忘れない

Last-modified: 2008-06-26 (木) 00:18:27

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 忘れない。
 あのあどけない唇が、初めて「おかあさん」って、わたしを呼んでくれたときのこと。
 両腕に抱えられたくらいのちいちゃな赤ん坊だった二人が、
 元気いっぱいの手足でわたしに駆け寄って、
 抱きついてきてくれたときのこと。
 石化されていた十年の間は、さみしくて不安で、仕方なかった。
 でもあの子たちが、そしてリュカが。
 わたしの前に現れたとき、十年間の何もかもが報われたような気がしたの。
 わたしは何年もの月日を歩いてきて、こうしていとおしい、ふたつのいのちを抱きしめている。
 もし昔、リュカに出逢わなかったら。
 山奥の村で、リュカと再会しなかったら。
 リュカがわたしを選んでくれなかったら。
 わたしはこの子たちに、出会うことすらできなかった。
 そう思うと、なんて不思議なんだろう。八歳のときにリュカと出逢ったことが、きっと全ての始まり。
 それから出逢った色んな出来事が、きっと今日という日に繋がっているんだわ。
 リュカと二人、子供たちをこの腕に抱くことのできた、この日に。
 悲しいことも、つらいことも、ぜんぶ含めて。
 すべての運命に、ありがとう。
 

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