Z000606

Last-modified: 2009-10-19 (月) 23:08:08

     どらごにっく★あわー!
  ~竜を退治するだけの簡単なお仕事です~

初期情報
No.Z000606       担当:上原聖
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「町長? 町長」
 【きみ】は、サンドイッチ片手に喜多路町[きたじちょう]町長、田中兼男[たなか・かねお]の姿を探していた。
 過日、ドラゴン数十頭の襲撃があり、町は半壊、自衛隊やベオウルフの被害も甚大、こういった状況の中で報告したいことがあったのだが、役場にはいない。屋敷の中にも姿は見当たらない。
「また、あそこか」
 【きみ】はため息をついて私室にノックして入り、その更に奥、鋼作りの銀行にでもありそうな巨大な金庫室の前に行く。
 ブザーを鳴らす。
『……誰だい?』
「わたしです。昼食をお持ちしたのと、ご報告したいことがあって」
『……』
 金庫の手前に取り付けられた監視カメラが【きみ】を見つめていたが、やがて内側から鍵が開いた。
 数々の宝石で飾られた、シェルターのような巨大な部屋の中(いや実際シェルターの役割をしている特殊大金庫なのだが)、初老を過ぎた小柄な男性が、黒檀の大机に向かって、掌大以上はあろうかと言う美しい黒い石を磨いている。
 これが、田中兼男だ。
「お昼、遅いよ」
「すいません」
 町長がドラゴンの襲撃を恐れて金庫室の中に隠れているなんて、負傷した町民に言えるわけがない。
 元々この金庫室は、個人では世界でも有数の資産家のくせにしみったれでケチな田中が、唯一の楽しみである宝石をコレクションするために作ったものだ。
 それが今では、田中を守るシェルターになっている。
 宝石を盗難から守ろうとした完全設備は、中で人が暮らせるほどの設備をも兼ね備えているのだ。
「ふん、ふん、ふん、よしっと」
 黒い石を磨き終えて、田中は棚に並べた。
 一列に、大きな美しい石が整然と並んでいる。
 それらはすべてドラゴンの宝玉だ。
 「宝玉」とはドラゴンの体内にある美しい宝石のような石だ。
 国連がが研究用に持っていかなければ、田中のようなコレクターが高値を出して買い取る。
 もちろん、【きみ】が狩ったドラゴンのもある。
 田中はドラゴニック・アワーが始まって以来、ドラゴンの宝玉を蒐集してきた。
 彼がクリームヒルト・ラボラトリーに出資しているのも、ドラゴンの宝玉が欲しいだけかも知れない。
 もっとも、宝玉を集めればドラゴンの怒りを買うのが必至なので、コレクターは必ずベオウルフを雇っている。【きみ】もその一人だ。
「さて、お昼でも食べるか……」
 兼男は肩を上下させた。
 いつまで経っても現実を見ない田中に、【きみ】は報告を始めた。
「過日の襲撃で被害額は甚大です」
「いくらだい」
「見たら町長ひっくり返ります」
「お見せ」
 ノートパソコンを覗き込んだ田中はう~んとひっくり返った。
「だから言わないことじゃない」
「こ、ここまでひどかったのかい!?」
「ええ。病院もパンク状態で、近隣の病院への搬送も進んでいます」
「ま、まあ、それは、町の経費だからいいけど……」
「毎日のソルジャーの飛来でベオウルフも弱っています。我々を出していただければもう少し持つのではないかと……」
「じょじょじょ、冗談じゃない。あたしの身を守るためにきみたちを雇っているんだよ?! 町の金じゃない、自費で!」
「分かってます、スポンサーさん」
「それとも、全てが簡単に解決する魔法の言葉でもあるってのかい?!」
「あります」
 【きみ】は田中に向き直った。
「簡単な話です。ドラゴンたちの要求を叶えればいいんです」
「ドッ……ドラゴンに膝を折るのかい?!」
 数十頭のドラゴンたちが襲撃してきた理由。
 それは、田中が半生をかけて集めた宝石類だった。
 ドラゴンが宝石を集めると言う噂は、あながち嘘ではないかもしれない。
 何とか自衛隊とベオウルフが協力して数十頭のドラゴンを撃退したが、自衛隊もベオウルフたちも被害は甚大。【きみ】のように無傷で残っているベオウルフはほとんどおらず、ソルジャードラゴンは毎日のように飛来し、田中は慌てて各ユニオンにベオウルフ派遣を依頼したのである。
「町民も、宝石を渡せばいい、と声を揃えて……」
