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Last-modified: 2014-01-19 (日) 20:34:44

明日に向かって走れ!完結編

 

食堂は倒れた戦士達が山をなし、さながら地獄のような有様だ。
ララム「なんで~~? 美味しいのに…」
隅の席で自作料理を味わう料理人の舌はどこか狂ってるらしい。
マーシャ「しゃしゃ…借金かんさっ………がふぁっ!?」
青い顔をしながらドロドロシチュー(?)のような物体を吹き出したマーシャが床に沈む。

ドロシー「また一人玉砕しましたっ! マカロフさんは自分で借金を返すべきです!」
セーラ「あんなバカさっさと絶縁状叩きつければいいのにね…あと何人残ってるんだっけ?」
ドロシー「残りは…6人ですね…あ、今1人食堂に到達しました!」

一人の細身の少女が食堂に入ってくる。
イレース「…お腹がすきました…」
ララム「そんな時は私の料理でお腹いっぱい♪」

ドロシー「こっこれはぁ!? 紋章町一の大食い少女イレースさんと地獄料理人対決!」
セーラ「ブラックホールと不思議物体の戦いね」

イレース「…あなたの事は聞いていました…美味しい食材を産業廃棄物に変えてしまうって…
     食べ物の尊厳にかけてあなたに勝ってみせます…」
ララム「なにー失礼な! 私の料理を完食できたのはお義父様だけだもん!
    食えるものなら食ってみなさい!」

ドロシー「…ララムさん…自覚はあるんでしょうか…」
セーラ「さーね…いいじゃん見物だしね」

イレースは箸を取るとララムの料理に挑みかかった!

エイリークの馬「ぜは~~~ぜは~~~…」
ヘクトル「こ…こら! もうちょっとスピードでねぇのか?」
エイリークの馬「はぁひぃ…」
文句言う元気のないエイリークの馬…
2人は今、砂漠ステージに到達した。
セティ達がこのステージを越えてから、ゆうに3時間は過ぎており、ビグルの大群が乱舞している。
もちまえの守備力も軽量化のため鎧を脱いでしまっており、まともに攻撃を食らったらバカにならない。
ヘクトル「くそったれ! あっちいけこのヤロ…げぶっ!?」
腹にビグルが体当たりをかます。アイクなら腹筋で跳ね返せるだろうが、このところたるんだヘクトルの腹では無理な相談だ。
ヘクトル「や…やべえ…今朝食ったお好み焼きが逆流しそうだ…」
エイリークの馬「ちょ…わたくしの上でそんな汚いマネ許しませんわよ!」

グシャアッ!

ヘクトル「うおっぷ…なんだ、ビグルどもがペシャンコに…」
ヘクトルの背後には巨大なイドゥンがそびえたっていた。ビグルはみんなイドゥンに踏み潰されたようだ。
イドゥン「あ…あれは兄弟さんちのヘクトルさん…ご挨拶しなきゃ…こんにちは」
ヘクトル「お…おう助かったぜ…!?」
イドゥンが足を上げたその下には潰れた数十匹のビグルがえらい姿をさらしていた…

ヘクトル「うおぇっ!」
エイリークの馬「あぎゃーーーーーー! わわわわたくしの後頭部に、口に出すのも憚られる汚物がっ!?
        このピザ死んでわびなさーい!!!」
ヘクトル「あ、暴れんじゃねぇ! 酔って…うげぇ」

セーラ「……」
ドロシー「最下位組にカメラ回してなくて助かりましたね…」
セーラ「ま、放送する前に編集するんだけどね…」

のったり進むヘクトルとイドゥンはさておいて、現在のトップはイレースである。トップといっても6人しか残ってないが…
イレース「……(黙々と箸を動かしている)」
ララム「ぐぬぬぅ…は…半分も…」

セーラ「…あの娘は美味しく食べてほしいのか、それとも完食させたくないのかどっちなのよ…」
ドロシー「不思議な人もいるもんです」

イレース「もぐもぐ……(少しずつスピードが鈍ってくる)」
ララム「まだよ! まだ3分の1残ってるわ!」
イレース「はむはむ…(額に汗が浮かび始める)」
ララム「ぬあっ!や、やばい…これは完食…いっちゃう?」
イレース「うぐ…むぐ…(顔が青ざめる)」
ララム「ああっ! 後1口!?」
イレース「……ブルブル…(頭痛吐き気痙攣)」
ララム「その箸が口に届いたら…悔しいけど私の負けよっ」
イレース「……パタリ(さようなら)」
ララム「へっ…あら? ………とにかく私の勝ちってことねっ!」

