ、悲鳴を上げる
「ロイ・・・おまえ」
「ここは僕がおとりになります、デニムさんは急ぎホテルへ」
「だがよ・・・」
「早く!」
「・・・無事帰って来てくれ」
デニムはロイの自分を守る姿が、そして力強く纏う言葉が自分に逃げろという命令を下した

 

デニムは階段方面への彼らの隙間をめがけて、踏み抜くように駆け抜けていく
それを見た一人が、デニムの顔面をめがけて潰すように、腰を入れるフルスイングを振るおうとする
それを予期してかロイは棒をめがけて、棒を飛ばすようなサイドキックを放つ
棒を握るその手に伝わった衝撃と振動が、一人が手を思い切り離し、悲鳴をあげ棒が飛ばされていった
しかし、彼の本来通るはずの軌道は、デニムが咄嗟でかがんでいたため、頂点スレスレの位置であった。
逃げていくデニムを追おうと黒いローブの目の前は、ロイが呼吸しデニムが逃げたほうを背に、襲撃者達に臨戦態勢をとった
「何処の誰かは知らないけれど、あなた達のやろうとしてることは許されない。
 もし僕ごと潰すつもりなら、・・・僕が相手だ」
彼らも構えなおしロイを打ちのめそうと、掛かってきた

 

「はぁっ・・・!はぁっ・・・!はぁ〜っ・・・
 ようやく撒けたか、ロイのやつおとりになってが、無事にもどってくるか・・・?」
一目散に逃亡したデニムは、泊まってるホテルの近くの公園まで走った
ホテルは明かりで照らされているが、到達まではほの暗く人気もない、
しかしホテルで休んで入ればもう襲ってこないだろう
ここまでくれば一安心かと思い息を緩め、歩こうとする
そのとき右のほうから、草木の茂みを擦る大きい音が彼を振り向かせた
「ん、何だ?」
そのほうへ顔を向けるデニム、その方角に一つの闇が彼を襲ってきた
思わぬ出来事に反応が遅れる、先程出会った黒いローブの襲撃者がまだ一人いたのに気づけなかった
しかも手に持ってるのは彼らと同じ黒い棒、それがデニムめがけて速い体当たりを仕掛けてきた
気づかなかったこともあり、身構えることも出来なかったことが、強い衝撃を与え
デニムは吹き飛ばされていく
「ぐあっ!」
強く叩きつけられた体当たりの衝撃が、地面がレンガであり、デニムは背中に強い衝撃が加えられた
前が傷み後ろが傷む、痛みをもたらす衝撃で、起き上がるのに少々時間が掛かった
デニムはおぼろげな目を開かせると、その人は立っていた
気づいたときには持っている黒い棒が天高く上げられており、風を切るような振り下ろしを掛けてきた
思わず右腕を楯に後ずさりで、自分の身を守ろうとした
だが、その棒はデニムの右腕に、もっとも硬いところが当たってしまった
「ガアァッ!」
伝わる痛みとその攻撃がデニムの身を悶えさせる、今ここで逃げなくてはを頭でわかっても
痛みがそれをさえぎられてしまい、体が膠着するように内側へ入っていく
そしてローブの襲撃者がこれを好機とおもい詰め寄っていく、そしてもう一度、はずさないように高く棒を振り下ろそうとした
「くたばれデニムッ!」
その言葉通りに襲撃者が自分の脳天めがけて棒を振り下ろさんとする
もうだめだと諦めデニムは目蓋を閉じはじめてゆく

 

しかしそれを取りやめるような速い足音が二人に聞こえてきた、逃げ道から通ったその音は徐々に近づいていくのがわかった
そしてそれは襲撃者めがけて風を切るような速さだ
「・・・んなっ!?」
それを目にした襲撃者はおもわず狙いをそれに切り替えて、棒で逆袈裟に振っていく
だがそれは軌道が読めていた、幾千回兄弟家族と訓練したそれにとっては赤子のような攻撃、振った棒をを弾き返していく
「何ぃ!?」
思わぬ出来事に襲撃者は、驚きの声を上げずにいられなかった
続けざまにそれの足が地面を踏み抜く、響き、身がひねり周る、そして壁のごとき背が襲撃者にめがけて渾身の一撃が迫って来た

