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Last-modified: 2018-03-16 (金) 22:45:19

ホワイトデーと同時にシャンブレーの誕生日、その為子世代誕生ネタを投下させていただきます。
2人は誕生日が違いますがそこはご都合主義ということで。

 

ミスト「~♪」
グレイル「随分嬉しそうだなミスト」
ボーレ「何かあったのか?」
ミスト「あ、お父さん、ボーレ、うん、セルジュさん達の予定日が近くてね、いよいよなんだなって、思って」
グレイル「成程な、それで女達がそわそわしてんのか」
ボーレ「それで、当の旦那は……」
アイク「……………」作業中
ボーレ「いつもと変わらねぇな」
グレイル「いや、あいつ随分と緊張してやがるな」
ボーレ「え?」
ミスト「あ、お父さんも解ったんだ」
グレイル「伊達に義息子として、あいつを見ちゃいねぇさ、手元に力が入りすぎてやがる」
ボーレ「そ、そうなのか……」

 

グレイル工務店事務所

 

Prrrr
ティアマト「はい、こちらグレイル工務店です……え? 本当ですか!? はい、すぐむかいます!!」
セネリオ「どうしましたか?」
ティアマト「2人の陣痛が始まったって……いよいよだそうよ!!」
セネリオ「そうですか! 解りました、ティアマトさんはアイクや皆に知らせて来てください!」
ティアマト「解ったわ!!」ダッ!

 
 

アイク「それは本当か!?」
ティアマト「ええ、病院からで、間違いないわ」
アイク「そうか……」
グレイル「アイク、何ボサッとしてやがる、さっさと行け!」
アイク「親父……」
グレイル「後の事は気にすんな! それにティアマト、ミスト、他の皆もだ、家族なんだから行ってやれ!」
アイク「親父、感謝する」
ミスト「お父さん、ありがとう」

 

 そして神将家メンバーがそれぞれ走り去って行く。残ったのは男衆のみだった。

 

シノン「ケッ、どいつも浮かれやがって」
ガトリー「そう言いつつ、口元が緩んでるぞ」
ボーレ「しかしあいつが父親か、少し意外な気がするな」
ヨファ「そうですね、失礼ですけど、一番遠そうな気がしてました」
グレイル「いや、そうでもないさ、あいつは鈍感ではあったが、あいつらを大切に思っていたのは確かだ。
     後はそれが通じ合う切欠さえあれば、割となんとかなったのさ」
キルロイ「成程……兎に角、今は無事な出産をお祈りしましょう」
オスカー「そうだね、私も祝いの料理を振る舞いたい所だけど」
セネリオ「取り敢えず今日は大きな仕事はありませんね、軽めの修理作業がいくつかです」
グレイル「そうか……ならオスカーは料理をしてやってくれ、他の連中はそっちの仕事にかかれ、片付いたら俺達も見舞いに行くぞ!!」
一同『了解!!』

 

ティアマト「アイク、私の馬に乗る?」
アイク「大丈夫だ、俺なら、馬と同様か、それ以上に走れる」
ティアマト「そう、でも、あまり焦らないでね、それでその状態で誰かにぶつかったりしたら大変よ」
アイク「解った……ミスト」
ミスト「どうしたの、お兄ちゃん?」
アイク「俺の上に乗れ」
ミスト「へ?」
アイク「……すまん、進めるぞ」肩車
ミスト「え、ええ!? お、お兄ちゃん、私こんなことしなくても走れるよ? 確かにお兄ちゃんについていくのは無理かもだけど」
アイク「そうだな」
ミスト「ならあとから追いかけて行くんでも……」
アイク「いや、俺達は家族だろう、なら家族全員で、2人に駆けつけてやるべきだろう」
ミスト「お兄ちゃん……解ったよ、お願いするね」
アイク「ああ」
ティアマト「そうね、ならイレース、あなたが馬に乗りなさい」
イレース「解りました、よろしくお願いします」
アイク「ワユは……」
ワユ「大丈夫だよ、私も鍛えてるから、大将達に付いてく位はできるよ」
アイク「そうか、なら皆、行くぞ!!」
一同「ええ(うん/はい)!!」

 

紋章町総合病院

 

サナキ「2人は今どうなっておる?」
ユミナ「経過は順調よ、後は、2人の体力を信じるしかないけど」
エルフィ「アイクさん達は?」
ナターシャ「既に連絡は行っています、すぐ出たのなら、距離的にはもう間もなくかと……」
シェイド「誰か、迎えに出た方が良いかしら?」
サナキ「大丈夫じゃ、あやつらなら必ず間に合う」
ナギ「信じて………いるのですね」
サナキ「そうじゃな、何年もあやつを見ておる、その強さも、不器用な優しさも……と噂をすれば」

 

ダダダ
ミスト「みんな!!」
シャンブレー「父ちゃん、みんな!」
アイク「セルジュとベルベットは……」
ユミナ「まだ大丈夫よ、今回は仕方ないけど廊下はあまり走らないでね」
イレース「あ、ごめんなさい……」
ナターシャ「付き添いの方は誰が行かれますか?」
ティアマト「アイク1人で良いわよ、大勢で言っても混乱するしね、アイクも良い?」
アイク「シャンブレーとジェロームは?」
シャンブレー「確かに自分が産まれる時なんてとても大事な事だけどさ」
ジェローム「ここはやはり、父であり、夫の役目だと思う」
アイク「そうか、解った、俺が行こう」
ユミナ「じゃあ、こっちに来てくれる?」

 

