『悪夢の石』

Last-modified: 2022-05-03 (火) 22:02:52

D&D5版1Lvの短編シナリオです。
(Ver1.01 作成日20200913、更新日20220503)

 

【0:シナリオの概要】

  • 使用ルール:D&D5版
  • シナリオ名:『悪夢の石』
  • シナリオ紹介:
     湖畔の漁村シャロウマーシュは恐怖に包まれている。
     村人を夜ごとに苛む悪夢と、失踪、人影に脅かされているのだ。
     村への荷を届けた君たちに、村人は助けを求める。
     君たちはこの地を恐怖から救うことができるだろうか?
     
  • プレイ時間:4時間ほど
  • レベル:1レベル
  • プレイ人数:3~5人(標準4人)
  • 想定レギュレーション
    • D&D5版の日本語版のみ使用、モンスター・マニュアルはプレイヤー使用不可
    • 使用する選択ルール:能力値のカスタマイズ、ヒューマンの特徴、特技、グリッド・マップを使った戦闘
    • 能力値は規定値割り振りか27ポイントバイのどちらか、レベルアップ時のHP上昇は固定値を使用
    • 装備品:背景とクラスからのみ
    • 冒険の舞台はグレイホーク、CY591年、“山賊王国”とシールドランズの間です
       ガイドto「ワールドofグレイホーク、CY591」
       キャラクターの準備にはサンプルキャラクターを用いても良いでしょうD&D5版サンプルPC(シンプル版)
  • 補足:
    • 移動と呪文の範囲は斜めも1マス
    • 手に持った物を落とすのはフリー・アクション(ちゃんと鞘に納めるのは'周囲の物体と関わる')
  • 用語:
    • プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)、モンスターマニュアル(MM)、ダンジョン・マスターズ・ガイド(DMG)
    • プレイヤー・キャラクター(PC)、ノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)
    • フィート(ft;約30cm)、ポンド(pd;約453g)
       

シナリオの背景と概要
冒険者が立ち寄った村では、村人が毎夜の悪夢に苦しめられ、人さらいによる失踪が発生しています。冒険者はコボルトたちからの襲撃を受け、更に、村人たちから事態の解決を依頼されます。
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調査や捕虜からの聞き込みをすると、古い儀式場がある岩場が怪しいことが分かり、冒険者は岩場の地下にある洞窟に挑みます。洞窟にはトログロダイトとコボルトの集団が潜んでいます。彼らを率いているのはグラーツというトログロダイトの魔術師です。
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地下の洞窟には邪神“鎖に繋がれた神”タリズダンの欠片が封じられた石があります。一月ほど前、妻を喪った漁師グシオがその上の岩場で、蘇らせようと儀式を試みました。儀式は失敗し、彼は命を落としましたが、洞窟にある“悪夢の石”はかすかに目覚めました。岩は周囲に悪夢を見せて、力を求めるものを誘いました。
 周辺地域の地下に住むトログロダイト部族の呪術師グラーツがその夢に誘われました。彼は近くに住むコボルト部族の姫、スリンを誘拐して部族に戦士を提供させると、手下とともに“石”探索のために地上に向かいました。“石”を発見したグラーツはコボルドたちに村人や旅人を誘拐させて生贄の儀式を行い、力を引き出そうとしています。
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冒険者たちがグラーツを退治して“石”を封じ、地底からの道を閉ざしてしまえば村は悪夢から解放されます。冒険者は新たな旅に向かうでしょう。

 

【1:キャラクターの準備】
レギュレーションに沿ってプレイヤーとキャラクターを準備しましょう。 その際に前衛タイプ、遊撃タイプ、支援タイプ、秘術タイプのキャラクターがそれぞれいれば、メンバーがお互いに協力や活躍しやすくなりますので、クラスを調節しましょう。キャラクター作成の時間をとるのが困難なようでしたら、作成済キャラクターを利用するのも手でしょう。作成の際に改めてシナリオの紹介をしておくと、プレイヤーはそれをきっかけにキャラクターの個性付けになるかもしれません。
 もし、プレイヤーの数が3人ならば、支援系のキャラクターをNPCとして追加するのも良いかもしれません。初めから仲間として同行していても構いませんし、冒険舞台となる村の住人の一人でも構わないでしょう。
 キャラクターを準備できたら、お互いのキャラクターを自己紹介をしてもらってください。名前と種族、クラス、背景、何が得意でどのような弱味を持っているかを共有しましょう。

 

【2:導入とウォーミング・アップ戦】
冒険者はシャロウマーシュの村に住む商人の仕入れの護衛として旅をしており、旅の終わりの夕方、村の近くの橋を越えようとしたところで襲撃を受けます。旅と橋の様子を簡単に描写した後、プレイヤーに異変を知らせてください。

