『闇に住む鬼』

Last-modified: 2022-04-08 (金) 21:07:18

D&D5版1Lvの短編シナリオです。
(Ver1.01 作成日20220404、更新日20220407)

 

【0:シナリオの概要】

  • 使用ルール:D&D5版
  • シナリオ名:『闇に住む鬼』
  • シナリオ紹介:
     君たちは行商人の護衛を請け負い、ディルランズの街道を旅している。
     森の道を数日旅すれば、町に着くはずだ。
     途中、傷ついた子供から助けを求められる。
     何かに襲われて仲間が連れ去られたらしい。
     君たちは街道に平和を取り戻すことができるだろうか?
     
  • プレイ時間:3時間ほど
  • レベル:1レベル
  • プレイ人数:1~5人(標準4人;PC数が少ない時の調整を記載)
  • 想定レギュレーション
    • D&D5版の日本語版のみ使用、モンスター・マニュアルはプレイヤー使用不可
    • 使用する選択ルール:能力値のカスタマイズ、ヒューマンの特徴、特技、グリッド・マップを使った戦闘
    • 能力値は規定値割り振りか27ポイントバイのどちらか、レベルアップ時のHP上昇は固定値を使用
    • 装備品:背景とクラスからのみ
    • 冒険の舞台はフェイルーン、DR1489年、“ディルランズ”地域です。
       ガイドto『ディルランド、1489DR』
       キャラクターの準備にはサンプルキャラクターを用いても良いでしょう(下記に添付)
  • 補足:
    • 移動と呪文の範囲は斜めも1マス
    • 手に持った物を落とすのはフリー・アクション(ちゃんと鞘に納めるのは'周囲の物体と関わる')
  • 用語:
    • プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)、モンスターマニュアル(MM)、ダンジョン・マスターズ・ガイド(DMG)
    • プレイヤー・キャラクター(PC)、ノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)
    • フィート(ft;約30cm)、ポンド(pd;約453g)
       

シナリオの背景と概要
冒険者は旅の途中で傷ついた少年コリンと出会います。少年の言うことによると、怪物に襲われ、同行していた少女エルマがさらわれてしまったとのこと。怪物から少女の救出を依頼されます。
 -
少年が襲われた現場には馬車が残っています。調べると冒険の手助けになる品物を得ることができ、足取りを追うことで怪物の向かった洞窟に行きつきます。
 -
この怪物はザグという盲目のオーガです。以前は魔術師の下働きをやっていたのですが、愚かな欲を出して魔術師の呪いで盲目になりました。彼は魔術師の下から逃げ出してこの洞窟にたどり着きました。洞窟にはもともとコボルドの“さびウロコ族”が住んでいましたが、オーガはコボルド達を殺してここを住処にしました。コボルドの生き残りジャスは洞窟に潜んで復讐の機会をうかがっています。
 オーガは腹が減ると近くの街道の脇に隠れ、通りがかりの旅人を殺し、持ち帰って食べています。満腹の今はエルマを話し相手にしています。
 -
冒険者たちがザグを退治して娘を救出すれば、街道の危険は取り除かれ、周辺の人々に安心を取り戻すことができます。冒険者は改めて旅に向かうでしょう。

 

【1:キャラクターの準備】
レギュレーションに沿ってプレイヤーとキャラクターを準備しましょう。 その際に前衛タイプ、遊撃タイプ、支援タイプ、秘術タイプのキャラクターがそれぞれいれば、メンバーがお互いに協力や活躍しやすくなりますので、クラスを調節しましょう。キャラクター作成の時間をとるのが困難なようでしたら、作成済キャラクターを利用するのも手でしょう。作成の際に改めてシナリオの紹介をしておくと、プレイヤーはそれをきっかけにキャラクターの個性付けになるかもしれません。
 プレイヤーの数が少なかった場合のため、調整案を記載しています。参加人数に合わせて選択してください。もし、プレイヤーの数が3人ならば、支援系のキャラクターをNPCとして追加するのも良いかもしれません。初めから仲間として同行しているのが良いでしょう。
 キャラクターを準備できたら、お互いのキャラクターを自己紹介をしてもらってください。名前と種族、クラス、背景、何が得意でどのような弱味を持っているかを共有しましょう。