アイク「セルジュ、ベルベット」
セルジュ「アイク……」
ベルベット「来て、くれたのね」
アイク「当たり前だ、お前達は大切な俺の妻なんだからな、他の皆も、集まっているぞ」
セルジュ「そう……」
アイク「俺は……傍にいることしか出来ん」
セルジュ「それで十分よ」
ベルベット「愛するあなたが傍にいると思うだけで、私達、頑張れるわ」
アイク「解った、後少し、2人とも、頑張ってくれ」
セルジュ「ええ……」
ユミナ「2人の手を握ってあげて、それで大きく違うと思うわ」
アイク「解った」

 

 2人が新たな命を産み落とす為頑張っている。その周囲では医師や看護師達が全力を尽くしている。
 彼は2人の手を握り、自身でもらしくないと理解しつつも、妻達の、そして子達の無事を祈る。そんな内に2人との出会い、そして共に歩んだ時間が思い出される。

 

 セルジュと始めて出会った時の関係は最悪だった。強くなるため魔物達を打ち倒していた自分、己の全身全霊を持っても魔物達を守っていたセルジュ、2人の意思は真向からぶつかり合い、刃を交えた。
 だが小さな切欠から、その刃を互いが鍛えるために向け合い、敵対していた2人は好敵手となった。それから互いを認め合う仲間、友となり、やがて愛が芽生えた。そして今日、その結ばれた愛が形作る事になる。
 そしてベルベット、彼女とは、襲われていた彼女を助け出すという、この町ではよくあることだった。それでも彼女は自身を慕ってくれ、己を愛してくれて、共に生きる道を選んでくれた。

 

 2人の額に浮かぶ汗を拭い、励ましの声をかけることしか出来ないのは非常にもどかしい、だが、そんな声に2人は笑顔を向けてくれる。そして状況は進んで行き………

 

 元気な産声が2つ、あがった。

 
 

アイク「産まれた……のか?」
エーディン「ええ、おめでとう、解っていたでしょうけど、2人とも元気な男の子よ」
ユミナ「それぞれ母子共に健康だわ、おめでとう」
セルジュ「私達の赤ちゃん……」
ベルベット「ちゃんと産まれてくれたのね……」

 

バタン!
ワユ「大将、産まれたの!?」
ミスト「皆無事!?」
ユミナ「ほらほら、気持ちはわかるけど騒がない」
ナターシャ「今は皆さんを、ゆっくり休ませてあげないと」
イレース「あ……ごめんなさい……」
アイク「そうか……産まれてくれたんだな……」
一同『!!!』
アイク「……? みんな、どうした?」
セルジュ「アイク……自分の頬、触ってみて」
アイク「む……(パシャッ)……濡れて?」
エーディン「はい」つ鏡
アイク「これは……俺は、泣いているのか……」

 

 鏡に写る自分は涙を流していた。強くなるため鍛えた頃から、泣くことはないと思っていたのに。

 

エーディン「嬉し涙を恥じる事は無いわ、ましてや子供が産まれた時だもの」
アイク「そうか……」
シャンブレー「むしろ、俺はとても嬉しいよ」
ジェローム「そうだな、普段強い父が涙を流してくれた程誕生を喜んでくれたのなら、とても誇らしい」
アイク「そう……なんだな……元気に産まれて来てくれて、ありがとう、そしてセルジュ、ベルベット、産んでくれてありがとう……愛してるぞ……これからもずっと」
セルジュ「ええ、私もよ」
ベルベット「これからもずっと、あなたを愛するわ、愛しい旦那様」

 

病院の外

 

ナギ「アイクさん……」

 

 たまたま遊びに来ていた際、出産の報が入り、一緒に立ち会った彼女、周りが騒然とするなか、自身はどうすれば良いのかと思っていると、アイクが到着した。今まで彼とは何度も関わってきたが、今日は今までにない姿をみた。
 表情こそあまり出さないが、2人を案じ慌てる彼、安堵の末涙する彼、妻子達を慈しむ彼。
 そんな姿を思い出すと、次第に胸が暖かくなるのを感じる、眠気とはまた違う、ふわりとした心地よさ。

 

ナギ「私、やっぱり…………私も、勇気を出すときでしょうか?」

 

 星空を眺めるその目は、いつもの眠そうなものとは違い、決意の色を持って細められていた。

 

白暗夜家

 

ミコト「無事に産まれたそうですわ」
ガロン「そうかそうか、でかしたのう義息子よ、本当にめでたい」
シェンメイ「そうですね、こちらからも、お祝いを贈るべきでしょうか?」
ガロン「ふむ……祝い、祝いか……」
シェンメイ「ガロン様?」
ガロン「ミコトよ、義息子の方は現在家事はどうなっておる?」
ミコト「ふふ……ミストさんを始めに分担して頑張っているそうですが、やはり筆頭であったセルジュさんが暫く離れるので、多少まごつく処があるそうですわ」
シェンメイ(あ………)
ガロン「ふむ、それは大変じゃのう、ミコトよ、我が家で働くメイドの内、何人かを派遣し、向こうの家事を手伝わせようと思うのじゃがどうかの?」
ミコト「それはいいですわね、早速希望をとりましょう、基準は……向こうの方々が接しやすいように20代から30代前半辺りの優秀な方を選びますわ」
ガロン「うむ、善きに計らってくれ、くくく……楽しみじゃのう」
シェンメイ(やはりこの欲求は、際限ないお方、我が妹もそうだけど)

 

 神将家は、まだまだ賑やかな日が続くようだ。

 

終わり