概要
韓国のポータルサイト Daum(다음/ダウム)*1 が tvpot という動画共有サービスを運営しています。
PotPlayer(팟플레이어/ポットプレーヤー)はこの関連サービスとして個人による動画のライブ配信とその視聴を提供するために開発が始まりました*2。
ただし「個人放送」と呼ばれるこのサービスは韓国内限定*3ですので、韓国以外ではもっぱら再生専用のメディアプレーヤーとして使用されています。
開発は K-Multimedia Player(The KMPlayer)の元開発者カン・ヨンヒ(강용희)氏が手がけています。
そのためKMPlayerと様々な面で共通点が多く、一般にKMPlayerの改良版と見なされることが多いようです。
2008年5月の最初のベータ版が配布された後、2010年7月にフルバージョンである1.5系がリリースされました。*4
精力的に開発が続けられていて、最新の技術や仕様も比較的早い段階で取り込まれています。
Daumカフェに開発掲示板があります。
各国の言語にローカライズされたパッケージが多数存在します。
言語翻訳を除けば、そのほとんどが本家と同じ本体機能を持ちます。*5
バージョンが1.6系になってdllを入れ替えなくても設定画面から言語切り替えができるようになったため、
各国独自のディストリビューションの意義は低下してきたと言えるかもしれません。
さらに2015年に入ってからはプログラムの改変禁止措置が強化されたことにより、
外部有志によるフォークが事実上できなくなりました*6。
会社の経営はすでにDaumから、合併したKakao側に移っているようです。
これからPotPlayerの立ち位置がどうなるのかは予測できません。
特徴
使用条件
営利目的でない限りほぼ制限なく無料で利用できます。
しかしプロプライエタリーソフトであり、許可なくリバースエンジニアリングや改変することを禁じています。*7
開発手法
良くも悪くも個人ベースの開発であり、動作チェックやスキンデザインの多くはユーザーに依存しています。
- 利点
- 非常に速いペースで更新され、ユーザーによる新機能の要望や問題点の指摘がすぐに反映されます。
ユーザーが開発に参加しているという手作り感が生まれます。 - 欠点
- 更新されていく内に何らかの不具合が修正されてはまた別の不具合が現れることが多いです。
特にベータ版は開発作業中のものが検証用にそのままアップされるので常用には注意が必要です。
機能
- 適切に設定すれば全般にシーク操作は軽く消費するリソースは少ない
- ほとんどのフォーマットに内部フィルターで対応*8
- 破損したAVI、ASFファイルでも破損箇所以外では再生できる
- インターフェイス
- 多彩なスキンは透過(オーバーレイ)表示、動画/音楽モード切替、アニメーションロゴ、改造可能
- だいたいの機能をキーやマウスに割り当てできる
- 設定プリセットを複数登録して一発で切り替え可能
- シークバー上のポップアッププレビュー
- タイトル付きブックマーク簡単入力
- フレーム単位の頭出し
- 区間リピートの一括再生
- 再生位置レジューム
- プレイリストのサムネイル表示
- プレイリスト領域でファイルフォルダーを表示
- 映像
- DXVAやCUDAなど再生支援
- 2倍フレーム化(60i->60pでインターレース解除)
- アンシャープマスキングによるシャープ化
- HEVCなど最新コーデック対応
- アップ/ダウンコンバート
- 自在な倍速とスロー再生
- 各種3D表示
- デュアルモニター拡張
- AviSynth登録
- 音声
- 各種サラウンド対応
- 独立チャンネルボリューム制御
- 量子化32bit-float&サンプリング192kHz対応
- 内蔵レンダラーによるWASAPI対応
- デュアル音声レンダラー
- Winamp用DSPプラグイン登録
- バーチャルサラウンド/バーチャルヘッドホン
- イコライザー/リバーブ/カラオケモード
- 字幕
- リアルタイム調整・切替・更新反映
- 高速シークと文字による位置検索
- ASS/SSAアニメーション
- オーディオファイルでも表示可能
- 日本語のルビ表記(HTML5形式)
- 字幕中の言葉をワンクリックでウェブ検索
- 字幕ファイル自動ダウンロード
- 複数字幕同時表示
- その他
- 録画・録音
- サムネイル一覧出力
- YouTubeなどのURL再生
- FTP・WebDAVから再生
- ゲームキャプチャ
- WMP用ビジュアリゼーション登録
- カバーアート表示
- ZIP/RAR内コンテンツも再生可能*9
注意点
荒削りな開発
当初より動作は安定してきましたが、非常に速いペースでどんどん更新され、設定項目や仕様なども頻繁に変化します。
要望がすぐに反映され機能が増えていくのは嬉しいことですが、多機能な割にマニュアルなどは用意されておらず、
全体的に説明不足で分かりにくい面があります。
設定の確認作業が苦痛という人、とにかくメディアの再生さえできればいいという人には馴染まないかもしれません。*10
クローズドソースの呪縛
PotPlayerは企業がスポンサーのほぼ個人開発に近いソフトです。
無料ですがオープンソースではないという点に留意してください。
将来的に提供企業や開発者の都合で開発が中止されたり、ユーザーの望まないものに変化したとしても、
他の人がとって代わって開発を引き継ぐことが簡単にはできません。
その時はあきらめて他に乗り換える、そういうソフトなのだという割り切りが必要です。
さらにオープンソースの資産を利用するメディアプレーヤーの開発において、ソースを隠すことは
ライセンス上の制約が増えることも意味します。
PotPlayerは各国のユーザーの間では評価が高い一方、GPL/LGPLのライセンス条項違反を問う声があります。*11
何かが送られている?
また、プロプライエタリーなソフトにありがちですが、起動時にユーザーの承認を得ずに開発元サーバーと通信します。
その具体的な通信内容は暗号化されているためユーザー側から知ることはできません。*12
一般にマーケティング目的と考えられ*13、このことが必ずしも危険だとはいう訳ではありません。
しかし情報流出が半ば常態化している昨今、本当に大丈夫だろうかという不安はぬぐいきれません。
いずれにせよ通信状態を把握する癖はつけた方がいいとはいえます。
そういうソフトは不安だ、または気になるが通信管理なんてやってられないという人にはPotPlayerはお勧めできません。
GPLライセンスなどで開発されている他のフリーソフトウェアを使いましょう。