 

【2:街道沿いの木陰(導入とウォーミング・アップ戦)】
冒険者は商人と共に旅をしており、野営中に狼の襲撃を受けます。野営の様子を簡単に描写した後、プレイヤーに異変を知らせてください。

君たちは険しい峡谷と深い木々に囲まれた、ディルランズの森の中を旅している。行商人のタムレンの護衛として、スカーディルの街から街道を北西に向かっている。あと2日ほどでチャンドラークロスにつくだろう。

地域マップ1
dd5_1Lv_fr4_wFig1a.jpg

 

遭遇マップ1
dd5_1Lv_fr4_wFig2a.jpg

 
 君たちが翌日に備えてキャンプの準備をしていると、茂みの陰から荒い息遣いと、獣の足音を耳にする。
 木々の向こうから、擦り傷だらけの子供が、狼に追われているのが見える。

この戦闘は参加プレイヤーの勢いをつけるためのウォーミングアップ戦です。直後に大休憩があることをプレイヤーに伝え、自分のキャラクターの確認と互いへの紹介のため、遠慮なく能力を使用するように推奨しましょう。森の木や茂みは軽度の隠ぺいと遮蔽を与えます。

 
遭遇Lv1 困難 (200 XP / 難易度100 XP相当)
分類名称PC1人2人3人4人以上
ウルフ(W)cr1/4x1x2x3x4
NPCタムレン(一般人)cr0、コリン(一般人、小型)(C)cr0、馬車
財宝なし
 
 狼を倒した君たちに少年が息を切らしたまま感謝を述べる「あ、ありが…とう。あんたたちが…いないと…喰われ…ちまってたよ!」

タムレンは少年を落ち着かせ、休ませて事情を聞こうとします。

 

【3:少年からの依頼】
傷の手当てをして落ち着くと、少年は名を名乗り、事情を話します。

 
 狼を倒した君たちに少年が息を切らしたまま感謝を述べる「俺の名前はコリン。親父と一緒に運び屋をやっているんだ。街とか村の連中に頼まれて、荷物とかを運んでお金を受け取る」、「今回はスカー・ディルからチャンドラー・クロスに届け物だ。布と食い物と…、それから向こうに用があるっていう姉ちゃんと一緒だった。」
 「日が暮れてきて…、そろそろ休もうかとか言ってたら、木の陰からなんかでっかいのが出てきて、ぶっ飛ばされて・・・血がいっぱいかかって。…親父が逃げろって…叫んでて…いっしょうけんめい逃げたんだ。」、「そうしたら、狼と出くわして、また逃げ回ったんだ。」
 

その後、コリンは冒険者に助けを求めます。

 「なぁ、お願いだよ!親父と姉ちゃんを助けてくれよ!」

Q「父親の名は?」→コリン「クルト。人がいいだけの冴えない親父だよ」
Q「同行していた娘は?」→コリン「エルマさん。歩きながらいろんな話してくれてたんだ!」
Q「報酬は?」
→コリン「これぐらいしかないけど…(ポケットの中の銅貨15枚)」、
→タムレン「私からも頼みます。街道の危険はできれば何とかしたいです」、「手当を追加しますし、街道警備隊からも報酬が出るでしょう」。

 

タムレンは一晩休んでから、翌朝に彼らがコリンらが襲われたところに向かうことを提案します。PC達がすぐに現場に向かうことを強く主張するなら、いったん火を消し、馬車に少年を載せて冒険者のあとに続きます。

 

