副官

ナッツはどこにでも居るごく普通の少女であったが、ある事件を境に政府から特別な監視を受ける対象となってしまった。
12歳のある日、彼女は忽然と姿を消してしまったのだ。 それから数か月後、彼女はある廃屋の地下で発見された。
発見された当時の彼女は集中治療が必要なほど衰弱していた為、すぐに医療機関に運ばれた。

ナッツの体は当時の最先端医術をもってしても原因が把握できない不思議な症状であった。
コーマ状態の彼女に手の施しようのない医者たちは、生命維持装置を使って彼女を延命させるだけで精一杯であった。
ところが、それから数か月後、突然意識のもどった彼女は凄まじい回復力を見せ、やがて惑星士官学校に復帰することになる
以下は当時彼女の担当医として治療にあたった医師のカルテからの抜粋である。
　
pas02診断書_ナッツ "この患者からは現在の医療技術では解明できない何らかの作用により、筋肉の弛緩と硬直が繰り返され危険な状態が続いている。
先日の役員会議で「宇宙病」と呼称する事となったこの症状は、未だに原因が解明されておらず引き続き観察が必要となるだろう。
これはあくまでも私自身の判断だが、この症状は未知のウィルスによる免疫体の破壊によって引き起こされる症状ではないだろうか
幸い空気感染の危険性は無いようなので、詳細に関しては、患者が発見された周辺地域の生物を調査を依頼する必要がある。"
　
pas07診断書-ナッツ "未だ有効な治療法が見つからないにも関わらず、本患者が回復の兆しを見せている事に驚きを隠せない。
筋肉硬直の病状も好転していると見られる。
これらの現象は体に侵入した未知のウィルスが引き起こした症状に、本患者の体が適応した事による自然治癒の結果ではないかと思われる。"
　
pas15診断書-ナッツ"本患者の症状の回復は目覚ましく、既に日常生活において問題がないと思われる状態にまで回復した。
しかし、依然本患者の体からは正体不明の高エネルギー反応が確認されており、彼女の身体から検出された特殊物質の調査を兼ね、引き続き連邦政府からの継続的な監視が必要だと判断される。"

その後、完全に元気を取り戻した彼女は、退院後数回にわたり連邦政府の機関で調査を受けたが、『不思議な光を見た』という彼女の証言の他、詳しいことは依然不明瞭なままであり、より詳しい調査が必要だと判断される。

"彼女の詳しい研究をさせて頂けるのであれば、新時代のエネルギーと呼べる次世代資源の確保や、彼女のエネルギーが今後人類にどのような影響を与えるのか等の研究が可能になり、未知のエネルギーの活用方法や、より詳しい情報を手に入れられる良いきっかけとなるでしょう。" - ホーキンソン 医学博士