第22話「いつか、生まれ変わっても」

Last-modified: 2011-11-09 (水) 23:05:52

突然の大爆発が起き、アグアドを凄まじい爆風が襲う。

ア(何だ!?何が起こった!?)

一方の星実も、吹き荒れる爆風から身を守っていた。

星(何だこれは…向こうの2人か?)

魔術師『…室長、緊急報告です!広場が制圧されました!』

頭の中に、魔術師からの通信が入る。

星『何だと…?クソ、こんなに早く…』

魔術師『いかがいたしましょう!敵がもうすぐそこまで…!』

星『残っている兵をすべて王城内に回収しろ!篭城戦に持ち込め!』

魔術師『了解しました!』

星「さて…悪いがここまでだ、風使い!次は必ず殺す!」

アグアドの足元に、魔方陣が展開した。

ア「何を…!?」

光がアグアドを包み込み、視界が光で満たされた。


ア「ん?ここは…?」

てり「うわ!アグか!」

光が収まると、そこはタラの広場であった。

ア「そうか…転移魔法か。クソ、逃げたか…」

むと「アグ、べラムさんはどこ?」

ア「え…いないのか?まさかまだ王城の中に…!?」

そう言った途端、アグアドの横に魔方陣が浮かぶ。
その中から、べラムが姿を現した。

ア「あ!べラムさ…ん…?」

中から現れた少女は、瀕死であった。
体中から血が吹き出て、左腕と左足が無かった。
そして、その背中に生えているのは、あのyasuhiroと同じ、蝙蝠のような羽。

べ「あ…ここ…は…?」

虚ろな目で、周囲を見る。
そしてゆっくりと、後ろに倒れた。
アグアドは素早く背中を受け止め、べラムの顔を覗き込む。

べ「転移魔法か…」

むと「衛生兵!早く!」

兵士A「おい!急げ!こっちだ!」

兵士B「おいおい、何があった!?」

周囲があわただしくなり、数人の衛生兵が駆け寄ってくる。
しかし、誰の目で見ても、もはや手遅れであることはわかっていた。

ア「べラム、さん…その姿…」

べ「ああ…私ね、魔物なんだよね…隠してて、ごめん…
  スパイとかじゃ、ないよ。昔ぴろしに、助けられたから、人間側にいただけ…」

ア「そんな事は関係ありません…!だから、もう…」

目蓋に熱いものが込み上げ、目から1滴の雫が落ちる。

ア「もう…喋らないでください…!」

べ「遅かれ早かれ、こうなる…運命だったのかもね。魔物は所詮、魔物…
  人間と一緒には…いられないからさ…」

ア「そんな事関係ねぇって言ってるだろ!」

突然の大声に、広場にいた全員がビクっとした。
べラムも閉じかけていた目を再び開き、驚愕した。

ア「魔物は人間と一緒にいられない…?魔物は所詮こうなる運命だと…?ふざけるんじゃねぇ!
  確かにアンタは魔物だ。でも、だからって、それが何だって言うんだよ!」

ア「少なくとも、オレはアンタを尊敬してた!友達だと思ってた!そしてそれは
  オレだけじゃ無い筈だ!魔物でも、人間と仲良くする事だって…出来るじゃねぇか!」

ア「だから…そんな事言わないでくれよ…!魔物だからとか、仲良くなれないとか…」

嗚咽を漏らしながら、涙を流しながら、べラムに言う。
自分の泣き顔を見られようが、構わなかった。
じっとアグアドの顔を見つめるべラムの目にも、涙が溢れていた。

べ「あり、がとう…アグアド…うれしい、よ。」

べラムの声は濁り、顔は蒼白になっていた。
しかし、べラムは笑っていた。いつものように。

べ「もっと一緒にいたかったけど…残念だなぁ…
  もし、さ。次生まれ変わったら…また、逢えるかな…」

ア「大丈夫ですよ…また、絶対に逢いましょう。次は必ず…
  人間になれますよ…!」

アグアドも涙を堪え、笑顔を作って言った。
べラムの目から、一筋の涙が頬を伝って流れた。
そして、その姿が、薄れていき、

べ「じゃあ…また、ね。みんな…」

光に包まれ、霧散し、消えた。

ア「はい…」

周囲の誰もが、涙を流し、声を上げ、泣いていた。

ア「また、絶対に逢いましょう…」

その様子を、少し離れたところから、ミシェナは見ていた。

ミ(全く、何年ぶりだろうな…こんな気分になるのは。仲間の死など、
  最早飽きるほど見てきたというのに。涙など、とうに枯れ果てたと思っていたが…)

その目から、光る雫が零れ落ちた。