君たちはビスケスという商人と共に旅をしている。彼はこの先のシャロウマーシュの村で店を構えており、仕入れの護衛として君たちを雇っている。ロバが荷車を引くのを手伝いながら、街道を歩いてきた。

地域マップ1
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地域マップ2
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 日が傾いて夕方ころになったころ街道が木立を抜ける。川が流れ、橋が架かっている。ビスケスが右手を指す「ほら見えてきました!この橋を越えればシャロウマーシュです」、「いや、ここまで何もなくて本当に良かった。あなた方のおかげですな!」、「村に着いたら酒と料理を奢らせてください。宿屋の魚料理は…」

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橋の中央には、罠が仕掛けられています。気づかなければ先頭を歩いていた者が罠に引っかかる可能性があります。いずれにせよ、直後に周囲に潜んでいたコボルドたちが襲い掛かってきます。ジャイアント・リザード(以下、大トカゲ)は登はん移動速度を持ち、初めは冒険者から見えない橋の裏側に張り付いて隠れています。戦闘後に上に上がってきて柔らかそうなキャラクターを狙って攻撃します。時刻は夕方で日差しが弱く、日光過敏の特性は働きません。
 この戦闘は参加プレイヤーの勢いをつけるためのウォーミングアップ戦です。直後に大休憩があることをプレイヤーに伝え、自分のキャラクターの確認と互いへの紹介のため、遠慮なく能力を使用するように推奨しましょう。プレイ時間が不足している場合などは、この戦闘は省略して村人からの依頼に移っても良いでしょう。

 
馬車の前を歩いている人は〈知覚〉判定を行ってください。

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君たちが警戒すると、橋の周囲の木陰から小柄なトカゲじみた小人が現れる。奇妙な鈴を鳴らすと、短剣と投石器を構えて襲い掛かってくる!
 
遭遇Lv1 困難 (175 XP / 難易度88 XP相当)
コボルド(K)cr1/8 x5
ジャイアント・リザード(L;登はん_蜘蛛歩き30ft) cr1/4
NPCビスケス(一般人)(C)cr0、馬車(W)
絡みつく針金(Tp1)cr0
財宝銀貨73枚、銅貨27枚、盗賊道具
 
罠:絡みつく針金:脅威度0(10XP)
機械式;橋の中央に張ったワイヤーを踏むと作動。手動で再準備
罠はワイヤーを踏んだ者に対して動作。対象者は敏捷セーヴ12を行い、失敗すると1d4[斬撃]、ワイヤーが絡んで移動速度1/2。解くには標準アクションを費やして<手先の早業(敏捷)>難易度12。罠の場所を跳び越えることで回避できます
<知覚(判断)>難易度12;<盗賊道具(敏捷)>難易度12
 
 襲撃を退けた君たちにビスケスが感謝を述べる「おぁ!ありがとうございます。あなたたちがいなければどうなっていたことか!しかし、村の様子が心配です…」

ビスケスは村の様子を心配し、急いで村に帰ろうと提案します。もし冒険者がコボルドを生け捕りにしていたのなら、彼らから話を聞きだすことができます。聞き出すには〈威圧(魅力)〉12か、あるいは〈説得(魅力)〉10です。コボルトは「隠れていたところを教えるし、自分をはもう人間を襲わないから、逃してくれ」と言います。〈威圧〉なら一方的に聞き出せますが、〈説得〉なら、何らかの取引が必要となるでしょう。

 

【3:依頼と聞き込み】
ビスケスは荷馬車を自身の店に繋ぐと村の顔役であるカナレス親方を呼びにやらせ、冒険者に酒場を紹介します。一行から話を聞いたカナレスは冒険者に事件の解決を依頼します。彼は直接の探索方針を持っているわけではありません。村の施設を訪ねて話せば住人と会話して情報や協力を得られます。あるいは村での聞き込みを定型的に処理をするのなら、<説得>難易度10の判定に一つ成功する毎に、一つの施設での話を聞くことができます。探索の開始は明朝からするのが良いでしょう。
 ゲームを進める際にすべての情報を出す必要はありません。シナリオ中で必要なところや使いやすい所だけ使えば良いでしょう。この項目をシンプルにすませたいのなら、カナレスから依頼をし、その場に同席させたベリスから「怪しい人影を岩場のそばで見た」という情報を話させることが考えられます。

 

