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ダニー・マッキャスリン / Donny McCaslin

Last-modified: 2017-06-05 (月) 20:49:18

(80年代のジャズ教育は)タイムやリズミックなバリエーションがそれほど重要だと思われていなかった。だけどソニー・ロリンズを研究したことで(リズミックなボキャブラリーの)かたよりが正され、さらにラテン音楽の探求が僕をより深い所に連れて行ってくれた。

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参考 All About ダニー・マッキャスリン / リズムを革新するサックス奏者

 
 
編集履歴
 

バイオグラフィー

10代まで

1966年8月11日カリフォルニア州サンタ・クルーズ生まれ。ヴィブラフォン、ピアノ奏者で本職は教師だった父の影響でジャズに興味を持つ。
12歳の時にテナーサックスを始め、15-16歳の時父親のバンドやサルサのグループで活動する。
父親のバンドではカル・ジェイダー風のラテン・ジャズ、グレイト・アメリカン・ソングブック、R&Bなどをレパートリーにしていた。

 

ジャズ系の授業で有名な高校に入学すると自分のバンドを組み、3年連続でモントレー・ジャズ・フェスティバルに参加する。その高校ではデューク・エリントンの楽曲を演奏するビッグバンドにも所属し、週に3〜5日演奏していた。ビッグバンドのディレクターは海軍時代エリントン・オーケストラのトランペッターと知り合いだった関係で、エリントン・ナンバーの古いスコアを全て持っていた。そのため、エリントン楽曲のスコアが出版される以前から、正確な譜面でエリントンの曲を学ぶことができたという。

 

またサンタ・クルーズの非営利ジャズ教育機関で多くの時間を過ごす。
サンタ・クルーズはヒスパニック系の住民が多く、レゲエ音楽のバンドのツアーが頻繁にあるため自然と南米音楽にも親しむようになる(2016, Soul and Jazz and Funk Latest)。

 
好きな音楽家・作品
時期音楽家・作品ジャンル
10代ウィルソン・ピケット"Mustang Sally"
ロバータ・フラック"Feel Like Making Love"
R&B(2013, All About Jazz)
不明南米音楽(サルサ、レゲエ)(2013, All About Jazz)
10代デューク・エリントン・オーケストラ(特にポール・ゴンザルヴェスがフィーチャーされている"Diminuendo and Crescendo in Blue")
ジョン・コルトレーン
マイケル・ブレッカー&brキース・ジャレット『Belonging』
ジャズ(2011, JazzTimes)
 
師事歴
時期学校・機関教育家主な内容
10代父親のバンドメンバーとの個人レッスンPaul Contos不明
Brad Hecht不明
10代後半アプトス高校Don Kellerデューク・エリントン作品演奏の指導
クンブワ・ジャズ・センター不明不明
19歳〜バークリー音楽大学ゲイリー・バートン不明
ハーブ・ポメロイ不明
ビリー・ピアス不明
ジョージ・ガゾーン不明
ジョー・ヴィオラ不明
トミー・キャンベルギグ

大学時代〜90年代

1984年、バークリー音楽大学の全額免除生として入学。
上級生の時、小曽根真と共にゲイリー・バートン・クインテットに参加し、4年間ツアーでヨーロッパや日本、南北アメリカを回る。
また、同大学で同級生だったパナマ出身のピアニスト、ダニーロ・ペレスにも影響を受ける。中南米のフォークミュージック、特にリズムパターンに精通している彼との出会いで、パナマ、ペルーを中心に様々なリズム語法を吸収する。ニューヨーク移住後もウェイン・ショーターのバンドにペレスが起用されるまで、彼のバンドに参加していた。

 

1991年にNYに進出した後、エディ・ゴメスのバンドに参加。彼の紹介でマイケル・ブレッカーの後継としてステップス・アヘッドで3年間活動している。
またギル・エヴァンス・オーケストラやダニーロ・ペレス・カルテット、マリア・シュナイダー・ジャズ・オーケストラ(90年代はエキストラだった)などで活動。
デヴィッド・ビニーらと実験的ジャズユニット、ランザン(Lan Xang)を結成した時期から本格的に作曲も開始する。

