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Last-modified: 2014-11-06 (木) 00:25:05

霧「苗木君、プレゼントよ」
苗「え? ど、どうしたの、唐突に…」
霧「いつもあなたに貰うばかりだから…たまには私からも、と思って」
苗「そんな、気を使わなくても良いのに…でも、ありがとう」

 

苗「これは…小説?」
霧「ポーよ」
苗「ぽー…?」
霧「知らない? エドガー・アラン・ポー」
苗「ご、ごめん…詳しくなくて」

 

霧「江戸川乱歩…という名前を聞いたことはないかしら?」
苗「確か、小説家…だよね?」
霧「推理小説作家よ。怪人二十面相や少年探偵団…くらいなら、あなたも知っているでしょう」
苗「あ、うん」
霧「彼の『江戸川乱歩』というペンネームは、エドガー・アラン・ポーをもじったものなの」
苗「へえ、そうなんだ」
霧「ええ。ポーは史上初、推理小説というジャンルを確立した作家とされているのよ」
苗「ふうん」
霧「名探偵による推理の展開や、その助手による第三者的視点からの語りなんかも彼が定型化して…」

 

苗(霧切さん、いつになく饒舌だなぁ)
苗(やっぱり好きなもののことになると、さすがの霧切さんも身が入っちゃうんだろうなぁ)
苗(いつものクールな霧切さんも良いけど、こういうのに夢中な姿も結構可愛い…かも)

 

霧「それで、あなたに渡したのは私が一番好きな、……苗木君?」
苗「……え? あ、ごめん…何?」
霧「……」
苗「…あの、霧切さん?」

 

霧「やっぱり、あなたには退屈な話だったかしら…」
苗「えっ?」
霧「ごめんなさい…興味のないことを延々と話されても、つまらないわよね」
苗「いや、あの…」

 

霧「あなたのような世間一般の男の子が、いったい何をプレゼントされたら喜ぶか、分からなくて…」
霧「せめて自分の好きなものを、と思ったのだけれど…」
霧「…どうやら、失敗だったみたいね。次はもっとマシなものを用意しておくわ…ごめんなさい」

 

苗「そ、それは違うよ! 興味ない話なんかじゃないよ」
霧「…でも、現にあなたは…」
苗「別に霧切さんの話が退屈とかじゃなくて、驚いちゃってさ」
霧「…驚く?」
苗「霧切さんって、普段はあまり自分のこと話さないでしょ」
霧「そ、そうかしら…」
苗「そうだよ。だから、こうやって好きなものの話をしてくれるのが、なんか新鮮で…」
霧「……」
苗「やっぱり霧切さんにも、女の子らしい可愛い一面もあるんだな、って考えてたんだ」
霧「!?」

 

霧「……、それは普段の私が女の子らしくない、という意味?」
苗「え!? あっ、いや、そういうわけじゃなくて、もちろん普段も可愛いんだけど」
霧「!! な、…生意気よ、苗木君のくせに…」
苗「えぇー…」
霧「……罰として、その本は明日までに読んできなさい」
苗「うん。霧切さんがせっかくくれた本だもん、帰ったらすぐに読むよ」
霧「……もう」