【4:襲撃の跡】
コリンの案内で襲撃現場に向かうと、街道に壊れた馬車が転がり、近くの草むらに馬が死んでいるのを発見します。ここを調べることで、幾つかの有用な物を手に入れ、襲撃者の行き先を知ることができます。

 
コリンの言葉をたよりに街道を進むと、壊れた馬車が見える。あたりに血が飛び散り、道脇に馬の死体が転がっている。動くものはいない。
 

遭遇マップ2
dd5_1Lv_fr4_wFig4a.jpg

 

周辺を見渡せば、血の付いた大きな足跡が森に向かっていることが分かります。
馬車に積んでいた荷物の多くは散らばって台無しになっていますが、調べると以下のものが見つかります。

馬車の荷物
普通の服x12、毛布x4、エールx2樽、チーズx8塊、小麦入りのずた袋x4、大工道具、調理用具、治療用具、盗賊道具、錠前のかかった木箱
 

木箱を揺すると水音がします。木箱の錠前を開けるのには【敏捷力(盗賊道具)】判定-難易度15に成功する必要があります(再挑戦可)。力づくで壊して開けた場合、中に入っている瓶が割れて、液体が滴り落ちます。

木箱の中
上質なワイン(ボトル、10gp)、ポーションofヒーリング(50gp)、金貨12枚、開封された手紙
 

手紙には以下のように書かれています。手紙の中身ついては、コリンは何も知りません。

「親愛なる、“旗持の”クルトへ
すまないが、また手を貸してくれ。
スカーディルの街、サイレン通りに住むエルマという娘を保護し、チャンドラー・クロスに連れてきてくれ。
彼女はレスリー・バロウズ老人の孫娘だ。君も以前にバロウズ老人から、家族のことについて聞いたはずだ。
送り届けてくれたのなら、金貨50枚を支払う。
     ―“カブト虫の”デリック
     こちらにも一応、酒はある。無事に会えたら一杯やろう。」

 

足跡を辿って森の中を歩くと崖際の洞窟に行きつきます。このとき【判断力(生存)】判定-難易度15に成功することで、足跡は大型サイズの人型生物のもの、途中で様々な物にぶつかりながら歩いていることに気が付きます。

 

【5:洞窟の入り口】
足跡を辿って岩場を回り込むと、木陰に洞窟を発見します。以降の描写はより小さな項目番号から訪れたものになっています。

しばらく歩くと、木々が途切れ、切り立った崖にたどり着く。斜面に洞穴が開いており、足跡は奥の暗がりに続いている。
 

洞窟の幅は幅5ftほど、うねりながらやや下っています。この洞窟は自然洞窟を元にコボルドの“さびウロコ族”が加工を施したものです。基本構造として、通路の天井の高さは5ft、部屋は10ftです。洞窟は暗く、中に入る前に明かりが必要になることを伝えてください。

 

遭遇マップ3
dd5_1Lv_fr4_wFig5a.jpg

 
湿った洞窟に入るとカビと腐臭が鼻をつき、入り口からの光は届かなくなる。洞窟は突き当りのT字路になっている。左側は粗雑な階段で曲がりながら地下に向い、右側は斜面が上に向っている。
 

【6:上り坂】(天井の高さ:5ft)

君たちがゆるい斜面を登ると、洞窟は狭くなる。その奥で道が広がっているようだ。

上り坂から【判断力(知覚)】難易度10に成功することで、奥から水音と、無数のチューチューという鳴き声を聞くことができます。また、坂ノ途中に仕掛けられた罠に気づくかもしれません。

 
罠:埋め込みのクギ板:脅威度1/4(50XP)
機械式;(Tp1)を通ると発動、再装填なし
罠は先頭で通った者に対して動作。対象者は敏捷セーヴ12を行い、失敗すると1d4[刺突]ダメージ。
【判断力(知覚)】難易度12または【知力(捜索)】;気づけば起動させずにすみます。罠の排除は容易です
 

【7:ネズミの巣】(天井の高さ:10ft)

洞窟は広がり、右側は水溜りになっている。高くなった天井から水滴が落ちる。奥には通路が続いている。
 

物陰や水中にネズミが隠れています。判断力(知覚)難易度12に成功すれば、どこに隠れているか見つけることができます。冒険者が部屋の中に踏み込むか、攻撃をするとネズミたちは襲いかかります。

物かげから一斉にネズミの群れがあふれ出す。チューチュー鳴きながら襲い掛かってくる!
 