ファースト・カルテット

00年代前半、それまでエキストラ参加だったマリア・シュナイダーのオーケストラにレギュラー・メンバーとして加わる。このオーケストラに参加したことで、ブラジル、ラテン音楽に傾倒する。ペレス、マリアなどのバンドで経験した中南米音楽に触発された音楽を制作し始める。バンドの中心メンバーはベン・モンダー、スコット・コリー、アントニオ・サンチェスで、『Soar』、『In Pursuit』、『Declaration』の3枚のアルバムをサニーサイドレーベルからリリースする。"Soar"はマリアの楽曲“Hang Gliding”のソロを練習中にひらめいたアイディアが元になている。また、同じくマリアの“Journey Home”のリズムも参考にしているという(2011,JazzTimes)。

セカンド・カルテット

2010年、デヴィッド・ビニーのアドバイスでエレクトロニック・ミュージックを取り入れた『Perpetual Motion』を制作。本作に参加したティム・ルフェーブル、マーク・ジュリアナもビニーが勧めたミュージシャンだった(2016, Mikiki)。その後、そこにキーボードのジェイソン・リンドナーを加え新たなカルテットを結成。このメンバーで『Casting For Gravity』、『Fast Future』、『Beyond Now』をリリース。
デヴィッド・ボウイはマリア・シュナイダーの勧めで『Casting For Gravity』を聴き、マッキャスリンのカルテットをまるごと遺作『★(Black Star)』のメンバーに迎えている。

 

妻は長老派教会の牧師。彼自信も洗礼を受けたクリスチャンである。

作品

※年号は基本的に録音年

リーダー作

1997 - Exile and Discovery
1999 - Seen from Above
2003Release - The Way Through
2005 - Give N Go

 

ファースト・カルテット(w.ベン・モンダー、スコット・コリー、アントニオ・サンチェスほか)
2005 - Soar
2007Release - In Pursuit
2009 - Declaration

 

サックス・トリオ(w.ハンス・グラヴィシュニク、ジョナサン・ブレイク)
2008 - Recommended Tools

 

セカンド・カルテット(w.ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーブル、マーク・ジュリアナ)
2010 - Perpetual Motion (ジェイソン・リンドナー在籍前。ドラマーは収録時間のおよそ2/3がアントニオ・サンチェス)
2012 - Casting For Gravity
2014 - Fast Future
2015 - Beyond Now

コラボレーション

w.デヴィッド・ビニー、スコット・コリー、ジェフ・ハーシュフィールド→ケニー・ウォルセン
1997 - Lan Xang
1999 - Hidden Gardens

発言

音楽観

リズムの語彙をいかに伸ばしたか


僕はサックス奏者向けのジャズ教育が和声的な語法に限られている時代に勉強していた。つまりその時の教育はコードスケール、クロマチックな代理コードに焦点を当てており、タイムやリズミックなバリエーションがそれほど重要だと思われていなかった。だけどソニー・ロリンズを研究したことで(リズミックなボキャブラリーの)かたよりが正され、さらにラテン音楽の探求が僕をより深い所に連れて行ってくれた。
(2011,JazzTimes "I grew up in the era…about an even deeper shift".)

 

エレクトロニック・カルテットについて


今このプロジェクトを説明するなら、「僕達がしていることは、インプロヴィゼーションとエレクトロニカ・ミュージックの交わる点を探すこと」になるね。興味深いのは、マーク・ジュリアナがアコースティック・ドラムを演奏していることだ。それからご存知のように僕はアコースティック・サックスを演奏している。だから、実際にエレクトロニカの要素を音響的に提供しているのは、ジェイソン・リンドナーとティム・ルフェーヴルになる。でも(リスナーは)それから気付くだろう。マークもまた驚くべき語法を持っているということを。(マークによる)ドラムと(ティムによる)ベースの語法、(ジェイソンによる)エレクトロニックな語法、それから私自身も新しい語法をサックスで見つけようとしている。このことは自分にとって、(エレクトロニックな要素を)要約したり、(アコースティックな楽器入りの編成という)フレームワーク内で誠実な方法で表現することだと感じるんだ。僕たちがやっていることは本当にエキサイティングだと思っている。だけど(一番)素晴らしいことは、僕が即興演奏家の中にいることだと思う。それは僕のミューズであり、自分自身を表現するための方法なんだ。
(2016, Soul and Jazz and Funk Latest: One way that I describe...how I express myself.)