 

「グハッ!!」
衝撃と痛み、飛ばされる感覚が襲撃者の身に走った、その後は地面に打たれゆき転がっていく
デニムはもしかしたらと思いそっと目を開ける、そしてそこには予想通りの人が居た
「ロイ・・・!」
「間に合いましたか、デニムさん」
合流したロイは普段どおりの態度でデニムに目を向けた後、襲撃者のほうに目を向ける
襲撃者はロイの一撃を受けたにもかかわらず、立ち上がり素早くその場を去った
「あ、待て・・・ッ!」
それを見るデニムは立ち上がり追いかけんとするが、先程のダメージが右腕に集中しておりうずくまる
ロイも追いかけようと思うが、ダメージを受けたデニムを心配し傷を確認する
「見せて下さい・・・青あざが・・・!」
腕を見たロイはデニムの受けた痛みの痣が思いのほかひどかったため、逆の手を担ぎ、デニムを起たせる
起ったデニムは左腕を、ロイの肩をつかみ、ゆったりと歩き部屋へ戻ろうとする

 
 

デニムの休む部屋に着いたロイは、右腕を氷袋にあてる等応急処置を行う
「一応の処置ですが、大丈夫ですか?」
「・・・いや、大丈夫じゃないな。ぐぅっ。右腕や手を動かすたびに痛みが走り出す」
デニムは言いながら右手の痛み具合を確認すると、尋常ではない痛みが伝わるのを感じる
今も眉間を寄せ、奥歯をかみ締めながら右腕を冷やしていく
「最悪骨にひびが入っているということもありますよ
 一先ずこのことをイーライ監督に報告しとかないと」
ロイは報告しに部屋を出ようとするが、デニムが止めに入った

 

「待ってくれロイ。今この状況を伝えるとチームに不安が走ると思う。
 だからこの件は俺達二人の中でということにしてくれないか」
「何言ってるのですか、今のデニムさんの状況のほうがとてつもなくまずいですよ
 下手すれば明日のレースに悪影響が」
「それでも、それでもだ。俺にも意地はある、ここで降りてしまえば意味がなくなると思う
 オズにもリベンジが出来ずに終わり、優勝できずにいるなんて俺は嫌だ
 だから・・・たのむ。」
デニムの強い嘆願(ねがい)が眼差しに映る
無茶なことだとわかっている、だが彼の意思は堅く折れないというのはわかった
「わかりました、デニムさんと僕の間だけにしましょう
 ですが明日は僕らに頼ってください」
そう言いロイは自分の部屋に戻る、一人になったデニムは体を固定しながらベッドに入る
「すまねぇロイ・・・俺はやっぱり俺の手でやるわ
 お前に頼りたいが、頼ってしまったら自分のためにならない
 すまない・・・」
デニムは苦悶と涙を浮かべながら、部屋を去った少年に詫びつつ
明日に供えて目蓋を閉じていく

 

部屋に戻ろうとしたロイ、しかし不安は消えず明日の決勝のことを話すために
イーライの部屋へ伺った
「すいません監督、ロイです」
「どうしたんだロイ?急に俺のところに来て。・・・明日のことか?」
「はい、それもありますが報告が一つ・・・」

 