遭遇Lv1 困難 (150 XP / 難易度75 XP相当)
分類名称PC1人2人3人4人以上
スォーム・オブ・ラット(W)cr1/4x0x0x1x1
ジャイアントラット(R)cr1/8x2x3x2x4
財宝なし

戦闘後にあたりを見回すと、小さな横穴と奥に登り階段が見つかります。水溜りにはネズミにかじられて小さな白骨化した死体(コボルトのもの)が沈んでいます。

 

【8:下り階段と祈り部屋】(天井の高さ:5ft)

君たちは湿った土と木で造られた粗雑な階段を下る。洞窟は緩やかに曲がり、壁と天井に張られた蜘蛛の巣が視界を妨げる。南西の壁に亀裂があり、奥に小部屋がある。
 
小部屋の中には砕けた木片が散乱し、色とりどりの模様が床と壁、天井にまで描かれている。五色の円板、砕けたドクロの絵、黄色の流星など・・・かつては何かの祭壇だったのだろう。床にはいくつかの貨幣などが転がっている。
 
キイロホコリカビ(Tp2)cr1/2
物品金貨17枚、宝石(縞瑪瑙;10gp)x1、ドクロ飾りの真鍮の鍵

危険に気づかず部屋のに踏み込んだら、うっかりと黄色い模様に触れてしまいます。大きなシュッという音がしたかと思うと、辺り一面に黄色い胞子が雲のように湧き上がり、口や鼻の中いっぱいに入り込みます。
 この部屋はコボルトたちの祭壇でした。古い死体と彼らの守護神カートゥマルクや悪竜の女神ティアマットの粗雑な聖印が散らばっています。この部屋で見つかる鍵は[11]の宝物を手に入れるのに役立ちます。

罠:キイロホコリカビ:脅威度1/2(100XP)
天然の機械式;部屋の中を歩き回ると発動、再装填なし
罠は部屋の中にいる者に対して動作。対象者は耐久力セーヴ12を行い、失敗すると1d4[毒]ダメージ、1時間のあいだ毒状態になる。この毒状態は10分かけて治療を試み、【知力(医術)】難易度12に成功すれば、その段階で解消することができる。
【判断力(生存)】難易度12または【知力(自然)】;危険に気づけば起動させずにすみます
 

【9:ゴミ捨て場】(天井の高さ:40ft)

階段の先は深い縦穴の底に辿りつく。無数の蠅が飛び回り、立ち込める腐敗臭に吐き気を催す。灯りを掲げても天井は暗く見通せない。足元のゴミと瓦礫に混ざり、腐乱した死体と骸骨が埋もれている。
 

竪穴に踏み込むなどをしたら、スケルトンが起き上がって攻撃してきます。

瓦礫からぼろぼろの鎖帷子をまとった骸骨が立ち上がり、シミターを抜く。虚ろな髑髏と白い骨があざ笑うかのようにカラカラと鳴り、異様な素早さで斬りかかってくる。
 
遭遇Lv1 困難 (200 XP / 難易度100 XP相当)
分類名称PC1人2人3人4人以上
スケルトン(S)cr1/4x1x2x3x4
財宝銅貨34枚、銀貨28枚、真鍮のブローチ

