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Last-modified: 2014-01-25 (土) 23:50:16

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2 リアーネの部屋に行く …リアーネより俺がシャナンの世話をしたほうがよかろう。
             俺は丈夫だし風邪が移ったりはせんだろうからな

アイク  「心配するなシャナン。看病なら俺がしてやる」
シャナン 「ふわっ!? ちょ…ちょっと待て私はリアーネに…」
アイク  「リアーネに風邪が移ってはいかんからな。俺がやったほうがよかろう」
シャナン 「……」
そう言われると返す言葉もなくなる。
シャナンの胸を悲しみが満たしていった。
シャナン (私は…なんのために…風邪引いてまでセリノスくんだりまできたのだ…
      何が上手くなかったのだ…うう…もっと別の手を使ってればリアーネと仲良くなれたのだろうか…)

リアーネ 「これ…おくすり…」
アイク  「ああ、飲ませておく。リュシオン達のところへ行ってるといい。
      話がついたら教えてくれ」
リアーネ 「わかた」

部屋を出て行くリアーネの後ろ姿を見ながらシャナンは深々とため息をついた。

255 :助けて!名無しさん!:2010/07/02(金) 14:37:28 ID:yitde/b8

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エフラム 「兄が妹を守る…その考えは当然だが、妹以外の幼女も守るのが男としての務めだ!」
ラケシス 「いいえ、兄は妹のみを愛するのが正しいのよ! 他の女に目移りするなんて正しい兄の態度じゃないわ!」
エフラム 「人聞きの悪い言い方はよせ! 俺はただ幼女を守るのが人間として正しいと言っているのだ!」
カナス  (このお二人…そもそも認識の前提が違っていると言いますか…守ると愛する…これでは平行線ですねぇ…)
クラリーネ「…この際思想的な部分は置きましても実際問題として私どもが政権に近いのは事実ですわ。
      AKJには名門の後ろ盾もありますし…今後政権を取る見込みは充分にありますわ」
オグマ  「それを言うなら俺たちだってテリウス全ての獣牙の支持を得ている。
      かつてどの政党も得ることができなかった大きな支持基盤だ。
      ノディオンやリグレが名門なのは確かだが貴族の世界で元老院に対抗できるものはいないと聞く。
      それなら新たな層に支持を広げた我々の方が次回選挙で分があるというもんだ」
プリシラ 「新規の開拓なら私たちだってこうしてやっています!
      獣牙には兄と妹の組み合わせがいないから先にこちらに来てみれば…
      いつのまにか票を掠め取っていたなんて…卑劣な…」
ロイド  「いや…その論法もどうかと…」

リュシオン「…………」

族長代理としてどちらが政権に近いか、どちらか誠実に公約を実行するか…リュシオンはしっかりと見定めなくてはならない。
エフラムにもラケシスにも嘘は感じ取れなかった。
そしてその心根…どちらも幼女と兄への強い感情が感じられる…
保護欲…愛情…憧れ…崇拝…まさにそれは心の奥に抱く聖域であった。
本来余り人の心の深いところまで覗く物ではないとリュシオンは思っているが、
一族の将来に関わる重大な決断を下すに当たり、少しでも相手の人となりを知って判断材料にしたかったのだ。

そしてそれはこの場にいる他の面々にも向けられる。
オグマ、ロイド、カナス、クラリーネ、プリシラ……
深い所まで覗けば、本人すらも気付いていないような負の心や邪な部分も見える。
それは誰しも持ちえるものであって、それ自体を咎めるものではないが…
その中の一人に極めて強い情念を感じる…
自らの意思を実現するために邪魔になるあらゆる物を取り除く事を厭わない容赦の無さ。
反する者を絶対悪と断じる強烈な自我、そのために手を汚したやりかたはベオクでも非難するだろう。

そして親友の言葉……
ベオクで唯一心を許した友の言葉。
…リュシオンの心は決まった。

リュシオン「…エフラム…お前に一族の未来を救うため手を貸してほしい。
      その約束を守る限りにおいて私たちはお前を支持する…」

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南トラキアで支持基盤を拡大している国家社会主義トラキア統一戦線に対抗するのが
北トラキアを基盤とする北方トラキア4州血盟党である。
レンスター家のキュアンを党首とし、アルスター、マンスター、コノートの各家が加盟する伝統保守派政党である。

この日、キュアンは愛妻のエスリンと3時のティータイムを楽しんでいた。
キュアン 「エスリンの焼いたスコーンは最高だな。お茶に良く合う」
エスリン 「もう、キュアンってば♪」
キュアン 「はぁ…私は幸せ者だ…」
フィン  「…それはよろしいのですが…すみません…来客です」
キュアン 「…野暮だなぁ…どなただ?」
フィン  「コノートのレイドリック卿がお見えです」
キュアン 「さっさと済ませてまたお茶にしようエスリン」
エスリン 「ええ、お茶を入れなおしておくわ」