「まさかそんなことがあったとはな・・・、わかった俺からもチームにハードを2,3セット調達しよう
 しっかしデニムのやつ、あいつも意地っ張りなところもあるからな
 すまないなロイ、何から何まで」
「いえ、困ってる状態を放っては置けないので
 僕なりにやれることをしたまでですよ、あとすいません急に調達をお願いして」
「いや、どの道ハードタイヤも必要かなと思ったのだがな
 まさかこんな形になるとはな、ところでロイ長時間走れるか?」
「週2回サーキットで2・3時間ノンストップ走ってます
 だが『愛用で』なので勝手が違いますが、やりますよ」
「わかった、頼んだぞロイ
 600はお前とデニムが頼りなんだ。それからあいつを助けてやってくれ」
「もちろんですよ。誰かを助けるのに理由なんて要りません
 無論、レースにも勝ちに行きますよ」
ロイは報告等を終えると、部屋から去った 
イーライは去ったロイがデニムや自分たちのために走り、かつ己が身を賭して戦う意気を魅せるのに
熱さを感じていく
その意気に答えるべくイーライは最終の仕上げを行うために、携帯に連絡をいれ注文する
(ロイ、俺は式をとる立場だがお前のために俺に出来ることをさせてもらうぞ)

 

翌朝、チームのスタッフと準備を整えロイはパドックから荷物を運んでいく
いそいそとしてると、とある男の歩く姿が見えた
その男はこちらを虫けらを見るかのような目を、その奥に冥い衝動を宿しており、舌打ちをかましその場を去った
(オズ・・・、今僕を憎むように見ていた・・・
 ・・・何だろ、嫌な予感がするな。それもあの目は尋常じゃない眼差しだった)
ロイはオズの目に宿すものを感じると、昨夜襲撃された人物達から同じ気配を感じだ
またデニムに傷を負わせたその者とオズの今の雰囲気から同じものを嗅ぎ取った
(・・・まさか、だとすれば警戒すべきは・・・
 今は確証がない、何も起こらなければ・・・)
そう思いつつロイはガレージへ向かって作業を続けていった

 

昨夜から今に掛けての出来事を思い出すロイ、だが気づいたときには既に遅かった
もっと早く気づいていればとたらればを考えていく
(あの時と同じだ、僕がみんなの気持ちに気づけなかったときと同じ・・・!
 またしても同じ過ちを繰り返すのか僕は!?) 
かつて自分がやった過ちをもう一度繰り返していくことを後悔する
今何も出来ない自分を憎んでいく、唇から血が零れ、硬い握り拳が音を上げ作り上げていく
そんなロイをよそにウォールスタンドから怒号が挙がった
「何をしているんだ、早くピットに戻れ!」
『この状況ですぐ戻れるか、俺はまだ走れる!
 俺の遅れた分をここで取り戻す!!』
「今のお前は、怪我もまだいえてない状況だ!早くピットに戻れ!!」
通信越しでデニムと口げんかのような会話が続いている、またオレンジポールフラッグ(車両を修理せよという警告)とナンバーが振られており
どの道戻る必要があるが、フラッグを無視して1周走っているデニムを止めなければならない
3周以内にピットに戻らないと失格処分を下されていく、無論リベンジも出来ずだ
そんな状況にもかかわらずデニムは止まらなかった、スタッフ達に動揺が走り、不安が募るばかりだ
ピットボード(サインボード)を無視して2周、あと1周以内に戻らなければとなるがその状況でも止まらなかった
チーム全員に諦めの雰囲気が漂い行くそんな中、ロイはウォールスタンドのほうへ歩き出した

 

デニムは先程の妨害を受け頭に血が駆け巡っている、ましてや相手は仇敵のチームだ
また1周分の差がなくなり、ついには4位に転落した、妨害によるマシンの影響は浅かった
ぶつかった際にタイヤがウォール側に向かっていたため、サスペンションとタイヤがバネ代わりとなった
だが内部がどんな状況下は不明、見えないところで傷が出来ていることもある
その状況でもデニムは走っていた、己の痛みが覚醒させ、やり返す本能をむき出しにアクセルを回していく
次々と他のライダーを交わしながら走る姿に、最早鬼と化しているデニム

 