戦闘後に調べると、食い散らかされた死体の中に真新しいものを見つけられます。これはコリンの父親であるクルトの遺体です。懐を調べると真鍮のブローチを発見します。ブローチの裏側に金で象った王冠の模様があります。【知力(歴史)】難易度15に成功すると、これが「領主同盟」という組織の紋章であ、持ち主がこの組織に所属していたのだろうことが分かります。しかるべき相手に渡すなら、金貨10枚の価値があります。
 このエリアの壁を調べると、【判断力<知覚>】難易度15か、【知力<捜査>】難易度12の判定に成功することで、亀裂の一つが奥に広がって通路になっていることに気づきます。ここに潜り込むことで[10]に向かうことができます。

 

【10:隠れ家】(天井の高さ:5t)

狭い通の脇に小部屋がある。ツンとした刺激臭が鼻をつく。小部屋には小さな机や木箱があり、その上に皿や瓶が並んでいる。
 

【判断力<知覚>】難易度14に成功すれば、部屋の奥に息を潜めているコボルドを発見できます。彼は“さびウロコ”族の生き残りコボルト戦士のジャスです。彼は洞窟がオーガのザグに襲われた時の生き残りです。その時のケガで足を引きずっています。入り口が小さくてザグが入ってこれないこの部屋に潜み、通路に罠を仕掛けて嫌がらせのレジスタンス活動を行っています。
 冒険者に対しては、隠れてやり過ごそうとしますが、無理そうだったら奇襲を試みます。冒険者が戦闘を避けたいなら【魅力(説得)】難易度10か、【魅力(威圧)】難易度15などに成功することで、戦闘を避けて接触できます。
 ジャスと話すと、以下のようなことを話します。

  • 「俺の名はジャス。“さびウロコ”族の戦士だ。もう俺しか残っていない。オーガにやられた」
  • 「洞窟の奥にオーガがいる。デカくて、独り言が多い。ザグって名前。」
  • 「昨日、二人をかついで戻ってきた。」
  • 「奴を倒してくれるなら。これをヤル。役に立つ(錬金術師の火x1とネズミ避けx1を渡す)」
     
遭遇Lv1 簡単 (50 XP / 難易度13 XP相当)
コボルド戦士のジャス(K) cr1/4

ジャスの能力は通常のコボルトとほぼ同じですが、以下の点が異なります。
脅威度1/4、hp=8、移動速度=20ft、隠密=14、「錬金術師の火」(1個、命中+4;ヒットすると着火し、目標のターン開始時に1d4[火]ダメージ。アクションを消費して【敏捷】難易度10の判定に成功で消火)

 
ネズミ避け
陶器の瓶に入った錬金術の薬品、一人分
この刺激臭のする粘液を身体に塗ると、1時間ほどネズミが近寄らない
身につけた者が先導すると、ネズミとの戦闘を避けられる
 

【11:鬼の住処】(天井の高さ:10t)

洞窟の奥、階段の向こうに通路が続く。通路には血が流れて階段にしたたり、闇の中から脅しつけるような低い声と女性のすすり泣きが聞こえる。
 
床一面が血にまみれた部屋のなか、傷だらけの鬼がいる。
ロープで縛り上げた女に話しかけている「よく聞け、チビ。これからお前が俺の目になれ。そうすれば、たらふく捕まえて喰いまくれる!」、
「いっぱい喰って目が治ったら、今度はクライヴの奴に仕返ししてやる…」。
オーガの目は抉れ、乾いた血が顔面にこびりついている
 

部屋の奥にはオーガのザグがおり、先日に捕まえてきたエルマを従えさせようと脅しつけています。エルマはこれに抵抗しています。
 ザグは以前にクライヴという魔術師の手下として働いていました。彼は魔術師が大切にしている首飾りを盗み、呪いをかけられて盲目になりました。魔術師の下から逃げ出しました。洞窟の近くで衰弱して死にかけていたところ、彼を追い払おうとしたコボルドを脅しつけて洞窟に案内させて部族を虐殺し、ここに住み着きました。以降、手探りで街道まで出て音を頼りに旅人を襲って喰い殺しています。
 ザグは盲目での活動に慣れています。盲目ではありますが、何者かが部屋にいるか否かを音で気づくための【判断力(知覚)】には不利を被りません(どこにいて、何を企んでいるかはわかりませんが)。戦闘では盲目によってザグの攻撃は不利となり、冒険者の攻撃は有利になります。隣接して位置を隠す気のない冒険者がいれば、それを攻撃します。どこに冒険者がいるのか分からない場合は動き回り、誰かとぶつかったら、その相手に向かって攻撃します。機会攻撃を受けたら元の位置に戻って、その相手を攻撃します。

