シーン1

Last-modified: 2008-05-23 (金) 22:28:27

【本番まで残り 65日】PM4:00


2007年9月。
演劇部は部室でクレ祭に向けてのミーティングを行っていた。

湊「今年のテーマはEvolutionなんだけど、何かやりたい演目あるかな?
  去年は近未来でその前は現代ミステリーだっけ。時代劇もやったしな……やってないものって何だっけ?」

部長の湊が持ち込んだ資料や台本を見つつ部員達に問いかける。
そこへ慌ただしい足音と部室の扉を開けようとする音が聞こえて来た。

能登川「遅刻遅刻ー。あれ?開かない?うそだろっ」

ガンガンッ。
遅刻をして焦っているのか開けられないらしい。
ここの扉は建てつけが悪くて開けにくいのだ。

湊「早く入っておいで、怒らないから……開かないのか?」

気になった湊は扉を開けに行く。
ガラン。

能登川「遅れてすみません」
湊「始まったばかりだから気にしないで。今演目を考えてるところだよ。どう?何か思いついた?」
一宮「ん~…ファンタジーとかは?」
桜井「だいたいのものはやった気しねぇか?」
釈迦如来「う~ん」
湊「そう言えば動物やってないよね?今年は動物やらない?」

そう言いながら、持ち込んだ台本をチェックする。

天馬「動物って……」

湊「あっ、いい台本見つけた。今年はこれにしない?十二支の物語!!擬人化風でできると思うんだ」

湊が嬉しそうに台本を掲げている。
こうして、部長の一言で演目は決まることになった。
しかし次の日、問題点に気づくことになる。


【本番まで残り 64日】PM4:00


湊「今日は遅刻者いないよね?」

そう言って、湊は全員に台本を配る。

湊「じゃぁ今日は配役を決めたいと思います。十二支だから役者は12人な」
桜井「ちょっと待て!12人だよな?役者足りなくねぇか?」
湊「えっ、あ……」

そもそも今回の参加人数は少ない。その中には裏方の人も含まれているから確かに足りない。

黒羽「役者経験ある人って何人?誰か二役やる?」
湊「う~ん、だったらさ、裏方も役者参加ってことでどうかな?」
村河「それいいかも」
桜井「おいおい、今まで裏方しかやったことねぇのに……やんのか?」
湊「たまにはいいんじゃない?やろうよ」

抗議を受けつつもそれしか方法がなく、裏方と役者の垣根を超えた、ちょっと無謀な挑戦が始まった。

湊「じゃぁ、改めて配役を決めたいと思います。メインは子と丑。サブは寅・卯・午・未」
桜井「なら役者志望から、やりたい役言ってみたらどうだ?」
湊「おっけー。早い者勝ちだな」
釈迦如来「はいはーい!僕ねずみー!」
黒羽「はいはい!今度は俺活発な役やってみたいから申してみたい!!」
一宮「んー…戌とか面白そうなんだよなぁ…」
湊「僕は戌がいいなぁ」
綺咲「あ、あの、僕、卯をやってみたいですっ」
一宮「……よし、じゃぁ俺は巳やらせてもらおう」
桜沢「なら未で」
村河「オレ、寅がいい!」
神村「あのっ、午がやりたいっす」
湊「あのさ、僕、二役やってもいいかな?一度やってみたかったんだよなっ。残ってるのどれだっけ?」
綺咲「えっと、丑・辰・酉・亥ですね」
瀬納「酉いいですか?」
湊「それなら、もう一つは丑かなぁ」
黒羽「あー湊君二役するならメインの丑は厳しいよね?基本出ずっぱりだし。だったら代わるよ?」
湊「いいの?じゃぁ、総司が丑で僕が戌と申だな……残りは」
能登川「あ。俺、入ったばっかりなんで裏方やりまーっ」
四隣「あ、俺も裏方やせていただきます。役者経験無いので」

1年生3人のうち2人は早々裏方に回った。役者組は素早く自分のやりたい役を言って決まり始めた頃、後ろの方で諦め悪くしている人がいた。

桜井「ほれ」

近づいて行った桜井が有無を言わさず台本を渡す。

天馬「?オレもやるんですか?」

1年生でいきなり舞台に立つのか?と思っているようだ。

桜井「部長の話聞いていなかったのか?天馬サンは辰役決定。」
天馬「な!?」
桜井「まぁ、やってみろや。その長い髪生かさない手は無いぞ。それに」

一旦言葉を切って続ける。

桜井「1年生で役者経験あるのは、天馬サンくらいだからな。」

どうやらそうらしいが、髪の長さは関係ないと思った。しかしここは覚悟を決めるしかなかないようだ。
そこへ湊の大きな声が響いた。

湊「タツは亥をお願い~!残ったから」
桜井「了解ー」

湊「後は……ナレーションと神様の声、やりたい人いる?どっちも録音にしようと思ってるから誰でもできるよ」
釈迦如来「はい!ナレーションやってみたいです」
湊「おっ、ジールやる?みんないいかな?」
全員「「意義なしー」」
湊「神様の声は、僕はタツがいいと思うんだけど……どうかな??」
桜井「別にいいぞ?」
湊「ホント!?じゃぁ決定~」

これで全ての役が決まった。
そしてこれからの時間、練習と舞台準備に費やされることになる。