シャロウマーシュの村(人口400人、シールドランド所属、属性なし)
 この村は街道から少し離れた湖畔の漁村です。この村は古く貧しい村で、村人は湖での漁と農業で暮らしています(マップよりもう少し外側にも農地は点在しています)。
 シールドランドは高潔な騎士の国ですが様々な災害に見舞われています。秘密の神ヴェクナの秘宝を原因とする内乱、有角団や山賊王国からの襲撃、そして数年前のアイウーズ帝国の侵攻によって国土の多くを失いました。
 シャロウマーシュは貧しさゆえに軽視されて被害は抑えられましたが、一方で救いも与えられませんでした。村の中には災害をやり過ごすための行いや取引によって、歪みを蓄えこんでいます。村人はこれまでの困難を自らで克服してきたことに誇りを持っており、よそ者への警戒心がやや強く、それぞれの家に武器を隠し持っています。しかし、困っていることの解決に力を借りるためなら、礼をはらうこともできます。

 

村の広場
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 村の施設や人物を説明します。

  • “舟歌亭”(女将マルセラ):痩せた初老の女マルセラは夫と死別してから長くこの酒場と兼ねた宿を切り盛りしています。村の女たちが本業の傍ら手伝って小遣いを得ています。昼は客が少なく、しばしば預けられた赤ん坊にマルセラがフィドルを奏でて子守唄にしています。一方、夜は漁師たちが集まってエールをあおっています。酒場の隅に旅神ファラングンの小さな祭壇があり、旅人は出がけにお供え物をするのが通例です。
     冒険者が店に入るのに続いてカナレス親方が店に入ってき、橋での事情を聞いたのちに依頼をしてきます。
     -
    ビスケスは村に入ってすぐの店に馬車を止めると、店員に何かを話して走らせる。奥の酒酒場を指して言う「先にあそこの『舟歌亭に』行ってください。顔役のカナレスを呼んだのですぐに来ます。私も片付いたら向かいますんで!」」
     -
    古びた酒場に入ると、かがり火が灯され、魚の焼ける匂いが漂う。カウンター奥の初老の女が、沈んだ顔でテーブルを囲む漁師たちから君たちに目を移す「いらっしゃい、お客さん。見ない顔だね?」
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    君たちの後ろから背の高い男がヌッと入ってくる。「こんばんは、お客人。俺はここを仕切っているカナレスという者だ」、「ビスケスからの伝言を聞いた。何があったか聞かせてくれないか?俺からも頼みたいことがある」。
     -
  • カナレス親方:「2~3週間くらい前くらいか、村のみんなが嫌な夢を見るようなりだしたんだ。天気のせいかと思ったんだが、違うらしい。一週間くらい前から行方知れずになる奴らが出だした。何か怪しい人影を見たっていう奴もいる」。
  • カナレス親方:「お前たちを襲ったコボルドと関係があるんじゃないか?金貨を50枚を出す、何とか解決してもらえないか?」。
     -
    Q:行方不明の人に共通点は?→マルセラ「そういえば、農夫や狩人が多いんじゃないか?漁師はあんまり聞いていないね。」
    Q:そのほかに手がかりは?→カナレス親方「村の連中がそれぞれに言ってんだが…、俺はうまく話せんな。お前たちが連中に聞いて見てくれないか?」
     

村のそれぞれの施設で話を聞けば、手がかりや協力を得ることができます。それらを得るたびにシナリオ進行のマイルストーン経験点として50XPを得ます(3つまでの計150XPが最大)。