ドロシー「イ…イレースさん玉砕っ! どうやら今大会は勝者なしで終わりそうです!」
セーラ「下位の連中の遅いこと遅いこと…奴らがノタノタ走ってるシーンなんて、
    本放送じゃ尺の都合でカットだろーし、ちょっと昼寝してくるわ」

現在下から2番のヘクトルと最下位のイドゥンは河の前で立ち尽くしていた。
ヘクトル「まいったな…俺らの移動力じゃ入れそうもねぇ…」
イドゥン「………私、泳げない…」
水に入れない兵種のため、橋もあるにはあるが大幅な迂回になってしまう。
ヘクトル「が…他に方法もないししょうがねぇ…」
遥か遠くに見える橋を目指して進みだす2人。
エイリークの馬がバテてしまい、休みつつ進んでいるため遅いことこの上ない。
でもヘクトル達が休んでいる間、まっててくれるイドゥンはいい人だ。
イドゥンにしてみれば賞金には興味なく、みんなが参加して騒いでるところに混ざりたかっただけなのだ。
ヘクトル「まぁ…ここまで遅れちゃ優勝なんて無理だろうな…今頃アイク兄貴あたりがゴールしてんだろうが…
     ここまでやったんだ、せめて完走しようぜ!」
イドゥン「はい…頑張りましょう」
エイリークの馬「…だからわたくしは嫌ですってば! ああもう水浴びしてこの汚い汚物を洗い流したいですわ!」

2人が橋に辿り着くと、橋の上で2人のシューターが立ち往生していた。
ジェイク「くそー…車輪が溝にはまっちまって…」
ベック「通れんじゃないか! 早くどかしてくれ!」
エイリークの馬「邪魔ですわねぇ…こんな細い橋ですのに…」
ヘクトル「つーかお前ら…シューター降りて走った方が速いだろ…」
ジェイク「そ…それもそうか…」
2人の男がシューターから降りようとしているその時、ヘクトルは橋がミシミシいってることに気がついた。
ヘクトル「まぁこんな細い橋だしな…重そうなシューター2台は重量ぎりぎり…!?」
はっと気がついて背後を振り返る!
ヘクトル「やべぇ! 今すぐ人間形態にっ!?」
イドゥン「…え?」
巨大な竜のイドゥンが乗った瞬間…橋は落ちた…

ヘクトル「おわーーーーー!?」
エイリークの馬「今日は最悪の一日ですわーーーーー!」
イドゥン「あ…落ちます」

ばしゃああああああん!
高い水しぶきがあがる。

イドゥン「あ…足つきます…これなら怖くないです」
巨大な足を上げて対岸に渡るイドゥン。水中でジェイクとベックを踏み潰したことには気付かなかった。

ヘクトル「はぁはぁ………」
イドゥンの足には1人のピザがしがみ付いていた。その背中にはエイリークの馬がのしかかってしがみ付いている。
図らずも河を渡ることには成功した。
イドゥン「あ…そこくすぐったい…」
ヘクトル「あ…ああ悪い…」
エイリークの馬「もー嫌ですわ!」
ヘクトルを打ち捨てて逃げ出すエイリークの馬。騎乗する者は馬と一緒でないとゴールが認められない。
ヘクトル「あっ逃げるな!」
イドゥン「…逃げちゃダメ」
巨大な前腕であっさりと馬を捕まえる。
エイリークの馬「お放し、お放しってば!」
ヘクトル「わるいな」
イドゥン「…完走しましょう」
こうして再び2人はノソノソと進みだした。

セーラ「ほわぁぁああ~~~おはよ…」
ドロシー「……(ずるずる)」
セーラ「あ、メシ食べてたのね」
ドロシー「…だって進展がないんですもん」
FETVのスタッフはダレていた。
先ほどまでトップだったドーガがララムゾーンで逝った今、ヘクトルとイドゥンを残すのみ…なのだが遅い、遅すぎる。