 

エレクトロニック・カルテットについて


Q:あなたは常々、エレクトロニック・ミュージックからの影響を表明していましたが、『★』や今作の制作にも、やはりそれらは影響を与えていたということですね。

 

DM:まさに、ここ最近はエレクトロニック・ミュージックの影響をすごく受けているね。そして、自分の音楽のなかでエレクトロニックと即興演奏とが交差する点を探求することで、それを示そうとしているんだ。それが僕のサックス演奏にどうやって直接影響するかはとても興味深いところさ。というのも、僕はアコースティックな楽器を演奏しているわけだからね。だから僕はサックスからさまざまな種類の音を引き出すことに取り組んでいる。メロディーを奏でるための単音ではなく、重音や倍音などを試したりして、この僕の探究に合うサックスの〈言語〉を追求しているんだよ。だからチャレンジでもあるし、お馴染みの領域を抜け出す機会になるので、僕にとってはもってこいなんだ。自分を表現するための楽器が持つヴォキャブラリーを探すということではチャレンジではあるけど、楽しんでやってきているよ。
(2016, Mikiki)

影響源

ソニー・ロリンズについて
ソニー・ロリンズは私のオールタイム・ヒーローの一人だ。彼を聴く時はいつもその類まれなタイムのセンスに感動する。彼のスウィング・フィールはグルーヴィーで強力だ。それはいつも力強いタイムの感覚とともにプレイすることを思い起こさせてくれる。アフロ・キューバ音楽やスウィング、ファンク、何を演奏してもね。タイムフィールはとても重要なんだ。
(2001,The Vermont Review "Sonny Rollins is one of my…the feel is so important".

 

JazzTimes(2011)


マリア・シュナイダー・オーケストラ参加時
マリア・シュナイダー"Hang Gliding"(この曲の練習中に"Soar"をソロ演奏するためのアイディアを思いつく)
マリア・シュナイダー"Journey Home"(リズム・ランゲージに影響を受ける)
タンゴ歌手ロベルト・ゴジェネチェ
「ゴジェネチェの歌い方はほとんど話すようなものだ。その歌い方は小節線にとらわれず、本当にクールだ。ひらめいたんだ。それがマリアの楽曲を演奏する方法だってね」(The way Goyeneche sings,...playing on Maria’s piece)

 

『Perpetual Motion』制作時
タワー・オブ・パワー("Energy Generation"に影響が濃い)
ヘッド・ハンターズ
レッド・ツェッペリン、クリスチャン・マクブライド("L.Z.C.M.")
キャノンボール・アダレイからダニー・ハサウェイまでのアメリカン・ソウル・ミュージック("Memphis Redux")
フォークミュージック、シンガー・ソングライター作品
イモジーン・ヒープ

 

All About Jazz(2013)


サックス奏者で
10代?(quite young): ジョン・コルトレーン、マイケル・ブレッカー、ヤン・ガルバレク
20代: ソニー・ロリンズとウェイン・ショーター

 

リズミック・ランゲージで
最初はソニー・ロリンズ。その次にアフロ・キューバ音楽、アフロ・ペルー音楽、ブラジル音楽、アフリカ音楽のドラミングから学んだ。("So, that would be…get deeper into it".)

 

『Casting for Gravity』制作時
エイフェックス・ツイン『Drukqs』(リズム言語、メロディーとリズムの関係に注目する。今作を作るにあたって最も影響を受けた作品だと言っている)
ボーズ・オブ・カナダ『Geogaddi』、スクエアプッシャー、ヴェネチアン・スネアズ、イモージェン・ヒープ、FabricLiveレーベルの作品、ルーツ、クエストラヴ、タワー・オブ・パワー、ヘッドハンターズ

 

Westword(2016)


『Casting for Gravity』制作時
エイフェックス・ツイン、ヴェネチアン・スネアズ、ボーズ・オブ・カナダ、メシュガー

 

WBUR(2015)


『Fast Future』制作時
スクリレックス、エリー・ゴールディング、デッドマウス、ノワー
"Love What Is Mortal"はエリー・ゴールディングの"Burn"を念頭に書いた。
エイフェックス・ツインのカバー"54 Cymru Beats"はツインのピアノ・コードをサックスのラインに置き換えている。

 

Mikiki (2016)


