社会認知的キャリア理論(SCCT)

Last-modified: 2013-04-29 (月) 10:35:38

社会認知的キャリア理論とは、ほかのキャリア理論で言及された、興味、能力、価値観、意図、目標、自己概念および自己効力感などがどのように相互作用しあい、何の影響によって変化するのかということを、整理統合した理論である。

基となった理論

アルバート・バンデューラの社会的認知理論から最も影響を受け、クルンボルツの学習理論の考えと類似する側面もある。

バンデューラが提唱した三者相互作用の考え

「個人的要因」と「環境的要因」と個人の起こす「行動」が互いに影響を及ぼしあっている。

レントとブラウン、ハケットの3人はこの三者相互作用にさらに、「自己効力感」や「結果期待」、「個人的目標」の相互関係も追加することで、SCCTのモデルを完成させた。

 

■三者相互作用(アルバート・バンデューラ)

三者相互作用.jpg
 

■SCCTモデル(レント、ブラウン、ハケット)

SCCT.jpg

自己効力感

バンデューラは
自己効力感を「課題に必要な行動を成功裡に行う能力の自己評価」定義している。
 

自己効力感…努力の程度、環境の選択、障害に面したときの粘り強さなど、さまざまな行動に影響を及ぼし、環境や行動と影響しあうダイナミックで流動的・能動的な概念

自己効力感に影響を及ぼす要素として、次の4つが挙げられる。

①個人的達成

自ら成し遂げた経験であり、4つの中でも最も強い影響がある。

②代理学習

自分自身が実際に行動をしなくても、他者の経験を観察することで自己の効力感は変容する。

③社会的説得

周囲の人から励ましやサポートを受けることも自己効力感を高める。

④情緒的覚醒

生理的な反応も自己効力感に影響する。
 例えば…不安や抑うつなどの心理状態にある際、否定的な感情が強くなり、何かができるという気持ちは低くなる。
 一方、リラックスした前向きな心理状態であれば、楽観性も高くなる。



☆実際の能力と自己効力感との両方が同じ程度であると、有効なパフォーマンスを発揮するが、2つのギャップが大きいとさまざまな機会を失うことにつながる。

結果期待

結果期待とは行動を遂行した後の成果についての個人の予測である。
結果期待は大きく次の3つに分類される。

①物理的な成果

報酬や賞など

②自己評価的成果

自己の内的基準を達成したことへの満足感(最も満足する結果)

③社会的成果

褒められる、地位が高まるなどの周囲からの評価

個人的目標

人が特定の課題に対し、結果を出すために設定する達成地点(ゴール)

結局SCCT理論とはどのようなものか

人の個人的要因と環境要因は影響しあい、人は日々の行動の中で学習経験を積み重ねる。その結果、自己効力感や結果期待が形成され、さらなる経験を通じて変容する。そして、人は特定の物事に対して興味や関心を持ち、さらにはそれが目標設定や行動、実際の達成にまで影響を及ぼす。同時に、物事の達成においては常に個人的要因や環境的要因が影響する。