スター俳優マルス 終章
幕が上がり、チキやファ、ミルラ等の見慣れた顔がエフラムの目に映る
エフラムはきっと結婚式のお祝いに合唱しているのだと思いながら子供達の合唱を聞いていた
舞台の横では緊張しているシーダを励ますエイリークがいた
エストと仲良く話すアベルを見つめるパオラがいた
台本を読みながら準備をするロディとセシルがいた
そして、みんなを励ますマルスがいた
チキ達の合唱が終わり、いよいよ出番である
マルス「みんな、今日まで素人の僕のために一緒に練習してくれてありがとう」
エイリーク「マルスのために頑張ってくれた皆さん、ありがとうございました」
マルス「ルークのことは残念だけど僕達は立ち止まれない。みんな、頑張ろう」
一同が雄々しく返事をするのを確認したマルスは舞台へ向かう
そして皆が配置に着いた時、幕がゆっくりと上がり始めた
エフラム(む…幕が上がりはじめた。あれはマルスか?)
エフラムの視界には城にいたマルスの元に兵士が来るところが映る
次に魔王軍の襲来を知らす伝令役の…
エフラム(む、あれはエイリークか?)
代役等の事情を知らないエフラムはエイリークと確信は持てない
エイリーク「マリス王子、もはやここまでです!逃げましょう」
マルス「嫌だ!皆が戦ってる中で僕だけが逃げるのは嫌だ!!」
エイリーク「マリス王子…すみません!」
マルス「リーク、何を…うっ!?」バタッ!
エイリークがマルスを殴り気絶させる。ここらへん2人とも練習していたので問題ない
兄弟家の面々も様々な感想を抱きながら劇へ没頭していった
エフラムもまた、マルスの演技に感嘆しつつ劇へと没頭していた
ルークの離脱というアクシデントもあったが特に問題もなく進行していく舞台
場面はシーナ姫がさらわれてマリス王子が1人で追い掛けるところである
魔王に洗脳されたシーナ姫がマルスを殺す場面まで来る
マルス「シーナ姫…君に刺されて君が助かるなら本望だ」
シーダ「………」ドスッ!
マルス「ウッ!…」バタッ
シーダ「は、私は何を!?マリス王子!?私は…」
エフラムはこの場面を見て既視感を感じ始めていた
エフラム(おかしい…この場面を俺はどこかで見たような気がする…)
エフラムが既視感を感じたまま、舞台は終盤へと進んでいった…
場面は部屋に1人佇むシーナ姫が心を閉ざし、塞いでいるところである
この時シーナ姫はペガサスナイトの軽鎧から純白のドレスに着替えていた
エフラム(むう…あのドレスは…どことなくショーケースのウェディングドレスに似ている)
そう、エフラムの考えの通りである。あの日シーダとエイリークはこのドレスを貸してもらうようにお願いしていた
エフラムは店に入るところを勘違いしていただけなのである
さて、再び場面は変わりマルス達が魔王と対峙する場面である
いよいよクライマックスが近づくにつれて、エフラムはあることに気がつき始めた
エフラム(もしかして…俺はとてつもない勘違いをしていたんではないのだろうか)
エフラムがそう考えた頃、場面はマリス王子がシーナ姫と再開するところになる
マルス「シーナ姫!無事でよかった!さあ私と行きましょう」
シーダ「ワタシハマリスオウジヲコロシタ…コノママココデ…」
マルス「姫!私はここにいます!だから目を覚ましてください」
マリク「王子、姫は魔法で催眠術にかけられています」
マルス「そうなのか?ならどうすればいいんだ」
マリク「王子の精一杯の気持ちを…ですが言葉ではダメでした…」
マルス「なら!!」
マルスはシーダを抱きしめる
マリク「ダメです!まだ催眠術は解けていません」
エフラム(あの体勢は…あの日エイリークとマルスが…)
今マルスとシーダが抱き合っている体勢は一ヶ月前にエフラムが誤解した時の体勢である