『Beyond Now』制作時
デヴィッド・ボウイ、デッドマウス『While (1<2)』、ケンドリック・ラマー、エイフェックス・ツイン
“Faceplant”はエイフェックス・ツインの“180db_”(『syro』収録)にインスパイアされて作った曲。

 

以前からの影響源
レスター・ヤング、チャーリー・パーカー、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、ジョー・ヘンダーソン、マイケル・ブレッカー
デューク・エリントン、ハービー・ハンコック、マイルス・デイヴィス、フレディ・ハバード、トニー・ウィリアムズ、エルヴィン・ジョーンズ

他のミュージシャンに対して

ダニーロ・ペレス


彼とロードに出いている時は、何度も空白の楽譜を持って行ったものだ。サウンドチェックをしている時に、彼は様々な異なるアイディアを見せてくれた。それは先生に師事していた学生時代に戻ったようだった。そしてそれが僕の人生を変えたんだ。
(2011, JazzTimes: Various times I...changed my life.)

 

デヴィッド・ビニー


僕とデヴィッド・ビニーはとても近い音楽観(musical aesthetic)を持っているから、彼の意見は本当に大事にしているんだ。プロデュース面では、レコーディング日より前に一緒になってオーケストレーション、フォームなどの打ち合わせをしている。彼は(スタジオの)ギグにやってきてフィードバックを提供し、いくつかのことを調整してレコーディングさせるんだ。(2011,JazzTimes: We had a shared...and go from there.)

 

ジェイソン・リンドナー


僕は何年も前からジェイソン・リンドナーを知っていて、ニューヨーク・シーンの様々なバンドで一緒に演奏していた。彼のビッグバンドやその他色々なグループでね。彼がグループに加わった理由は、そこには沢山の惹きつけられるものがあったわけだけど、(一番は)彼がNOW V.S NOWというマーク・ジュリアナがドラムを叩いているグループを率いていたからだ。とても凄いトリオで、彼らは音楽的に素晴らしい関係を築いているし、彼が僕たちと演奏し始めた時にはすぐにバンドが別次元に行ったような気がした。リンドナーの音感は本当に研ぎ澄まされている。彼は本当に本当にオーガニックな方法で沢山の異なったサウンドを扱うことができる貴重なミュージシャンだ。(2013,All About Jazz)

 

カート・ローゼンウィンケル


カート・ローゼンウィンケルとはブライアン・ブレイド・フェローシップのロードで1ヶ月共演している。「彼は僕の最も好きなギタープレイヤー、作曲家だ。彼のレコードが大好きなんだ」(2001,The Vermont Review)

評価

ジョシュア・レッドマン(The Sax 54 三木俊雄)


マッキャスリンは僕と同じカリフォルニアの出身で、(略)ハイスクールの頃から「神」のような存在だった。

 

ダニーロ・ペレス(2011, JazzTimes)


ドニーの人間性と仕事の誠実さは非常に高かったよ。(ある時)僕は彼のインプロヴィゼーションに、僕たちで研究[addressing]していたことが聴こえるようになった。その(ラテン人との)コネクションは、(彼のメロディラインを)普通のホーンプレイヤーが演奏するラインとは違うものにさせたんだ。
彼は、僕が小さい頃から触れていた音楽をたくさん聴かなければできない方法[in a way that has to do a lot with the music]で、リズムと(リズムの)サイクル(の研究)に取り組んでいた。それから僕は何かが変わり始めていることが分かった。ラティーノはいつも沢山ジャズを学んでいたけど、(北米の人たちも)ラテン音楽を真剣に捉えていることをドニーのような人々が教えてくれたんだ。ラテン音楽がパーカッションのセンスだけでなく、メロディ表現とサウンド、フレージングの点でも学ぶ価値のある音楽だということをね。
(Donny’s human quality...in sound and phrasing.)

関連項目

マリア・シュナイダー
ベン・モンダー
アントニオ・サンチェス

 

ダニー・マッキャスリンの作品

脚注

(2001) The Vermont Review by Brian L. Knight
(2011) JazzTimes by David R. Adler
(2013) All About Jazz by Jeff Dayton-Johnson
(2015) WBUR by Katherine Lam
(2016) Soul and Jazz and Funk Latest by Charles Waring
(2016) Westword by Jon Solomon
(2016) Mikiki by 原 雅明