モニター越しでデニムの様子を見れば一目瞭然だ、その雰囲気にスタッフたちは固唾を飲み込み
ロイは目力を強めていく
イーライがピットに戻るよう促すも、オズたちを追いつくことで頭がいっぱいのデニムに、ブレーキなぞなかった
(待っていろオズ、態としたテメェみたいなやつに負ける気はない!)
1周2周と走り続けるも一向に差が縮まらない、焦りがつのるデニムは力の限りまわしていく

 

『デニムさん』
3周目に差し掛かりホームストレートを抜けていくデニムに、ロイから通信が入っていく
「!ロイ!」
『重荷、僕に預けさせてください』
突所とんちを言いはじめるロイ、周りのスタッフははてなを浮かべていく、しかしデニムにとっては交代してくれと言うのがわかった
「何言ってるんだロイ!今の状況わかるか!
 お前が作ってくれたアドバンテージを今取り戻そうとしてるのに!」
「ですが今のデニムさんは、自分を殺している。そう見えるんですよ
 デニムさんの気持ちが痛いほど自分に伝わっているのですよ」
「だがよ!今やらずして・・・」

 

「落ち着いて、デニムさん」

 

「!」

 

ロイの言葉に力がこめられ、思わず言葉を飲み込んでいく、スタッフの全員もイーライもロイに思わず目を見張った
そして黙々とデニムはロイの言葉に耳を傾ける
「デニムさん、自分の目標のためにそして僕たちチームのために今自分がすべきことは大事です
 だけど成すためには僕らを頼ってください、貴方がいて僕らがいますから
 だから、デニムさんが抱え込んでる重荷、僕にも半分持たせてください」
ロイは通信を終えると通信機をスタッフに返し、ガレージに戻る、
ガレージに戻ると注目の的となり、思わずたじろいでいく

 

「イーライ」
『どうしたデニム』
「・・・すまない、交代に入る」
ロイの言葉が響いたか、デニムはようやくピットインを通告していく
「デニムが入るぞ、用意しとけ!」
イーライから指示が下されたスタッフはピット作業の準備に取り掛かっていく
「待って!」
だがそれをロイが待ったを掛けた
「ロイ君?」
一同がロイに注目していく、ロイは呼吸を整え目を見開いていく

 

「ピットのタイヤはハードで!手が空いてるスタッフはクーラーボックスから氷を出して、水をバケツに入れて用意して!
 それから腕を固定できるような道具があれば、それを使って患部の部分を安定させて!なかったら代用の長い棒で!
 あと氷がなくなったら近くのコンビニ等で補充を!急いで!」
急なロイからの指令で思わず目が点となるが腕足が速くなっていく
持ち出したソフトタイヤを仕舞いハードタイヤを取り出し、ハードタイヤにタイヤウォーマーを被せる
空いてるスタッフはすぐさま応急処置用の道具と氷水を準備していく
「ロイお前・・・」
「監督、次僕が長時間走ります。
 その間デニムさんの治癒に時間を掛けてください」
「だがロイ君、昼になれば猛暑になるよ、もしそこで倒れたら元の子もないよ」
初めて長時間を走るだろうロイに静止を掲げようとするスタッフ
真夏の猛暑はすさまじく灼熱の太陽の熱気と、アスファルトから来る熱もたまらない状況だ
さらにヘルメット内にこもる熱も含めれば、ライダー達に灼熱地獄が襲い掛かるだろう
しかしロイはその言葉に笑みを浮かべていく
「大丈夫ですよ、対策はしてありますから」
すロイはガレージに持ってきた自分用のバックから、ある物を取り出していく
「「それは・・・」」
「この日でも、少しの対策は練ってきました」
そう笑みを浮かべながら、ロイはデニムが帰ってくるのを待つように目力を入れていく
(後悔はもうしたくない、させたくない。そのためにも僕はやるんだ)
胸に秘める熱い闘志が、膨れ上がっていく。無論執念の炎もだ

 
 

若獅子の激走 続