  • この戦闘では、プレイヤーは何とか有利になるように作戦を提案するかもしれません。その場合は、通常のルールにない処理をした方が良いかもしれません。提案があった場合の処理の案を挙げてみます。
    • エルマに騒がないように伝える:ジェスチャーで簡単な指示は伝えられるでしょう。
    • こっそりエルマの縄を解く:【敏捷(隠密)】で近づいてから、【敏捷(手先の早業)】難易度10。
    • ザグとの衝突を避ける:リアクションで【敏捷(軽業)】難易度14に成功する。
    • ザグと衝突したとき家具のふりをする:リアクションで【魅力(ペテン)】難易度16に成功する。
遭遇Lv1 死地 (450 XP / 難易度113 XP相当)
分類名称PC1人2人3人4人以上
オーガのザグ(O) cr1 x1hp30hp45hp60hp76
NPCエルマ(E) (一般人) cr0x1
物品1(ザグの所持品)銀貨57枚、金貨12枚、宝石(縞瑪瑙;10gp)1つ
物品3(Tp3)銅貨2,100枚、銀貨1,050枚、金貨70枚、芸術品(竜紋様の金の腕輪;25gp)x5個
 
盲目オーガのザグ (脅威度2、450XP)
大型の巨人、混沌にして悪
AC:11(ハイド・アーマー)、 hp:76(9d10+27)
移動速度:40ft
能力筋力19(+4)、敏捷8(-1)、耐久16(+3)、知力5(-3)、判断7(-2)、魅力7(-2)
感覚受動知覚8、盲目
言語巨人語、共通語
技能暗視60ft、受動知覚8
行動複数回攻撃:2回の近接攻撃(右ナイフx1、左ナイフx1)を行う。
大型ナイフ(右):近接武器攻撃:攻撃+7(不利)、間合い5ft 単体 →命中時:8(1d8+4)[斬撃]
大型ナイフ(左):近接武器攻撃:攻撃+7(不利)、間合い5ft 単体 →命中時:4(1d8)[斬撃]
所持大型ナイフ(中型用のロングソード)x2、ズタ袋、キノコの首飾り
説明  盲目で傷だけのオーガです。やみくもに刃物を振り回します
 
キノコの首飾り(ネックレスofアダプテイション)
アンコモン、要同調
身に着けると、どんな環境でも呼吸できる。有毒ガスなどへの抵抗に有利を得る。
この首飾りドラウに作られ、キノコや蜘蛛の意匠が連なっている。
着けた者はボーナス・アクションで光らせ、消せる。灯りは半径10ftまで明るい光、更に10ftまで薄暗い光を放つ
細工の意匠は日光下でしなび、夜に活気を取り戻す。性能に影響はない。
 

部屋の西側には穴が空いて[9]の竪穴に繋がっています。ザグはこの穴から下にゴミを投げ捨てていました。時間をかけて部屋を調べれば【知力(捜査)】難易度10で、北西の角に小さな隠し扉(Tp3)があることに気づきます(ジャスが復讐の礼として教えるかもしれません)。隠し扉にはドクロのレリーフが刻まれており、目に[8]のカギを挿せば、隠されたものを安全に手に入れることができます。