シャナム「わっははは! イレースが散った以上もう賞金は安泰だ!」
ユアン「ああ…イドゥンさん人間形態に戻らないかなぁ…ピザと竜のどこを撮れっていうのさ…
    あ、でもこういうのも妄想のしがいがあるかも…あの竜が美人に…ハァハァ」
イリオス「エロガキ自重!……といいつつちょっとわかっちまう…いいよなイドゥンさん…」
オルエン「…えいっ!(ドスッ)」
イリオス「ぎゃああああああ、目に指を突っ込むヤツがあるか! 俺が何したっていうんだ!?」
オルエン「別にっ!(プイッ)」

脱落した兄弟家の面々は控え室に集まっていた。
アイク「ララムコワイララムコワイ…」
リン「でも兄さんは苦手なものから逃げずにララムの料理を食べたんだもの、立派だと思うわ」
ミカヤ「は~それにしてもひどい目にあったわ…」
アルムA「これとれないよ…そのうちBやCも出てきそうで嫌だよ…」
アルムB「呼んだ?」
なんと!? アルムがもう一人!?

アルムA「ぎゃあああドッペルゲンガー!?」
セリカ「どうせチェイニーでしょ」
アルムB=チェイニー「チッばれたか」

エフラム「ピザはまだ帰ってこんのだな」
エイリーク「まだ頑張ってるみたいですね…しばらく私の馬は休ませてあげないと」
エフラム「そうか…ところでエイリーク…お前には一度きっちりと話しておかねばと思っていた」
エイリーク「なんでしょう?」

兄上は真顔だ…これは兄上が本気の話をする時だ…エイリークは姿勢を正した。
エフラム「なぜ胸に醜い脂肪をつけようとするっ! お前の胸はさっぱりしていて風通しがよくて素晴らしいというのに!
     いいか、赤ん坊に乳をやるときも貧乳のほうがやりやすいのだぞ! 胸は母性の象徴というヤツがいるが巨乳は赤ん坊には苦しい!
     正確には貧乳こそが母性の象徴なのだ。巨乳なぞ無駄の象徴だ。保育に関心を持つ者として俺は…ちょ…なぜジークリンデを…」

さらばエフラム………

リーフ「これは天罰なんだね」
エイリーク「そういうことです」

ララムの食堂が映ったモニターを怪しいマスクの男が眺めている。
スターバイザーM「…もうやることやったし、あとはヘクトル兄さんの奮戦を高みの見物といこうか…」

やっとこヘクトルとイドゥンは食堂に辿り着いた。
ヘクトル「………さ……最後に来てこれかよぉ…」
エイリークの馬「ふん、いい気味ですわ、この豚野郎が!」
イドゥン「……食べればいいんですね?」
ララム「そうだよ!私…」
イドゥン「私…ですね、わかりました」
その巨大な口でイドゥンはララムを一飲みにする。
ララム「ちょ…私の料理って言おうと…アッー!」

そこにシャナムが駆けつける!
シャナム「失格! ララムを食ったので失格!」
イドゥン「ぐす…失格になってしまいました…」
ヘクトル「気にするなっ! こうなったら俺がお前の分まで完走してやるぜ!」
後ろをノロノロ走った者同士、なんとなく連帯感みたいなものがあった。
目の前にはララムが落としていった鍵がある。
ルールからすればララムをいてこましたのはイドゥンなので、ヘクトルがこれをひろってゴールしても問題はないのだが…
ヘクトル「それじゃあ意味ねぇんだ! きっちり勝負してやらぁ!」

ヘクトルは箸を取り、最後の戦いに挑むのだった…

夕焼けの中、ヘクトルはフラフラと馬を引いていた…
ヘクトル「くそ……まだ腹の調子がうえっぷ…」
エイリークの馬「ああ…やっと終わりましたわ…」

ララムの料理を半分まで食べてヘクトルは撃沈した…大健闘といえるだろう。
ヨレヨレしていると前から弟がやってくる。
マルス「大変だったみたいですね兄さん」
ヘクトル「マルス…どこいってたんだ?」
マルス「ちょっと…ね。肩貸しますよ」
ヘクトル「わりぃ頼むわ…」
マルス「重い…ピザ…」
ヘクトル「なんか言ったか?」
マルス「いえ別に」