応接室には黒衣の男爵の姿があった。
あまり好感を持っている相手ではないが、コノート家が数年前に断絶して以来実質的なコノートの代表だ。
無碍にもできない。
キュアン 「今日は何用かな?」
レイドリック「我々4家の共同経営の南部鉱山の機械化についてレンスター家のお考えを伺いたいと思いましてな。
       マンスター家でも機械化に賛成しておりますぞ」
キュアン 「あー…その話か…そら人件費の節約にはなるがな…
      ビジネスとしてより政治家として言うが、失業者を増大させるような事には賛成できないな。
      会社っちゃ金儲けの手段ではあるが、同時に世の中のためのもんなんだぞ?」
レイドリック「そうは言いますがな。ストライキだなんだで禄に働かない連中を雇っておくよりメリットが大きいですぞ?
       人力の割合は減らせますし、機材をドズル重工に発注すれば日の出の勢いの元老院とも近づけますしな」
キュアン 「俺とアルスターは反対だ。理由は言ったとおりだ。トラバントはやりすぎたからクビにせざるを得なかったが、
      ヤツの言い分にも一理はある。アイツの極端な平等主義にはついてけないけどな…
      あの時も言ったがスト側の賃上げ要求にも応えてよかったと俺とアルスターは思ってるぞ。
      お前とマンスターの反対で実現しなかったがな。
      話はそれだけか? なら帰ってくれ。愛しいエスリンが待ってるのでな」
レイドリック「チッ…」

苦々しげに吐き捨てると男爵は屋敷をあとにした。

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深い森に覆われたヴェルダン地方。
グランベル社ヴェルダン支店マーファ主張所資材調達担当、それが今のシグルドの肩書きである。
林業が主体のこの地域は昔から良質の木材の産地であった。
総合商社であるグランベル社は色々な事業を手がけており、家具の製造と販売や建築会社への木材の販売も行っている。
そのために必要とする木材を木こりたちから買い付けるのがシグルドの仕事だった。

…専属契約している木こりは前任者から引き継いだ人々であり、
実績を上げるには他の会社に木材を売ってる木こりをこちらに引き付けなくてはならない。
中には専属の取引相手をもたず複数の会社と取引してる木こりもいる。

田舎な上に林業しか産業が無いに等しいヴェルダンは無能者の左遷先として定着している。
木材の確保についても前任者がやってたことをそのままやればいい、馬鹿でもできる仕事だと見做されているふしがある。
つまり仕事のやり方が硬直しきってるのであり、逆を言えばやり方を変えれば伸びる余地もあるのではないか…
シグルド 「前任者のやってたことをそのまんまやれば…失敗はしないだろうけど、伸びる余地も無いもんなあ」
自分のデスクで資料をみながらシグルドは呟いた。
それでは能力を認めさせられない。
シグルド 「要は…可能な限り経費を抑えて木材の確保量をあげろってことなんだが…」
ディアドラとの事もあるからここに来てからはKINSHINの事は当分忘れて仕事に精励している。
シグルド 「良質の木材を生産する木こりさんと専属契約を取るには…やっぱり一番は高値で買い取ることなんだけど…」
一度飛ばされた人間が返り咲く事は容易ではない。経費が増えれば評価はされないだろう。
シグルド 「ううん…運送料とか…生産経費とか…どこか削れないものか…」
その時隣のデスクから声をかけられた。

ゲラルド 「げへへ…隣まで聞こえてるぜ…今までそれでやってきたんだからよ。
      んな思いつくような部分は既にやってるぜ? 本社に帰りたいのはわかるがよ。
      ここで成果をあげようなんざ無理無理、成果をあげられないヤツでも出来る仕事ってんでここに回されてきたんだろ?」
シグルド 「…いや…そうかもしれないけどね…よく考えてみれば何かしらあるんじゃないかと思うんだ。
      このマニュアルだって10年まえの物じゃないか。実情は変わるものなんだから」
ゲラルド 「物好きなやっちゃなぁ。決まったとおり適当にやってりゃ金がもらえんだからいいと思うがなぁ。
      なんだってそんなにやる気満々なのよ? ここに飛ばされたヤツで本社に帰ったヤツなんざいねえぜ?」
シグルド 「愛する人のためさ」
ゲラルド 「けっわけわかんねぇ」
うざったそうに吐き捨てるゲラルドだが、そんなことには構っていられない。
むしろ少しでも情報を聞き出したい。
どんなヤツでもここで長く勤めてる以上、さまざまな事情に明るいだろう。

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シグルド 「前任者がこっちに引っ張れなかった生産者でいい木材を出す人って誰かいるかい?」
ゲラルド 「あーん? …そうだなぁ…ヴェルダン3兄弟だな。
      ま、3男は木こりじゃなくて猟師だけどよ。
      紋章町最高の木こりタリス3人集ほどじゃねぇがヴェルダンじゃあ一番の木こりだぜ」
シグルド 「どんな人たちなんだ?」
ゲラルド 「典型的なヴェルダン人だよ。気が荒くて喧嘩っぱやい。
      親父が地主なもんで持ってる土地は広いし斧の腕もいいぜ。
      だがよぉ…契約取れたってそれだけで本社に帰れる見込みがあんのかよ?」
シグルド 「そこを考えてるんじゃないか」

…だが資料と睨めっこしててもいい案は浮かばない。
シグルドは足で調べてみることにした。
ヴェルダンの森を歩きながら考えてみる。
シグルド 「契約を増やしつつ経費は抑える…そんな魔法みたいな方法があるものかな…
      生産経費で一番の経費ったらやっぱり斧代だよな…生産経費抑えられれば契約は安値でも生産者には+になるし…
      安価な斧を木こりたちに回せれば…っても今だって高価な斧使ってるわけじゃないし…」
対人戦闘ならともかく木の相手など鉄の斧で充分だ。
壊れた斧ならタダだが労力がかかり過ぎるので誰もやらない。

シグルド 「なにか…なにかいいアイディアはないか…」

続く

1 湖に行く         少し綺麗な景色でも見て気分を変えようか
2 神に祈る         神様助けてくれ!
3 ディアドラに電話する 君の声を聞いてまた頑張ろう!
4 マルスに電話する   …マルスの頭脳ならいい方法が考え付くかも…
5 アーダンに電話する  …たまには本社の状況でも聞いてみるか