 
罠:毒ガスの罠:脅威度1/4(50XP)
機械式;鍵を使わずに隠し扉を開けようとする、再装填1回のみ
扉の前、半径10ftにいる者は耐久力セーヴ15を行い、失敗すると1d4[毒]ダメージ、1時間のあいだ毒状態になる。
罠の発見:【判断(知覚)】難易度12、解除:【敏捷(盗賊道具)】難易度12
 

【12:エピローグ】
ザグを倒して、エルマを救い出せば冒険は終了します。もし、[9]に行っていないなら、そこでクルトの遺体を回収しても良いでしょう。ここまでに会った人々から礼を述べられます。冒険完了のマイルストーン経験点として200XPを得ます。

  • エルマ「ありがとうございます。あの恐ろしい鬼…、命があるのはあなた方のおかげです。」、「クルトさんは…」
  • コリン「ん。あんたら、あんがと」と感謝を述べ、握りしめた銅貨15枚を差し出します。
  • タムレンは冒険者やエルマの身を気遣ったのち、コリンに行商の手伝いをしてくれないかと提案します。また、遺体を回収していたなら、クルトの埋葬を提案するかもしれません。
  • ジャス「感謝!お前たちの手助けで俺は部族の仇を討てた。」「きっと“さびウロコ族”を蘇らせる!楽しみにしてろ!」
     

タムレンらとともに旅を再開すれば、2日後にはチャンドラークロスの町に着くでしょう。
これで冒険は一区切りとなります。

 

もし、時間に余裕があるのなら、おまけとして次の目的地であるチャンドラー・クロスの復興キャンプにつくところまでやっても良いでしょう。キャンプでは今回の冒険で達成した事柄から追加の報酬を受け取ることができます。

チャンドラークロスの復興キャンプ(人口350人、ディルランズ所属、属性なし)
 街道沿いの廃墟の一角にある開拓村です。チャンドラークロスは一時期は地域で最も大きな町でしたが、80年ほど前に魔法帝国ネザリルのディルランズへの侵攻によって滅ぼされました。生き残った住人は周辺の居住地に逃げ延びました。戦乱が終わった今、かっての住人の子孫たちが廃墟を整備して町として再生させようと奮闘しています。

キャンプの警護を担っているのはドワーフ戦士、“カブトムシの”デリックです。重い鎧を着たままキャンプ入り口の樹によじ登って見張りをしています。一行がキャンプに近づくと樹上から声をかけます。一行から冒険の話を聞くと、バロウズ老人に言伝を送ったのち、宿に誘います。彼は領主同盟の関係者です。冒険者がクルトの遺体からブローチを回収していたなら、それを金貨10枚で引取りを提案します。また、[4]で良質な酒を回収していたなら、これも金貨10枚で引取ります。封を開け、一緒に呑まないかと提案します。
 チャンドラー・クロスの住人の代表は、かってこの町の貴族の子孫であるレスリー・バロウズ老人とその妻です。流浪の生活のあいだに生き別れた息子が遺した孫娘がいたことを突き止め、復興中のキャンプに呼び寄せました。エルマを送り届けると老夫婦は喜び、冒険者に感謝を述べて金貨50枚を渡します。

 

もしかすると、この冒険での出会いが別の冒険につながるかもしれません。チャンドラー・クロス廃墟の奥に住む魔術師クライヴが行う研究がキャンプに人知れず被害を出している。また、再建予定の船着き場跡が妖精たちの遊び場になっており、大工たちへの妖精のいたずらはエスカレートしている可能性があります。あるいはデリックが厄介な荷物の運送を冒険者たちに依頼するかもしれません。
 別の日に追加の冒険を遊んでみるのも良いでしょう。

 

冒険者たちは疲れを癒した後、また旅に出るでしょう。
参加者で今日のゲームの感想や面白い活躍などについて話しながらゲームを終えましょう。
お疲れさまでした。

 

付属データ:


このシナリオは Open Game License に基づいています。これに該当するのは、クリーチャーやアイテムの名前やステータスなどです。この記事の他の箇所は個人的な使用に限定されます。