「このドラゴニック・アワー、どこにいても危険だ、それならクリームヒルト・ラボラトリーとつながりがある喜多路町が安全だって引っ越してきたのはどこの誰だい」
「しかし、町長がそれでは……」
「うるっさいな。宝石はあたしの宝だよ? 命だ。……そこんとこ分かってんでしょうね?」
 命と宝石、天秤にかけてあっさり宝石を選んでしまうのが田中だ。
「第一、ドラゴンの要求にこたえたら、他のまだ堪えている所に申し訳が立ちません」
 表向きはいいことを言っているようだが、実は自分の宝石が惜しいだけだと言うことを【きみ】は知っている。
「まあ、そりゃあ、ソルジャーやコマンダーならば、残ったベオウルフが雁首そろえれば勝てるかも知れませんがね」
 【きみ】は田中をじろりと見た。
「コマンダーが、宝石を集めているのは主と言った。と言うことは、確実に裏にいるのはジェネラル。自分たちが何人かかったところで、ジェネラルに勝てますかね……?」
「ま、まあ、大丈夫」
 根拠のない自信だとは田中自身も分かっているらしい。【きみ】が持ってきた昼のサンドイッチに伸ばす手が震えている。
「草薙の、佐倉良輝[さくら・よしてる]。知ってるだろ」
「名前だけは」
 キャンピングカーを移動手段に世界各地を転戦し続けている、草薙でも有数のベオウルフだ。
「そいつがね、来てくれることになったんだ」
「本当ですか」
「こんな所であたしが冗談を言うと思うかい」
「…………」
「草薙なら、ベオウルフを率いて戦うことに慣れてるだろうからね、派遣要請したベオウルフが、たくさん、たくさん集まれば、もしかしたらジェネラルだって倒せるかも知れない」
「……そううまく行くでしょうか……?」
「い、行かないかな」
「町長の考えは甘すぎると思いますが」
 田中も自信を持てない相手に、佐倉良輝が来たからと言って勝てるだろうか……?
 自衛隊ですら屁のつっぱりにもならないというのに、いくら歴戦の勇者とは言えベオウルフ一人で戦況が変わるものか……?
「ま、まあ。ジェネラルが来ると限ったわけでもないし」
「それはそうなのですが。しかし、それだけの大人数の報酬、誰が払うんです?」
「ジェ、ジェネラルが倒せなくたって、ドラゴンの死体がたくさん集まればお前さんたちに払う報酬以上に金があたしの手元に転がり落ちるって寸法さ。ついでに宝玉もね」
 自分に言い聞かせるように震える声で兼男は言った。
 まったく。この名代のしみったれには恐れ入る。
 クリームヒルト・ラボラトリーのスポンサーとしての立場を最大限に利用し、自分の懐を痛めずに金儲けと宝玉集めをしようと言うのだ。
 その時、また分厚い金庫室の床を伝って地響きがした。
「またか!」
 【きみ】は金庫室を飛び出して、窓から町外れを見た。
 ソルジャードラゴン十数頭からなる襲撃隊が、町外れに陣取っているベオウルフや自衛隊と一戦交えている。
 ソルジャードラゴンはあの日の戦い以来、頻繁に飛来しては一戦交えていくのだ。喜多路町の守りが薄くなるのを楽しむように。
「行きましょうか?」
「……い、いやダメだ。お前さんにはここに残ってもらってあたしを守ってもらわなきゃなんないんだよ!」
 田中は【きみ】を金庫室から追い出すと、内側からドアを閉めた。鍵のかかる音。
 仲間たちが飛び出してくる。
 この金庫室を守るのが、自分たちの役目だ。
 これで金払いが悪ければ、ドラゴンに差し出しているところだ。
 幸い、この屋敷まで飛んでくるつもりはないらしく、町外れの防衛線を破ってくることはない。
 だが、いずれは。
 その時は、金に応じた戦いで守らなければならないのだ。
 たとえジェネラルが相手であっても。
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「マスターより」
 どもども。始めましてもお久しぶりも、こんにちは。上原聖[かみはら・せい]と申します。喜多路町で田中町長の部下としてドラゴンと戦いたい方は、以下の選択肢をお選び下さいまし。

A010603 喜多路町で田中兼男町長の部下としてドラゴンと戦う
(担当:上原聖/地域:117)
備考:喜多路町町民だと言う方、引っ越して来られた方は、町民となれます。

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