第27話「皇女」

Last-modified: 2011-11-09 (水) 23:14:14

シェ「アグアド、お願い…もう地球に帰って。
   兄様には、もう地球を攻撃しないよう、頼むから…」

ア「悪り、それ無理。」

アグアドは即答する。
それを聞いたシェナリーは、僅かに顔を歪めた。

シェ「貴方と、戦いたくない…」

ア「奇遇だな、俺もだよ。だからって、このまま他の連中を
  放っておく訳にもいかねぇだろ。それに、お前も」

アグアドはシェナリーの目を真っ直ぐに見据え、言う。

ア「お前さ、本当にそれでいいのかよ。お前は良くても、俺たちは
  良くねぇんだよ。このまま別れてハイサヨナラ、って、俺たちが
  納得すると思ってるのか?」

シェ「だって…仕方ないじゃない!私は…ここの皇女で…貴方達の、敵だから…っ」

ア「そんなの関係無ぇだろ!お前は俺たちの…」

シェ「兄様や王室魔術師が本気を出したら…地球の皆は絶対やられちゃう…
   これ以上、皆が傷つくのは嫌なの!」

ア「だったら兄貴を説得しろよ!もう戦いやめようって!」

シェ「無理よ。絶対に…。もう、兄様は昔の兄様じゃない…」

そして、アグアドをにらみつける。

シェ「地球軍の主力の貴方が倒されれば、地球軍の勢いも止まるはず…
   だから、貴方を説得して、地球に帰ってもらうつもりだったけど…!」

シェナリーの足元に、魔法陣が展開する。

シェ「それが出来ないなら…貴方を力ずくで倒す!」

ア「そうかよ…やっぱぶん殴らないと、目が覚めないみてぇだな!」

シェ「"光精召喚"、光の精霊99柱、迎え撃て!」

アグアド目掛け、無数の光の矢が発射される。
アグアドはそれを、風盾を使い防御。

ア「へ、こんな物効くかよ!」

そのまま気流を使い、猛スピードでシェナリーの背後に回る。

ア「歯ぁ食いしばれ!」

拳を握り締め、振りかぶった…瞬間。

シェ「"煌閃"!」

一閃の斬撃が、アグアドの頬を掠める。

シェ「私が剣を使えるって事、忘れてない?」

ア「チッ!」

距離を取り、複数の小型の風の槍を飛ばす。
シェナリーも光の矢を飛ばし、迎撃する。

ア(悔しいが、アイツの剣は厄介だからな…距離を縮めないほうが…)

シェ「大地を裂き、吹き荒れよ風、"白銀光嵐"!」

莫大な光の奔流が、アグアドに襲い掛かる。
アグアドは辛うじて回避、体制を立て直す。

ア「クソ…魔法もあるんだった、厄介だな…」

シェ「分かったでしょ。もう、降参して…」

ア「ふざけんなよ。その程度で俺が降参するとでも思ってるのか?」

シェ「やっぱりね。貴方がこの程度で諦めないことくらい、分かってるわよ…」

ア「だったら…テメェが諦めろ!」

周囲の瓦礫を浮かせ、気流を付けて発射する。
シェナリーは身構えるが、狙いはすべて明後日の方向へ飛んでいった。

シェ「どこ狙って…」

ア「こっちが本命だよ!」

シェナリーがハッとして正面を見ると、その手にプラズマを纏わせ、
瓦礫に身を隠すように接近する、アグアドの姿が。

ア「悪いが…気絶してもらうぜ。」

その手を、シェナリーの首筋に突き出す。
しかし、手は当たらなかった。

ア("空間転移"…あの一瞬でか!?)

シェ「これで終わり…だから、もう、私に構わないで…!」

いつの間にか背後に移動していたシェナリーの足元に、巨大な魔法陣が展開した。

シェ「天界の使徒よ、浄化の光、万象、真理、天の御使いを冠するモノよ、
   漆黒の壁に聖光を刻む、夜明けの刻を知らせし鐘…」

ア「何言ってんだ…テメェ…」

シェナリーを中心に、周囲が光に包まれる。

シェ「"その音色で大地を満たせ、"聖皇光天閃嵐"!」

先ほどとは比べ物にならないほどの光の奔流が、アグアドを包む。

ア「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

シェ「ごめん…ごめんね…アグアド…」

シェナリーは、床に手を着き、うなだれた。