Nakao/バルカン半島南西部

Last-modified: 2015-01-02 (金) 16:27:45

§2 バルカン半島南・西部

①ギリシア Greece
 ギリシアは、今でこそ古代ギリシアの栄光を強く意識しているが、近世まではビザンツ帝国やオスマン帝国の支配下にあるバルカン半島南端の一地方にすぎなかった。その間、スラブ人やトルコ人との混血もすすみ、踊りにも他のバルカン諸国との類似性が見られる。とは言っても、やはりギリシア独自のものは残っており、ペントザリーなどに現れるリーダーズ・バリエーションはその一つと言える。ギリシアの踊りは、静かなシルトス系と跳ねるようなピディクトス系に大別され、ミザルーなどは前者に、イカリオティコスなどは後者に含まれる。

 

②アルバニア Albania
 アルバニア人は、アルバニア以外にもセルビア(特にコソボ)、モンテネグロ、マケドニア、イタリアに多く住んでおり、アルバニア人の踊りもこうした外国に残っていることが多い。例えば、ショタはモンテネグロの踊りであるが、アルバニア人によって踊られているものである。

 

③マケドニア Macedonia
 マケドニアというと、古代のアレクサンドロス大王の国家を思い浮かべる人が多いかもしれないが、現代のマケドニアはそれとはほとんど関係のないスラブ系の国である。踊りには、ゆっくりとした複合拍子レスノトのリズムで踊られるイバニッツァや、ブルガリアと見紛うような素早いステップを披露するコパチカ、複雑なリズムで踊られ、回転を伴ったジャンプの現れるチュチュックやオソゴフカなどがある。リズムの特殊なものについては、その「ため」が重要な要素となっている。

 

④セルビア Serbia
 セルビアは近年、その民族紛争でよく話題に上る国となってしまったが、かつてのユーゴスラビア連邦の中心的国家であった。現在でも、ボイボディナとコソボという2つの自治州を抱えており、民族紛争の火種はまだまだある。しかし、そうした暗いイメージとは対照的に、踊りにはきわめて明るいものが多い。ナショナル・ダンスとされるコローは、サークルという意味であるが、活発な輪舞である。ミラノボ・コローなどがこれに当たる。一方、南部のブラニェの踊りダンスィズ・フロム・サウス・セルビアには、マケドニアの踊りとの類似性が認められる。日本では、セルビアン・メドレーという踊りのメドレーが多数紹介されていることでも分かるように、セルビアの踊りはかなりメジャーである。

 

⑤クロアチア Croatia
 クロアチア、特にザグレブ近辺にはドルメシュ(「ふるえ踊り」)と呼ばれる輪舞がある。これはクローズド・サークルで逆LOD向きに回転するものであり、LOD回転の多いバルカン半島では特殊なものと言える。キシャ・パダなどもその一つである。

 

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