  • 風車小屋(“覗き屋の”ベリス):風車小屋の一階には大きな石臼があり、村人の脱穀や製粉を請け負っています。村で最も背が高い建物である小屋を受け継ぐべリスは、村への危険を見張るのが役目と自任し、“鷹の目の”ベリスと名乗っていますが、村人からは“覗き屋”と呼ばれています。彼はひと月ほど前、漁師グシオが岩場のに向かったのを目にしており、また最近は岩場のそばに動く人影を気にしています。
  • 網元(ディエゴ・カナレス親方):カナレス親方は禿頭でギョロ目、長身の中年男です。村の漁師を取り仕切る網元であり、代々まとめ役を担ってきました。頑固で口下手ですが、操船と漁に長けています。彼は最近発生している悪夢と失踪に対して村の風習を守りつつ対策を講じていますが、成果はでていません。どうにかしなければと、焦りを感じています。
  • 森の女神アローナの社(アドラ司祭):森の中にあるこじんまりとした古い神殿です。中にはアローナだけでなく、礼拝室の一角には様々な神像が並んでいます。若い女司祭アドラが着任していますが、彼女は森を散策していることが多く、村人との交流は少ないです。冒険者が事態の解決のために動いているのなら、彼女はグッドベリー呪文相当のキノコの一掴み渡します(生食可能な10個の小さなキノコ、一つ食べるとhpを1回復、一日分の食事に相当)。
  • ビスケス雑貨店(店主ロドリゴ・ビスケス):ビスケスの店には日常的に使うこまごまとした道具が陳列台や壁際の棚に整理して並べてあります。冒険用装備のうちの錬金術や秘術・信仰・食糧以外の25gp以下の道具は大抵が揃います。月に1度、西のバトルダウンの町に買い出しに出かけ、その間は妻に店番を任せています。
  • “船大工”(ウルバノ):ウルバノ親方は家族や職人家族と共に船の作成と修理を請け負っています。要望があれば、家屋の建設や金物、家具、設備、旅人の蹄鉄の修理も行います。商店ではありませんが、村人たちが備えている武具も彼らが製作しており、ある程度の品は工房に置いてあります。冒険者が望むなら、これらの品を販売します。
     現在、職人の子供であるエトール少年が川に砥石を取りに行ったきり戻らず、母親のレータが心配しています。もし、彼を無事に見つけ出せば親方から礼に、金貨10枚を支払います。
  • “ベラスコ療養所”(キケ・ベラスコ医師):親切で柔和なベラスコ医師が営む療養所です。鋭い茨の垣根に囲まれて、外から鍵のかかった部屋が並ぶ傷んだ長屋です。ときおり中から叫び声や笑い声が響きます。“石”のみせる悪夢で発狂した者、あるいは重い病やケガをうけた者は、貧しいこの村では、やがて家族からも見捨てられて死ぬさだめでした。街から流れてきたベラスコ医師が、彼らを引き取って面倒を見ています。
     住人はそれぞれに軽作業を行い、それらの品々や医師の調合した薬品を雑貨店を通して街に売ることで経営しています。ここにはヒーリング・ポーションや、他の錬金術の品があり、望めばそれらを販売します。彼は一月ほど前、妻を喪って心を病んだ患者のグシオが脱走したきり行方をくらましたことを気に病んでいます。冒険者が彼を探そうというのなら、手助けのためにヒーリング・ポーションを一つ渡します。
     

【4:岩場の祭壇】(おまけ遭遇を含む)
ここまでに得た情報から、岩場に向かうと古い道が岩場の上に続いています。コボルトや大トカゲの足跡はぐるっと回って、岩場の陰に続いています。

君たちは岩場に向かう。深い草の茂みの中に、砂利がまかれた道がかすかに残っている。小さな足跡と、大きな足跡が残っている。道は岩場の上に向かい、足跡は草の中に消えている。
 

道を外れて足跡をたどれば、洞窟の入り口に続いています。岩場の上に続く道を見ると、<知覚(判断)>10で、だいぶ時間のたった血痕があることに気づきます。上に向かうならば、岩場の上に祭壇の跡を発見できます。

 

階段上の岩場の上はおまけ遭遇です。ここでの戦闘遭遇を行うと、以降の[5]~[13]の冒険を一日で行えず、大休憩をはさむ必要が出てくるかもしれません。またプレイ時間4時間を超える可能性が高いです。時間の余裕とPCの強さを勘案し、余裕があれば実施てください。
 はるか昔、地下にある“悪夢の石”の影響をうけたシャロウマーシュの村人たちに“石”を奉じるカルトが起こりましたが、その後にアローナ神殿から派遣された冒険者によって殲滅されました。ここには、その時代の儀式上の跡が残っています。村人にはこの話は伝わっていませんが、岩場に近づくなという禁忌のみが伝わっています。時々悪夢に導かれた村人が現れてこの場所で儀式を行おうとし、その一部が死んで骸を晒します。
 ひと月ほど前、若い漁師の妻が亡くなり、漁師は心を病んで悪夢の誘いを受けました。彼はここの儀式台で自身の血を捧げて妻を蘇らせようとしましたが、果たせずに死亡しました。彼の流した血と生命が地下に滴り落ちて、“悪夢の石”を目覚めさせさせました。この場に溜まった呪いにより、骸骨はアンデットと化しています。この場に正者が踏み込むと起き上がって襲い掛かかります。

 
古い石の階段を登りきると、開けた岩の高台に出ます。岩の隙間に生えた草花の隙間に古い骸骨が転がり、中央にはテーブル状の石板が突き出ています。腐肉の残った女の骸骨が石板に転がり、それに男の骸骨が被さっています。

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岩場に散らばる骸骨たちの首が動き、虚ろな眼窩を君たちに向けます。彼らはカシャカシャと起き上がり、君たちに向かって襲い掛かる!
 