いまさら確認するまでもないがスターバイザーMの正体はマルスである。
マルスはFETVのスポンサー、フリージの担当者オルエンを言いくるめて
ヒルダ専務と会う機会を作ってもらったのだ。
ブルーム社長が傀儡にすぎず、実権はヒルダが握っていることはリサーチ済みだ。
そこで自分の企画力を売り込んだ。要は大企業フリージとコネを作りたかったわけだ。
偽名をつかったのはマルスのこだわりである。

ヘクトル「ちくしょーあと一歩だったってのによ…」
マルス「1億欲しかったですか?」
ヘクトル「たりめーだろ!」
マルス「まぁ庶民が一生かかってもお目にかかれない金ですからね、
    将来僕が起業したら指先で動かす金に過ぎませんが」
ヘクトル「けっ…ほざいてやがれ!」

自分だったらトップと大差がついて逆転不能と判断したらギブアップするだろう。
ましてララムの飯など食わずに鍵を拾ってゴールしたに違いない。
まったく馬鹿やって大金をフイにしたもんだ・
だが…絶対に口には出さないことだが…ドンケツでも馬鹿でも、今日のヘクトルはイカしていたと思うのだ。

エイリークの馬「……まったく男ってのは暑苦しい生き物ですわねぇ…」

夕日に見送られて、2人と1頭は家族の下へと向かっていった。

シャナム「わはははははは! 大成功だ! 儲かった儲かった!」
イリオス「社長! ボーナスよこしやがれ!」
セーラ「そうよそうよ! これも美少女アイドルセーラちゃんの手柄でしょ!」

こうしてFETVは経営を立て直した…借金を清算し、経費を支払ってもかなりの黒字を出した。
そこまではよかったのだが…失敗した場合の滑り止めにシャナムがブランド物バックなどのコピー商品の販売を目論んでいた事が発覚、
民事で訴えられ、損害賠償で黒字はほとんど吹っ飛んでしまった…

シャナム「すまん、今年もボーナスはなしだ」
イリオス&セーラ&ドロシー&ユアン「…………」

その日、FETVのスタジオにはフクロにされたシャナムが転がっていたという…

~ イリオスのアパート ~

ボーナスを当てにしていた俺は極貧にあえいでいた…

イリオス「……水が止められちまった…俺に死ねってのか…くそ…カロリーが足りない…」
ここんとこオルエンのヤツが持ってきてくれる食いモンが貴重な栄養源だったのに…
忙しいのか来てくれねぇ……
まあ、あくまでも遊び仲間ってだけだし、しょうがねぇけど…俺アイツに随分世話になってたんだな…

俺は生きるため…温存していた角砂糖を食うことにした…給料日が遠いぜ…

~ シュターゼ家 ~

ラインハルト「ここのところ休みのたびに出かけていたようだが、今日は家にいるのか?」
オルエン「兄上には関係ありませんっ」

ラインハルト「なんだ機嫌悪いな」
フレッド「…クソ平民野郎イツカコロス…」

10

~ 兄弟家馬小屋 ~

エフラムの馬「結局優勝はできなかったな…主の妹と俺は最終ステージまではいけたんだがな」
エリウッドの馬「シグルドさんもいい乗り手だったね、
        君がいつかディアドラさんとシグルドさんの2人を乗せられるよう祈ってるよ」
シグルドの馬「ありがとう、でもまだまだ遠そうだよ…それにしてもリーフは2度と乗せたくねぇ…」
リーフの馬「ふはははははは! 俺の苦しみが少しはわかったか!」
エリンシアの天馬「なんで自慢げなんだい」
セリスの馬「明日は学校だ!セリスたんを乗せて登校できる!ムホ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!」
エイリークの馬「自重おし! それと今回まちがいなく一番健闘したのはわたくしですわ!
        あのデブちんを乗せて最終ステージまで辿り着くなんてやはりわたくしは名馬ですわ!
        さあ褒め称えなさい、オーホホホホホホホホ!」
リーフの馬「はいはいすごいすごい」
エイリークの馬「……なんかおざなりですわね…」
エリウッドの馬「いや実際君は頑張ったと思うよ あんなに重いヘクトルさんを運んだんだからね」

馬たちはワイワイ騒ぎながらもお互いの健闘を称えあった。
明日からは元の主を乗せるだろう。だが今日という日は特別な印象をもって記憶に残るだろう。
彼らはたった一日の乗り手交換を夜が更けるまで語り合った。

終わり