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Last-modified: 2014-01-20 (月) 20:11:32

可憐に花咲く百合の花

 

リン「貴女が好きなの。
   貴女の瞳が好き。
   春の銀河のようにきらめく瞳が好き。春の陽射しのような優しい眼差しが好き」
リンはそっと少女の瞳を覗き込んだ。

リン「貴女の髪が好き。
   そよ風にひらめくシルクのようなサラサラの髪が好き」
その指先が少女の髪を一房絡めとり、そっと優しくすいて流した。

リン「貴女の唇が好き。
   蜜のような口づけをくれる、切ない吐息を聴かせてくれる、唇が好き」
そっと指先が桜色の唇をなぞる。

リン「貴女の声が好き。
   高くて甘い、心に染みこむ、澄みきった声が好き」
胸ときめく少女は恥じらいのあまり、声を紡ぐことができない。

リン「貴女の体が好き。
   抱きしめると折れてしまいそうな華奢な腰が、薄くてでも形のよい胸が、
   重ねた肌から伝わってくる温もりが好き」
その腕が少女の腰に回される。
抱き寄せられ、身長差ゆえリンの顔を見上げる少女の頬は赤い。

リン「でも、一番好きなのは貴女の心。
   脆くて傷つきやすい、でもどこまでも純粋で美しい、決して誰も責めたりしない、
   すべてを許す優しさに満ちた魂が」
唇を少女の耳に寄せ、甘く息を吹きかける。
身を震わす少女が愛しい。

リン「好きよ。大好き。
   貴女のすべてが愛おしくて堪らないの、リリアーヌ」
リンの言葉が少女の胸をかき乱していく。

リン「貴女以外のものなんかもう何もいらない。ただ貴女だけがほしいの。
   貴女と私、2人だけの永遠の夜が」
やがて2つの影が重なっていき…

リリアーヌ「……夢オチでした…orz」
少女はベッドから身を起こしそっとため息をついた。
リリアーヌ「昨夜見たDVDの影響でしょうか……でもいい夢でした…」
頬を染めると写真立てに収められたリンの姿を見つめる。

リリアーヌ「少し…向こうを向いていてくださいね」
写真立ての向きを変える。
たとえ写真といえども、愛しのお姉さまに着替えを見られるのは恥ずかしい。
エレブ中学の制服に袖を通し、金髪をポニーに纏める。
お姉さまとおそろいにしたくて伸ばした髪が朝の静謐な空気に揺れる。
再び写真立ての向きを戻すと、リリアーヌは心の中でリンにおはようのキスをした。

エレブ中…メタですまないが原作のエレブ出身者が多く通う学校である。
リリアーヌは○年×組、何気にロイはクラスメイトでありリンにラブレターを届けてもらったこともある。

リリアーヌ「ああ…お姉さま…」
窓際の席のリリアーヌは授業中もついつい、窓の向こうに見えるエレブ高の校舎に視線を送ってしまう。
スコーンッ!
リリアーヌ「あいたっ!」
セシリア「はいそこ授業中よ」
ウォルト「チョーク投げっていつの時代の教師あべしっ」
セシリア「なにか言ったかしら?」
リリアーヌ(助かりました…ウォルト君に怒りの矛先がいってよかった…)

さすがに視線を黒板に向け、授業に聞き入る。
セシリア「……であるから社会学的に見て、カップリングはおねえさんと少年が基本になります。
     家庭において女性は夫をリードすべきであり、そのためにも人生経験ある年長の女性を選ぶのが、
     男子諸君の正しい道といえます。なお女子は逆に年下を選ぶべきで…」
リリアーヌ(ここはテストに出そう…ノートとらなきゃ)
リリーナ「せんせー同じ年はOKですか?」
セシリア「バケツ持って廊下にたってなさい」
リリーナ「はーい」

放課後…未だラブレターの返事がない事を少女は思っていた。
文面には「貴女にとってご迷惑であれば、この手紙は破り捨ててください。」の一節を加えてあり、
返事がないのはつまりそういうことなのだと…
リリアーヌ「はぁ…おねえさま…それでも貴女のことを忘れられない私がいます…」
それにリンにはフロリーナという可憐な恋人がいると評判であるし…

だが何よりも夕べの夢でちょっと積極的になった自分がいる。
リリアーヌ「お…思い切っておねえさまの所を尋ねてみましょう!」
勇気を振り絞ってエレブ高の敷地を訪ねてみる。
同じ学校といっても中学生には少々敷居が高いので校門で待ってみることにした。

リリアーヌ「おねえさまは部活はやってらっしゃらないから…早めにお帰りになると思うんだけど…」
やってたら自分もその部に入るところだ。
もっともリンはまちがいなく体育会だろうし、自分は運動オンチな上シビリアンなのでマネージャーだろう。
リン(リリアーヌ)「ふぅっ…汗をかいてしまったわ」
リリアーヌ「おねえさま、タオルお持ちしました!」
リン(リリアーヌ)「ありがとう、貴女はよく気がつくわね」
リリアーヌ「いえ…わたしにはこれくらいしかできませんし…」
リン(リリアーヌ)「いいえ…貴女の存在が私にとっては励ましになるの…愛しのリリアーヌ…」
リリアーヌ「あっ…いけませんおねえさま…小鳥さんが見ています…」