遭遇Lv1 困難 (150 XP / 難易度75 XP相当)
スケルトン(S) cr1/4 x3
物品銀貨16枚、銅貨37枚、簡素な真珠の組飾り(10)
 

調べると新しい死体は漁師とその妻のものだとわかります。

 

【5:岩陰の入り口】
足跡を辿って岩場を回り込むと、木陰に洞窟を発見します。
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木々と下生えをかき分けて歩くと、木陰の奥に洞窟を見つける。洞窟の奥は曲がりながら、下へと続いているようだ。

入り口の近くの[Tp2]に罠が仕掛けられています。不用心に近づくと作動します。

罠:ワイヤー式の射出式警報:脅威度1/4(50XP)
機械式;地面に埋めたワイヤーを踏んだら作動、手動で再準備
踏み込んだ者に対して動作。対象者は敏捷セーヴ10を行い、失敗すると弾け飛ぶ金属板に切られ1d4[斬撃]ダメージ、金属板は騒がしい音を立て、一部は洞窟の中に転がっていく
<知覚>難易度12;<盗賊道具(敏捷)>難易度15

洞窟の幅は幅5ftほど、曲がりくねりながら下に続いています。この洞窟は自然洞窟を元に、はるか昔に村のカルト信者が加工を施したものです。基本構造として、通路の天井の高さは5ft、部屋は10ftです。

 
洞窟の曲がりくねった階段を下りていくと、途中で少し広くなる。ぼろ布のカーテンが下げられており、生臭いにおいが立ち込めている。
 

【6:見張り部屋】(天井の高さ:10ft)
このエリアにはコボルドとトログロダイトが食事しながら見張りをしています。コボルトたちは部屋を清潔にし、せっかく得た食糧を食べやすいように調理して取り分けて食べようとしています。一方、トログロダイトは獲物にそのまま噛みつき、爪で引き裂いて食い散らかし、その辺中に排泄します。コボルドたちは頻繁にトログロダイトに文句を言っていますが、トログロダイトに言葉が通じておらず、意に介していません。この部屋にいるコボルドたちはトログロダイトと一緒に生活しており、トログロダイトの匂いに慣れています。

ぼろ布を払うと、胸が悪くなる悪臭が鼻を突く。中央の粗雑なテーブルには、粗雑な食事が散らかり、床にこぼれている。テーブルを囲む、大柄なトカゲ人が牙と爪を剥き、奥ではコボルドたちがスリングを構える。
 
遭遇Lv1 困難 (175 XP / 難易度88 XP相当)
コボルド(K) cr1/8 x3
トログロダイト(T) cr1/4 x2
物品銀貨45枚、金貨6枚、欠けた食器がいくつか
 

【7:資材置き場】(天井の高さ:10ft)

壊した木箱が散らばり、何かの肉と穀物の入った袋が押し込まれている。左手の方には扉があり、その向こうから水音が聞こえる。
 

この部屋には彼らが襲撃して手にした食べ物が蓄えられています。価値のあるものはグラーツが抜取り、ここにはろくなものがありません。この部屋に転がる木材は[10]の川を渡るのに役立つかもしれません。

 
物品肉と食材x12日分、長い板切れ
 

【8:通路とトイレ】(天井の高さ:5ft)

狭い洞穴が右に曲がりながら続いている。左手に布で仕切られた枝道があり、腐敗臭が漂ってくる。
 

見張り部屋から北に続く洞穴は他の小部屋につながっています。一番手前の小部屋の入り口はぼろ布で仕切られており、コボルドたちはトイレ段差の低い部分をトイレにしています。トログロダイトたちはその辺に排泄しており、時々我慢ならなくなったコボルドが集めてここに捨てに来ます。小部屋の奥にさらなる地下へと続くこぶしほどの穴が開いており、コボルドたちはときどき水をぶちまけて流しています。
 汚物をかき分けて調べるならば、〈知覚(判断)〉12で行方不明者の身に着けていた指輪が一つ見つかります。

 
ぼろ布をめくると、きついアンモニアと腐敗臭が鼻を突く。小部屋の奥に向かって低くなり、段差の下に汚物がたまっている。這い出た蟲が床を這いまわっている。
 
物品シャベル、バケツ、名前の刻まれた銀の指輪(10gp)
 

【9:牢屋】(天井の高さ:5ft)

洞穴を進むと左手に小部屋が2つ並んでいる。入り口は木の格子戸になっていおり、頑丈なロープで閉ざされている。
一方の小部屋に、一匹のコボルドがうずくまっている。木の棒で地面に何か落書きしながらすすり泣いている。彼は君たちに気づくと絵をかばうように立ちはだかって様子を伺う。
 