そしてマルスは抱きしめるのをやめる…両手でシーダの肩をつかみ…
マルス「シーナ姫、これが僕の気持ちだ…」
王子が魔法をかけられた姫に口づけをする…魔法の解き方の王道である
シーダ「…マリス王子…わ、私はあなたを」
マルス「いいんだ…僕は君を助けに来れた。それでいいんだ」
シーダ「王子…」
涙を流すシーダとマルスの会話。これも一ヶ月前にリーフとリンが聞いていた台詞である
リーフ(うわあ…一ヶ月前の時よりもずっと素敵だね)
リン(私もあんな台詞を言ってみt…言われたいわね)
2人の会話が終わり、場面は魔王と戦うエイリークとオグマに変わる
本来ならばルークとオグマ、ハーディンは殺陣の打ち合わせをしていたが
直前に代役を引き受けたエイリークは殺陣の打ち合わせはできなかった
この場面ではエイリークの役が主役で、魔王と一分間剣劇を行う予定である
ハーディンはエイリークにオグマ中心に変更し、弱めにするのを提案した
しかしエイリークはそれを断り、オグマとハーディンの剣の太刀に合わせると言っていた
そしてエイリークとオグマとハーディンは打ち合わせ抜きでエイリークと剣を交え始めた
ハーディンは目の前の光景を信じられなかった
いくら私が普段は槍を使うとはいえ、剣も達人級であるはずである
それなのに目の前の少女は私の太刀筋を見極め、見事な剣劇を繰り広げていた
その少女の隣で剣劇に参加するオグマも同様の感想を抱いていた
エイリーク「今です!!」
予定通り一分間の剣劇を締めくくる最後の一撃をハーディンに決める
ハーディンとオグマはマルスの姉、エイリークに戦慄を覚えていた
エフラム(あの剣の型…どこかで見たような…やはりエイリークなのか)
多くの観客も美しい剣劇に見取れていた中でエフラムはエイリークだと確信した
魔王がうろたえていたそこへマルス、シーダとマリクが舞台へ登場する
いよいよクライマックスである。魔王を騎士と魔法使いが足止めする
その隙に王子は姫のペガサスに一緒に乗り、2人で魔王を倒す
エフラムは先程のエイリークの繰り広げた剣劇に比べたら
魔王の最後はあっさり終わってしまったと感じていた
最後にみんなが見守る中で王子が姫に求婚し、姫が頷くところで幕が閉じる
鳴りやまぬ拍手の中、再び幕が開くとマルスとシーダ、そしてエイリークが立っていた
エイリークは予想外だったのか少々浮足立ってキョロキョロしている
よく見るとマルスとシーダの手には花束が握られていた
マルス「今日は僕達の舞台を見ていただき、ありがとうございました」
シーダ「観客の皆様、そして裏方の皆様、本当にありがとうございます」
マルス「僕達がここまで出来たのはここにいるエイリーク姉さんのおかげです」
エイリークの名前が出た途端、観客席がざわめく
エイリークはその道でも将来有望な役者として有名であったからだ
シーダ「一ヶ月間、私達の練習を手伝ってもらいありがとうございました」
そう言うとマルスとシーダは手に持った花束をエイリークに渡す
エイリークは受け取ると軽く嬉し涙を流しながら観客席に一礼した
それに合わせてマルス、シーダも一礼する
再び観客席からは鳴りやまない拍手が響き、舞台は終わった
そしてエフラムは自分がとてつもない勘違いをしていたことにようやく気づいたのであった
無事に舞台が終わったあと、マルスとシーダ、エイリークは打ち上げに参加していた
皆がドンチャン騒ぎをしているなかでエイリークは2人に声をかけられた
ハーディン「エイリーク殿、あなたの剣捌きは素晴らしいですな」
オグマ「俺達も自信はあったんだがな…今度手合わせ願えないか?」
エイリーク「いえ、私なんてまだまだですわ。それでもよろしければ…」
ハーディン「よろしく頼む」
オグマ「ハーディン殿、俺ともやるか?」