校門の前で妄想に浸りながら一人芝居をする中学生を、生徒たちは奇異の視線で眺めて通り過ぎていく。

そこに怪しげな男たちが近づいてくる。
指名手配変態軍団、ベルクローゼンである。
ブラムセル「ルネスは最近警戒が強いからの」
レイドリック「他の学校をターゲットにするわけだな」
ゲブ「おおっ校門に少女がいるぞぉ俺好みの金髪だぁ」
たちまち変態達は少女を取り囲んだ。

リリアーヌ「ああ…おねえさま…そういう事は結婚してから…はっ!?……………み、醜い」
正気に戻った少女の第一声がそれである。
ゲブ「な、なんだとぉ!」
レイドリック「グフフフフ、そんな事を言えるのも今のうちだ」
ブラムセル「ワシらがこれからたっぷり…じゅるっ」
汚らわしいケダモノどもに、さすがに少女も窮地に気付く。
リリアーヌ「い…いやー! 男なんか汚くて臭くて気持ち悪くて最低の生き物です! 近寄らないで!」
ゲブ「ぶふふぅ無駄だぁ! 1月風呂に入ってない俺のワキの臭いをかげぇ!」

その時であった。
??「このエレブ高での乱暴狼藉! 父なる天に代わって成敗するわ!分身!」
ゲブ「あべし!」
レイドリック「たわば!」
ブラムセル「ひでぶ!」
疾風の如き剣閃が光り、しなやかな肉体がケダモノどもの間を駆け抜ける。
たちまち3人はボロ雑巾と化して打ち捨てられた。

マーニ・カティを鞘に収めて立つその人は…
リリアーヌ「あ…ああ…」
リン「まったく変態が増えて困り者ね…大丈夫?」
リリアーヌ「リンディスお姉さま!」
リン「へ!? 私の名前を知っているの?」

少女にとっては運命としか思えなかった。
思い求めてやまない愛する人がこうして目の前に立っている。

リリアーヌ「以前お手紙差し上げたリリアーヌです!」
リン「なぬっ!?」
リンの額に汗が伝う。
なにかしらの形で断らなきゃなーっ…と思いつつも上手い言葉が浮かばず今日に至っていた。
リリアーヌ「以前より遠くからお姿を見るだけで心満たされていました…
      お手紙を差し上げたりも致しました…ですがそれだけでは満たされなくなってしまいました…
      ご迷惑かもしれませんが…」
リン「ちょちょちょ、ちょっと待ったーーーーーーーっ!」
リリアーヌ「勇気を出して直接思いのたけを…お姉さま!世界中の誰より愛してます!
      フロリーナ先輩にもこの思いだけは負けません!」
リン「私とフロリーナのカップルは確定なんかいっ!?」

少女はテンパッてて自分の思いを告げるので精一杯、リンの返事も聞かずにまくし立てた。
リリアーヌ「ご迷惑かもしれませんが、私がお姉さまを思うことだけはお許しください!
      これが私の気持ちです!」
それだけを言い切ると少女は背伸びして、リンの頬に軽く触れるだけの口付けをした。
そして耳まで真っ赤にして駆け去っていく。
後に残されたのは呆然と立ち尽くすリンであった。

リリアーヌは忘れているがここは天下の往来、大勢の生徒達が何事かと見守っていた。
その中にはエリウッドやヘクトルの姿もあった。
ヘクトル「……………なんか…邪魔しても悪いし先帰るか」
エリウッド「……そうだね…」
2人は生暖かい目でリンを見守っていた。

部屋に戻ってからも、少女は胸のときめきを抑えきれず、布団を抱きしめてゴロゴロ転がっている。
リリアーヌ「ああ…お姉さま…お姉さま…柔らかな頬…私を守ってくださったお姉さま…」
勇気を出してよかった。
なにかリンとの距離が縮まった気がする。
きっと顔を覚えてもらっただろう。リリアーヌにとってはとても大きな前進であった。
明日からは心の中じゃなくて、写真に直におはようのキスをしようと思う。
まだ恥ずかしさは拭えないが、この胸の高鳴りを偽る事も抑える事もできそうにない。
必ずフロリーナに勝ってリンの隣に立ってみせる。
少女は頬を染め、近い将来の自分たちに思いを馳せた。

兄弟家の居間、マルスが殴る蹴るの暴行を受けている。
マルス「ぐぎゃあーっ!」
リン「このどあほー! よくも言いふらしてくれたわね!」
マルス「僕が言いふらすまでもなく、沢山目撃者がいましたけどね」
リン「だからまずいんでしょーがーっ!あああああああもうレズ疑惑から逃れられない運命なのね私は…」
シグルド「KINSHINじゃなければ私は構わんぞ、いっそ事実にしてもいいんじゃないか?」
リン「いいわけあるかーっ! どないせーっちゅーんじゃあああああ!」

ここでも一人の少女が苦悩している。
思春期には色んな悩みがあるものだ。
とりわけ恋の悩みは人生を豊かに彩ってくれるだろう。
こうして可憐な百合の花はリンの周りを彩っていった。

終わり