ここは牢屋になっています。コボルドたちの中で特に姫君のスリンへの忠誠心が高いカーラスは、グラーツに向かって彼女の待遇を改善するように訴えました。グラーツは反抗への罰として牢屋に閉じ込めました。カーラスは地面に冠とローブを付けたスリン姫の絵を描いて心を慰めています。
 カーラスは冒険者を怖がって縮こまりますが、落ち着かせて話を聞くなら〈説得(魅力)〉10で事情を話して協力を求めようとします。「ぼくらは『トゲしっぽ族』だ。もっと深いところに住んでた」、「トログどもに姫様をさらわれた、姫様を殺されたくなければ、兵士を寄こせと言われた」、「お前たち!お姫様助けてくれ!」、「奥の川を渡った先の部屋にいるんだ。カーラスの仲間だって言えば、姫様は安心してくれるよ!」。

 
遭遇Lv1 簡単 (25 XP / 難易度6 XP相当)
コボルドのカーラス(K) cr1/8
 

【10:カニの巣】(天井の高さ:10t)

洞窟の奥からは水音がする。先に進むと洞穴が広がり、流れる川が横切っている。向こう岸には木の扉がついているのが見える。岸の岩は水に濡れ、ぬるぬるとしている。
 

地上の川から地層を通ってきた地下水がここで川になっています。川幅は10~15ft。筋力が10~15以上あれば飛び越えられる距離ですが、足場が滑りやすいです。飛び越えるとき、〈軽業(敏捷)〉10の判定に失敗すると、川に落ちてしまいます。筋力が14以下ならこちら岸に、15以上なら向こう岸に近いところに堕ちます。川にはまった者はターンの開始時に〈運動(筋力)〉12の判定に成功しないと、15ft下流に(マップ左側)流されます。流され続けると、[11]にまで到達します。[7]などにある木材を川に渡せば、安全に渡れるかもしれません。
 川の物陰には大きなカニが住み着いています。彼らは水中に隠れていますが、水辺に近寄る者があれば襲い掛かってきます。彼らはハサミで捉え、水中に引きずり込もうとします。カニは水流で流されてしまうことはありませんし、掴まれている間は水流で流されることもありません。

 
遭遇Lv1 簡単 (75 XP / 難易度38 XP相当)
ジャイアント・クラブ(C) cr1/8 x3

(注意!:この遭遇は上記XPの割に難易度の高い戦闘です)

 

向こう岸の扉には螺旋模様が描かれた錠前がかかっています。錠前の鍵はグラーツが持っています。錠前を開けるのには、〈盗賊道具(敏捷)〉15に成功する必要があります。鍵開けには何度でも挑戦できますが、扉の向こうに気づかれるかもしれません。扉に聞き耳すると、部屋の向こう側[12]の音を聞き取れます。

 

【11:飼育室】(天井の高さ:10t)

扉を開けると目の前を川が横切っている。板切れでできた橋が架かかり、向こう岸は広い部屋。天井まで届く大きなトカゲが君たちの方に顔を向けて威嚇し、トログたちが身構える。
 

この部屋を流れる川を幅5ftほど、水は西側の亀裂に流れ込んでいます。亀裂の先はより深い血下院続いており、トログたちはこの先からやってきました。
 トログたちはここで大トカゲの世話をし、トカゲは気が向いたら川の水を飲んだり水浴びなどをしています。彼らは冒険者に気づいたら警戒して扉から遮蔽を取り、橋を渡ったところで襲い掛かろうとします。大トカゲは体格と登はん移動速度を生かし、川をまたいで攻撃を仕掛けてきます。
 ここにいる敵は位置の関係で[13]の物音に気付きにくいです。[13]で戦闘が始まっても駆け付けるのに間に合いません。グラーツが倒されたことに気づいたのなら、亀裂から逃げ出します。戦わずに追い出すことに成功した場合も、倒したときと同様に経験値を与えてよいでしょう。

 
遭遇Lv1 困難 (150 XP / 難易度75 XP相当)
トログロダイト(T) cr1/4 x2
ジャイアント・リザード(L;登はん移動_蜘蛛歩き30ft) cr1/4
財宝銅貨26枚、治療用具
 

部屋の奥から伸びる下がりながらグネグネと曲がった洞窟の先、カーテンの向こう側にグラーツの部屋があります。カーテンのそばに寄ると、腐敗と血が匂い、か細い呼吸音と不気味な呪いの声が聞こえます。

 

【12:お姫様の寝室】(天井の高さ:10t)
この部屋には、コボルドの“とげシッポ族”の姫であるスリンが監禁されて、トログダイトに見張られています。彼女は3週間ほど前にグラーツに捕まって人質にされ、部族から兵士を供出されることになりました。スリンはコボルド達や故郷の部族の安全と引き換えに、グラーツの儀式を手伝わされ、また緊急時には援護するよう命じられています。彼女はトログロダイトが与える寝床や食事の未開さが不満です。しばしば竜語で毛布の追加や調理された食料を要求していますが、普通のトログロダイトは理解できず生返事を返しています。
 部屋に冒険者が侵入した場合、トログロダイトが前に立ち、スリンが後方から魔法で攻撃します。グラーツから援護を命じられた場合も同様です。カーラスの名を出せば、彼女は戦闘に参加せず様子見します。

