私のお兄ちゃん
―――グレイル工務店
ミスト「お兄ちゃん、はい!」つ お茶
アイク「ああ、すまないな・・・・・・」
ミスト「えへへ・・・・・これ、私が煎れてみたんだ!
お兄ちゃんに最初に飲んでもらおうと思って。
・・・・・・美味しい?」
アイク「む、そうか。(ズズズ・・・・・)
・・・・・・うむ、美味い。腕を上げたな、ミスト」
ミスト「えっへん!毎日頑張ってるからね!!」
アイク「だがまだ、オスカーには及ばないな」
ミスト「う・・・・・・・オスカーさんと比べるのは反則だよぉー」
中睦まじく話す2人
会話だけを聞けば、赤の他人は本当の兄妹と思うに違いない
ミスト「じゃあ私、皆に配ってくるね!」
ぱたぱたと駆けていくミストと、仕事に戻るアイク
この2人が出会ったのは数年前だが、当初からこの2人は仲が良く、このような感じであった
ミストはアイクをお兄ちゃんと呼び、アイクも妹のようにミストに接していた
これは、まだアイクが工務店に来てまもない頃・・・・・・
―――数年前、空き地
アイク「ふぅ・・・・・・・今日はここまでにするか・・・・・・」
当時はまだ蒼炎時の体格のアイク
強くなろうと、毎日無茶な訓練を続け、体には生傷が耐えなかった
この日はこれで訓練を終え、工務店に戻っていく
―――工務店
ミスト「お兄ちゃん、また怪我してるよ。はい!」つ 絆創膏
アイク「ああ、すまないな・・・・・・」
ミスト「もう、お兄ちゃんには私がついてないと駄目なんだからね!」
ミストはアイクの怪我を心配して言ったのだろうが、
この頃のアイクにはその心配を掛けているという事実が辛かった
アイク(む・・・・・・俺は、ミストにまで心配を掛けていたのか。
姉さん達のためにも、もっと頼りがいのある男にならなければ・・・・・・・)
「・・・・・・・・・・・・よし」
―――翌日
アイク「しっこく・・・・・・あんたと、手合わせしたい」
しっこく「愚かな・・・・・・その若さで死に急ぐ事もあるまいに」
アイク「俺は・・・・・・もっと早く、強くなりたいんだ!
だからあんただって・・・・・・倒す・・・・・・・倒せなきゃいけないんだ!」
しっこく「焦りのある剣で、私が倒せるとでも思っているのか?」
アイク「やってみなければわからない!」
そして、戦いの火蓋が切って落とされる
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ミスト「お兄ちゃん、今日は用事があるっていってたけど・・・・・・。
ん・・・・・・・?何の音だろ?」
近所の空き地から、無数の金属のぶつかり合う音
その音源の方へ向かうミスト。そして・・・・・・
ミスト「お兄ちゃん!?」
アイク「くそ・・・・・・俺は・・・・・・こんな、ところで・・・・・・・・・・!」
地面に仰向けになっているアイク
血は出ているが、命に別状はないようだ
アイク「ミス、ト・・・・・・?なんで、ここに・・・・・・・・・」
しっこく「・・・・・・娘。この男の知り合いか?」
ミスト「そ、そうですけど・・・・・・」
アイクを怪我させた張本人・・・・・・・
その漆黒の騎士に話しかけられ、反射的に身構えてしまうミスト
(もっとも、誰が見ても身構えたくなる外見ではある)
しっこく「勝負はついた。解放を頼む」(ヒュン!
そういうと転移の粉で颯爽と去っていくしっこく
ミスト「お兄ちゃん・・・・・どうしてこんな無茶を!?」
アイク「俺はもっと強くならないといけないんだ。
弱いから、姉さん達にも・・・・・・お前にも、心配を掛けて・・・・・・ぐっ!」
ミスト「お兄ちゃん、無理に喋らないで!」
(どうしよう・・・・・・傷薬は持ってないし・・・・・・・そうだ!)
背中に吊るしておいたライブの杖の存在を思い出すミスト
(まだ、成功した事ないけど・・・・・・・ううん、成功させなきゃ・・・・・・!)
アイクの損傷部位に杖をかざし、詠唱を始める
淡い光、そして・・・・・・
アイク「・・・・・?治った・・・・・・のか?」
ミスト「や、やった・・・・・・初めてライブ・・・・・・出来たっ」(ドサッ
アイク「ミスト!?」
ミスト「へへ・・・・・・・動けないや」
治療の終了と同時に倒れる、ミスト
幸い、厚い草の上に倒れたので怪我は無い
どうやら、初めてライブを使った事による緊張、魔力消費で体力を使いすぎたようだ
アイク「すまない・・・・・・・こんな頼りない、無力な兄貴で・・・・・・」
ミスト「そんなことないっ!
アイクお兄ちゃんは、頼りなくなんかない!」
アイク「ミスト・・・・・・?」
ミスト「私が困ってる時は、いつも助けてくれるもん!
血はつながってなくても、ほんとのお兄ちゃんだもん!
だから、だからっ・・・・・・!」
感情が爆発したかのように、泣き出すミスト
アイク「・・・・・・っ」
また、心配をかけてしまった・・・・・・・
自らの無力さ故に
だが、こんな無力な自分でも、頼りになるといってくれる妹がいる
その妹を泣かせたままで、自分は兄と言えるのか
アイク「もういい、もういいんだ、ミスト」
ミスト「ひっく・・・・・・えぐ・・・・・・・」
アイク「・・・・・・・すまん。また、心配をかけてしまった・・・・・・・」
ミスト「・・・・・・・」
アイク「俺は、焦っていた・・・・・・。
強くなろうと、支えになろうとして。
だが、焦ったとは言えその気持ちは今も同じだ」
ミスト「・・・・・・・・・」
アイク「無茶に見えるかもしれん。
心配をかけるかもしれん。
だが・・・・・・お前を悲しませるような事は、もうしない。
だから・・・・・・もう、涙を止めてくれないか・・・・・・?」
ミスト「・・・・・・・うん、分かった。
でも、私は支えられるだけじゃ嫌なの。
私もお兄ちゃんを支えて、支えあっていきたい。
だから・・・・・・多少の無茶は許してあげるけど、私にも背負わせてね。
・・・・・・お兄ちゃん一人じゃ、心配だもん」
アイク「む・・・・・・・・すまない」
ミスト「あ、また謝ってるー!そういうのは無し!!」
アイク「すまん・・・・・・あ」
ミスト「もう!・・・・・・うふふ」
どちらからともなく、笑い出す
初めは小さく、それから大声で・・・・・・
ひとしきり笑い、やがて笑い声が収まった頃
アイク「ふぅ・・・・・・疲れた。腹が減った」
ミスト「そうだね。でも私、まだ上手く歩けないかも」
アイク「・・・・・・・・・」
ヒョイ
アイクは無言で、ミストを背負って歩き始めた
ミスト「お、お兄ちゃん、傷が・・・・・」
アイク「俺は頼りないが・・・・・・こういう時位、頼りにしてくれ」
ミスト「・・・・・・うん」(でも本当は、いつも頼りにしてるよ・・・・・・・お兄ちゃん)
日が暮れる中、二人の共に帰っていく影が、どこまでも長く伸びていた・・・・・・
アイク「しかし・・・・・・意外と、重いな」
ミスト「・・・・・・お兄ちゃんの馬鹿ッ!」
アイク「ぐおっ!?傷口は・・・・・・やめろ・・・・・・・」
・・・・・・この頃から、フラグクラッシャーでもあったようだ
終わり