ハーディン「お、いいですな。では行きましょうか」
そしてオグマとハーディンは打ち上げ会場を去っていった
マルスとシーダも打ち上げ会場からこっそりと2人で抜け出していた
2人は会場に程近い公園のベンチに座り、会話を始めた
シーダ「今日の舞台、成功して本当によかったです」
マルス「ああ、僕が頑張れたのはエイリーク姉さんとシーダのおかげだよ」
シーダ「エイリークさんはわかりますが…私もですか?」
マルス「シーダのキスは僕以外に取られたくないからね」
マルスは自分の顔が真っ赤になっているのを感じていた
同時に、今が夜で周りが暗いことに感謝していた
シーダ「マルス様…」
マルス「シーダ…」
2人は再び見つめ合うと口づけをする。今度は誰も見ていなかった
エイリークがハーディンとオグマとの会話を終えると今度はエフラムが呼びに来た
エフラム「ここで話すのもあれだし、ちょっと公園に行かないか?」
エイリーク「はい、行きましょう兄上」
マルスとシーダがキスしていたベンチの反対側に2人は座る
エフラム「一ヶ月間マルス達に教えていたんだな」
エイリーク「はい」
エフラム「俺はな…ずっと勘違いしてたんだ」
エイリーク「そうなんですか」
エフラム「てっきりお前がマルスやシーダちゃんを好きになったのかと思ってた」
エイリーク「シグルド兄上やヘザーさんには聞かせられませんね」
エフラム「ああ」
エイリーク「兄上は…もし私が結婚するならどう思いますか?」
エフラム「そうだな…エイリークが幸せだと思うなら反対はしないさ」
エイリーク「そうですか…」
エフラム「好きな人はいるのか?」
エイリークはエフラムの問い掛けに心の中で何人かが浮かぶ
ヒーニアス、ゼト、サレフ…私に好意を持ってくれている殿方達
ターナ、ラーチェル…私の数少ない親友達
そして…エフラム兄上…
エフラム「む、顔が赤くなったな。そいつが好きなんだな」
エイリークはエフラムの指摘を受けて慌てる。慌てたエイリークはごまかすために話題を変えた
エイリーク「い、一ヶ月間も勘違いで家出なんて笑えますね」
エフラム「まったくだ…みんなが連絡してくれたから心配してないからよかったよ」
エイリーク「私は…ずっと兄上のことを心配していましたよ」
エイリークは少し意地悪な笑みを浮かべながらエフラムを見た
エフラム「そうか…すまない」
エイリーク「……てください」
エフラム「え?」
エイリーク「すまないと思うなら撫でてください」
エフラム「あ、ああ」
エフラムは少し恥ずかしそうにエイリークの頭を撫でる
エイリークは幸せそうな表情をしながらエフラムの肩に頭を乗せる
端から見ていると2人は幸せそうな兄妹ではなく恋人のように見えたのであった
舞台の翌日、兄弟家にエフラムが戻りいつもと変わらぬ日常が帰ってきた
エフラムとヘクトルの喧嘩を見て血を吐くエリウッド
いちゃつくアルムとセリカにティルフィングを投げるシグルドと直撃するリーフ
リンをからかいプロレス技をかけられるマルス
周りの喧騒をを気にせずに黙々と食事をするアイク
後片付けを始めるミカヤとエリンシア
食事の後片付けを手伝うセリスとロイ
そんな日常を一ヶ月間待っていたエイリークは、自分でも気がず微笑んでいたのであった
ところでエフラムの勘違いの結果、エイリークはあらぬ誤解を受けていた
町を歩けばヘザーさんに追われたり、ビラクさんに励まされた
ヒーニアス、ゼト、サレフには目を覚ましてくれとしつこく言われつづけた
久々にラーチェルに会ったらエイリークが望むなら私は…と顔を赤らめながら迫られた
どうやら今日は帰ったらエフラム兄上にお仕置きをしなければいけないようだ
私はどんなことを兄上にやらせるかを考えながら騒がしく楽しい家へと帰るのであった
~fin~