 
扉を開けると、こぎれいな部屋にでる。石の床にトログ戦士が立ち、奥の敷布に座っていたローブのコボルドがワンドを手に立ち上がる。「無礼なモジャモジャども!部屋から出てかないと、痛いめにあうよ!」
 
遭遇Lv1 簡単 (25 XP / 難易度6 XP相当)
トログロダイト(T) cr1/4 x1
NPCコボルト姫のスリン(P) cr1/2
財宝銀貨5枚、宝石(ターコイズ、スリンの所持品;10gp)1つ
 
コボルト姫のスリン (脅威度1/2、100XP)
小型の人型生物、秩序にして悪
AC:15(竜血ソーサラー特徴で基本AC13)、 hp:10(2d6+3)
移動速度:30ft
能力筋力8(-1)、敏捷14(+2)、耐久13(+1)、知力11(+0)、判断10(+0)、魅力14(+2)
感覚受動知覚 10
言語共通語、竜語
技能隠密4、看破2、魔法学2
特徴日光過敏、連携戦闘;コボルドの特徴を参照
特徴呪文行使能力:スリンは1Lvのソーサラーとして呪文を使用できます。呪文セーブ難易度は12、呪文命中値は+4です。
  初級呪文x4:ファイアー・ボルト(1d10火)、ダンシング・ライツ、メッセージ、メイジハンド
  1Lv呪文(2回)x2:マジック・ミサイル、フォールス・ライフ(一時hp1d4+4)
行動ダガー:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い5ft 単体 →命中時:4(1d4+2)[刺突]
ファイアー・ボルト:遠隔呪文攻撃:攻撃+4、射程120ft 単体 →命中時:5(1d10) [火]
所持ダガー、ワンド、翡翠の腕輪(10gp)
説明  ガラクタとぼろきれで着飾ったコボルトの姫君です。魔法の力を持っていることが自慢で、周囲の者に尊敬を求めます。
 

スリンと戦わなかったのならば、戦闘後に彼女と話し合うことができます。彼女は分かっている範囲の情報を伝え、人間たちに危害を加えず、ここから立ち去ることを約束します。〈説得(魅力)〉10に成功したなら、呪文で戦闘を援護(フォールスライフで一時hpを付加)します。冒険者が要求するなら、この冒険後の後始末も手伝うかもしれません。別れ際に、彼女は礼として持っている翡翠の腕輪を冒険者に渡します。

  • 「ここのトログの首領はグラーツというトログの呪術師。隣の部屋にいる」
  • 「一月ほど前に誰かがこの地で儀式のまねごとをしたらしい。それでこの洞窟にある呪いの石が目覚めたみたい」
  • 「石の中には古い邪神、“鎖に縛られた神”の欠片が封じられているようだ」、「周りに悪夢を送って呼びかけている」。(注:“鎖に縛られた神”タリズダンは極めて危険な邪神であり、一般には存在を秘匿されています。また、名を口にするのも避けられて二つ名で済ますことが多いです)
  • 「グラーツは石に生贄を捧げて強い力を得るつもりだ。石が力をためるとヒドイことが起きるだろう」
  • 「私たちを助けてくれるなら、人間たちに悪いことをしない。」
  • (説得に成功しているとき)「グラーツを倒すのに手を貸してもよいぞ?」
     

【13:悪夢の祭壇】(天井の高さ:15ft)
[11]からの入り口には布が垂らされており、めくらないと中の様子を見えません。[12]からの入るには扉を開ける必要があります。ここではトログロダイトの呪術師グラーツが“石”から力を得るために生贄の儀式を行おうとしています。彼は“石”が呼び起こした悪夢の導きによって、トログ部族の一部を引き連れ、コボルドを加えて深い地底からこの洞くつにたどり着きました。コボルド達に周辺で人さらいをさせて金品を奪い、生贄に捧げています。儀式によって石から瘴気が立ち上り、ドレッチが湧いています。現在、捕えられたエトル少年ルをじっくり生贄にしようとしているところです。
 グラーツは冒険者が踏み込んできたら隣室[12]から援軍を呼び、生贄の材料にしようと襲い掛かってきます。エトールはhp0、意識を失った状態で安定化しています。

 
キツイ血と腐敗臭が鼻をつく。深くえぐれた洞窟のくぼみに紫色の大きな岩が生え、寝かされた子供の血が濡らしている。洞窟の隅では爪の長い魔物が全身の血を舐めている。岩から立ち上る瘴気の奥、高台に立つローブのトカゲ男が君たちに目を向けると、頭の中に声が響く「お前たちが来ることは夢で見たぞ。お前たちはこれから石の生贄になる、夢の通りにな…。」
 
