突然の大爆発が起き、アグアドを凄まじい爆風が襲う。
ア(何だ!?何が起こった!?)
一方の星実も、吹き荒れる爆風から身を守っていた。
星(何だこれは…向こうの2人か?)
魔術師『…室長、緊急報告です!広場が制圧されました!』
頭の中に、魔術師からの通信が入る。
星『何だと…?クソ、こんなに早く…』
魔術師『いかがいたしましょう!敵がもうすぐそこまで…!』
星『残っている兵をすべて王城内に回収しろ!篭城戦に持ち込め!』
魔術師『了解しました!』
星「さて…悪いがここまでだ、風使い!次は必ず殺す!」
アグアドの足元に、魔方陣が展開した。
ア「何を…!?」
光がアグアドを包み込み、視界が光で満たされた。
ア「ん?ここは…?」
てり「うわ!アグか!」
光が収まると、そこはタラの広場であった。
ア「そうか…転移魔法か。クソ、逃げたか…」
むと「アグ、べラムさんはどこ?」
ア「え…いないのか?まさかまだ王城の中に…!?」
そう言った途端、アグアドの横に魔方陣が浮かぶ。
その中から、べラムが姿を現した。
ア「あ!べラムさ…ん…?」
中から現れた少女は、瀕死であった。
体中から血が吹き出て、左腕と左足が無かった。
そして、その背中に生えているのは、あのyasuhiroと同じ、蝙蝠のような羽。
べ「あ…ここ…は…?」
虚ろな目で、周囲を見る。
そしてゆっくりと、後ろに倒れた。
アグアドは素早く背中を受け止め、べラムの顔を覗き込む。
べ「転移魔法か…」
むと「衛生兵!早く!」
兵士A「おい!急げ!こっちだ!」
兵士B「おいおい、何があった!?」
周囲があわただしくなり、数人の衛生兵が駆け寄ってくる。
しかし、誰の目で見ても、もはや手遅れであることはわかっていた。
ア「べラム、さん…その姿…」
べ「ああ…私ね、魔物なんだよね…隠してて、ごめん…
スパイとかじゃ、ないよ。昔ぴろしに、助けられたから、人間側にいただけ…」
ア「そんな事は関係ありません…!だから、もう…」
目蓋に熱いものが込み上げ、目から1滴の雫が落ちる。
ア「もう…喋らないでください…!」
べ「遅かれ早かれ、こうなる…運命だったのかもね。魔物は所詮、魔物…
人間と一緒には…いられないからさ…」
ア「そんな事関係ねぇって言ってるだろ!」
突然の大声に、広場にいた全員がビクっとした。
べラムも閉じかけていた目を再び開き、驚愕した。
ア「魔物は人間と一緒にいられない…?魔物は所詮こうなる運命だと…?ふざけるんじゃねぇ!
確かにアンタは魔物だ。でも、だからって、それが何だって言うんだよ!」
ア「少なくとも、オレはアンタを尊敬してた!友達だと思ってた!そしてそれは
オレだけじゃ無い筈だ!魔物でも、人間と仲良くする事だって…出来るじゃねぇか!」
ア「だから…そんな事言わないでくれよ…!魔物だからとか、仲良くなれないとか…」
嗚咽を漏らしながら、涙を流しながら、べラムに言う。
自分の泣き顔を見られようが、構わなかった。
じっとアグアドの顔を見つめるべラムの目にも、涙が溢れていた。
べ「あり、がとう…アグアド…うれしい、よ。」
べラムの声は濁り、顔は蒼白になっていた。
しかし、べラムは笑っていた。いつものように。
べ「もっと一緒にいたかったけど…残念だなぁ…
もし、さ。次生まれ変わったら…また、逢えるかな…」
ア「大丈夫ですよ…また、絶対に逢いましょう。次は必ず…
人間になれますよ…!」
アグアドも涙を堪え、笑顔を作って言った。
べラムの目から、一筋の涙が頬を伝って流れた。
そして、その姿が、薄れていき、
べ「じゃあ…また、ね。みんな…」
光に包まれ、霧散し、消えた。
ア「はい…」
周囲の誰もが、涙を流し、声を上げ、泣いていた。
ア「また、絶対に逢いましょう…」
その様子を、少し離れたところから、ミシェナは見ていた。
ミ(全く、何年ぶりだろうな…こんな気分になるのは。仲間の死など、
最早飽きるほど見てきたというのに。涙など、とうに枯れ果てたと思っていたが…)
その目から、光る雫が零れ落ちた。