遭遇Lv1 困難 (250 XP~ / 難易度94 XP相当~)
ドレッチ(D) cr1/4
トログ呪術師のグラーツ(G) cr1
(増援時のみ)トログロダイト(R) cr1/4
(増援時のみ)コボルド姫のスリン(S) cr1/2
危険要因悪夢の石(Tp3)
NPCエトール少年(N)(一般人;小型サイズ) cr0
物品銅貨2,100枚、銀貨1,050枚、金貨70枚、芸術品(骨製の異形の神々の像;25gp)x5個、紫色の宝珠(後述)
 
トログ呪術師のグラーツ (脅威度1、200XP)
中型の人型生物(トログロダイト)、混沌にして悪
AC:13、 hp:26(4d8+8)
移動速度:20ft
能力筋力14(+2)、敏捷10(+0)、耐久14(+2)、知力10(+0)、判断10(+0)、魅力14(+2)
感覚受動知覚 13、暗視60ft
言語トログロダイト語、共通語、テレパシー
技能自然12、生存13、知覚13
特徴呪文行使能力:クロルスは2Lvのウォーロック(グレート・オールド・ワンの契約)として呪文を使用できます。呪文セーブ難易度は12、呪文命中値は+4です。習得妖術:苦悶の怪光線、影の鎧
  初級呪文:エルドリッチ・ブラスト、メイジ・ハンド
  1Lv呪文(4回):ヘクス、アーマーofアガデュス、コンプリヘンド・ランゲージ
行動複数回攻撃:3回の近接攻撃(噛みつき1回、爪2回)を行う。
噛みつき:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い5ft 単体 →命中時:4(1d4+2)[ 刺突]
爪:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い5ft 単体 →命中時:4(1d4+2) [刺突]
エルドリッチ・ブラスト:遠隔魔法攻撃:攻撃+4、射程120ft 単体 →命中時:7(1d10+2) [力場]
所持ロッド、紫色の宝珠(後述)
説明  トログロダイトの呪術師です。悪夢の導きを受け、“石”から力を得るために生贄を繰り返します。
 
危険要因:悪夢の石:脅威度-
魔法式;岩とその周囲5ftに侵入するかターン開始すると影響を受ける。意識を失った者と悪の者は対象外
対象は岩の瘴気に侵されます。判断セーヴ12に失敗すると1d4[精神]ダメージ、次ターン開始時まで不調
<魔法学>か<宗教>難易度12でこの石の危険性に気づく
 

この部屋の敵を倒すと、グラーツがため込んでいた財宝を手に入れることができます。エトール少年は意識を取り戻す前に岩から降ろせば安全になります。洞窟の床に一体化している悪夢の石は持ち去ることも、壊すこもできません。瘴気を抑えるためには、血を洗い流し、ありあわせの儀式で〈宗教(知力)〉15や〈魔法学(知力)〉18に成功すれば、石の瘴気を抑えることができます。

 
紫色の宝珠(パールofパワー)
アンコモン、要同調
この宝珠の合言葉を唱えて使用すると、3Lv以下の呪文スロット1つを回復する。
この宝珠は魔に由来し、邪悪なルーンや歪んだ目の模様が浮かんでいる。
忌まわしい呪いの石との繋がりがあり、それが破壊されるまで壊れない。
所有者はしばしば悪夢を見る。災いの元になることもあれば、何かの手がかりになることもある。
 

【14:エピローグ】
[13]の敵を倒せば残った敵は逃亡し、冒険は終了します。余裕があれば、岩の瘴気を抑える儀式を行ってもよいで しょう。これにより、依頼達成のマイルストーン経験点として200XPを得ます。
 依頼人からは報酬を受け取ります。村の顔役たちは洞窟に残る“悪夢の石”や地底への亀裂、入り口などは後で人手を集めて埋めることを決定します。
 村人は酒を振る舞って何が起きていたのか聞きたがります。冒険者は洞窟の中に残る石と、その脅威ついては広く語らないことを選ぶかもしれません。その場合、村の顔役たちのみが話を聞きます。

冒険の疲れを癒した後、冒険者たちは再び旅に出るでしょう。もしかすると、この村での冒険や得た品物が別の冒険につながるかもしれません。

 

参加者で今日のゲームの感想や面白い活躍などについて話しながらゲームを終えましょう。
お疲れさまでした。

 

付属データ:


このシナリオは Open Game License に基づいています。これに該当するのは、クリーチャーやアイテムの名前やステータスなどです。この記事の他の箇所は個人的な使用に限定されます。

 

ユドナリウムデータのパス:
qkneri1824